サイの日のお便り Vol.17

こんにちは、PIECES代表の斎(さい)です。
忙しい日々の中で、このお便りを開いていただきありがとうございます。

31日(サイの日)にのみお届けするこのお便り。
今回は、PIECESの事業や組織の話ではありません。私自身の最近の悩みと、それにまつわる不思議な体験をした話を書いてみたいと思います。

ここから先は、非営利組織の新米代表が抱えるモヤモヤが書き連ねられています。おもしろくも役に立つかもわからない話ですので、読み進める場合は心してお読みください。笑

代表になって生まれた変化

PIECESの代表に就任して約2か月。代表就任の発表から約4か月。

当初は「代表になって何か変わったり、心境の変化とかあるの?」との周囲からの問いかけに「いやいや、特に何も変わらないですよ〜」と答えていました。時間をかけて継承のプロセスを歩んだこともあり、その時はそれがとても素直な感覚でした。

ただ、月日の経過とともに、微かな変化を感じ取っています。2つ同時に。

1つは、「これをやってみたいな」「あれもできたらいいな」というような欲求や願いが、自然と溢れ出てくるようになったこと。これまでも決して蓋をしてきたわけではないのですが、MTGの場や、一人で本を読んでいるときなどにあれこれ妄想している自分がいることに気付く機会が増えています。

もう1つは、周囲からの何ともいえない期待のようなものを受け取る機会が増えたことです。これは相手あってのことなので、自分で勝手にそう感じているだけかもしれません、ただ、組織内外でのコミュニケーションにおいて、自分の想いや考えを言語化すること、あるいは自分のスタンスを問われたり、明確に示すことを求められる機会が増えています。

当然と言えば当然かもしれません。自分もこれまで関わってきたリーダーたちには、多かれ少なかれそれらを問うたり、求めたりしていたようにも思います。

これら2つの変化それ自体は、決してネガティブなことではないはずです。

一方で、いろんな欲求や願いが生まれること自体は大事なことかもしれませんが、扱い方次第では関わるメンバーを疲弊させかねません。また、これまで以上に自分のあり方やスタンスがダイレクトにいろんなものに響いていくのだとすると、それらを暫定的にでも定めておかないと、周りも自分も苦しくなっていきそうな気がします。

ネガティブな変化ではないはずだけど、どうやら受け流してもいけなさそうだ。
そんな風に思った時、これは自分の「リーダーシップ」のあり方が問われているのかもしれないと気が付きました。

「リーダーシップ」

今までも自分に問うたことがなかったわけではありません。むしろ、その時その時の立場でどんなリーダーシップを発揮できるといいかについては自分なりに考え、実践してきたつもりです。

が、しかし・・・今回はどうやら重みが違いそうです。
PIECESという組織体が歩んできた歴史や、前代表のいぶきさんから継承したバトンに込められた願いたちが、その重みを感じさせているのかもしれません。

PIECESの代表となった自分が、どんなリーダーシップのあり方を大事にしていけばいいのか。急いで自分なりの答えを見つける必要がないと分かりながらも、この間にも関連するいろんな出来事が起きており、1か月ほど悩ましい日々を過ごしていました。

 

森の中で見つけたヒント  

そんな中、先週10月24日から3日間、岡山県の西粟倉村で時間を過ごす機会がありました。。

Learning Journey」という企画で、同じように社会的な事業に取り組む方々と時間を共にしながら、深く自分自身や組織と向き合う合宿形式のプログラムです。

3日間、自然豊かな環境で、美味しい食事と素敵な仲間に囲まれて、全体を通じてとても充実した時間を過ごすことができました(快く送り出してくれたPIECESの皆さん、妻子たちに心からの感謝!)。いろんな気づきや豊かさを味わったのですが、その中で不思議な形で自分のリーダーシップについて向き合うことになったのです。

それは、合宿2日目に森の中で過ごした時間での出来事。

その時間は、1人ずつ、木や石や水といった自然物を1つ選んで、1時間ほど一緒に過ごしてみるというプログラムでした。私は、周囲を見渡した時にパッと目に飛び込んできた一本の大きな木に惹かれ、その木と共に過ごすことにしました。そして、その1時間の間、木に触れたりボーっと眺めたりしながら、下記のようなことをノートに書き留めていました。

・地面にガッシリと根を張る姿
・いくら押してもビクともしない
・幹の表面に広がるたくさんのシミや傷跡
・太くどこまでも伸びる幹の先に広がる繊細な枝と、きれいな緑
・光や水、土によって生かされている
・自分の力で立っているようで、周囲の力で立っている
・この木の存在によって生まれる光と影
・たくさんあるうちの一本でしかない。でもこの木にしかない確かな存在感がある

これを書いている途中から、その木の存在に自分を重ね合わせていることに気付きました。そして、森から帰ってきた後、自分自身のリーダシップについていくつかのエッセンスが浮かび上がってきました。

①ブレることなくそこに立ち続けることを大事にしたい。
➁大きな志をもって、自身の存在をもって、行く道を示し続けていく。
③周囲にいる1つ1つの存在を、心から精一杯受け止め、支えていく。
④でも自分だけでは支えられない。自分以外の誰かが他の誰かを支えていけるように。

①については、木に触れながら直感的に自分のあり方との重なりを感じました。
④についても、森においては1本の木でしかないのと同じように、自分も1人の存在でしかない。であれば、活動するフィールドにいる仲間同士が、影響し合い支え合うことに頼るほかありません。

➁と③が悩ましい。それぞれを別個に見れば、どちらも大事なことのような気がします。ただ、➁はどちらかといえば「示し導く」というエッセンス。③は「支え仕える」というエッセンス。だとすると、両者を併せ持つことはかなりの胆力を要することのように感じてしまいます。

自分なりのリーダーシップはどちらかに触れていく方がいいのか。あるいは、一見矛盾しそうなエッセンスを自分なりに融合させていくのか。

合宿からの帰宅後に、1年以上積読状態だった『サーバントリーダーシップ』という書籍を開き始める中で、現時点での暫定解は後者が近いと思っていますが、いずれにしても茨の道になりそうです。

一歩ずつ、を大事に

今日は、自身のリーダーシップにまつわる悩みについて書いてみました。
結論としては、組織の代表になるって大変だわ、という感じでしょうか。笑

でもまぁ、子どもが生まれて急に立派な親になれないように、代表という肩書がついたからといって急に立派な代表になれるわけではないとも思うので、これからの一歩ずつの積み重ねを大事にしていきたいと思います。

それでは、また次の31日にお会いしましょう。

サイの日のお便り Vol.16

こんにちは、PIECES代表の斎(さい)です。
忙しい日々の中で、このお便りを開いていただきありがとうございます。

 台風の影響は皆さん大丈夫でしょうか。
かつて経験したことないほどの雨になっている地域もあると聞きます。皆さんがどうかご無事でありますように。。

さて、31日(サイの日)にのみお届けするこのお便り。
今回は、本日で終了するクラウドファンディングの最後のお願いをさせてください。 

といっても、既に何度もお願いを重ねてきて、正直メールとかももうしつこいよと思われてる方もいらっしゃるかもしれません。。
そんな中で何をお伝えするのがいいかなと考えていた時に、ふと一人の女の子の姿が思い浮かびました。 

今回のチャレンジのテーマである「信頼できる他者」とはどんな存在なのか。
クラファン最終日に、皆さんと一緒に想いを馳せるきっかけになればなと思い、10年近く前に出会ったその女の子との話を書いてみたいと思います。

今日も長くなりそうです・・・。

Mちゃんとの出会い

当時、私はPIECESの活動をする傍ら、ソーシャルワーカーとして教育委員会で勤務していました。その時に関わっていた子の1人が、当時小学5年生だったMちゃんです。 

いわゆる不登校の状態になって約2か月。学校に行けなくなった理由や原因は学校も保護者も分からないまま。だんだんと元気がなくなっていく様子を心配した学校からの依頼で、私が関わることになりました。

最初の数か月は、そもそも会うことすらできない日々が続きました。

ソーシャルワーカーというよく分からない人が家に会いに来てもいいかという話なので、拒む気持ちも分かります。それ自体決して珍しいことでもありません。しばらくは、両親との面談を重ねながら様子を見ることにしました。

両親や学校側との面談を重ねる中で、いくつかのことが分かってきました。

Mちゃんには年下のきょうだいがいて、そのきょうだいが知的・身体的な障がいを抱えていることもあり、Mちゃんに関心が向けられる時間や余裕があまりないこと。比較的自分の好きなことがハッキリしており、学校に通っていた時も一人で遊んだり過ごしたりすることが多いことなど。

