【イベントレポート】問いのじかん  VOL.2 佐藤慧さん

PIECESがお届けする「問いを贈ろうキャンペーン」。

「問い」を通じて自分や他者、世界に想いを寄せる。その想像力の先に、誰もが大切にされる社会があると信じて、このキャンペーンを行っています。

オンラインイベント「問いのじかん」スペシャルバージョンでは、代表の小澤いぶきが「問い」をゲストとともに深め、考えます。二回目はフォトジャーナリストの佐藤慧さんをゲストにお迎えしました。

佐藤慧さんは、ウクライナをはじめ、これまでに様々な紛争地域を訪れ、平和について考え、発信されています。今回の対談では、慧さんが様々な地域で取材をされてきた経験から考えたことや大切にしていることを伺いました。

佐藤慧さんに答えていただいた「問い」とお返事

問いの答えに込められた想い

問いを受け取ったとき、思い出した二つの出来事について話してくれました。
一つは、パレスチナのガザにいる友人が「空を見るとビクビクしてしまう」と話していたこと。もう一つは、ウクライナで取材をしたとき、お孫さんとともに避難している方が「孫たちにはどんな未来を望みますか」という問いに対して、「平和な空さえあればいい」と答えたこと。

空が平和であることが、非日常になっている人がいるということ、そして平和でない空について子どもたちに問われたとき、私たちは答えを持っていなくていいのかという葛藤を感じられたそうです。
空は世界とつながっている感覚を知れるものだと思っていたが、その空を見上げること自体が、人の持つ暴力性を知るものとなったとき、私たちができることは何かを考えたいと小澤からコメントがありました。

「痛み」と「想像力」の欠如

ガザでは毎年3月に、東日本大震災の犠牲者を悼むために凧あげを行い、「この空はつながっている」というメッセージを送るイベントがあるそうです。佐藤さんはそれを知ったとき、嬉しさと同時に知らなかったことへの後ろめたさを感じたと話してくれました。空を見て「怖い」と思う人が少しでも減って、ポジティブな意味を持つことを願っているとお話してくれました。

佐藤さんは紛争地域などでの取材を通して、人がこんなに簡単に人を殺してしまうのは「痛み」と「想像力」の欠如があるからではないかと話してくれました。一人ひとりの痛みや苦しみを知りたいと思う心の姿勢やその想像力があればブレーキがかかる、それが世界に広がって欲しいという願いを話してくれました。


発信するときに気を付けていること:人の背景にある「縦の軸」と「横の軸」

誰か人と会うとき、私たちはその人に対して、受ける印象や自分なりの思い込みを持ちます。けれど、一歩俯瞰して、その人のこれまでのこと<縦の軸>、その人の横にいる友人や様々な人とのつながり<横の軸>、苦しみや喜びなどを想像することで、その人に対する壁を緩やかにすることができると話してくれました。一方で、戦場や貧困地域などで取材をする際は、勝手に想像して決めつけない、逆に想像できないこともあるという感覚も持つようにしていると話してくれました。

怒りや憎しみなどの負の感情の連鎖はどんどん続いていきます。人々の傍らにある世界を少し想像することで、自分の負の感情を止めて他の人に伝染させないということも、実は世界に対する小さな小さな貢献に繋がっているというお話がありました。

小澤はDialogue for Peopleが発信する記事について、その人が捉えている世界を大切に、分からない世界があることを前提にして書いている印象を受けると話しました。佐藤さんは記事を書くとき、「何のために伝えるのか」ということを常に意識し、声をあげようとしている人に重きを置いていると話してくれました。それを伝えてどんな世界になって欲しいのか、その声を届けてくれた人にとって少しでも生きやすい世界にするためにはどんな記事にすればよいのか、ということを考えているそうです。声をあげようとしてくれる人たちと一緒に、言葉を育んでいくという言葉が印象的でした。


「人権」が当たり前の社会へ

今の時代は特に、人権を社会へインストールすることが大切だというお話がありました。
足りなさを克服することを発展と呼び、便利さが進むことが幸福の尺度になっているが、佐藤さんにとっての幸福の尺度は、一日のうちにどれだけ感謝を感じられたかであるとお話くださいました。何事もあたりまえでないことに気づき、一人ひとりが自分の存在や何かにありがたいという気持ちを感じることができれば、人権が尊重される社会になると話してくれました。

小澤からは、本来当たり前ではないが、日常で当たり前になっていることに気づくメガネをかけることが大切だという話がありました。それと同様に、日常にある「権利」や「差別」に気づくメガネをかけられると、普段気づかなかった身近な権利に気が付けるのではないかという話がありました。
差別とは無自覚さから生まれるもので、自分が差別している側であることも多くあり、それに気づくことは一人では難しい。それに気が付くために、だれかと「問い」を投げかけあうことが必要だと佐藤さんから話がありました。

佐藤慧さんに答えていただいた「問い」とお返事

自分にとって大切な人を大切にする

平和をつくるのは、自分の大切な人を大切にすることの積み重ねであると佐藤さんはおっしゃっていました。
すべての人と仲良くすることはできずとも、その人を社会から排除しないことが重要である。排除しないということが人権や命の価値を考える最低限のベースだと話してくれました。そのためにも、まずは自分の周りの大切な人に笑っていてほしいという身近なところに立ち戻ることが大切だと話されました。
社会全体で排除を生まないようにしていくにはどうしていくべきか、多くの人と考えていきたいと小澤からコメントがありました。

佐藤慧さんからのメッセージ

様々な地域や文化に触れて、「世界はこんなにも多様で、こんなにも自分が知らないものがあるんだ」ということに気づき、「もっともっと色んなものに触れたい」という気持ちを育んでいってほしい。そうすれば戦争ほどくだらないものはないと思えるはず。

佐藤さんの問いのお返事をきっかけに、世界に目を向ける時間になったと同時に、自分の身近なことや人との関わりの大切さに気づく時間にもなりました。当たり前になっていることへのありがたさに気づき、大切な人と手を取り合って生きる自分でありたいなと感じました。

最後になりますが、ゲストの佐藤慧さん、配信を見てくださった皆さん、本当にありがとうございました。

執筆:広報ファンドレイズ インターン 小森佳歩

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