事務局長からのお便り Vol.14

 
 

こんにちは、PIECES理事/事務局長の斎です。
忙しい日々の中で、このお便りを開いていただきありがとうございます。

いつもは「31日(サイの日)」にお届けしているこの事務局長からのお便りですが、今回は特別号として6月にお届けします。

今回のトピックは、ずばり「代表継承」についてです。
既にご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、PIECESでは約2年間のトランジションのプロセスを経て、代表のバトンを小澤いぶきから斎へと継承することになりました。法人設立から8年、任意団体時代を含めると10年という節目の年に迎えたこの大事な決断について、ここに至った経緯や、私なりに今感じていることについて綴ってみようと思います。

いつもより暑苦しい内容になりそうですが、末尾には、今回の代表継承を記念して7月13日に行う特別なイベントのご案内もありますので、是非最後までご覧いただけたら嬉しいです。

「交代」ではなく「継承」という言葉に込めた思い

NPOに限らず、一般的に代表者がAさんからBさんに代わる時には「交代」という言葉が使われることが多いかと思います。代表交代、あるいは社長交代というような形で。ですが、今回PIECESでは、一貫して「継承」という表現を用いています。そして、明確にその表現を最初に用いた日というのが存在します。2023年7月14日の出来事です。

その日は、いぶきさんと私(斎)とで、これからのPIECESについて対話をしていました(ちなみに、なぜその日の日付まで鮮明に覚えているかというと、今回の継承のきっかけになった時間だったということもありますが、いぶきさんと2人で会って面と向かって話すこと自体が、1年以上ぶりだったからです…)。

その対話の中では、2人がそれぞれに、自分とPIECESとのつながりを今どんな風に感じているのか、自分と社会・世界とがどう結びついていると感じているのか、そして過去から振り返ったときにそれらの想いや感覚はどのように変化してきたのか、といったテーマが話の中心でした。

話が進む中で、これまでPIECESというフィールドの源泉となるエネルギーは紛れもなくいぶきさんだったが、それが今まさに移ろってきているかもしれない。今までであれば、PIECESというフィールドがなぜ存在し、何を成すフィールドなのかが語られるとき、そこにはいぶきさんの内なるエネルギーとの深いつながりがあった。だけどもしかしたら斎がエネルギーの源泉になりつつあるんじゃないか。そのような感覚を2時間ほどの対話を通じて共有する時間になりました。

その対話の後半に、互いに自然と用いていたのが「継承」という言葉です。

正確には、『ソース原理』で言われるところの「ソースの継承」が今まさに自分たちに起きていることではないかという気づきが2人の間で生まれました。いま、ここで何が起きているのか、これからの未来をどのように歩んでいくのがいいのかを話す上で、「ソースの継承」を補助線に置けたことで、今回の決断に至るプロセスを最後までブレることなく進めてこれたような気がしています(ちなみに、ソース原理には本当に出会えてよかったと思っています。何か社会的な活動に取り組まれる方には特に、こちらの書籍をお勧めします)。

ちょっとまわり道をしましたが、要するに、PIECESの代表理事としての役割や職務といったDoingの部分を、何らかの事情でいぶきさんから斎に引き継ぐということであれば「交代」がふさわしいのかもしれない。けれど、今回は、より根幹となるBeingの部分について、エネルギーの源泉となる存在の移ろいを意味することになる。当然そうなったときには、いぶきさんから生まれてきた、あるいはいぶきさんがいたことで育まれてきた尊い願いや豊かな価値観などを受け取ることになる。そういった、有形・無形の様々なものの存在に敬意を持ちながら、そこに今度は自分なりのあり方を結びつけていくことが求められる。

そのようなことを考えると、いま自分の目の前にあるのは、単に代表としての役割を引き継ぐということではない。目に見えないこと(願いや価値観、魂のようなこと)も含めて、これからは自分自身の在り方が影響を与えていくことになる、という意味で「交代」ではなく「継承」なのだという風に受け止めています。

これから改めて大切にしたいこと

では、PIECESというフィールドのエネルギーの源泉となっていく斎は、これからどのような在り方を大切にしていきたいと考えているのか。詳しくは7月13日のイベントでお話ししたいと思っていますが、今日は少しだけさわりの部分についてお伝えします。

