こんにちは、PIECES代表の斎(さい)です。
2024年の大晦日、いかがお過ごしでしょうか。
私は、2週間以上前から続いている咳症状に悩まされながら、年末を過ごしています。ここ数年、一度体調を崩すとホントに治りが悪い…ということで、来年は免疫力を高めるべく「8時間睡眠」と「月間50kmのランニング」を自らに課すことをここに誓います(どこかで一緒に楽しく走れる機会があった是非お知らせください!)。
このお便りを読んでくださっている皆さんにとっても、2025年が健康で幸多き1年になることを心から願っています。
さて、31日(サイの日)にのみお届けするこのお便り。
今回は、「なぜPIECESは“子どもの周り”に市民性を照らし、育むのか?」というテーマについて書いてみようと思います。実はこの問い、シンプルな問いではあるのですが、ちゃんと答えようとすると言語化するのが難しく、これまでWEBサイトや刊行物のどこにも記載してこれませんでした。
PIECESは今年新たな体制になり、改めて私たちが社会に存在する理由などについて、この数か月メンバー皆と対話を重ねてきました。そのプロセスを経て、今が言語化するにふさわしい時期のような気がしたので、私なりの考えを皆さんと共有してみようと思います。
PIECESとのお付き合いが長い方にとっても、直接的にはお伝えしてこなかった視点も含まれていると思うので、是非最後まで読んでもらえたら嬉しいです。
モヤモヤとの共存の先で立ち現われた変化
本題に入る前に、もう少しだけ今回このテーマを取り上げた背景をお伝えします。
PIECESは今年、活動開始から10年、法人設立から8年を迎えました。その間、2019年には法人が分社化して新しいNPOが誕生したり、運営に関わるメンバーの入れ替わりがあったり、今年は代表の継承もありました。
約10年の月日が流れる中で、当時から変わらないこともあれば、当然変わってきたこともあります。今回のテーマである「PIECESにとっての“子ども”の存在」についての捉え方は、まさにここ5年くらいで変わってきたことです。ただ、正直なところその変化を感じ取りながらも、何がどう変化しているのかを整理したり、表現したりすることがこれまでできませんでした。
おそらくPIECESという組織における哲学の根幹に関わる部分でありながら、なかなかその感覚や捉え方の変化が掴みきれない。。何とも言えないモヤモヤを心の隅に抱えながらここ数年の日々を過ごしていました。
そんな中、今年の秋以降、新体制となったことで改めて自分たちの存在目的や、社会に対して届けたい価値、組織として大切にしたいBeingについて、組織内で対話の時間を重ねてきました。同時に、自分自身もPIECESのこれまでとこれからについてみつめてきた中で、それらがいい具合に交わり合い、ようやくモヤが晴れてきた感覚があります。
暫定的にでも言葉にしてみることで、PIECESの深い部分に触れていただきたいのはもちろんですが、もしかしたらこれを読んでくださった方の想いや感覚と何か響き合うものがあるかもしれない。そんな淡い期待も抱きつつ、本題に入っていこうと思います。
なぜPIECESは“子どもの周り”に市民性を照らし、育むのか?
市民性を照らし、育む先が「子どもの周り」であるのには、大きく2つの理由があります。
1つは、これまでのPIECES内外での活動を通じて、あるいは地域に生きる一人の大人として、子どもたちの権利や尊厳が十分に保障されていない社会であることへの問題意識から来ています。
言うまでもなく、生まれながらにして子どもは権利や尊厳を持っています。そして、心身・社会的な面において発達の途中であるからこそ、一人の主体として尊重しながらも、大人や社会が協力してその権利や尊厳を保障していく必要があります。
しかし、これまで実際に自分自身が関わってきた子どもたちの声、あるいは直接は聞いていないながらも様々な人や媒体を通じて届いてくる声を通じて、無数の傷に出会ってきました。その傷は、彼らにとって痛みをもたらすのはもちろん、私にとっても痛みを伴う傷として心身に刻まれている感覚があります。
児童養護施設で出会ったRくんも、スクールソーシャルワーカーとして出会ったKくんやMさんも、どうすれば彼らの心身の傷つきを防ぐことができただろうか。どうすれば彼らのように尊厳を踏みにじられることなく、権利の主体として生きられる社会であれるのか。
また、分かりやすい形で傷を負っていないにしても、子どもたちの持つ豊かな感性やこころの動き、澄んだまなざしが、大人の判断や評価軸、時間感覚によってないがしろにされてしまう風景も、日常のそこかしこに広がっているように感じます。(そういう私自身も、わが子への関わりについては反省の日々です)
社会全体の脆弱性やひずみが子どもの周りに集まりやすいからこそ、子どもの周りにいる一人ひとりのまなざしやあり方が変わっていくことで、やさしいつながりが生まれ、大きな傷や痛みが生まれにくい社会にしていきたい。
「こどもがこどもでいられる社会を」
「子どもの周りに信頼できる他者を」
というメッセージは、そのような想いから生まれてきました。
市民性を照らし、育むパートナーとしての子どもの存在
そして、2つ目の理由。
それが、子どもをパートナーとすることで、社会全体に市民性を照らし、育むという私たちの取組が、より豊かで持続的なものになるという想いです。
私たちが「市民性」を照らし、育むことを通じて届けたいのは、人に何かをすることや、何かを獲得することを求めるものではありません。何かをさせるでも、何かをしてあげることでももちろんありません。
一人ひとりが自分や他者の「Being」を尊重し、共にあること。「Being」という目に見えないことから目を背けずに、そこにいること。言葉にするとなんだか怪しげな感じを覚える方もいるかもしれませんが、PIECESの取組を突き詰めると、そんなところに行きつきます。
