CforCとは
Citizenship for Children(以下CforC)は「わたしらしく子どもに関わりたい」と願う市民向けに行うプログラムです。一人ひとりが自分らしい市民性を醸成し、行動できるようになることで、子どもと自分、地域のウェルビーイングをつくることを目指しています。2022年度は、「みつめる・うけとる・はたらきかける」の3つのコースを実施しました。
どんな人が参加したの?
全国から参加者が集まり、地域の枠を越えて学び合うプログラムになりました。参加者30人のうち、23人がうけとる・はたらきかけるコースへ進みました。
参加してみてどうでしたか?
●子どもだけでなく、日常的に関わる人たちとの関わり方もとても意識するようになった。その人の言動や行動、表情など些細なその人から出る変化にどのような想いが込められているのか、そしてその人にしかない強みは何かを考える習慣がついた。(35-44歳、NPO・NGO職員)
●子どもたちから話しかけられることが増えた。私の意識していないところで、子どもたちへのまなざしが変化したのかもと感じる。(45-54歳、社団法人・財団法人勤務)
●自分がなんともないと感じていた行動に子どもの欲求が背景にあることを示唆されたり、自分が特別だと感じていた行動がそれは深い意味のない自然な会話だったのでは?とコメントをいただいたり、ひとりでは辿り着けない視界に出会えた。(25-34歳、会社員)
●子どもの思いが大切だとわかっていながら、まわりの大人の思いに合わせてしまう自分自身に気づけた。(45-54歳、その他)
●知識だけではなく、自分で自分の正解や大切にしたいもの、自分にしかないものを全国の仲間と一緒に見つめられる。子どもとの関わりだけでなく、それぞれの人生をとても豊かにするものだと思った。(18-24歳、学生)
●市民性を活かすからこそ出来る事、新たに築ける関係性があることを学びました。共にいる、ただそれだけに思える事であっても、とても大切な意味あるものになり得ることに気付く事ができて、何かを初めるのは意外と簡単なのかもしれないと、難しく考えていた頭を緩めて頂きました。(45-54歳、経営者・会社役員)
参加者の変化
プログラムを受講して、変化したことを教えてください。
子どもに寄り添うということ
〜リフレクションの事例から〜
CforCでは、リフレクションを通じて子どもとの関わり方を深めていきます。関わりを客観的に振り返り、場面を再構成することで、相手の言動の背景にある考えや願いを探求し、自分自身の大切にしたい想いや価値観に気づくことを目的にしています。特にPIECESでは、人と関わる際に「自分が大切にしたいこと」をみつめることを大切にしています。
タダで買えるお菓子ない?という子ども
〜頭ごなしに反応されたら開示できない〜
CforC2022の参加者のAさんは、自身が関わっている駄菓子屋にやってきた子どもBちゃんとのやりとりをリフレクションで取り上げました。Bちゃんはお金を持っておらず「タダで買えるお菓子ない?」と聞いてきたそうです。Aさんはタダで買えるお菓子はないことを伝え「ちなみに何が欲しい?」とも聞いてみました。いくつかやりとりをした後、「じゃあ100円あったら買いたいものかごに入れてくれる?Bちゃんおすすめセット作って売ってみようよ!」とAさんは言いました。Bちゃんは楽しそうにおすすめセットを作ったそうです。
大人として社会のルールを伝えることと寄り添うことの葛藤
このリフレクションに参加していたCさんはこんな気づきを得たと話してくれました。
●私がこんな場面に出くわしたら、大人として子どもに社会のルールを教えなければという気持ちが先に来て しまい、「子どもの心に寄り添う」を見失ってしまうかもという不安な気持ちが最初に湧いてきた。
●万引き=悪いこと=悪いことをする子=要注意人物、というラベルをその子に貼りそうになっていた。
●「お金持って来てね〜」と言い、「万引きお断り」みたいな張り紙をしたら、その子を駄菓子屋から、子ど もにとってワクワクする社会から「排除」してしまうことになる。
ある場面を切り取っても、その場面の見方や子どもへの接し方は人それぞれです。だからこそ、CforCで他者と共に学ぶことで、他者のまなざしの背景と自らのまなざしに気づき、見立ての幅を広げていく。それが私たちの住むまちに優しい間が広がっていくことに繋がると考えています。
市民性の広がり
これまでのCforC修了生から生まれたもの
