小澤いぶき

子どもの発達と心のケア~児童精神科医の視点からみえる、子どもたちの今〜|CforCレポー

子どもと自分にとっての心地よいあり方をともに学び、実践するプログラムCitizenship for Children2025

「支援者」ではなく「ひとりの人」として子どもに関わりたいと思うからこそ生まれる、迷いや葛藤。Citizenship for Children(CforC)は、そんな願いや気持ちを持つ人たちが集い、子どもと自分にとっての心地よいあり方をともに学び、実践するプログラムです。

今年度のCforCは、「講座」「リフレクション」「アクションサポート」というコンテンツを参加者が自由にカスタマイズできることが特徴です。(各コンテンツあわせて現在19人が参加しています。)

その中で、「講座」に参加している方がリアルタイムで集まり、事前に視聴した講義動画をもとに講師との質疑応答や対話を行う、講師を囲む会を8月27日に開催しました。

講義動画概要

■講師:小澤いぶきさん

 NPO法人PIECESファウンダー/一般社団法人Everybeing共同代表

 児童精神科医/こども家庭庁アドバイザー

■講座タイトル

 子どもの発達と心のケア ~児童精神科医の視点からみえる、子どもたちの今〜

■主なトピック

① 子どもを取り巻く現状

② 子どもの発達の基盤となる安心・信頼の醸成

③ 子どもの発達に影響するもの

④ 子どもが子どもでいられる社会であるために

講師を囲む会

参加者には、事前に下の講座動画を視聴していただきました。

講師の小澤さんは最近、沖縄の多良間島という自殺希少地域で数日間を過ごされたそうです。その中で感じた島の人たちとの関わりから「市民性の層が厚い」と感じたことをお話してくださいました。

参加者からの質問は、その具体的なエピソードを知りたいという内容から始まりました。

その後も、

「自分が大人の価値観を押し付けていないかをどのように自覚するにはどうすればよいのでしょう」

「現在、日本では少子化が進む一方で、子どもの孤立が益々深まっているように感じる。

さまざまな要因が考えられる中で、その一因として『自然災害』や『気候』などの自然環境がもたらす影響にはどのようなものがあるでしょうか」

などの質問が続き、小澤さんからの回答だけではなく、気づきのシェアやみなさんの対話がありました。

今回、小澤さんがお話の参考に案内された note と書籍

  • note(自殺希少地域に暮らす子どものまなざし)
  • 紹介書籍(異常気象や戦争、震災といった非日常が心に及ぼす影響)
  • 参加者の感想

    • 被支援者を勝手に作らない。「一緒にどんな風景を見たいか」という問いに戻りたいなと思いました。

    • 子どもにも敬意をもって1人の人として関わるということを大切にしたいと思った。

    (執筆者 CforCプログラム担当:泉森奈央)

    CforC2025では、参加者同士の対話やワークを通して、子どもと自分にとっての心地よいあり方をみんなで探求しています。現在、10月31日まで後期講座参加者を募集しています。ご興味のある方は、講座申込ページをご覧ください。

    講座に参加する

    こども家庭庁との連携|PIECESの政策提言に関する活動報告

    PIECESでは2019年より、子どもや若者の孤立に関する政策提言を行っています。
    2023年度は昨年から継続して代表理事小澤いぶきがこども家庭庁のアドバイザーを務め、子どもが尊厳を持つ一人の人として、権利が大切にされる仕組みと文化醸成へ貢献してきました。

    2023年4月にこども基本法施行、12月にはこども大綱が閣議決定され、子どもの権利と尊厳が大切にされる社会が大きく動き出しています。子どもの声を聴くことが自治体で義務化され、子どもの権利を大人にも子どもにも周知することが明言されています。

    12月に開設したこども家庭庁のこども向けホームページでは、「ぼく・わたしあるある」の記事の監修をPIECESが行いました。子どもたちが自分たちの権利を知り、安心して過ごすためのヒントにしてもらえるよう心がけています。


    また、こどもや若者が国の制度や政策づくりに参画するための「こども若者★いけんぷらす」にも、こども若者の意見表明のサポートをするファシリテーターとしてPIECESのスタッフ2名が参画しています。

    子どもの権利に関する講演や研修の依頼も増え、これまで以上に子どもの権利への関心が集まっていることを実感しています。今後も行政機関や企業、団体など様々な分野のみなさんと連携し、子どもの権利が大切にされる社会を育んでいきたいと思っています。

    2023年4月にこども基本法が施行されます|PIECESの政策提言に関する活動報告

    PIECESでは2019年より、子どもや若者の孤立に関する政策提言を行っています。
    2022年度は代表理事小澤いぶきがこども家庭庁準備室のアドバイザーに就任し、子どもが尊厳を持つ一人の人として、その権利が大切にされる仕組みと文化醸成へ貢献してきました。

    こども家庭庁設立準備室・こども基本法公布について

    日本は「子どもの権利条約」に批准していますが、これまで子どもの権利を保障する総合的な国内法の整備は行われていませんでした。「子どもの権利条約」とは、「差別の禁止」「生命、生存及び発達に対する権利」「児童の意見の尊重」「児童の最善の利益」の4原則をもとに、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」といった子どもの権利を保障しています。

    2022年6月15日に、子どもが一人の権利主体として守られる「こども基本法」が公布されました。こども基本法の公布に向けて、PIECESは市民社会組織の一つとして、当事者と共に提言を進めてきました。

    こども基本法には、子どもの権利条約の4原則が明記されており、この基本理念を基に、少子化対策、子ども・若者育成支援、子どもの貧困対策などさまざまな施策が進められていきます。

