『未来をつくる』お金の使い方
〜寄付の仕組みをつくる人・寄付を活かす人・寄付をする人、3つの立場から考えるお金の話〜
トークイベントを開催いたしました。
こんにちは。PIECESボランティアの中原です。今回は、4月17日(水)にfreee株式会社様の会議スペースをお借りして開催されたイベント「『未来をつくる』お金の使い方〜寄付の仕組みをつくる人・寄付を活かす人・寄付をする人、3つの立場から考えるお金の話」のレポートをお届けします。(後編)
前編はこちらから▶︎ https://www.pieces.tokyo/news/2019/5/1/19041701
後半は3者によるクロストークということでコモンズ投信株式会社で子どもたちのお金の教室にも関わる馬越様にファシリテーターとして入っていただきました。
寄付を通して皆さんらしさを発揮できる
馬越:初めから寄付の視点を持って事業に取り組んだのはなぜでしょう?
渋澤:リーマンショックが大きな契機となりました。リーマンショックは渋澤ショックでもあったんです。オリジナルのSEEDCapの財源は機関投資家の運用資金でした。サイズが大きいのですが、リーマンショックで全てが解約されてしまいました。サステナブルでなかったんですね。長期的に継続させるためには、一般個人のつみたて投資の方が最適だと思ったんです。
そこでそれからは長期的な視点を取り入れた事業を主に行ってきました。そして寄付は長期的な社会の成長を考える上でとても重要なものでした。
馬越:SEEDCapでは2018年にPIECESが寄付先として選ばれました。どうしてだったんでしょう?
渋澤:コモンズ投信でファンドに参加していただいている「お仲間」からの紹介や過去の起業家たちからの推薦など複数の要因がありました。そしてなによりも小澤さんの話し方って素敵じゃないですか。メッセージもとても素敵ですよね。ただ、なによりもSEEDCapの寄付先選定の中で「お仲間」からの声で印象に残った瞬間がありました。それはあるとき、8歳の小学生の「お仲間」よりこんな声を聞きました。
「子どもが1人でいるのはいやだから。」
これはかなり決定打になったと思います。SEEDCapではその組織が寄付支援を通じて次のステップに行けることをお手伝いできることがポイントで、一緒に言葉のキャッチボールをしながら歩んでいけることを大事にしています。寄付を通してコモンズらしさや皆さんらしさを発揮できることが大切なことだと思うんですよね。
馬越:下山さんはどうやって寄付先を選んでいるのですか?PIECESを長期的に好きでいられるのには理由があるのでしょうか?
下山:やはり出会ったときの初めの印象で選んでいるように思います。ただ、それだけでは応援したい団体が多すぎて、どうやっても全部はお金が足りないので(笑)、実際に活動説明会などに足を運んでみて、活動の話などを聞いて寄付先とするかどうかを考えています。PIECESはスタッフみんながそれぞれ特異で多彩なメンバーが集まっています。だからそれがPIECESの目指す新しい関係性在り方を生み出すのではないかと思っています。
渋澤:だから名前がPIECESなんですか?
小澤:元々平和に向かうそれぞれの手に平和へのピースがあって、それをみんなが出し合うことで平和が繋がるよ、って意味でした。でも今の質問でこの問いを今後の組織体制にも生かしていこうと気づきを得ました。(笑)
伴走者としてのお金の出し手
馬越:コモンズ投信として組織を応援することをどのように捉えているのでしょう?
渋澤:組織も環境に応じて変化していくことが重要だと考えています。ダーウィンの進化論で説かれているように、環境に適応した種が最後には生き残ります。そのためにはダイバーシティも必要です。デコボコ感と言ってもいいかもしれません。組織も寄付もその在り方はいろいろあっていいし、寄付の楽しみ方ももっとバラエティがあっていいのではないでしょうか。
馬越:いぶきさんのお話の中でPIECESの財源は自主財源が多いとのことでしたが、PIECESにとってどうして寄付が必要なのでしょうか?
小澤:欧米と比べて、日本の非営利団体の資金源の特徴としては、公的な資金が占める割合が多いというデータがあります。PIECESとしては、権利の保障と、尊厳の尊重からこぼれ落ちていく人がいない、それぞれの尊厳の共存が可能な社会としての仕組みのあり方、保障のあり方に取り組んでいきたいと考えています。
そのためには、組織の方針が政治的な理由でで左右されない伴走者としてのお金の出し手が必要ですし、新しい仕組みを作るとなると独立性の担保も必要になります。そういった意味で寄付というのは一緒に新しい社会の形をつくっていく上でとても大切なものだと考えています。
下山:私もそこは非常に大切だと感じています。そういえば、もう一つPIECESの好きなところをお伝えしそびれてました。(笑)それは、支援者と被支援者という姿勢ではなく、個人を尊重する姿勢を組織として持っているところで、とても大事だと思っています。
馬越:昨年のSEEDCapでは、いぶきさんを推薦する声が過去一番多かったんです。ちょうど選考の時期、子どもに関連する悲しい事件が次々と起こっていたんです。今までSEEDCapに参加したことのなかったお仲間の人たちも、「何か自分にできることがあるのではないか」ということで、子どもに関わる問題に関わっているPIECESさんに想いを託す形となりました。今すぐ、自分にできることは何だろうということから「寄付」という考えが生まれたようです。このことから、寄付の即効力を改めて強く感じました。お金の流れの中で寄付が一番早く自分たちの想いを必要とされるところに届けてくれるものだと思いました。
民間が自ら将来の希望に向けてお金を使うこと
馬越:それでは、そろそろお時間も近づいてきたみたいなので、最後に渋澤さん、1つだけ質問をさせてください。日本にとって今後寄付はどんな力を持っていけるでしょうか?
渋澤:最近驚くニュースがありました。それは一万円札に私のおじいちゃんのおじいちゃんである渋澤栄一が描かれることになったというニュースがあって。(笑)おじいちゃんのおじいちゃんは日本資本主義の父と呼ばれましたが、当時国力を高めようと考えていたんですよね。
つまり、国力を高めるために民間力を高めることが不可欠。でも散らばった状態ではあまり力がないので、民の力を合わせるために多くの企業や組織を立ち上げました。そこのメッセージ性を今に置き換えると、社会を作るのは政府ではなく、社会を作るのは民間であり、民間が自ら将来の希望に向けてお金を使うことが大切だということだと僕は考えています。
いいお金の使い方をさせて、お金を循環させることです。資本主義の導入も初めはそのように意図されていました。お札をタンスに入れてしまっておくのではなく、くるくる回していくことが大事です。民間の力で世の中を良くしていくには、寄付というものが大事な要素になってくると思います。寄付が回ればいい世の中になると私は思うのですけど、みなさんはどうでしょうか?
自分のためにお金を稼いで豊かになろうという動きと、社会のために何か貢献しようという動きは、今その境界が揺らいできているのかも知れないと今日のお話を聞いていて思いました。利己と利他は相反するものではなく、寧ろお互いに補完し合うものでもあるのかも知れません。その境界をつなぐキーワードが「寄付」なのではないでしょうか。寄付の仕組みをつくる人、寄付を活かす人、寄付をする人の3者の視点からそれぞれの想いを感じることができ、こうしてこれからも多くの人の間で優しい繋がりと豊かな想像力から、社会の孤立が少しでもなくなり、あなたがあなたであることのできる社会に繋がっていくのかな、と社会に希望を信じることができた今回のイベントでした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
私たちの「未来のお金」の使い方。いただいた寄付と想いを大切にこれからも活動していきたいと思います。