サイの日のお便り Vol.15

こんにちは、PIECESの斎(さい)です。
忙しい日々の中で、このお便りを開いていただきありがとうございます。

すでにお知らせしてきた通り、この7月より、 PIECESの代表のバトンを小澤いぶきから受け継ぎました。
7月13日には、この代表継承に至った経緯や、それぞれの想いなどについてお伝えする記念イベントも開催し、100名以上の方々と温かな時間を共にすることができました(当日ご参加くださった皆さん、ありがとうございました!)。

今回のお便りでは、そのイベントで様々な痛みや葛藤を共有できたからこそ、自分の中に立ち現われてきた感覚や記憶をありのままに綴ってみようと思います。そのことを通じて、あくまで私一人の視点ではありますが、PIECESという組織が今ここにあることの意味をより多くの皆さんと共有したい。そんなふうに考えています。

イベント後に、個人のSNSで発信した文章を元にしているのでだいぶ赤裸々な感じではありますが、最後までお読みいただければ幸いです。


組織の内面をさらけ出した代表継承イベント

まずは、代表継承イベント当日の話を少しだけ。

今回のイベントは、これまでPIECESが開催したどんなイベントとも趣が異なっていた。というのも、PIECESの事業のことについて触れた時間は、全体3時間のうちのほんの数分だけ。ほとんどの時間は、組織として味わってきた様々な困難や葛藤、そして痛みのようなものについて、設立期まで遡りながらじっくりと振り返るというものだった。

設立からの数年を振り返るセッションには、いぶきさんと斎に加えて、設立メンバーで今や若者支援界をけん引するサンカクシャの荒井さんと、同じく設立メンバーの青木さんにも登壇してもらった。

この4人が最後に一堂に会したのは約5年前。後述するように、PIECESと荒井さんの間には長らく大きな溝があり、この場が実現したこと自体が大げさではなく奇跡的なことだった。

トークセッション後半は、今回の代表継承に伴うトランジションのプロセスを振り返る時間。2年間に渡るトランジションのプロセスをサポートしてくれた横山十祉子さんにファシリテーターを務めてもらい、いぶきさんと斎とがそれぞれの想いや感覚を言葉にする時間になった。

セッションの内容についてはとてもここでは書ききれないけれど、どちらのセッションも共通して、痛みや葛藤がテーマになっていた。

正直なところ、企画の段階でも、会を進めている最中でさえ、「こんなにも組織の中で起きてきた痛みや葛藤を表に出していいんだろうか」という不安があった。それくらい、自分の内面をさらけ出し、心のエネルギーを使い、それでも会全体を通して、それらを参加者の皆さんが心で受け取ってくれたような、そんな不思議な時間だった。

痛みや葛藤を越えて…

ここからは、イベント当日には語りきれなかったことも含めてつらつらと。

今回の代表継承につながるトランジション。
これを丁寧に進めてこれたのは、PIECESの一度目のトランジションの経験があったから。もとい、トランジションなんてカッコつけて言えたもんじゃない…ほぼトラウマ体験だ。

2018年ごろの一度目の大きなトランジション。PIECESから荒井さんが独立することになり、サンカクシャが誕生した。
見ている視点が異なるからこその、方向性のズレ。想いがあるからこその、お互いの譲れなさ。そんなよくある話として、最終的にはある程度ポジティブなストーリーとして対外的にも伝えたが、斎個人の心は、そこに至るまでにほぼ一度折れかけていた。

その詳細は書ききれないけど、結果的には、自分の未熟さゆえに、荒井さんの独立をちゃんと応援することができなかった。自分が負ってきた傷や痛みを盾にして、対話することをあきらめてしまった。精神的にも、リソース的にも、気持ちよく送り出せなかったことで、負の感情だけが残った。

それゆえ、彼のその後の活躍を直視することができず、SNSのフォローも外した。それでも一向に傷は癒えず、結局そのまま一度もコミュニケーションを取ることなく、5年間の月日が流れた。
そんな中で迎えた、今回のトランジション。


発端はやはりよくある、互いの期待値のズレのようなところから。でも、今回はその異変に気付いた後に、わりとすぐ自分たちだけでどうにかしようとするのを手放した(たぶん、あのまま自分たちだけで動いていたら、斎・青木VS小澤みたいな構図になって、分解していたと思う)。

