セミナーレポート|子どものこころの発達への理解を深める 〜児童精神科医の視点からみえる、子どもたちの今〜

8月9日(日)、「子どものこころの発達への理解を深める 〜児童精神科医の視点からみえる、子どもたちの今〜」というテーマで公開講座を行いました。

目もくらむような日差しがある日でしたが、オンラインで、61名の方々に参加いただきました。

※本講座は、今期の「Citizenship for Children」(CforC)第1回目の講座です。2021年1月にかけて全6回の講座を実施します。全6回がセットになった「基礎知識コース」の受講はこちらで申込受付中。申込期限は8/31まで。第1回目の動画も8月末まで視聴可能!


◆講師プロフィール

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小澤いぶき(認定NPO法人PIECES代表理事/児童精神科医/東京大学医学系研究科客員研究員)

新潟大学医学部医学科卒業後、精神科医を経て、児童精神科医として複数の病院で勤務。トラウマ臨床、虐待臨床、発達障害臨床を専門として臨床に従事し、さいたま市の「子育てインクルーシブモデル」立ち上げにも携わる。

医療職として従事する傍ら、2013年頃から地域活動を始め、2016年6月にNPO法人PIECESを設立。現在も代表理事を務める。2017年には、世界各国のリーダーが集まるザルツブルグカンファレンスに招待を受け、子どものウェルビーイング達成に向けたザルツブルグステイトメント作成に参画。Japan women 's leadership initiative 10期フェロー。


◆講座内容

講座は4つのセクションに分けて進められていきました。

①子どもの認知
子どもの心や認知は、どのように発達するのかについて話されました。例えば、子どもは、言葉で表現することが難しいこと、自分と世界の出来事との切り分けが難しいことなどが挙げられていました。

②子どもの情緒・自尊感情
精神の発達について、主に情緒発達の基盤や愛着、自尊感情を中心に話されました。子どもたちがどのような段階を踏んで情緒を育むのか、また、愛着形成のためにどんな環境・関わりが必要かについて話がありました。自尊感情については、「そこにいることへの評価(being)」と「能力としての評価(doing)」の二つについてを中心に、自尊感情を育むための関わり方について具体例が挙げられていました。

③逆境体験による影響
逆境体験による影響について、機能不全家庭に育つ子ども・若者の特徴や思春期に起こりやすいトキシック・ストレスについて話されました。具体例としては、貧困や虐待といった機能不全家庭では、「ヒーロー」や「スケープゴート」といった役割が挙げられていました。また、それらの逆境体験は、PTSDという心への影響や脳への影響があることについてもお話されていました。

④心の孤立のメカニズム
子どもたちが実際に語った言葉を入り口に、心の孤立が深刻な問題になるまでのフェーズや具体的状況について話されました。具体例としては、「あなたがすべて」「あなたがいなきゃだめ」などとコントロールされる、保護者を過度に不安がっている、自分が保護者を支えないとと思う、などが挙げられました。そのうえで、「人に頼る」ことはとても主体的な行為であるということが話されました。

◆当日の質疑応答の様子

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当日は講義動画をそれぞれで見た後に、数人ごとで感想共有を行い、全体で質疑応答を行いました。質疑応答では、「子どもは感じたものを言語化するのが未発達ということがあったが、それは大人になるにつれ誰もが自然にできるようになるのか」、「逆境環境の話が公衆衛生上の問題として捉えられてきているとは、具体的にどういうことか」といった質問など多くの疑問・質問が参加者から寄せられました。


◆参加者の感想

・日ごろこうした分野の専門家の知見に触れることがないので、すべてが勉強になりました。目指すのは実際の活動ですが、その点でも、大いに示唆を受けました。ありがとうございました。

・子どもをみつめるベースになるような知識に触れることができた。

・子どもの言動には実は様々な背景があることや、こんな時はこういう対応をしてみましょうなど、これまでの自身の反省もしつつ学びがとても多かったです。

・もしかしたら自分の発言や態度が子どもを傷つけたこともあるかもしれない、と感じました。またあの時のあの子の発言には、何か背景があったのかも…と思い出す事があり、これまでの経験と照らし合わせながら受講していました。あの時に本当はどんな対応ができればよかったのか、これから学んでいきたいです。

・短い時間ではあったが、他のコースの方々と意見交流ができたことが楽しかった。また、以前からもやもやしていた疑問を回答してもらえてすっきりしたとともに、もっと学んでいきたいという意欲が湧いた。


次回公開講座のご案内

第2回目は、9月6日(日)10時~12時半で開催します。講師に、一般社団法人プレーワーカーズの神林俊一さんをお招きし、「子どもへの“支援”を問い直す~プレーパークでの実践に学ぶ「子どもとともにいる」関わり~」というテーマで行います。

基礎知識コースのお申し込みはもちろん、単発でのご参加も受付を開始していますので、ご関心のある方は是非イベントページをご覧ください。