『未来をつくる』お金の使い方
〜寄付の仕組みをつくる人・寄付を活かす人・寄付をする人、3つの立場から考えるお金の話〜
トークイベントを開催いたしました。
こんにちは。PIECESボランティアの中原です。今回は、4月17日(水)にfreee株式会社様の会議スペースをお借りして開催されたイベント「『未来をつくる』お金の使い方〜寄付の仕組みをつくる人・寄付を活かす人・寄付をする人、3つの立場から考えるお金の話」のレポートをお届けします。
週の中日の夜でお忙しい中にも関わらず、皆様から多くの参加申込をいただき、当初想定定員50人を拡大し、有難いことに定員上限いっぱいの65名の方々からお申込をいただきました。そんなイベントのお話の中身を以下簡単にではありますが、お伝えしたいと思います。
まずは、登壇者の3名に「寄付」についてそれぞれの関わり方や想いをお話しいただきました。
◆寄付の仕組みをつくる人
渋澤 健(しぶさわ けん)さん −コモンズ投信株式会社 取締役会長
皆さんの中にこれからの未来を信じているよと自信を持って言える人はどれくらいるでしょうか?もちろん強くそう信じる人もいれば、少しだけどそう思っているという人もいるかもしれません。僕は、皆さんの中に未来を信じる力が少しでもあればいいと考えています。その信じる力が合わさることで未来の社会を作る原動力となっていきます。そして、寄付は自らの意思が伴いながらお金が回っていく仕組みであり、寄付が集まることで未来を信じる力は強くなってより良い社会に繋がっていくと信じています。コモンズ投信の長期投資も同じです。
コモンズ投信では、子どものためのお金の教室という事業を行なっています。そこでは、いつも4つのお金の使い方の話をします。それは、消費・貯金・寄付・投資です。消費と貯金は「me(私)」ですが、寄付となると「we(私たち)」になります。そしてその後に来るものが投資です。「we」はこれからお金の使い方としてキーワードになってくると思っています。利己と利他は決して相反するものではなく、giveの後にはgivenが続きます。お金の使い方には時間軸があり、利己は本来利他に繋がるものなのです。
僕は元々アメリカでNGOからキャリアを始め、その後金融業界に入っていきました。その時に経験した911を契機に、そこには資本主義に対するシグナルがあったのではないかと感じ始め、その後社会起業家というものに関心を持つようになりました。アメリカでは一見営利目的にしか眼中になさそうな人たちでも、911のような大勢の人々が困っている時にすぐ基金を立ち上げるようなダイナミズムがあり、日本にもこのような営利と非営利をつなげることが必要だと思いました。
これまでの時代は、社会起業家という在り方を理解してくれる人は決して多くありませんでした。高度成長時代には感じやすかった成長を今の時代では感じにくく、豊かではあるけれど未来を信じる力が弱くなっているからこそ、なんとか変えなきゃいけないと思う人たちが現れてきているんだと思うんですよね。ですから、今日の話というのはその意味で時代が求めているお金の使い方なのではないかなと思います。
◆寄付をする人
下山 俊一(しもやま しゅんいち)さん −麻布不動産鑑定事務所 代表
こんばんは。PIECESのマンスリーサポーターの下山と申します。今回は一社会人の寄付者として、個人の体験を通して、感じている寄付の役割や広がった世界についてお話ししたいと思います。
まずはなぜ私が寄付をするようになったのかということをお話ししたいと思います。そもそもは投資から寄付というものに出会いました。コモンズ投信という会社を知り、長期的視点で社会全体の価値を大事にしていて、経済性と社会性の両立を目指しているところに惹かれました。そうしてコモンズ投信にてお世話になる中で、社会起業家フォーラムというイベントで多くの若手社会起業家と呼ばれる方々に出会い、社会課題に向き合う若者を見て、自分にもなにかできないかと思うようになり、このとき他人事が自分事へと変わりました。その時に投資以外の関わり方はないのだろうかと考えたときに行きついたのが寄付という形でした。現在は8つの団体に寄付を行なっています。
寄付の役割というものについて、実際に寄付を始めるまでは、正直お金を投じたらそれっきりで、正直ただ可哀想な人を助けるというだけのイメージでした。しかし、寄付を始めてからそのイメージは変わりました。素直にそこで出会う人たちを応援したい、課題解決に貢献したい、と思う気持ちが現れました。寄付とは、お金を通した社会参加であり、主体的にお金を通じて社会に参画する手段だと思います。そこでの出会いは長期的な繋がりとなり、寄付を通じて私自身も精神性・関係性のリターンをいただけていることに気づきました。
いろいろとお話ししましたが、まずはもし皆さんの中にまだ寄付をしたことがないという方がいらっしゃれば、是非一歩踏み出してみることをお勧めします。いきなり長期の寄付サポートが難しいと感じる場合には、活動説明会に参加してみたり、クラウドファンディングでの寄付から始めたりしてみるのもよいかもしれません。また、身の回りの友人に伝えることも貢献になると思います。私は「1%の利他」という考えを信じていて、誰かのために1%を使うが社会を変えると思いますし、人間は社会的な生き物なので、自らの幸せにも繋がるというのを実感しています。多くの1%が集まることで、その雫は川となって流れて大地を潤すように、きっとじわじわ良い方向に変えてていきます。その「1%の利他」という言葉を胸に今後も寄付を続けていきたいと思っています。
下山さんのブログ:セルフ・リライアンスという生き方
◆寄付を活かす人
小澤 いぶき(おざわ いぶき) −認定NPO法人PIECES 代表
皆さん今日はお忙しいところお越しいただきありがとうございます。お会いできて嬉しいです。私からはPIECESの大切にしている想いをお話しさせていただこうと思います。
その前にまず私の話をさせていただくと、子どもの頃からメディアを通じて戦争などの社会排除の構造に興味があり、いつか医者になろうと思っていました。そして実際に精神児童科医として働き始めてからは、多くのしんどさを抱えた子どもたちに出会ってきました。みんな社会のあらゆる制度とともに様々な人との関わりの中で支えられて生きています。しかし、安心して頼れるつながりが周りにない中、自ら命を絶つ子どもたちがいました。亡くなってからしか出会えない子どもたちもいました。子どもたちが生きている社会をつくっているのは、市民一人一人の意思決定や関わりだからこそ、さまざまな人たちとともに子どもの尊厳も自分の尊厳とおなじように尊重していく文化をつくりたくて、PIECESを立ち上げることにしました。
人に頼ることも、将来を望むことも、実はすごいエネルギーを必要とします。人に頼るというのは極めて主体的な行為で、人に頼るには3つの壁があると考えています。それは、まず自分で自分の課題を認識できること、次にその課題を訴えかけられる人が近くに思い浮かべられること、そして実際にその人に訴えかけに行けることです。子どもたちが社会から排除されている状態でこの3つを超えていくことは1人だけではとても難しいです。そこで私たちPIECESは、人と人の間の関係性のインフラを作っていきたいと思っています。社会を信頼できなくなる明日より、優しい関係が人の想像力から生まれる未来を作りたい。そう思い、子どもたちが孤立せずに安心して頼れる市民の優しい繋がりを社会に増やしていくために、日々活動に取り組んでいます。
最後にPIECESへいただいている寄付のお話をすると、企業と個人からの寄付が収入の7割に及びます。私たちがアプローチしている分野は未だ課題として社会から広く認知されている訳ではありません。まずは自主財源で活動を行い成果を出すことで仕組みにして、全国に寛容の輪を広げていきたいと考えておりますので、これからも引き続き応援をよろしくお願いします。