【CYWずかん】学力だけじゃない、いろんな形でたくさんの子の内側を引き出したい。大畑麻衣花さんの「まなざし」とは?

支援ってなんだろう?

「支援」という言葉はなんだか、人との関係に距離をうんでしまう言葉のように聞こえないでしょうか。「子どもを支援する」といってしまうと、支援者としての「おとな」と、被支援者としての「子ども」の立場がはっきりと区別されてしまうようにイメージしてしまいませんか。

PIECESの活動も、子どもに対する支援のかたちのひとつといえるでしょう。しかし、PIECESで活動しているコミュニティユースワーカー(CYW)たちは、「おとな」でも「子ども」でもありません。「子ども」をサポートする「おとな」というより、たくさんの可能性を内側に秘める子どもたちに寄り添う存在として、PIECESで活動しています。

そんなCYWたちは、日々、何を感じて、何を考え、どのように、PIECESとして活動しているのでしょうか。PIECESで活動する彼ら一人一人の活動と想いを、『コミュニティユースワーカーずかん』シリーズで紹介していこうと思います。このシリーズを通して、PIECESと子どもとの関わりを探っていきましょう。最初にお話を伺ったのは、CYW2期生としてPIECESで活動している大畑麻衣花さんです!

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PIECESは安心基地!

現在、お茶の水女子大学三年生の大畑さん。子どもと一対一のかかわりを持つことで、子どもたちが持つ可能性を引き出していきたいという思いから、PIECESで活動しています。

児童相談所でも活動をしている大畑さんは、そこで見る子どもたちの状況に対して疑問を持つようになりました。「この子たち、こんな生活してるんだ。どこに救われているんだろう。」そしてその疑問が根本的に解決されることはありませんでした。そんなとき、Facebookで流れてきたCYW二期生の募集を見つけて、大畑さんとPIECESは出会いました。

PIECESでは、主に学習支援をしたり、体を使って子どもたちと遊んだりして、子どもとの関係を深めています。

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”対人支援をしていると、正解がわからない世界だからこそ、「失敗しちゃいけないんじゃないだろうか」ということを考えて身動きできなくなることもあります。でも、何かあったらプロの人が助けてくれるだろうくらいの気持ちでやるとちょっと楽になるので、話を聞いてくれる人のいる、戻れる場所があるということに安心できます。”

 

どんな話でも受け入れてくれ、頼れる存在であるPIECESは大畑さんにとって戻ってこられる場所であり、同時に心地よい空間であると言います。そしてその感覚はおそらく子どもにもあてはまるのでしょう。大畑さんは、PIECESの「居場所がない子の居場所をつくる」という理念に共感して活動をはじめていきました。

”場所に来てもらうという受け身な姿勢だけでは繋がりきれない子に繋がりに行く、という姿勢がすごくいいなと感じました。まだまだ認知できてなくて救われない子がいたりするんじゃないのかなって思ったんです。”

また、PIECESの子どもに対する姿勢についても共感する部分が多くあったといいます。

”個人が大人になるまでに身に付けておきたいスキルって学力だけじゃないですよね。PIECESは、それが学力だけじゃなくていろんな形があるということを、前提としている。その子に合わせた形でいいから来てもらおうとしている。そういった姿勢に、「いいな、そうだよな」って。”

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実際に活動するうえでは、CYWをはじめとした多くの人とかかわることができるため、自分の価値観に気づいたり、視野を広げていけたりすることができるのも魅力の一つである、と、大畑さんは続けます。子どもの発言や、優しく接してもらって自分の凝り固まった価値観に気づくことができたときには、「CYWはみんな、子どもに助けられているんだなあ」と感じたそうです。

大畑さんは、今の活動では、現場でCYWが子どもとどのように関わっているのかという状況を把握することが多く、一対一で密に関わるということを実践することが今後の課題だと笑って述べました。自分や現場の状況を客観的に判断することを得意とする大畑さんが、その課題に挑戦できる日が来るのは、きっとそう遠くはないでしょう。

 

プロじゃない、自分の立場だからできること。

PIECESという安心基地を起点に活動してきた大畑さん。現在は、大学三年生という立場もあり、将来のことについて具体的に考える時期にさしかかっています。今後の進路について尋ねたところ、こう語ってくれました。

”ファーストキャリアは普通の会社に入って、最終的に大きなことをするための経験を積んだ方がいいんじゃないって言ってくれる人もいるし、いろんな考えがあるのかもしれないけれど、私は、今は自分の可能性を広げていきたい。プロじゃなくても、いろんな子に関われるようになって、関わった子たちの内側をもっと引き出せるようになりたい。家庭環境とか、個人の特性とか、そういう部分でスタートラインが遅れているような子たちに何らかの形で一生関わっていきたいんです”

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社会では、合理的にみて、能力があるけれど貧困な子を伸ばしたら社会的に良くなるというように考えられる人はいっぱいいます。大畑さんはそうではなく、どんな子であれ、自分が感情的に関わりたいと思った子たちがいつでも戻ってこられる場所を提供してあげたいと強く感じているそうです。

「いつでも戻ってこられる場所」。それは大畑さんにとってのPIECESです。PIECESでは、様々な強みを持つCYWを通じて、子ども一人一人に寄り添える居場所を提供しています。PIECESでの活動を通して、CYWがそれぞれのかかわり方で子ども一人一人に関わっていくと、子どもにとってのCYWがいつでも戻ってこられる居場所になるのではないでしょうか。

「居場所がない子の居場所をつくる」ための大畑さんの挑戦は、これからも続いていきます。

 

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立教大学ドイツ文学専修三年 渡邊紗羅
PIECESで広報としてイラストを描いてチラシなどを作成しているうち、PIECESに関わる人たち一人一人の魅力を文字で伝えたいと思うようになり、『コミュニティユースワーカーずかん』シリーズを企画。映画鑑賞が趣味で、暇さえあれば劇場にお金を溶かしてしまうため常に金欠気味。PIECESでのあだ名は「さらたん」。実は大学のサークルで呼ばれた「さら単細胞」が由来で現状に至る。