夏休み明け、子どもとのコミュニケーションで大切にしたいこと

夏休みなどの長い休みが終わるとき、普段生活している場所以外の選択があることにほっとしたり、新学期にワクワクしたり、ちょっぴり憂鬱な気持ちになったり、しんどいなぁと感じたり、さまざまな感情が出てくるかもしれません。しんどい、憂鬱だよ、と言えないこともあるかもしれません。

「しんどいな」が埋もれずに、大切にされるためには―

 

子どもとのコミュニケーションで大切なこと

環境が変化する時、わたしたちはいつもとは違うからだやこころのサインを受け取ることがあります。それはとても自然なことであり、わたしたちのもつ力でもあります。

どんな気持ちか、子ども自身も言葉にしづらいことがあります。何かいつもと違うサインが出ているなと感じたときは、以下のことに気を付けて子どもたちとコミュニケーションを取ってみてください。


<言葉かけ>

  • 子どもの感情を否定せずに受け取ってください。子どもは言葉だけではなく、さまざまな形で自分の気持ちのサインを出しています。さまざまな表現を丁寧に受け取り、子どもがどんな体験をしているのかを共有できる安全をつくってみてください。

  • 自身の経験や判断、思い込みをちょっとだけ傍に置いて、子ども自身が何を感じ、どのような体験をしているか、声にしていない心の声に耳を傾けてください。そして、教えてくれた体験や感情に対して、それを共有してくれた勇気への敬意を持ちながら、ジャッジすることなく、「受け取ったこと」を肯定的に伝えてみてください。

  • 子ども自身が「どうしていいか分からない」と感じている場合、立ち止まっている様子がある場合は、そのように感じることもとても自然なこと、そう感じることを共有してくれてありがとうということを伝えてください。そして他の気持ちや感じていることも話したいタイミングで話して大丈夫だということ、どうしていいか分からないことを一緒に考える方法もあるということ、一緒に考えたいと思っていることを共有してみてください。その子が「一緒に考えたい」と感じたタイミングで話してほしいことを伝えてください。

  • 「私以外にも、こんな人に聞いてみたり、こんな場所に行ってみる、こんな選択肢もあるみたいだよ」とうことを、押し付けるのではなく、子どもがどうしたいかを大切にする姿勢で共有するなど、選択肢の情報共有もとても大切なことの一つです。


<行動>

  • 毎日行っていたルーティンや日課を大切にしてみてください。また、規則正しい生活(いつもと同じ時間に寝る、ご飯を食べるなど)は安心感に繋がることがあります。
    すでにやっていること、できていることに目を向けてみてください。歯を磨いた、ご飯を食べた、好きなことをした、漫画を読んだ、疲れたから横になった、深呼吸したなど、私たちは負荷がかかっている時でもたくさんのことをしています。書き出したりリストにしてみることで、目を向けやすくなるかもしれません。

  • 大人が伝えるだけではなく、何より子ども自身の考えや感じていることを聴くことを大切にしてください。今日と明日で意見が変わるのも自然なことです。それを子どもと共有し、安全に声を出していいと思える環境をつくってみてください。

  • 子どもにかかわることは、子どもの考えをまず聴き、話し合って一緒に決めるようにしましょう。

  • 子どもの「やりたい」を尊重する時間を、作ってみてください。

 

子どもの力を信じてかかわる

どんなに小さくても、子どもは尊厳ある一人の人間です。大人がそうであるように、それぞれの考えや視点、感情に耳を傾け、尊重することから心地よいコミュニケーションが始まります。

一人の権利主体であり、尊厳ある「人」として子どもと関わることで、保護者自身の中に葛藤が生まれることもあるかもしれません。ご自身の葛藤も大切にしながら、保護者の方もまた、自分が一人の人として大切にされたり、ケアされる時間をつくってください。

 

書き手:

小澤いぶき

PIECES代表理事・児童精神科医


参考:子どものこころのケアに役立つ資料(兵庫こころのケアセンターより)

https://www.j-hits.org/document/child/


PIECESは、子どもの周りに信頼できる他者を増やすことで、子どもが孤立しない地域をつくることを目指しています。子どもの孤立が深まる前に、地域の中で子どもを見守り、子どもに寄り添う市民を増やすための市民性醸成プログラムを展開しています。

単発でのご寄付や月額寄付者を募集していますので、ぜひご支援よろしくお願いいたします。