同時に、両親の焦りや緊張感が高く、担任の先生も、教師歴ではじめて担任するクラスの子が不登校の状況になったこともあり、同様に焦りや困惑の様子が色濃く伝わってきたのをよく覚えています。両親や先生方へのサポートや助言をしながら、直接関われるタイミングを伺いました。

一歩ずつの前進

数か月が経ったあるとき、Mちゃんが会ってもいいと言ってる、という知らせを受けました。その時、Mちゃんは既に6年生になっていました。

初めて訪問した日、ほとんど視線が合わず、会話も途切れ途切れだったけど、それでも最後に「また会いに来てもいい?」と尋ねると、こくっと頷いてくれました。

それからは、月に1,2回の頻度で家に会いに行き、何をするでもなく、好きな本やアニメの話を聞かせてもらったりして過ごす、ということが続きました。

学校の話題も時々は出てくるので、全く避けているわけではない。担任の先生から渡されているプリントなども、マイペースではあるけれどそれなりやっている。でも、学校に行きたいのかどうか、何か嫌なことがあるのかどうか、今がどんな気持ちでいるのかどうかなどは、なかなか表されないままでした。

夏休みが過ぎ、表情自体は最初のころよりも落ち着いてきた様子でしたが、こちらとしても少し何か変化を加えられた方がいいのかなと思い、一緒に外に出てみないかという提案をしてみました。その頃、自宅にいる以外は、自宅マンションの1階にあるスーパーに行くくらいしか外出する機会もなく、会う人も家族以外だと担任の先生と私くらいでした。

家の外に出てみて、そしてできれば他の人と少しでも関われたらと思い、Mちゃんとどこなら行けそうかという作戦会議を開いてみることにしました。

その中で、Mちゃんから「小さな子のお世話をしてみたい」という話が突然出てきました。出会ってから数か月、Mちゃんから初めて聞いた「やってみたい」という気持ち。これは尊重したいと思い、たまたま家のすぐ近くにあった子育てひろば(乳幼児の親と子が日中の時間を過ごす居場所)に翌日問い合わせをしてみました。

最初は「小学生のボランティアね…」と難色を示されていましたが、Mちゃんのこれまでの背景を伝え、少しでもいいから外とつながる機会を作り、できれば小さな子と関わる機会を作りたいと思っていることを伝えたところ、「それなら、親子が帰った後の玩具の片づけや拭き掃除とかであれば…」とのお返事をもらうことができました。

「直接お世話をしたい」という希望は叶わないものの、それでもMちゃんはその提案を受け入れ、さっそく翌週から平日の夕方、親子が帰った後の時間に週1回ボランティアに行くことになりました。

 

心をひらける他者との出会い  

初回は新しい場所ということもありさすがに緊張している様子でしたが、スタッフの方に教えてもらいながら玩具を一つずつ丁寧に消毒したり、片づけたりといったことを手際よくこなしていきました。

初回、2回目と私も同行し、また行きたいということだったので、3回目以降は子育てひろばの方にも相談し、Mちゃん一人で通うようになりました。

はたから見ていてもすっごく楽しそうか、というとそうでもない様子でしたが、それでも週に1回、1時間にも満たない時間でしたが、毎週欠かさずに通い続けました。

1か月ほどが経ち、ひろばの責任者の方からこんな話を聞きました。

「Mちゃんは誰にでも愛想よく、というわけではないけど、特に1人のスタッフの人とよく話しているの。他愛もない話なんだけど、時々笑顔なんかも見せたりして。で、そのスタッフが「Mちゃん、あなたがいてくれて本当に助かるよ。仕事も丁寧だし。本当にいつもありがとね」なんて言ったりすると、照れながらもニコッとして。こっちまで幸せな気持ちになるのよね」

そんな様子で3か月ほどが経ち、学校は冬休みの季節。子育てひろばも2週間ほどお休みとなりました。

冬休みが明けて、最初の家庭訪問の日。

およそ1か月ぶりに会ったMちゃんが「明日から学校に行きたい」と伝えてくれました。
突然のことに担任の先生と一緒に驚きつつも、そのことをその時家にいたお母さんにも伝え、必要なものの準備に取り掛かりました。

翌日、昼前に学校から連絡があり、無事にMちゃんが登校してきたこと、周りの子たちも最初は少し戸惑いつつも、優しく迎え入れていることなどを教えてもらいました。

そこから卒業まで、Mちゃんは一度も学校を休むことはありませんでした。同時に、自分の中で何かの整理をつけたかのように、子育てひろばのボランティアもおしまいになりました。

卒業までに1回だけ面談をした際に、「明日から学校に行きたい」という気持ちになった背景をそれとなく尋ねてみましたが、見事にはぐらかされてしまいました。

その後、入学した中学校では、勉強面こそ遅れを取ってしまった影響があったものの、中学の先生に言わせると「そんなに長期間不登校だったようには思えない」といった様子で、部活にも入って生活しているとのことでした。

もちろんMちゃんにとって学校に行くことがすべてではありません。

それでも、日に日に元気がなくなっていく様子だったMちゃんが、約1年の時間をかけて意思や意欲を持つようになり、自分の力で大きな一歩を踏み出すことができたんじゃないかと思っています。

 

特別ではない「ふつうの関わり」の特別さ

Mちゃんとの関わりのプロセスには、私も含め何人かのおとなの存在がありましたが、中でも、子育てひろばで出会ったスタッフの方の存在はとても大きかったのではないかと振り返っています。

一度だけ、Mちゃんが学校に行き始めた後に、その方とお会いしてお話しすることができた時におっしゃってたことが今でもとても印象に残っています。

「私は別に特別なことなんて何も。そもそも何の資格も持ってないし、Mちゃんの学校のことだってよく分かってなかったし。でも、Mちゃんと一緒にいるとすごく落ち着くから、そのことをそのまま伝えたり、ボランティアとしての仕事も本当に助かったから、それもそのまま伝えたりしていただけですよ」

その話を聞いた時、Mちゃんにとって必要だったのは、まさにその特別ではない、いわば「ふつうの関わり」だったのではないかと感じました。

障がいを抱えるきょうだいのお姉ちゃんとして、家のことを手伝うのが当たり前だったMちゃんにとっての「助かったよ、ありがとう」の言葉。家族でも、学校の人でもない人と一緒に時間を過ごし、それを「心地いい」と思ってくれたこと。

そんな何気ない関わりによって、Mちゃんは心のエネルギーを補給していったんじゃないか。実際のところは分かりませんが、そんな風に捉えるとなんだかしっくりくるように思います。

 

少しずつ、みんなで

今回のクラウドファンディングでは、「子どもたちの生きる地域に“信頼できる他者”を増やしたい」というメッセージを届けてきました。“信頼できる他者”がどんな存在なのか、それは一人ひとり感じ方が異なるので、唯一の正解はありません。

ただ、一つ言えるのは、特別なことは必要ないのかもしれないということ。

一人ひとりがもっている他者を想う気持ちや、ちょっとしたまなざしが、誰かにとっての支えや力になっていくんじゃないかと感じています。

「少しずつ、みんなで」
それぞれが持っている市民性を分かち合っていくこと。
それぞれに影響し合いながら、醸成していくこと。

私たちPIECESは、これからもそのためのチャレンジを続けていきたいと思います。

クラウドファンディングは本日23:59まで。

「少しずつ、みんなで」
私たちのチャレンジにも参加・応援いただけたら嬉しいです。

 
 

それでは、また次の31日にお会いしましょう。


サイの日のお便り Vol.15

こんにちは、PIECESの斎(さい)です。
忙しい日々の中で、このお便りを開いていただきありがとうございます。

すでにお知らせしてきた通り、この7月より、 PIECESの代表のバトンを小澤いぶきから受け継ぎました。
7月13日には、この代表継承に至った経緯や、それぞれの想いなどについてお伝えする記念イベントも開催し、100名以上の方々と温かな時間を共にすることができました(当日ご参加くださった皆さん、ありがとうございました!)。

今回のお便りでは、そのイベントで様々な痛みや葛藤を共有できたからこそ、自分の中に立ち現われてきた感覚や記憶をありのままに綴ってみようと思います。そのことを通じて、あくまで私一人の視点ではありますが、PIECESという組織が今ここにあることの意味をより多くの皆さんと共有したい。そんなふうに考えています。