PIECESが、約10年の年月を重ねる中で大事にしてきたのが、「市民性」という概念です。人の暮らしを誰か特定の人が役割として支えるのではなく、誰もがその人なりの在り方を大事にしながら関わり合おうとする姿勢、という意味で「市民性」を子どもの周りに育むことをミッションに活動を進めてきました。

そして、そのミッション自体は、これからも変わらずにPIECESの真ん中にあり続けます。

一方で、今一度そのミッションの大きさと、自分自身の存在とを見比べたときに、途方もなく大きな隔たりを感じています。自分一人の存在のちっぽけさに無力感に近いものを感じているとも言えるかもしれません。また、いぶきさんのような大きなビジョンや人を不思議と惹きつける魅力のようなものもどうやら自分にはなさそうです。

ソースの継承だなどと偉そうに言いながら、そのような現実を前に、ひるんでしまいそうになる自分がいるのもまた事実です。

だからこそ、これから何より大切にしていきたいと考えているのが「協力」の力であり、他者に対する「信頼」の姿勢です。何も真新しさのない、言葉にしてしまえばシンプルなことですが、「協力」と「信頼」、この2つが自分にとっての当面の探究テーマであり成長課題になるのだろうと考えています。

「協力」について言えば、自分一人の存在のちっぽけさを自覚するからこそ、社内・社外問わず様々な人の力にいい意味で依存しながら、互いに活かされ合う環境を作っていきたいと考えています。「人の力に依存する」というのは、実はこれまであまり得意ではありませんでした(おそらく小さい頃から、(狭い世界の中でですが)人よりできることが多かったため、常に誰かに助けてもらうより助ける側であったことが影響しているのでは、というのが自分なりの見立てです)。

ただ、幸いなことに、この5年間ほどで「協力」が生み出すエネルギーの力強さを感じる機会が増え、自分自身や自組織を開いていくことの可能性や開き方が徐々に分かるようになってきました。

短期的に見れば、協力あるいは共創というのは面倒なことも多いし手間もかかる。それでも協力の輪が広がることで、エネルギーの総和は指数関数的に大きくなっていくのだろうと捉えています。

当然、自分自身や自組織以外の他者の存在が加わることで、不確実性は大きくなります。団体運営を例にとっても、メンバーが増えるほどに想定外のことが起きやすくなるし、ましてや他団体との協働ともなると、それぞれの目的や思惑から異なることもざらにある。

その不確実性の高い状況にあっても、なお他者を信じ、委ねられるかどうか。つまり、他者を「信頼」することは、「協力」を実現する上での前提とも位置付けられるのだと考えています。

一人でできること、一つの団体でできることに限りがあるからこそ、「協力」と「信頼」を大事に、これからの歩みを進めていきたいと思います。

特別記念イベントのご案内

冒頭から何度か触れていますが、今回の代表継承を自ら記念して、7月13日に都内でイベントを開催します。

いぶきさんと一緒にこの2年間について振り返ったりこれからの展望などを語る予定です。このお便りではちょっと書けないような話ももちろんあり、1回きりのイベントだからこその思い切った内容でお届けする予定です。また、創業メンバーが勢ぞろいして(4人が集まるのは5年ぶり!)のトークセッションも予定しています!

お久しぶりの方も含めて、是非たくさんの方に足を運んでいただき、PIECESのこれまでとこれからをたっぷり感じていただけたらと思っています。是非たくさんの方にご参加いただけたら嬉しいです!

▼特別記念イベントの詳細・お申込みはこちら
https://pieces-special-2024.peatix.com/

※第一部のトークセッションは、オンラインでも参加いただけます!

さいごに

突然ですが、これまで14回にわたってお届けしてきたこの「事務局長からのお便り」は、今回で最終号となります。そうです、もう事務局長ではなくなってしまうからです。

が、このお便りを始めたときにお伝えした「PIECESの事業や組織のことについて、綺麗な部分だけでなく、なるべくリアルな状況をお伝えしたい」という想いは今も全く変わっていません。

ということで、これからも変わらず31日にお便りは続けていきたいと思います。「代表からのお便り(仮)」に名前を変えて。笑

 

それでは、また次の31日にお会いしましょう。