代表メッセージ
PIECES代表理事の斎です。
2016年の法人設立以来、理事兼事務局長として事業運営に携わってきましたが、2024年9月にファウンダーの小澤いぶきさんから、代表のバトンを受け取りました。
PIECESは元々、医療や福祉、教育などそれぞれのフィールドで活動していたメンバーが偶然の重なりによって出会い、立ち上がった団体です。そこにあったのは、子ども・若者の生きづらさや息苦しさ、彼らを取り巻く社会の歪さ、人の権利や尊厳が大切にされていない現状をなんとかしたいという想いでした。
私自身も、これまでPIECES内外で関わってきた子どもたちの声、あるいは直接ではないながらも様々な人や媒体を通じて届いてくる声を通じて、無数の傷に出会ってきました。
子どもたちや周囲の大人の傷や痛み
学生時代に児童養護施設で出会ったRくんも、ソーシャルワーカーとして出会ったKくんやMさんも。本人はもちろんのこと、養育者や周囲の人たちもそれぞれに傷や痛みを抱えながら過ごしていました。また、分かりやすい形ではないにしても、大人の価値観や評価軸、時間感覚によって、子どもの権利や尊厳が蔑ろにされている光景は、日常のそこかしこに広がっているようにも感じてます。
一人ひとりが持つ市民性
一方で、これまでの活動や経験を通じて、私たち一人ひとりがもつ「市民性」のもたらす影響の大きさに、心からの可能性を感じています。立場や肩書、評価やジャッジをおろした先にあるひとりの人としての願いや大事にする想い。そこから生まれるまなざしや関わりが、誰かにとっての支えや力になる場面を幾度となく目にしてきました。
それは決して特別なことでも複雑なことでもありません。一人ひとりの存在はすでにそこにあるし、「市民性」は誰もが持っているものです。ですが、今この社会においては、その特別ではない当たり前のものが、かえって見えにくい、気づきにくい状態になっているように感じています。
だからこそ、私たちPIECESは、そんな「市民性」を照らし、育むことにチャレンジし続けていきます。
そのチャレンジを通じて届けたいのは、人が何かをすることや、何かを獲得することを求めるものではありません。何かをさせるでも、何かをしてあげることでももちろんありません。
市民性を手掛かりに、一人ひとりが自分や他者の存在そのものを尊重し、共にあること。目に見えないものやことから目を背けずに、そこにいることが大事だと考えています。
パートナーとしての子どもたち
私たちにとって、子どもの存在は対象者ではなくパートナーです。
頭で考えるよりもこころで感じることを大事にする姿勢や、評価や判断をわきに置いてそのものをみつめられる力、常識にとらわれない豊かな視点や感性。それらは、疑うまでもなく、私たち大人が失ってきてしまっているものであり、子どもたちが当たり前のように持っているものだからです。
市民性を照らし、育むこと。それを通じて、一人ひとりの人が子どもや他者との応答や響き合いを大事にしながら、互いの権利や尊厳を大事にしていくこと。
途方に暮れそうになる取組みですし、時間もかかります。どこかでは、潮目が変わる瞬間が訪れるのを信じて、祈るような営みでもあります。
それでも、協力・共創を大切にして、「少しずつ、みんなで」これからもチャレンジを続けていきたいと思います。それぞれのあり方・関わり方で、協力や応援いただけたら嬉しいです。
NPO法人PIECES代表理事
斎 典道
プロフィール
斎 典道
NPO法人PIECES 代表理事 / ソーシャルワーカー
大学在学中より国内外の社会的養護、地域子育て支援の現場でフィールドワークを実施。2012年には北欧の社会福祉を学ぶためデンマークに1年間滞在。国民の日常に溢れる、文化としてのウェルビーイングの価値に深い感銘を受ける。日本福祉大学大学院在学中に児童精神科医の小澤と出会い、PIECES設立に参画。現在は、事務局長として、事業・組織の両側面から事業運営に携わる。2015年~2019年まで、都内でスクールソーシャルワーカーを兼務。子ども・子育て家庭の教育福祉問題に対するシステミックな変革を、ソーシャルワーカーという立場から追求する。