イベント後に、個人のSNSで発信した文章を元にしているのでだいぶ赤裸々な感じではありますが、最後までお読みいただければ幸いです。


組織の内面をさらけ出した代表継承イベント

まずは、代表継承イベント当日の話を少しだけ。

今回のイベントは、これまでPIECESが開催したどんなイベントとも趣が異なっていた。というのも、PIECESの事業のことについて触れた時間は、全体3時間のうちのほんの数分だけ。ほとんどの時間は、組織として味わってきた様々な困難や葛藤、そして痛みのようなものについて、設立期まで遡りながらじっくりと振り返るというものだった。

設立からの数年を振り返るセッションには、いぶきさんと斎に加えて、設立メンバーで今や若者支援界をけん引するサンカクシャの荒井さんと、同じく設立メンバーの青木さんにも登壇してもらった。

この4人が最後に一堂に会したのは約5年前。後述するように、PIECESと荒井さんの間には長らく大きな溝があり、この場が実現したこと自体が大げさではなく奇跡的なことだった。

トークセッション後半は、今回の代表継承に伴うトランジションのプロセスを振り返る時間。2年間に渡るトランジションのプロセスをサポートしてくれた横山十祉子さんにファシリテーターを務めてもらい、いぶきさんと斎とがそれぞれの想いや感覚を言葉にする時間になった。

セッションの内容についてはとてもここでは書ききれないけれど、どちらのセッションも共通して、痛みや葛藤がテーマになっていた。

正直なところ、企画の段階でも、会を進めている最中でさえ、「こんなにも組織の中で起きてきた痛みや葛藤を表に出していいんだろうか」という不安があった。それくらい、自分の内面をさらけ出し、心のエネルギーを使い、それでも会全体を通して、それらを参加者の皆さんが心で受け取ってくれたような、そんな不思議な時間だった。

痛みや葛藤を越えて…

ここからは、イベント当日には語りきれなかったことも含めてつらつらと。

今回の代表継承につながるトランジション。
これを丁寧に進めてこれたのは、PIECESの一度目のトランジションの経験があったから。もとい、トランジションなんてカッコつけて言えたもんじゃない…ほぼトラウマ体験だ。

2018年ごろの一度目の大きなトランジション。PIECESから荒井さんが独立することになり、サンカクシャが誕生した。
見ている視点が異なるからこその、方向性のズレ。想いがあるからこその、お互いの譲れなさ。そんなよくある話として、最終的にはある程度ポジティブなストーリーとして対外的にも伝えたが、斎個人の心は、そこに至るまでにほぼ一度折れかけていた。

その詳細は書ききれないけど、結果的には、自分の未熟さゆえに、荒井さんの独立をちゃんと応援することができなかった。自分が負ってきた傷や痛みを盾にして、対話することをあきらめてしまった。精神的にも、リソース的にも、気持ちよく送り出せなかったことで、負の感情だけが残った。

それゆえ、彼のその後の活躍を直視することができず、SNSのフォローも外した。それでも一向に傷は癒えず、結局そのまま一度もコミュニケーションを取ることなく、5年間の月日が流れた。
そんな中で迎えた、今回のトランジション。


発端はやはりよくある、互いの期待値のズレのようなところから。でも、今回はその異変に気付いた後に、わりとすぐ自分たちだけでどうにかしようとするのを手放した(たぶん、あのまま自分たちだけで動いていたら、斎・青木VS小澤みたいな構図になって、分解していたと思う)。

理事会に助けてもらい、さらには横山さんを始め外部の方にも入ってもらいサポートチームが作られた。その中で、「いま、組織の体制に関わる重要な意思決定をしたら、後で誰かが後悔する。だから無期限の休息期間(通称、留保期間)を取ってはどうか」という提案がなされた。すんなりと受け入れるのは難しかったけど、信頼する人たちからの提案に身を委ね、休息と内省の期間に入った。
個人的には、この時間が本当にありがたかった。

「意志決定は早く下せるのが良いこと」と暗に刷り込まれていた中で、あえてそれができない環境が生まれたことで、心に隙間が生まれた。葛藤や自分の願いとゆっくり向き合うことができた。
そして、休息と内省の時間をゆっくりと取る中で、「もしかしたらPIECESというフィールドのエネルギーの源泉(ソース)は自分なのかもしれない」という感覚を掴むことができた。

でも、それはあくまで自分の中で生まれた感覚。これをちゃんといぶきさんと共有しないことには、PIECESとしての歩みは始まらない。
留保期間中、ずっと2人だけでのコミュニケーションは取らずにいたいぶきさんに、1年半ぶりにDMを送り2人で会った。そこで、一度目のトランジションの時にはできなかった対話をすることができた。

自分の素直な感覚をいぶきさんに伝え、いぶきさんはそれを「嬉しい」と言って受け取ってくれた。
長かった留保期間が、そこでようやく終わりになった。

正直、いぶきさんの心の内は今でも分からないし、自分の感情もそんな綺麗なものばかりではない。それでも今回は、痛みや葛藤を抱えながらも自分たちの力で乗り越えられたこと。そして自分の想いをこうしていろんな人に伝えられているだけでも、大きな成長なんだろうなと感じている。

そしてもう一つ。
5年間まとわりついてきた負の感情。

実は、今回のトランジションのプロセスを経て、自分が代表になることが内部で決まった後、そのことを最初に直接伝えたのが荒井さんだった。
今年の2月に5年ぶりにメッセンジャーで連絡をしたときにはさすがに緊張した。会って話したい、というそれだけの話なのに、そのメッセージを送るのに、えらいエネルギーを要した。

やっとの思いで送信できた。が、今度は返信がなかなか来ない…
既読がついてからも丸2日が経ち、ざわざわが通り越して、若干気持ち悪くなったころにようやく返信。何事もなかったかのように、やけに明るい返信。やはり荒井さんは荒井さんだった。

5年ぶりの再会。
何も用意していたわけではないが、自然と自分の中から最初に出てきたのは「あの時はごめん…」の一言だった。そこから全く想像していなかった互いの当時の気持ちや、その後の心情の変化に触れたことで、ようやく5年間分の心のつかえを取り除くことができた。

その場で、代表継承のイベントに登壇することも快く引き受けてくれることになった。そうして、7月13日にすべての役者がそろい、皆に見守られながら代表のバトンを受け取ることができた。

5年ぶりに再会した場所は、設立当時まだオフィスがなかったころに足しげく通った思い出のカフェ

さいごに ー新たなチャレンジへのご協力のお願いー 

相変わらずの長文駄文になってしまいました。果たして、ここまで読んでくださった方がいるのだろうか…笑

ともあれこれでようやく長かったトランジションのプロセスは一区切り。PIECESとしても個人としても、ここからまた「新たな始まり」の時を迎えます。

きっとメンバーや周囲の人たちへの影響、自分自身への影響はこれから生じてくるものもあるはず。いぶきさんの存在の大きさに気づくのもこれからなんだとも思っています。
それでも、いい意味でなんだか身が軽くなったような感覚がするのもまた事実なので、自分なりのあり方を模索しながら、PIECESの新たな始まりを楽しんでいきたいと思います。

 

そして・・・
新生PIECESの最初のチャレンジとして、5年ぶりとなるクラウドファンディングへの挑戦が始まっています。

「子どもの周りに信頼できる他者を増やす」
 市民性を柱に据えて、誰もが孤立しない環境を作るというこれまでの取組みを、もう一段加速させるためのチャレンジです。

ただ、どうしても施設を建てたり、手に取れる製品を作ったりという取組みに比べると、手触り感には欠けてしまいます。なかなか初見の方には価値が伝わりにくいかもしれません。

そこで応援の輪を広げるために、是非とも皆さんの力を貸していただきたいのです。

寄付という形での応援ももちろん嬉しいのですし、SNS等でのシェアもとても大きな力になります。可能な形で大丈夫なので、応援・ご協力をいただけないでしょうか。

斎個人としては、代表のバトンを受け取って最初の大きなチャレンジになるので、何としても成功させたいという想いもあります。ぜひお力貸していただけると嬉しいです!