    すべての子どもを対象にし、子どもの権利条約にのっとった法律ができたことは、子どもの尊厳が大切にされる社会に向けた大きな一歩です。

    成育基本法について

    子どもの心の孤立に関わってきた団体として、児童期の心を支える社会環境や、心が怪我した時にケアが十分になされる資源の必要性を伝えてきました。

    さまざまな専門家からの提言も合間って、2022年に成育基本法※の改定がなされ、こどもの心の健康(メンタルヘルス)の観点が掲載されるといった動きがありました。

    ※正式名称「成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律


    誰もがその尊厳を自然と大切にしあえるようなしなやかな土壌は、一人ひとりの市民性により耕されています。
    市民性が誰の中にもある泉から湧き出る水のようなものだとしたら、時に制度や仕組み、既存の枠組みがその市民性の泉を枯れさせてしまうこともあります。
    例えば、自分の声が誰にも届かなかったり、暮らしを支える制度の決定や活用に参加する権利がなかったりする状態がそれに当たります。
    一方で市民性をエンパワーメントする工夫や仕組みも同時につくられてきました。その一つが今回のこども基本法の公布です。これらの政策は、子どもとともに地域を育んできたさまざまな人たちの声が集まって生まれたものです。

    2023年4月、こども家庭庁が開設し、こども基本法が施行、秋にはこども大綱ができます。
    子どもの声を聴くことが自治体で義務化され、子どもの権利を周知することの必要性も明言されています。
    生活の中での実践に向けて、子どもも一人の権利主体として共に社会を育む環境を、これまで以上に前に進めていきたいと思っています。

    代表理事 小澤いぶき

    夏休み明け、子どもとのコミュニケーションで大切にしたいこと

    夏休みなどの長い休みが終わるとき、普段生活している場所以外の選択があることにほっとしたり、新学期にワクワクしたり、ちょっぴり憂鬱な気持ちになったり、しんどいなぁと感じたり、さまざまな感情が出てくるかもしれません。しんどい、憂鬱だよ、と言えないこともあるかもしれません。

    「しんどいな」が埋もれずに、大切にされるためには―

     

    子どもとのコミュニケーションで大切なこと

    環境が変化する時、わたしたちはいつもとは違うからだやこころのサインを受け取ることがあります。それはとても自然なことであり、わたしたちのもつ力でもあります。

    どんな気持ちか、子ども自身も言葉にしづらいことがあります。何かいつもと違うサインが出ているなと感じたときは、以下のことに気を付けて子どもたちとコミュニケーションを取ってみてください。


    <言葉かけ>

    • 子どもの感情を否定せずに受け取ってください。子どもは言葉だけではなく、さまざまな形で自分の気持ちのサインを出しています。さまざまな表現を丁寧に受け取り、子どもがどんな体験をしているのかを共有できる安全をつくってみてください。

    • 自身の経験や判断、思い込みをちょっとだけ傍に置いて、子ども自身が何を感じ、どのような体験をしているか、声にしていない心の声に耳を傾けてください。そして、教えてくれた体験や感情に対して、それを共有してくれた勇気への敬意を持ちながら、ジャッジすることなく、「受け取ったこと」を肯定的に伝えてみてください。

    • 子ども自身が「どうしていいか分からない」と感じている場合、立ち止まっている様子がある場合は、そのように感じることもとても自然なこと、そう感じることを共有してくれてありがとうということを伝えてください。そして他の気持ちや感じていることも話したいタイミングで話して大丈夫だということ、どうしていいか分からないことを一緒に考える方法もあるということ、一緒に考えたいと思っていることを共有してみてください。その子が「一緒に考えたい」と感じたタイミングで話してほしいことを伝えてください。

    • 「私以外にも、こんな人に聞いてみたり、こんな場所に行ってみる、こんな選択肢もあるみたいだよ」とうことを、押し付けるのではなく、子どもがどうしたいかを大切にする姿勢で共有するなど、選択肢の情報共有もとても大切なことの一つです。


    <行動>

    • 毎日行っていたルーティンや日課を大切にしてみてください。また、規則正しい生活(いつもと同じ時間に寝る、ご飯を食べるなど)は安心感に繋がることがあります。
      すでにやっていること、できていることに目を向けてみてください。歯を磨いた、ご飯を食べた、好きなことをした、漫画を読んだ、疲れたから横になった、深呼吸したなど、私たちは負荷がかかっている時でもたくさんのことをしています。書き出したりリストにしてみることで、目を向けやすくなるかもしれません。

    • 大人が伝えるだけではなく、何より子ども自身の考えや感じていることを聴くことを大切にしてください。今日と明日で意見が変わるのも自然なことです。それを子どもと共有し、安全に声を出していいと思える環境をつくってみてください。

    • 子どもにかかわることは、子どもの考えをまず聴き、話し合って一緒に決めるようにしましょう。

    • 子どもの「やりたい」を尊重する時間を、作ってみてください。

     

    子どもの力を信じてかかわる

    どんなに小さくても、子どもは尊厳ある一人の人間です。大人がそうであるように、それぞれの考えや視点、感情に耳を傾け、尊重することから心地よいコミュニケーションが始まります。

    一人の権利主体であり、尊厳ある「人」として子どもと関わることで、保護者自身の中に葛藤が生まれることもあるかもしれません。ご自身の葛藤も大切にしながら、保護者の方もまた、自分が一人の人として大切にされたり、ケアされる時間をつくってください。

     

    書き手:

    小澤いぶき

    PIECES代表理事・児童精神科医


    参考:子どものこころのケアに役立つ資料(兵庫こころのケアセンターより)

    https://www.j-hits.org/document/child/


    PIECESは、子どもの周りに信頼できる他者を増やすことで、子どもが孤立しない地域をつくることを目指しています。子どもの孤立が深まる前に、地域の中で子どもを見守り、子どもに寄り添う市民を増やすための市民性醸成プログラムを展開しています。

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