理事会に助けてもらい、さらには横山さんを始め外部の方にも入ってもらいサポートチームが作られた。その中で、「いま、組織の体制に関わる重要な意思決定をしたら、後で誰かが後悔する。だから無期限の休息期間(通称、留保期間)を取ってはどうか」という提案がなされた。すんなりと受け入れるのは難しかったけど、信頼する人たちからの提案に身を委ね、休息と内省の期間に入った。
個人的には、この時間が本当にありがたかった。

「意志決定は早く下せるのが良いこと」と暗に刷り込まれていた中で、あえてそれができない環境が生まれたことで、心に隙間が生まれた。葛藤や自分の願いとゆっくり向き合うことができた。
そして、休息と内省の時間をゆっくりと取る中で、「もしかしたらPIECESというフィールドのエネルギーの源泉(ソース)は自分なのかもしれない」という感覚を掴むことができた。

でも、それはあくまで自分の中で生まれた感覚。これをちゃんといぶきさんと共有しないことには、PIECESとしての歩みは始まらない。
留保期間中、ずっと2人だけでのコミュニケーションは取らずにいたいぶきさんに、1年半ぶりにDMを送り2人で会った。そこで、一度目のトランジションの時にはできなかった対話をすることができた。

自分の素直な感覚をいぶきさんに伝え、いぶきさんはそれを「嬉しい」と言って受け取ってくれた。
長かった留保期間が、そこでようやく終わりになった。

正直、いぶきさんの心の内は今でも分からないし、自分の感情もそんな綺麗なものばかりではない。それでも今回は、痛みや葛藤を抱えながらも自分たちの力で乗り越えられたこと。そして自分の想いをこうしていろんな人に伝えられているだけでも、大きな成長なんだろうなと感じている。

そしてもう一つ。
5年間まとわりついてきた負の感情。

実は、今回のトランジションのプロセスを経て、自分が代表になることが内部で決まった後、そのことを最初に直接伝えたのが荒井さんだった。
今年の2月に5年ぶりにメッセンジャーで連絡をしたときにはさすがに緊張した。会って話したい、というそれだけの話なのに、そのメッセージを送るのに、えらいエネルギーを要した。

やっとの思いで送信できた。が、今度は返信がなかなか来ない…
既読がついてからも丸2日が経ち、ざわざわが通り越して、若干気持ち悪くなったころにようやく返信。何事もなかったかのように、やけに明るい返信。やはり荒井さんは荒井さんだった。

5年ぶりの再会。
何も用意していたわけではないが、自然と自分の中から最初に出てきたのは「あの時はごめん…」の一言だった。そこから全く想像していなかった互いの当時の気持ちや、その後の心情の変化に触れたことで、ようやく5年間分の心のつかえを取り除くことができた。

その場で、代表継承のイベントに登壇することも快く引き受けてくれることになった。そうして、7月13日にすべての役者がそろい、皆に見守られながら代表のバトンを受け取ることができた。

5年ぶりに再会した場所は、設立当時まだオフィスがなかったころに足しげく通った思い出のカフェ

さいごに ー新たなチャレンジへのご協力のお願いー 

相変わらずの長文駄文になってしまいました。果たして、ここまで読んでくださった方がいるのだろうか…笑

ともあれこれでようやく長かったトランジションのプロセスは一区切り。PIECESとしても個人としても、ここからまた「新たな始まり」の時を迎えます。

きっとメンバーや周囲の人たちへの影響、自分自身への影響はこれから生じてくるものもあるはず。いぶきさんの存在の大きさに気づくのもこれからなんだとも思っています。
それでも、いい意味でなんだか身が軽くなったような感覚がするのもまた事実なので、自分なりのあり方を模索しながら、PIECESの新たな始まりを楽しんでいきたいと思います。

 

そして・・・
新生PIECESの最初のチャレンジとして、5年ぶりとなるクラウドファンディングへの挑戦が始まっています。

「子どもの周りに信頼できる他者を増やす」
 市民性を柱に据えて、誰もが孤立しない環境を作るというこれまでの取組みを、もう一段加速させるためのチャレンジです。

ただ、どうしても施設を建てたり、手に取れる製品を作ったりという取組みに比べると、手触り感には欠けてしまいます。なかなか初見の方には価値が伝わりにくいかもしれません。

そこで応援の輪を広げるために、是非とも皆さんの力を貸していただきたいのです。

寄付という形での応援ももちろん嬉しいのですし、SNS等でのシェアもとても大きな力になります。可能な形で大丈夫なので、応援・ご協力をいただけないでしょうか。

斎個人としては、代表のバトンを受け取って最初の大きなチャレンジになるので、何としても成功させたいという想いもあります。ぜひお力貸していただけると嬉しいです!

それでは、また次の31日にお会いしましょう。