そして、自分や他者の「Being」に触れようとするときに大切なのが、頭で考えるよりもこころで感じることを大事にする姿勢や、評価や判断をわきに置いてそのものをみつめられる力、常識にとらわれない豊かな感性や視点です。それらは、疑うまでもなく、私たち大人が失ってきてしまっているものであり、子どもたちが当たり前のように持っているものであるような気がします。
だからこそ、子どもと関わること、子どもと共にあることを通じて、自分自身の「Being」に気づくことができる。その気づいた「Being」あるいは市民性をひらくことで、それがひいては子どもの権利や尊厳を保障することにもつながっていくかもしれないし、子ども以外のところに還元していくことにつながるかもしれないと。そんなふうに感じています。
「市民性を照らし、育むパートナーとしての子どもの存在」
言葉にしてみればシンプルで、真新しさのようなものはないようにも感じます。ですが、1つ目の理由に書いたことは10年前から変わっていないのに対し、この「子どもの存在は、私たちにとってのパートナーである」という感覚こそが、これまで言語化したくてもしてこれなかったことだと、今は感じています。
これまで、PIECESとして外部のイベントや研修に出向いた際に「子どもの支援団体」「子どもの孤立に取り組む団体」という形で紹介されたり、時に自分たちでそのように紹介することも多々ありました。しかし、その度に「ホントはそうではないんだよな~」というモヤモヤを感じつつも、うまくそれを表現することができませんでした。(言わずもがな、そのように紹介くださった方を責めるつもりは1ミリも、1マイクロも、1クエクトもございません。ただただ感謝の気持ちでいっぱいです)
この感覚に気づいてしまった今は、なぜこんなにもシンプルなことに気づけなかったのかが不思議なくらいです。「子どものために、よりも、子どもとともに」とかいろいろ近いこともたくさん発信してきたにもかかわらず、本当に不思議です。
そんなふうにして、長年のモヤが晴れてきたことを感じていた矢先、見事なまでにそれとシンクロするある尊敬する方の言葉を見つけてしまったので、最後にそちらを紹介させていただきます。
子どものこころの専門医である、山口有紗さんの新著「子どものウェルビーイングとひびきあう-権利、声、「象徴」としての子ども-」で出会った一節です。
けれども、誤解を恐れずに言えば、子どもが好きとか可愛いからとかいうことは、自分にはいまひとつピンと来ないというのが本音です。 そこにあるのは、「子ども」という象徴的な存在への敬意なのかもしれません。大人だってみんな昔は子どもだったけれど、育つ過程で失ってきたかもしれない鋭く柔らかな感性や、気持ちの向くことに熱中できる力や、自然や宇宙のそばにある力、ジャッジや判断の前にこころが動くこと。
そうしたものをいままさに持っている人たちへの尊敬と懐かしさ、ある種の羨望なのかもしれません。 子どもをパートナーとすることで、子どもの感性と大人の感性とが呼応して、この社会に本当に大切なものが紡ぎ出されるのではないかという願いが、わたしの中にあるように思います。
もう本当に感動しかありません。
この部分以外にも、とても大切な気づきや、忘れかけていた感覚を思い出させてくれるとってもおすすめの書籍ですので、是非お手に取ってみてもらえたら私も嬉しいです。
年末年始のお休みのお供に・・・
最後に1つご案内です。
配信から少し日が経ってしまったのですが、PIECESが入居しているsocial hive HONGOのオリジナルラジオにゲスト出演しました。
普段どうしても耳障りの良い部分、見栄えがいい部分ばかりが表に出がちですが、そうではないリアルなPIECESの話を(かなり長尺でw)しています。斎やPIECESからは社会がどんな風に見えているのか、なんてことも垣間見える内容かと思うので、年末年始にお時間ある方は是非聞いていただけたら嬉しいです!
PIECES以外の入居団体のメンバーも順番にゲストとして登場するスタイルなので、斎の回を楽しんでいただけた方は、是非様々な領域で活躍する他団体のお話も聞いてみてください。これを一通り聞くだけでも、世界の解像度がぐっと高まるんじゃないかと思います。
ーーーーー
social hive WAITING CAFE 点描の孤 ~新しい当たり前をデザインする実践者たちの日常~
🟢Spotify
第1話:https://open.spotify.com/episode/1TYDhDHBF6PNqE2EdALuqt?si=b13f9e6db412420d
第2話:https://open.spotify.com/episode/54SunHkg51BXxnSpAWdeeY?si=3dad6166aefc4bb2
第3話:https://open.spotify.com/episode/559twI8lbdJn7l2mYwGZxA?si=1a9debd1dba34896
第4話:https://open.spotify.com/episode/2OOwsahN23yWR9R0sdLhcN?si=335efa284e154242
🔵ApplePodcast
🟡LISTEN(※文字起こし機能あり。テキストで楽しみたい方はこちらから)
https://listen.style/p/socialhive
🔴YouTube
第1話:https://youtu.be/kpUb5HRAT-A?si=8OwrxhxlBL17mEbl
第2話:https://youtu.be/4DwjLV5iswY?si=Mn4vdpvPOFmnSjTb
第3話:https://youtu.be/0QfIY_cyURs?si=s0ReIzTwLrqE-ehT
第4話:https://youtu.be/g5iRafrty2A?si=Q_-jX-KBxuA-uHbB
それでは、また次の31日にお会いしましょう。
今年も1年間ありがとうございました!よい年をお迎えください!