地域共生リビングaimaimaは、地域に開いたみんなの居間(ima)。子どもを真ん中に、いろいろな人が、いろいろな人と一緒につくる曖昧(aimai)な空間(ma)をここで広げていこうと生まれました。3児の父であり保育士であるしげちゃんは、親子コミュニティasobi基地の愛知県リーダーとしても活動しながら、自分の子育てを通して、お子さんやその周りの子たち、地域の子たちにできることがあるのではないかと思い、地域共生リビングaimaimaを作ろうと考えたそうです。マンションの一室を借り、住民だけでなく地域の親子、お年寄りなどいろいろな人たちが来れるよう開放中。現在は、認知や仲間を広げるため、近くの公園で出張aimaimaとしてイベントも開催しているそうです。いろいろな人たちが自分の居間のように、みんなそれぞれの過ごしやすい「あいまいな空間」を地域に広げようとしています。
立川のモノレール下の遊歩道でしゃぼん玉を飛ばしています。家族連れやいろいろな地域から遊びにくる人がいる中で、しゃぼん玉を一緒に飛ばしたり、見ていってもらったりしています。やっているのは精神保健福祉士として、子どもから大人までの人が安心して地域の中で生活できるようにお手伝いをしているさやかさん。福祉職をやってきた誇りがある一方で、自分の中で割り切れない葛藤を抱えていましたが、CforCとしゃぼん玉の活動を通していろいろなものが見えたといいます。しゃぼん玉を吹いていると、木陰でずっと見ている子や走り寄ってきて一緒に飛ばし始める子もいます。お父さんお母さんが「行くよ」と呼びかけても、ずっとしゃぼん玉遊びしている子どももいるそうです。それぞれの距離感やコミュニケーションの取り方があり、自然体で思い思いに過ごしているとのことでした。
子どもに寄り添う人たち同士が悩みを打ち明けたり、一緒にもやもやしたり、共感しあったりできるオンラインの場。主催者のゆき絵さんは、中学校で相談員をしていますが、教師でも専門職でもない立場での活動は孤独を感じることがあったそうです。生徒の話を聞いても、それが学校側や先生方にうまく伝わらず、分かり合えないもやもやを抱えたまま、誰にも相談できない。子どものそばでいろいろな思いを抱えている人が他にもいるのではないかと思い、「聴いてもらったり、共感しあったり、アドバイスをもらったりすることができる場所をつくりたい」とこの活動をスタートさせました。毎月1、2回のzoom会と、不定期で特別企画を開催しており、過去には世田谷区の調査結果をもとに子どもを取り巻く環境について対話をしたり、児童養護施設でのボランティアについてメンバーから話を聞く会を開催したりしました。
これからの展開
2016年の法人設立以降、約6年に渡って開発を進めてきた「Citizenship for Children プログラム(CforC)」。これまで、どのような原理で一人ひとりの変容や市民性の醸成がもたらせるかに関する試行錯誤を進めてきましたが、一定の仮説検証とプログラム開発が、この間の取組みによっておおよそ完了に至りました。同時に、NPO法人セカンドリーグ茨城さんとの水戸地域での協働、認定NPO法人Living in Peaceさんとの奈良地域での協働なども経て、協働モデルでのプログラムについても実証を進めることができました。それらの状況を踏まえ、今年度はこれまでの開発フェーズから普及・発展フェーズへの移行に本格的に着手するべく「CforCコンソーシアム」というプロジェクトをスタートさせました。これは、CforCを「PIECESによる取組み」から「各地の団体や機関、自治体等との協力・共創による取組み」へと変容させることで、持続可能かつ効果的な取組に進化(深化)させるためのチャレンジです。
今年度を振り返って
今年度は、コンソーシアムの全体構想づくりや事務局の立ち上げから取り組み始めてきました。ありがたいことに、この駆け出しのプロジェクトに対して、複数の助成金を頂くことができたため、じっくりと腰を据えて基盤づくりから取り組むことができています。
また、2023年1月26日には、本プロジェクトの構想を初めて対外的にお伝えするキックオフイベントも開催できました。100名近い方からの申込を頂き、参加後のアンケートでは約6割の方から、「自身の関わる団体・機関等として、コンソーシアムへの参加やCforCプログラムの協働・連携について積極的に検討したい」、あるいは「個人としてCforCやコンソーシアム運営に参加・協力したい」といった声を頂くことができました。自団体単独で行う事業に比べれば、時間も手間もかかるのかもしれません。ですが、その手間のかかるプロセスで生まれる葛藤や緊張を手放さずに対話を重ねることこそ、社会の土壌をつくる上で大事なことだと信じて、これから粘り強くチャレンジを続けていきます。
くりの さやか
修了生が運営に関わる動きが生まれたり、受講生の情報交換が行われたりしています。運営では、スタッフが増えることで生まれる課題やトップダウン式でやるのはCforCらしくないのではないかという議論も出てきました。
鈴木 唯加
修了生が運営に関わる動きが生まれたり、受講生の情報交換が行われたりしています。運営では、スタッフが増えることで生まれる課題やトップダウン式でやるのはCforCらしくないのではないかという議論も出てきました。