“ゆっくりゆっくり”ひとりひとりのペースで
今回インタビューさせて頂いた松田真奈さんは、現在早稲田大学の4年生です。
大学では社会福祉士になるための勉強に励みながら、“よんなーよんなー”という、学校に行きづらい子が集まり一緒に時間を過ごす居場所を作る活動を通して、PIECESで活躍しています。そんな松田さんは、高校生の時に中退した経験を持っています。社会福祉士を目指すことにした松田さんから、CYWという存在はどう見えているのでしょうか。また、不登校の子どもの支援をしていくにおいてのやりがいや、中退経験をした松田さんだからこその、葛藤について伺いました。
自分をまるごと受け入れてくれる居場所
松田さんは体調の悪さが原因で、学校に行けても午前中で帰ったり、保健室登校をしたりする日々を送っていました。学校に通う、という普通の生活が、どうして自分にはできないのかと、精神的にも追い詰められていきました。気持ちが落ち込むと体調も悪くなる、そんなスパイラルに陥り、松田さんは高校を中退することを決めました。
松田さんが学校に行けなかった時、自分は“ただ怠けている人”だと周りから見られていると思っていたそうです。しかし、松田さんが高校を中退した後に通うことを決めた予備校には、松田さんをそのまま受け入れ、支えてくれる場所がありました。自分のこんな感じでも大丈夫なのだと、気持ち的にゆとりができるようになっていきました。
PIECESのキーワードである“居場所”。
この言葉を、松田さんも大切にしています。いわゆる不登校の支援となると、学習支援が多いです。ですがPIECESでは、勉強をする以前に、勉強しよう、と思える状態に子ども達がなれるような居場所を整えていくところから始まります。ご自身の経験から、それがいかに大切かを感じている松田さん。子ども達1人1人の居場所作りに自分自身が関われるところが、松田さんのPIECESでのやりがいにつながっているのです。
子ども達にとってのプラスの方向を探し続けるCYW
“人の生きづらさに対して何か支援が出来たら。”
自身の中退の経験から、社会福祉士に興味を持ったという松田さん。
大学で社会福祉士の勉強をしている松田さんから見たCYWとは、相手のプラスの面を探し続ける存在です。人の支援をしていく、という面で、社会福祉士とCYWは重なります。
社会福祉士は、国家資格を必要とする専門職です。様々な知識を持ったプロが、生きづらさを抱える人たちに対して専門的な支援をする、なくてはならない職業です。
しかし“仕事”だからこそ、所属している機関や役割に捉われることもあるかもしれません。専門的な知識を持っているからこそ、葛藤もあるのではないか。という印象を、松田さんは持っています。
一方CYWは、非専門職です。もちろん専門家がサポートする体制が整っていますが、知識も経験もゼロの状態から、CYWになる人が、PIECESにはたくさんいます。知識も経験もない、だからこそ、CYWの仲間と試行錯誤しながら、知識に捉われない個人個人の価値観を大切に、子ども達に関わることができるのでしょう。
1人1人の人にまっすぐ向き合うところは社会福祉士と似ているけれども、より、CYW1人1人の価値観を大切に動ける。CYWが子ども達のプラスの面を探し続けている。そこが好きだと話す松田さんは、とても嬉しそうで、誇りを持っているように見えました。
子ども達と真剣に向き合うからこその葛藤
“自分の境遇と重なるところがあるからこそ、感情移入してしまう、しすぎてしまう。似ているからわかる部分もある。けれど、それだけじゃない。”
PIECESにて、学校に行きづらい子が集まり一緒に時間を過ごす居場所、“よんなーよんなー”を通して、松田さんは活動しています。
ご自身が退学したという経験を生かして、不登校の子ども達に上手く寄り添える一方、不登校を経験したからこその葛藤があると松田さんは言います。
体調が悪く、あまりよんなーよんなーにも来られない。でも、進学するために勉強したい、という思いを持っている子どももいます。体調が悪く来られないという子どもに、「体調が安定していて、来られそうな時にくればいいよ。焦らなくていいよ。」そんな、待ちの姿勢でゆっくり待とうと思えるのは、自身の経験があるから。ですが、その子にもきっと別の事情や悩みがあるし、その他のところも気にかけていかないといけません。