それでは、また次の31日にお会いしましょう。


事務局長からのお便り Vol.14

 
 

こんにちは、PIECES理事/事務局長の斎です。
忙しい日々の中で、このお便りを開いていただきありがとうございます。

いつもは「31日(サイの日)」にお届けしているこの事務局長からのお便りですが、今回は特別号として6月にお届けします。

今回のトピックは、ずばり「代表継承」についてです。
既にご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、PIECESでは約2年間のトランジションのプロセスを経て、代表のバトンを小澤いぶきから斎へと継承することになりました。法人設立から8年、任意団体時代を含めると10年という節目の年に迎えたこの大事な決断について、ここに至った経緯や、私なりに今感じていることについて綴ってみようと思います。

いつもより暑苦しい内容になりそうですが、末尾には、今回の代表継承を記念して7月13日に行う特別なイベントのご案内もありますので、是非最後までご覧いただけたら嬉しいです。

「交代」ではなく「継承」という言葉に込めた思い

NPOに限らず、一般的に代表者がAさんからBさんに代わる時には「交代」という言葉が使われることが多いかと思います。代表交代、あるいは社長交代というような形で。ですが、今回PIECESでは、一貫して「継承」という表現を用いています。そして、明確にその表現を最初に用いた日というのが存在します。2023年7月14日の出来事です。

その日は、いぶきさんと私(斎)とで、これからのPIECESについて対話をしていました(ちなみに、なぜその日の日付まで鮮明に覚えているかというと、今回の継承のきっかけになった時間だったということもありますが、いぶきさんと2人で会って面と向かって話すこと自体が、1年以上ぶりだったからです…)。

その対話の中では、2人がそれぞれに、自分とPIECESとのつながりを今どんな風に感じているのか、自分と社会・世界とがどう結びついていると感じているのか、そして過去から振り返ったときにそれらの想いや感覚はどのように変化してきたのか、といったテーマが話の中心でした。

話が進む中で、これまでPIECESというフィールドの源泉となるエネルギーは紛れもなくいぶきさんだったが、それが今まさに移ろってきているかもしれない。今までであれば、PIECESというフィールドがなぜ存在し、何を成すフィールドなのかが語られるとき、そこにはいぶきさんの内なるエネルギーとの深いつながりがあった。だけどもしかしたら斎がエネルギーの源泉になりつつあるんじゃないか。そのような感覚を2時間ほどの対話を通じて共有する時間になりました。

その対話の後半に、互いに自然と用いていたのが「継承」という言葉です。

正確には、『ソース原理』で言われるところの「ソースの継承」が今まさに自分たちに起きていることではないかという気づきが2人の間で生まれました。いま、ここで何が起きているのか、これからの未来をどのように歩んでいくのがいいのかを話す上で、「ソースの継承」を補助線に置けたことで、今回の決断に至るプロセスを最後までブレることなく進めてこれたような気がしています(ちなみに、ソース原理には本当に出会えてよかったと思っています。何か社会的な活動に取り組まれる方には特に、こちらの書籍をお勧めします)。

ちょっとまわり道をしましたが、要するに、PIECESの代表理事としての役割や職務といったDoingの部分を、何らかの事情でいぶきさんから斎に引き継ぐということであれば「交代」がふさわしいのかもしれない。けれど、今回は、より根幹となるBeingの部分について、エネルギーの源泉となる存在の移ろいを意味することになる。当然そうなったときには、いぶきさんから生まれてきた、あるいはいぶきさんがいたことで育まれてきた尊い願いや豊かな価値観などを受け取ることになる。そういった、有形・無形の様々なものの存在に敬意を持ちながら、そこに今度は自分なりのあり方を結びつけていくことが求められる。

そのようなことを考えると、いま自分の目の前にあるのは、単に代表としての役割を引き継ぐということではない。目に見えないこと(願いや価値観、魂のようなこと)も含めて、これからは自分自身の在り方が影響を与えていくことになる、という意味で「交代」ではなく「継承」なのだという風に受け止めています。

これから改めて大切にしたいこと

では、PIECESというフィールドのエネルギーの源泉となっていく斎は、これからどのような在り方を大切にしていきたいと考えているのか。詳しくは7月13日のイベントでお話ししたいと思っていますが、今日は少しだけさわりの部分についてお伝えします。

PIECESが、約10年の年月を重ねる中で大事にしてきたのが、「市民性」という概念です。人の暮らしを誰か特定の人が役割として支えるのではなく、誰もがその人なりの在り方を大事にしながら関わり合おうとする姿勢、という意味で「市民性」を子どもの周りに育むことをミッションに活動を進めてきました。

そして、そのミッション自体は、これからも変わらずにPIECESの真ん中にあり続けます。

一方で、今一度そのミッションの大きさと、自分自身の存在とを見比べたときに、途方もなく大きな隔たりを感じています。自分一人の存在のちっぽけさに無力感に近いものを感じているとも言えるかもしれません。また、いぶきさんのような大きなビジョンや人を不思議と惹きつける魅力のようなものもどうやら自分にはなさそうです。

ソースの継承だなどと偉そうに言いながら、そのような現実を前に、ひるんでしまいそうになる自分がいるのもまた事実です。

だからこそ、これから何より大切にしていきたいと考えているのが「協力」の力であり、他者に対する「信頼」の姿勢です。何も真新しさのない、言葉にしてしまえばシンプルなことですが、「協力」と「信頼」、この2つが自分にとっての当面の探究テーマであり成長課題になるのだろうと考えています。

「協力」について言えば、自分一人の存在のちっぽけさを自覚するからこそ、社内・社外問わず様々な人の力にいい意味で依存しながら、互いに活かされ合う環境を作っていきたいと考えています。「人の力に依存する」というのは、実はこれまであまり得意ではありませんでした(おそらく小さい頃から、(狭い世界の中でですが)人よりできることが多かったため、常に誰かに助けてもらうより助ける側であったことが影響しているのでは、というのが自分なりの見立てです)。

ただ、幸いなことに、この5年間ほどで「協力」が生み出すエネルギーの力強さを感じる機会が増え、自分自身や自組織を開いていくことの可能性や開き方が徐々に分かるようになってきました。

短期的に見れば、協力あるいは共創というのは面倒なことも多いし手間もかかる。それでも協力の輪が広がることで、エネルギーの総和は指数関数的に大きくなっていくのだろうと捉えています。

当然、自分自身や自組織以外の他者の存在が加わることで、不確実性は大きくなります。団体運営を例にとっても、メンバーが増えるほどに想定外のことが起きやすくなるし、ましてや他団体との協働ともなると、それぞれの目的や思惑から異なることもざらにある。

その不確実性の高い状況にあっても、なお他者を信じ、委ねられるかどうか。つまり、他者を「信頼」することは、「協力」を実現する上での前提とも位置付けられるのだと考えています。

一人でできること、一つの団体でできることに限りがあるからこそ、「協力」と「信頼」を大事に、これからの歩みを進めていきたいと思います。

特別記念イベントのご案内

冒頭から何度か触れていますが、今回の代表継承を自ら記念して、7月13日に都内でイベントを開催します。

いぶきさんと一緒にこの2年間について振り返ったりこれからの展望などを語る予定です。このお便りではちょっと書けないような話ももちろんあり、1回きりのイベントだからこその思い切った内容でお届けする予定です。また、創業メンバーが勢ぞろいして(4人が集まるのは5年ぶり!)のトークセッションも予定しています!

お久しぶりの方も含めて、是非たくさんの方に足を運んでいただき、PIECESのこれまでとこれからをたっぷり感じていただけたらと思っています。是非たくさんの方にご参加いただけたら嬉しいです!

▼特別記念イベントの詳細・お申込みはこちら
https://pieces-special-2024.peatix.com/

※第一部のトークセッションは、オンラインでも参加いただけます!

さいごに

突然ですが、これまで14回にわたってお届けしてきたこの「事務局長からのお便り」は、今回で最終号となります。そうです、もう事務局長ではなくなってしまうからです。

が、このお便りを始めたときにお伝えした「PIECESの事業や組織のことについて、綺麗な部分だけでなく、なるべくリアルな状況をお伝えしたい」という想いは今も全く変わっていません。

ということで、これからも変わらず31日にお便りは続けていきたいと思います。「代表からのお便り(仮)」に名前を変えて。笑

 

それでは、また次の31日にお会いしましょう。


事務局長からのお便り Vol.13

 
 

こんにちは、PIECES理事/事務局長の斎です。

明日から新年度という方も多くいらっしゃるかと思いますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。私は1週間ほど前に、約8年住んでいた東京都文京区から、多摩市というところに引越してきました。同じ都内とはいえ、道や公園ですれ違う人たちや、お店の店員さんたちとのやりとりで感じる“間”がなんとも穏やかでゆったりしていて、私にとってはとても心地よさを感じています。

さて、「31日(サイの日)」にのみ更新するこの事務局長からのお便り。

PIECESも3月が年度末ということもあり、それぞれの事業活動について今期の成果や課題を振り返っているところです。全体の様子については、また6月頃に発行するアニュアルレポートを楽しみにしていただければと思いますが、今日は今期の活動を通じて浮かび上がってきた「緩(ゆる)める」というキーワードを軸に、市民性を育むとはどういうことかについて見つめ直してみたいと思います。

重要なお知らせとお詫び

本題に入る前に、大事なお知らせとお詫びです。

既にPIECESメイト(継続寄付者)の皆さんには3月19日付のメールで、その後HP上でも3月25日にお知らせを掲載していますが、PIECESは2024年3月25日をもって認定NPO法人の認定を失効し、3月26日から通常のNPO法人となりました。それにより、3月26日以降にクレジットカード決済や銀行振込が行われる寄付については、寄付金控除などの税制上の優遇処置の対象外となっています(3月25日以前の決済や振込は対象の範囲内)。

経緯や現時点での今後の見通し等の詳細については、当該メールやHPに記載の通りですが、今回皆さまに大変なご迷惑をおかけしてしまうことになったことについて、重ねて心よりお詫び申し上げます。

設立当初から理事を務めてきて、また事務局長という立場で組織運営の中核を担ってきたこともあり、今回の件については自身の責任についても重く受け止めています。今後はより一層、ガバナンスや法令遵守の視点から組織全体のあり方を随時見直し続け、皆さまが応援し続けたいと思える組織づくりに努めていきます。

なお、3月19日付のメールについて、一部メールの迷惑フォルダに入っていたとの報告もいただいています。もし、メールが確認できない場合や、当法人への寄付を中断されたい方、その他本件についてご不明な点等ございましたら、下記の問い合わせ先までご連絡ください。

▼本件に関するお問い合わせ先

〒113-0033 東京都文京区本郷3-30-10 本郷K&Kビル5F
特定非営利活動法人PIECES
事務局長 斎 典道
電話:03-6801-5232
e-mail:info@pieces.tokyo

「緩める」ことからはじまる、市民性の醸成

今日のテーマは、冒頭でも触れた通り「緩める」。
いま仮に「まちのなかに市民性を育む実践をする上で、最も意識することは何か?」と問われたら、「緩める」というキーワードを挙げるかなと思います。それほどまでに今のPIECESや私にとって重要なキーワードですが、1年程前まではほとんど使っていなかったように記憶しています。
それどころか、時間軸をさらに遡り、たとえばCforCの取組を始めた7,8年前のことを思い返すと、その正反対の「締める」や「張る」という感覚すら持っていたかもしれません。

冒頭からだいぶ抽象的な感じになってしまったので、ここから主に今期のCforCについて他のメンバーと一緒に振り返っていた際の対話を思い返しながら、できるだけ具体的に、この「緩める」とはどういうことか、何がどう重要なのかという話をしていければと思います。

その振り返りの対話の時間では、今期CforCに参加していた人たちの修了後のアンケートや、修了時の面談記録を眺めながら、スタッフ同士でそれぞれに気づいたことや感じたことを共有し合っていました。スタッフと言っても、CforCの運営はプロボノメンバーもいれば前年までの修了生メンバーもいるので、常に多様な視点で対話が広がっていきます。

その日も、いろんな視点が置かれていく中であるメンバーが、今期は特に「プログラムに参加したことで肩の力が抜けた」というような声が多いよねという気づきを共有してくれました。確かにアンケート全体を見渡してみると、「何か今ないものを獲得するというより、自然体の自分でいることが大事だと思えた」「何かをしようとしすぎてた自分にとって“支援者になろうとしなくていい”という言葉は刺さった」というような声が多くあることに気づきました。

これらが何を意味するのかという話になったときに行き着いたのが、CforCのプログラムがもたらしているひとつ大きな要素として「緩める」があるのではないかという話でした。

ともすると、CforCに参加してくださるような方々、つまり地域のために、社会のためにという想いを持った人たちの中には、その想いがあるがゆえに自分に足りない何かや確固たる何かを手に入れようとしすぎてしまっている。あるいは、課題の当事者の方にどうにか近づこうとしすぎてしまっているのかもしれない。それ故に、何か余裕や余白のようなものを持ちにくくなってしまっていたり、緊張感のようなものを漂わせてしまっていたりするのかもしれません。

だからこそ、CforCの場での対話や内省を通じて、正しさや正解を手放すこと、評価することジャッジすることを手放すことをしていくプロセスで、少しずつ緩んでいく。一人ひとりが安全にその場にいられ、安心して応答し合える時間が重なることで、つながりや想像力をもつための余裕や余白が生まれているとも言えるのかもしれません。

あくまで感覚的でしかありませんが、知らず知らずのうちに、社会全体が緊張している、あるいはこわばった状態に陥っているというのは、生活実感としてももっているところです。あちこちで「社会課題」が声高に叫ばれる現状では、その課題に胸を痛めれば痛めるほど、課題を解決したい、解決せねばという想いになってしまうのも無理はありません。そして、強くあること、正しくあることが求められていく。

そんなことを振り返りの対話の中から受け取り、自分なりにも考えていた矢先に、まさにCforC修了生の一人が、ご自身の体験を交えながら、その「緩める」ことの大切さをnoteに綴ってくれていたので、最後にこちらを紹介させていただきます。

▼「独り言」から「対話」を重ねて、手放したもの
https://note.com/pieces_magazine/n/n3036158a68ce

個人的には、特に下記の部分が心に響いたので、本文から一部抜粋して締めの言葉に代えさせていただきます。

内省にはエネルギーが必要であるうえに、そもそも、私自身は本心を語るのが苦手だった。
しかし、そこに醸し出される安心感からか、心の底にある思いを吐露できるようになっていった。

「困っている子どもたちを何とか助けたい」という、信念にも似た強い思いを持つようになったのは、長い間、固く蓋をしていた「人が悲しむ姿をみたくない」という思春期の体験がきっかけとなっていたことに気づく。 また、自身の社会的立場や役割からくる思考のクセがあることもわかってきた。

仲間との幾度とない対話のやり取りのなかで、自分の『メガネ(思考のクセ)』を認識したり外したり、自身には無かった仲間の視点と重ねてみたりしているうちに、いつも頭の片隅から離れなかった『何とかせねば』という気負いは消えていき、子ども達の悩みに対して適切な距離感を掴めるようになった。そして、自分自身の気持ちも大切にできるように変化していった。

PIECESとして「市民性の醸成」に取り組む旅路はまだまだ続いていくので、また新たな気づきや発見などがあれば、こうして皆さんとも共有させていただきたいと思います。

それでは、また次の31日にお会いしましょう。


事務局長からのお便り Vol.12

こんにちは、PIECES理事/事務局長の斎です。

2024年は、年初から災害・惨事が続き、被災された方や関係者の方々はもちろん、多くの人にとって心を痛める日々が続いているかと思います。こんなとき、無意識の内に、身体も心も緊張してしまっていることがあるようです。少し意識してゆっくり呼吸をしたり、リラックスできる時間を作れたりできるといいのかなと思っています。

さて、「31日(サイの日)」にのみ更新するこの事務局長からのお便り。

今回は、お知らせとお願いメインでお届けしたいと思います。今月は、CforCの今期のプログラムが終了したり、5年に1度の認定NPOの更新に伴う現地調査(という事務局長にとってはビッグイベント)があったりと、お伝えしたいことはもりだくさん。ただ、まさにその後者の対応によってエネルギーがほぼ尽き果ててしまったので、ディープな話はまたの機会にさせてもらいます。笑

とはいえ大事なお知らせなので、是非これを読んで協力の輪に加わってもらえたら嬉しいです!

PIECESのチャリティアイテムが誕生しました!(期間限定)

既にSNSや公式LINE等で目にした方もいらっしゃるかと思いますが、「JAMMIN」さんという京都発のファッションブランドとのコラボ企画でチャリティアイテムの販売が始まりました。

今回の企画は、各アイテムを購入することによって、その購入費用の一部がPIECESへの寄付になるという仕組みです。各アイテムには、私たちが活動に込める想いをモチーフにしたデザインが描かれているのですが、きっとPIECESらしさを一目で感じていただけるんじゃないかと思います!

まずは、是非専用ページを覗いてみていただきたいのですが、アイテムの一覧を目にしたらきっと驚かれると思います、、そのアイテムとカラーのバリエーションの多さに。笑

Tシャツだけでも子ども用も含めていろんな型があり、さらにパーカー、トートバッグ、ポーチなど本当に種類がたくさん。その上でカラー展開も相当あるので、正直選ぶのは大変ですが、きっと何かお気に入りのアイテムが見つかると思います。

(ちなみに、個人的には「デニムトートバッグ」というのがオススメです!質感はやわらかめで、ダークのカラーを購入したのですが色味もとてもきれいです。下の写真の私の足元に置いてあるやつです!)

ただ、このコラボ企画には1つだけ問題がありまして…それは販売期間が1週間しかないということ。1月29日からスタートしたので、販売期間は2月4日で終了してしまうのです!

実は今期(2023年度)、ここ数年で1番資金調達に苦戦しています。物価高の影響などもあり新規の寄付が伸び悩んでいたり、当初見込んでいた法人さんからの寄付が減額になってしまったりが重なり、1,000万円ほど予算に到達していない現状があります。

そんな切実な状況もあり、是非多くの人に、今回のチャリティアイテムを手に取っていただき、PIECESの活動を応援いただければと思っています。

販売期間が短いので、SNS等でのシェアだけでもとっても大きな力になります。
このチャリティ企画を通じて、子どもたちの周りに優しいまなざしや関わりを広げる取組に協力いただけると嬉しいです。どうぞよろしくお願いします!

▼アイテム一覧ページ
https://jammin.co.jp/c/charityfor/thisweek

▼今回の企画に込めた想い(よりPIECESのディープな部分に触れたい方はこちらも是非)
https://jammin.co.jp/charity_list/240129-pieces/

 

「妊娠期の居場所づくり」をテーマにしたシンポジウムを開催します!

昨年8月のお便りでもお伝えしたように、PIECESは、認定NPO法人ピッコラーレが取り組む「project HOME」という妊娠期の居場所づくりを行う事業の協働パートナーとしても活動しています。

2020年に本格的に開始した取組ですが、これまでの着実な積み重ねが実を結び、この取組がモデルとなって、2024年度から児童福祉法に基づく法定事業として位置付けられることになりました。それを前に、この事業をより各地で効果的に実施できるように、全国の仲間と協力してシンポジウムを開催しようとしています。

今回は、妊産婦等の生活支援や居場所づくりのこれまでの取組やこれからの課題や展望について、セクターや団体・機関等の壁を越えて共に学び、考え、対話する機会にできればと思っています。子ども家庭庁の担当者の方にも来てもらい、制度概要を詳しく教えてもらいつつ、いま実践現場で何が起きているのか、この制度によってどのような未来に向かっていけるといいのか、などを参加者の皆さんと一緒に考えていきます。

実践者の立場の方々や自治体関係者の方々はもちろん、ご関心のある方はどなたでも歓迎ですので、是非お気軽にご参加ください。

そして、このシンポジウムについても、運営のための寄付を募っています。

PIECESは、ピッコラーレと共同で運営事務局の機能を担っているのですが、必要性が先立って企画したので、運営資金のアテがないままスタートしたというのが現状です。

各地から東京へ来てくださる登壇者への謝金や交通費、運営のための備品費などにおよそ100万円~120万円の支出を見込んでおり、資金面でのサポートを頂ける方を募集しています。

個人での少額の寄付でももちろんありがたいですし、1口10万円~での法人等からの寄付も募集していますので、もし身近にご検討いただけそうな方がいれば、是非ご紹介いただけると嬉しいです。

▼シンポジウムに関する詳細&申込はこちら
https://peatix.com/event/3821778

▼シンポジウムへのご寄付はこちら
https://piccolare.my.salesforce-sites.com/
※認定NPO法人ピッコラーレが寄付の受付窓口です。
※備考欄に「2/24シンポジウムへの寄付」とご記入ください。


ということで、今回はお願いが2つ重なってしまいましたが、皆さんの応援が私たちの活動のエネルギーとなっていきますので、ご協力をどうぞお願いいたします。

暖冬とはいえ、寒い日が続きますので、暖かくしてお過ごしくださいね。
また、31日にお会いしましょう。


事務局長からのお便り Vol.11

 
 

こんにちは、PIECES理事/事務局長の斎です。

2023年の大晦日、いかがお過ごしでしょうか。

私は、年明けすぐに5年に1回の認定NPO更新のための現地調査(東京都の担当課の方が3~4人で事務所にいらして、5年分のありとあらゆる書類や運営状況のチェックを受ける機会)という超重要イベントが控えていることもあり、今年はなんだかソワソワした気持ちで年の瀬を迎えています。緊張感をもって休みを過ごしなさいよという所轄庁からのメッセージと受け止め、シャキッと年末年始を過ごしたいと思います(笑)

さて、「31日(サイの日)」にのみ更新するこの事務局長からのお便り。

大晦日にまでこのお便りを読んでくださる奇特な方(もちろんいい意味です笑)がどれだけいるか分かりませんが、せっかくなのでPIECESの2023年がどんな年だったのかを、私なりの視点でお伝えしていきます。


2023年を漢字1字で表すと・・・

いきなり安直な見出し感は否めませんが、1年を振り返るという意味で、なんとなく2023年のPIECESを漢字1字で表すところから始めてみようかと。

例年だと、本家の「今年の漢字」(日本漢字能力検定協会)が出る度に、自分にも当てはめてみては、そんな都合のいい漢字は思い浮かばないことがほとんどです。ただ今年に関しては、スッと1つの漢字が思い浮かびました。

それが、「新」という一字。

ありふれた何の捻りもない字ですが、いろんなことを振り返ってみると、今年のPIECESを表すにはしっくりくる1字のような気がしています。

2023年は、このお便りでも何度かご紹介している「CforCコンソーシアム」という“新”規事業を本格的に立ち上げるところからスタートしました。事業の詳細や進捗は折に触れてまたご紹介していきますが、これまでPIECESが主導してきたCforCプログラムや市民性醸成の取組を、各地の団体や機関、自治体等との協力・共創による取組へと変容させるべく、新たなチャレンジが次々と始まっています。

今年の夏ごろからは、実際に他団体さんとの協力モデルでCforCのエッセンスを届ける活動がスタートしたり、各地で市民性を育む活動をする団体・機関が共に学び合う機会を立ち上げたりし始めています。

実際にスタートしてみて、「協力・共創」を前提とすることで、自分たちだけではもたらしえないエネルギーが創出されていることの価値を強く感じています。一方で、協力やパートナーシップには当然協力する相手やパートナーが存在します。それ故に自力では動かせない範囲が大きくなり、事を進めるにも時間や手間がかかったり、想定外のことが起きやすくなることの難しさも感じています。

それでも、「真に大切なことは、面倒くさいプロセスに宿る」と思っているので、この新たな取組やプロセスをじっくりと地に足つけて前に進めていきたいと思います。

また、今年は有給スタッフやプロボノメンバーなどの“新”たな仲間がたくさん加わった年でもありました。

有給スタッフは今年新たに4名が加わり11名に。プロボノメンバーも6人が仲間入りし25名となりました。加えて、CforCプログラムの運営には、過去のプログラムを修了した修了生メンバーがスタッフとして参画していますが、今年は10名超のメンバーが毎週の活動に参加してくれています。

まだまだ事業としてはできていないことも多く、課題ばかりが山積しているように感じる日々ですが、こうして50名近いスタッフやメンバーが運営に参画するまでに組織が育まれてきたことについては、感慨深いものを感じています。

当然、ライフステージの変化や新たな挑戦などもあるので、みんながこのままでとはいかないはずです。それでも、今年新たに加わったメンバーをはじめ、PIECESに携わるスタッフやメンバーがこれからもこのフィールドで活躍したいと思えるような組織であれるように、これからもチャレンジを続けていきたいと思います。


その他にも、冒頭でご紹介した5年に1度の認定NPOの更“新”のための膨大な資料作成に取り組んだり、ここ1,2年で生じてきた組織の成長変化に対して、経営・運営体制の“新”たなカタチが見出されてきたり。やや強引なところはありますが、随所に“新”を感じるそんな2023年でした。


市民性を照らし、育む

2023年を振り返る上で、最後に皆さんに1つ見ていただきたいものがあります。

もう既にご覧になった方もいるかもしれませんが、12月初旬にPIECESのWEB上で1つの“新”しいページが公開されました。「やさしさのむしめがねー暮らしの中にある市民性ー」というタイトルで始まるページです。

PIECESが取り組む、「市民性の醸成」という営み。
PIECESのことを家族や友人、同僚の方々などに話したことがある方の中には、経験がある方がいるかもしれませんが、「市民性の醸成」と言ってもなかなか理解や共感は得られません。私もそのことに苦しみ続けている一人です。

「市民性ってどういうことなの?」
「どうして今の世の中に市民性が必要なの?」

これらを少しでも分かりやすく、親しみをもって知ってもらいたい。
そんな想いで作ったのが、今回のこのページです。

個人的には、ページ内にある下記の部分を特に皆さんと共有したいと思い、少し長いですが引用させてください。

「いまこの時代に生きる私たちにとって、本当に必要なことはどんなことだろう?」

その問いに向き合う中でたどり着いた一つの解。それが、一人ひとりが持つ「市民性」を信じることです。

これは、何かが「ない/足りない」ことを前提にしたあり方とは大きく異なります。
制度や仕組みがないから新しく作る、サービスが足りないから増やす。
それも大事なことだけど、「ある」のに見過ごされている、「ある」ことに気づけていない、そんな見方があってもいいんじゃないか。

人が人として、自分のことや誰かのことを大切に想う気持ちや願い、温かなまなざしや関わり、そしてそこから生まれるつながり。 そんなだれもが持つ「市民性」。
今この社会では、そこにあるはずのものが周りからも、自分でさえも見えにくく、気づかれにくくなっているのかもしれません。

だからこそ、私たちPIECESは、そんな「市民性」を照らし、育むことをしていきたいと思っています。
それこそが、孤立や分断へのやさしい処方箋になると信じて。

もちろんこのページだけで、すべてを伝えきることはできません。

それでも、改めて皆さんと一緒に「市民性」について感じ、考えるきっかけになれば良いなと思っています。

PIECESがどんな風に社会を見ているのか。そもそもなぜPIECESが存在するのか。そんなことも感じてもらえるかもしれませんので、もしよければページをご覧になっていただき、何か感じたことがあれば、身近にいる大切な人と共有いただくのはもちろん、SNSなどでもシェアしていただけたら嬉しいです。


▼やさしさのむしめがねー暮らしの中にある市民性ー

https://www.pieces.tokyo/mushimegane

お知らせ

最後に1つお知らせです。

この12月に、PIECESも入居しているシェアオフィス「social hive HONGO」が、同じ文京区本郷三丁目のエリア内で移転しました。
今までのオフィスから徒歩3分ほどの場所への移転ですが、今後イベント等でお越しになる機会もあると思いますので、その際は下記住所を目指してお越しください!

■新住所:

〒113-0033 東京都文京区本郷三丁目30-10 本郷K&Kビル5F・6F
小野田総合法律事務所内 social hive HONGO

それでは、今年も1年間ありがとうございました!
2024年もどうぞよろしくお願いします。よいお年をお迎えください!


事務局長からのお便り Vol.10

 
 

こんにちは、PIECES理事/事務局長の斎です。

前回このお便りを発行したのが8月31日。
まだまだ猛暑の日々にうんざりする日々だったことを覚えていますが、すっかり秋らしい気候になりましたね。秋の風を感じてほっとしたのも束の間、花粉と喘息持ちの身には実はしんどい季節でもあります。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

さて、「31日(サイの日)」にのみ更新するこの事務局長からのお便り。

今回は、この季節恒例?となったPIECESの全体合宿の様子をお伝えします。
今年もたくさんの印象的な場面があったので、組織の歴史などにも触れながら気合い入れて長々とこのお便りにしたためようと思ったのですが、、そんな矢先にお子の保育園から体調不良でお呼び出しの電話が・・・。
ということで、お便りを書くための時間が飛んでいってしまったので、当日の様子については、特に印象的だったことをほんの一部だけお届けします!

わたしとあなたとPIECESさん

「わたしとあなたとPIECESさん」、急にどうした?という感じかもしれませんが、これが今回の合宿のテーマでした。

PIECESが誕生して、今年で7年。この間、紆余曲折を経ながら、事業レベルではCforCの取組や啓発の活動が柱として位置づいてきました。影響を与えている範囲はまだまだ限定的かもしれませんが、目先の問題解決に囚われるのではなく、中長期的な視点で市民性を醸成していくことの重要性について、徐々にではあるけれどもその感覚を共有する仲間が生まれてきている感覚を持っています。

そして、その原動力となっているのがまきば(PIECESの運営に関わるメンバーの総称)の存在であり、このまきばでそれぞれが互いに関わり合いながら生き生きとあり続けられるかどうかが、事業や組織の発展に直結していくと捉えています。

昨年の合宿では、それぞれのメンバーが、個のレベルで過去・現在・未来に想いを馳せ、それを共有することを通じて、相互理解を深めることに取り組みました。

今年は、個の視点は引き続き大事にしつつも、「PIECESというフィールド」の存在をより意識することで、一人ひとりがPIECESのフィールドに立っていることの意味、そしてそこから生まれるこれからの未来について創造的に対話をしていきたい。
あくまで一人ひとりの存在があって、そこにPIECESというフィールドがある。その感覚を持ちながら、PIECESというフィールドに豊かなエネルギーをもたらしていきたい。
そんなことを願って、合宿当日に向けた準備が進められていきました。(そしてこの企画や当日の運営もまた、プロボノで関わるメンバーたちが中心となって取り組んでくれました。5人の運営チームの皆さん、ありがとう!)

2日間の対話の時間を通して…

今年の合宿地は埼玉県の長瀞町。
豊かな自然の中に佇む古民家の会場をお借りして、10月28日-29日の1泊2日で開催されました。

いつもはリモートで活動することがほとんどなので、メンバー同士が直接顔を合わせるのは本当に貴重な機会。1年以上活動に関わっていながら「はじめまして…」のメンバーがいるという、もはやお決まりの光景を眺めながら、2日間の時間はスタートしていきました。

普段、どうしても目の前の「コト」に追われがちになってしまうからこそ、この2日間で大切にしたのは自分自身の感情や願いに触れること。日常の役割や立場をおろして、ひとりの人としてあれることを大事にしながら、内省と対話が重ねられていきました。

全体としてどんな時間だったのかについて伝えることはとても難しいので(それぞれにきっといろんな感じ方があったと思うし、私はそんな風には思ってない!ってメンバーに怒られてしまうかもしれないので笑)、ここからは個人的に心に残ったことを1つだけご紹介。

それは、和室で車座になって、「わたしとPIECES」についてそれぞれの想いを共有し合っていた場面でのこと。
「いま自分がこのPIECESというフィールドにいることの意味に触れられた気がする」、「これから自分がより自分らしくあれるようにするために考えていきたい問いが見つかった」といった前向きな言葉が続く中、ある一人のメンバーが「この流れで言いにくいんだけど、正直今あまりワクワクする気持ちを私は持てていなくて…」と語ってくれました。

まだ、今のようにメンバーが多くなかった時からプロボノとして関わってきた中で、組織の成長を喜ぶ気持ちと同時に立ち現れてきたそのような想い。

その言葉を聞かせてもらったその場では、そんな想いをさせてしまっていることへの申し訳なさなどが浮かんできました。が、時間が経つにつれその率直な想いを場においてくれたことへの敬意や感謝の気持ちが徐々に湧いてきました。

組織に関わるメンバーがみんなエネルギーに溢れているのが理想であることは間違いない。そして、なんとなくそんな理想を持ちながら今回の合宿の企画に関わっていた気がしています。

でも現実はなかなかそうならないことの方が多いよなと。その現実を受け止めたとき、一人ひとりが感じている違和感や複雑な気持ちなどを場に出せること。そしてそれを受け止める環境があること。それこそが目指したい状態なのかもしれない。
合宿を終えた今、そんなことを気づかせてもらえたのかなと思っています。

他にも、一人ひとりが思い思いの場所で内省している時間、小グループで散歩をしている時間、チームに分かれて料理をしている時間など、それぞれに印象的な時間を過ごすことができ、書きたいことは尽きないのですが、今回はこのあたりで。

また31日にお会いしましょう!


事務局長からのお便りVol.9

 
 

こんにちは、PIECES理事/事務局長の斎です。

前回のお便りからあっという間に1か月ですが、皆さんいかがお過ごしですか。
この間、夏休みを取ってリフレッシュされた方、お子さんの夏休みが終わりホッと一息な方などもいらっしゃるかもしれませんね。

私は・・・頑張って走ってます。今年の5月頃から「そろそろホントにヤバい」の一心で、週1~2ペースでのランニングを始めたのですが、なんとか続いています。
何がヤバいのかというと、30代も半ばになり、ここ数年立て続けに腰痛や尿路結石(あれはホントに辛かった…)を発症してしまったという悲しき現実があります。ただ、いざ走り始めてみると、今まで知らなかったまちの風景にも出会うことができ、身体はもちろん心にも豊かさがもたらされていて、当初の危機感だけではない何か走ることへのポジティブな気持ちの芽生えを感じ始めている今日この頃です。

さて、「31日(サイの日)」にのみ更新するこの事務局長からのお便り。
今回は、PIECESが協働パートナーとして関わっている「project HOME」という取組について触れてみたいと思います。
もしかしたら既に知っているよ、寄付しているよという方もいらっしゃるかもですが、PIECES的な視点でこの取組について語る機会はこれまであまりなかったと思うので、是非この機会により関心を持っていただけたら嬉しいです。

ご報告

本題に入る前に、先日8月26日から今期のCforC(Citizenship for Children)のプログラムがスタートしたのでご報告です!

今年もたくさんの方に関心を持っていただき、事前に行った募集説明会には、過去最多の262名が参加。そこから最終的には、基礎コース47名、探求コース32名の方に応募をいただくことができました。
8月26日の初回のプログラムでは、冒頭のチェックインで多くの方から「ドキドキしている」という吐露こそあったものの、プログラムの進行と共に徐々に表情が和らぎ、後半は初めて顔を合わせる人たち同士とは思えない対話や質疑がなされ、初回からとてもとても濃い時間となりました。
会の終了後には、

「子どものことを真剣に考えている大人がこんなにたくさんいると知って、しかも近い地域にいらっしゃることもわかり、すごく嬉しかった」

「すべてのプログラムが受容的で優しい時間でした。出会ったばかりであっても、みんなが意識し、共有できるものがあれば安全な場は作れるのだなぁと思いました」

といった感想の声も聞こえてきて、ここから始まる6か月の学びと変容のプロセスがとても楽しみになりました。
プログラムの募集広報にご協力くださった皆さんには、この場を借りて感謝をお伝えします。本当にありがとうございました!
また、「実はちょっとCforC興味あるんだよな…」という方は、来年度のプログラムはもちろん、年内にも単発で参加できる機会を作れればと思うので、その機会に是非ご参加いただければと思います!

「居場所のない妊産婦」の支援に、なぜ「市民性」が必要か

まず最初に、project HOMEの取組についてご存知でない方もいらっしゃると思うので、簡単に紹介させてください。

project HOMEは、認定NPO法人ピッコラーレが2020年から開始した、困難を抱えた妊産婦(主に10代~20代の若年層)のための長期滞在可能な居場所づくりの取組です。助産師や保健師、社会福祉士などのメンバーが中心となり、衣食住の生活支援はもちろん、心身のケアや利用者を取り巻く環境面の調整なども幅広く担っています。
ピッコラーレは2020年以前から「にんしんSOS東京」という妊娠葛藤相談窓口を運営してきましたが、その窓口を通じて困難を抱えた「若年妊婦」と出会う中で、必要な支援に繋げようとしても既存の制度に当てはまらず狭間に取り残されてしまうという経験を数多くしてきました。「ないならつくろう」という想いで、全国でも先駆的な取組として活動がスタートしたという経緯があります。

実はPIECESとしては、活動開始から遡ること約3年、2017年末ごろからピッコラーレ代表の中島かおりさんらと一緒に構想づくりに関わってきた経緯があります。私自身、大学院の修論テーマとして「妊娠期からの虐待予防」を扱っているなど、このテーマには思い入れがあったこともあり、毎月のように池袋のカフェなどに集まり、組織の枠を越えてたくさんの議論を交わしたことを今でもよく覚えています。



そんなproject HOMEですが、今年で活動開始から丸3年を迎えました。この間、滞在での利用者(期間は、数日~数か月まで様々)だけでも20人を超え、日中の一時的な利用なども含めると、その数は更に多くなります。24時間365日体制で支援活動を行っているだけでも尊い活動ですが、出産して自分で育てる人、出産後子どもを託す人、産まない(中絶)選択をする人など、それぞれの利用者の選択を尊重し、一人ひとりの必要に合わせて、産前だけでなく産後も含めたサポートを行なっているところに、大きな特徴があります。

と、ここまで読んでくださった方の中には、もしかしたら少しの違和感や疑問が生じている方もいらっしゃるかもしれません。いかにも専門性が求められそうな支援のフィールドで、「市民性の醸成」に取り組むPIECESがなぜ、どのように関わっているのかと。
その問いについて、私なりに見えている景色を踏まえて2点触れてみたいと思います。


1つは、妊婦である主に10代の女性に対する視点です。
これまでproject HOMEを通じて出会ってきた方々の成育歴や利用背景に目を向けると、専門的な見立てやケアが必要になるのは言うまでもありません。臨月近くなるまで一度も医療機関で受診できなかった方や、虐待や暴力がある環境で妊娠に至った方などの生活を丸ごと支える上では、妊娠・出産に関わる専門的な知識や対人援助技術などが求められます。

一方で、妊婦である前に一人の人であり、なかなか他者との関係の中で安心や信頼が感じられない環境にいたことを考えると、その隣にいるのは、必ずしも専門職だけである必要はないのではないかとも感じています。

ここにPIECESとしてのこれまでの経験や思想がリンクしてきます。PIECESとしての初期の活動やそれ以前の個々の活動を通じて、複雑な環境の中で生まれ育ち、心に傷を抱えながらも安心して頼れる人がいない、頼っていいことを知らない子ども・若者とこれまで多く出会ってきました。
彼らには関わる他者がいなかったわけではありません。ですが、大切にされる経験が乏しかったり、誰かがふりかざした正義で傷ついたりする中で、社会からの孤立を深めていたのです。
そんな彼らと過ごす日々の中で、自分のことを気にかけてくれる、信じてくれる人の存在があることの大切さを痛感してきました。そして、その存在は、必ずしも専門職や支援者と言われる人たちばかりではありません。むしろ、肩書のない一人の市民としての関わりだからこそ、育める安心感や築ける関係性があることに気づかされてきました。

だからこそ、このproject HOMEにおいても、人がもつ他者への想像力や何かをしたいという想い、そんな「市民性」をエネルギーに変えていけるように、地域の人たちにいかに関わってもらえるか、地域や社会とのオープンなつながりや対話の機会はいかにして創り得るのかという課題に、ピッコラーレのメンバーとともに立ち向かっています。
具体的には、今年度で言えば、地域住民や地元企業の方々がボランティアとして関わるための間口づくりや、学びの機会づくりなどに取り組もうとしています。


もう1つ、産まれてくる子どもに対する視点というのもあります(前提として、project HOMEの取組では、子どもを産む・産まない、どちらの選択肢も本人の自己決定の結果として尊重しています)。
こちらはより感覚的なことかもしれませんが、産まれてくる子どもの視点に立った時、そこにたくさんの人が関わっているというのは本当に豊かなことだと感じています。

これは、つい最近私自身が体験したことですが、先日私が幼児期を過ごした教育機関(幼稚園のようなところ)が一般向けの展覧会を開催していたので、足を運んでみました。すると、驚いたことに、私の名前を聞きつけたスタッフの方が「もしかして、あの斎さん?」と声をかけてくれたのです。それも一人や二人ではありません。在籍していた当時の職員さんや、母親と今でも交流がある方などが次々と声をかけてくださり、当時の私との思い出話やきょうだいの話などをしてくれました(当の本人は何ひとつそのエピソードを覚えていませんでしたが笑)。
その時に話した方の多くは、名前を聞いても思い出せないような人がほとんどでしたが、それでも小さい頃の自分を知ってくれている人が、家族親戚以外にこれだけいたんだと理解したときに、妙な温かさのようなものを感じた時間になりました。


project HOMEを通じて出会う妊婦の方々、そして産まれてくる子どもたち、どちらにも言えることかもしれませんが、project HOMEでの出会いや経験によって、自分や他者のことを大事にしたいなと思えること、困ったときには誰かが助けてくれるかもしれないと思えること。
あるいは、ふとしたときに「〇〇さん」の存在が思い浮かