【イベントレポート】「ひとりひとりの手元から未来をつくるー市民として生きるって、どういうこと?」を開催しました。

PIECESは今年6月に設立から6周年を迎えました。PIECES設立6周年を記念して、6月25日(土)に特別トークセッションを開催しました。
モデレーターに評論家・ラジオパーソナリティの荻上チキさん、スピーカーに一般社団法人 NO YOUTH NO JAPAN代表理事・ハフポスト日本版U30社外編集委員の能條桃子さんをお招きしました。

モデレーター:荻上チキさん
評論家・ラジオパーソナリティ

メディア論を中心に、政治経済、社会問題、文化現象まで幅広く論じる。NPO法人「ストップいじめ!ナビ」代表、「社会調査支援機構チキラボ」所長。出演「TBSラジオ・荻上チキsession」、著書『ウェブ炎上』『いじめを生む教室』『みらいめがね』など

スピーカー:能條桃子さん
一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN代表理事・ハフポスト日本版U30社外編集委員

1998年生まれ。若者の投票率が高いデンマーク留学をきっかけに、2019年7月政治や社会の情報を伝えるInstagramメディアNO YOUTH NO JAPANを立ち上げ、団体創設。「参加型デモクラシー」ある社会をつくっていくために活動を展開。団体近著に『YOUTHQUAKE~U30世代がつくる政治と社会の教科書~』ジェンダー、気候変動に関心

PIECESは設立当初から「こどもがこどもでいられる社会」を目指して、活動を行ってきました。こどもがこどもでいられる社会は、わたしたち大人が自分として生きていける社会から生まれるものかもしれません。

当日は小澤いぶきからPIECESの活動紹介、能條さんからNO YOUTH NO JAPANの活動紹介の後、荻上さんをを含めた3名で、”私たちが生きやすい社会とはなにか”について、市民性(シティズンシップ)をキーワードにセッションを行いました。このレポートでは、セッションの要点をご紹介します。


市民性を考える

最初に荻上さんから”市民性”というキーワードを歴史の経緯から整理していただき、まずはそれぞれが考える市民性について考えを深めました。

能條さんからデンマークへの留学経験から、日本と海外の市民性の違いについて「デンマークでは小さなコミュニティの延長に大きなコミュニティがあるという意識がある。小さなコミュニティを変える経験を持っているからこそ、大きなコミュニティも変えられるという考えを持っている人が多い。」という話がありました。
小澤からは「日本でも何かしたいと思っている人は多いけれど、それをやってみるハードルが高くなっている。エンパワーメントする環境が必要ではないか。」という話がありました。

社会を変えられるという意識を持つ

社会を変えることはできないという考えを変えるためには「知識」と「統制感覚」が必要であると荻上さんがお話しくださいました。「知識」とは社会との関わり方を知っていることだけでなく、それを手段として実行できる環境があることも必要です。そして「統制感覚」とは社会をコントロールできる、という感覚のことです。ここでは統制感覚を持つためには何が必要か話しました。

能條さんからは、自身は統制感覚を持つことが出来る経験や仲間を得ることができたから、今活動できているという話がありました。身近に統制感覚を持つための種となる経験が大切になってくると荻上さんに付け加えていただきました。

また小澤からは、自分の人生は自分でつくっていけると知る経験には格差があるのではないかという話があり、自分で選択をしていけると気づくことが、最終的には社会を変えることができると思える市民性につながっていくということが話されました。

社会に対して関わろうとする

荻上さんから子どもに対して将来の夢を聞くことについての言及がありました。”将来の夢”は就きたい職業のことを指す場合が多いです。そうではなくて、「自分が将来どうなりたいか」と「どういう社会をつくりたいか」の2つを一緒に考えるべきではないかとお話がありました。ここでは、どうすれば社会と関わろうという考えに至るのか話されました。

能條さんはNO YOUTH NO JAPANの活動を始める経緯について、特にデンマークへの留学経験をもとにお話しくださいました。「デンマークに惹かれたのは、誰か優秀なリーダーがいることではなく、民主主義が実現されていること、対話が実現されていることだった。対話があることで自分が無視されないという経験ができる」と指摘されました。また、荻上さんの話を踏まえて、能條さんからは社会に対して何をしたいかという問いをされることの大切さを気づきとしてあげられました。小澤からはその問いを考えることが共有感覚を育むことにもつながるというお話がありました。

質疑応答

ご参加いただいた方からは様々な視点からご質問をいただきました。
「若者の政治参加を考える上で、新しい政治モデルとして何か考えられることはないか」「子ども自身が自分の声に気づくためにはどうするべきか」といった質問がありました。

子どもや若者の声を聞く政治モデルについての話、子どもをジャッジしないことの大切さなど、話をさらに深めていただきました。

参加者の声

以下、ご参加いただいた方からの感想を一部ご紹介します。

・とても優しく子どもがほっとする活動をされていると感じました。子どもは宝と私は思います。未来の大人をみんなでしっかり支えて、過ごしやすい社会になればと思いました。

・能條さんの、自分の力で何かを(校則など)を変えられる経験を学校で積む、と言うお話しが印象的でした。わたしが子どもの頃は、何かおかしいなと思ったら自分の状態を変えるだけで、外に対しては全く意識が向きませんでした。外を変えてみる発想にすらならなかったと記憶しています。今はどうかな、と自分を見つめるきっかけになりました。

「政治体制ではなく、在り方としてのデモクラシー」が印象的でした。個人が尊重される環境に身を置くからこそ、自分も他者も価値ある存在だと実感できるからこそ、失敗はあれど学習性無力感に陥ること無く現状を変えようと行動できる。このように自分や他者に未来があると想像できること、その未来に希望を持ち行動できること、それはとても幸せなことだと私は思います

・今回お話しくださった皆様の姿勢から、ありたい社会を実現させたいと願う自分自身を肯定したり応援したりすること、そしてそれを実現させる為の知識とセンスオブコントロールの必要性を感じました。まずはそこからなのだろうと思います。この度はこのような場を開催くださりありがとうございました。

市民性を醸成するとはどういうことか、何が必要なのかを改めて深く考える時間になりました。
異なる分野で活躍されている3名だからこそ、色んな視点から市民性について考えることができ、わたしたちが社会と関わり続けるためには、関わろうと思えるための種を得られる環境が必要であると感じました。

このイベントに参加すること、市民性について考える時間を持つこと、それ自体が市民性を醸成すること、社会と関わることになったと思います。ぜひこれからもみなさんと市民性について考え、対話する時間を持っていきたいと思います。

最後に話題になりましたが、登壇してくださった荻上さん、能條さん、そして参加してくださった皆さま、本当にありがとうございました。

執筆:広報ファンドレイズ インターン 小森 佳歩