境遇が重なる分、わかることもあるけれど、わかった気になってはいけないのだと話す松田さんからは、子ども達に対する熱い想いが伝わってきました。
活動に奮闘する後ろにある、CYW同士の支え
CYWは子どもの伴走者だと言われているけれど、子どもに限らず、CYW同士の思いやりも強いと松田さんは言います。
“おつかれさま。活動に参加してくれていることが、みんなにとっても力になっていると思うよ。”
そのような、仲間からの言葉達に、松田さんは何度も支えられてきました。大人同士、フォローしあう。子どもをサポートする立場だから、CYWは完璧な人間でいなければいけない、というわけではありません。CYWも、1人の人間として悩みはあります。そんな悩みにも、CYW同士で寄り添い励ましあいながら、CYWは成り立っているのです。
ネガティブに見える経験を、ポジティブに捉えなおす力
松田さんは現在大学4年生。社会人になってからのPIECESやよんなーよんなーでの活動に対してどう考えておられるのかを伺うと、松田さんが大切にしている素敵な価値観を話してくださいました。
“自分が周りの人に支えられたから、まずは、自分の身近にいる人を大切にしながら生きていきたい。時と場合によって、その時に周りにいてくれる人を大事にしたい。状況によって、自分ができることをやっていきたい。だから、将来こうなるために今はこうする、とかはあんまりない。”
周りにいてくれる人に支えてもらうことの大切さを知っている松田さんだからこその言葉に、確かにそうだよな。と私も共感してしまいました。
不登校、中退、という言葉は、一見ネガティブな言葉に見えてしまうこともあるでしょう。
ですが、そのような経験は自分を知るきっかけとなり、将来の道を選択する上での大きな後押しとなりうることを松田さんから教わりました。
自分が辛い時期に、周りにいてくれる人から支えてもらった経験から得た力を、松田さんは子ども達に還元していくのです。
◆今回インタビューさせていただいた松田さんが活動しているよんなーよんなーでは、クラウドファンディングをしています。
よんなーよんなーは、「高校の中退予防」や、「中退後の支援」を目的とした居場所型学習支援です。「よんなーよんなー」という言葉は、沖縄の言葉で「ゆっくりゆっくり」という意味です。子ども達のペースに合わせて、“ゆっくりゆっくり”寄り添っていくことを大事にしています。月々500円からご支援いただけます。ぜひ応援をよろしくお願い致します。
https://camp-fire.jp/projects/view/114605
◆コミュニティーユースワーカーずかんライター募集!
この度、「コミュニティユースワーカー(CYW)ずかん」で記事を書いてくれる新しいメンバーを募集することとなりました!PIECESの理念に共感していただける方、文章を書くのが好きな方、ライター経験がない方も大歓迎です!一緒にコミュニティーユースワーカーずかんを作りましょう!お待ちしています!
応募/詳細はこちら→https://goo.gl/forms/koGZjHCCnQOkRXLi2
過去の記事はこちら→http://www.pieces.tokyo/cywzukan/
◆PIECESをもっと知りたい方
PIECESでは、子どもの孤立を解決し、より豊かに生きていける社会をめざし様々な活動を行っています。PIECESの事業説明会や主催するイベントにご参加いただき、もっとPIECESについて知っていただけたら幸いです。
イベント一覧はこちら
http://www.pieces.tokyo/eventcalendar/
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◆PIECESからのお願い
本プログラムは多くの方々からのご寄付に助けられながら運営しています。
一人でも多くの人が子どもの声なき声に耳を傾けられるようになることで、子どもたちの周りに予防型のセーフティネットが紡がれていきます。
1日33円~の寄付を通して、子どもたちが孤立することなく生きられる豊かな社会をつくる仲間になっていただけたら嬉しいです。
光成雛乃(みつなりひなの)
お茶の水女子大学 生活科学部 人間生活学科 発達臨床心理学講座4年
広島県出身でお好み焼きが大好き。中学生の時新体操部に所属していたため、いまだに体が柔らかい。PIECESでは実際に現場に行って子どもと関わり、広報ではインターン生としてライターをしている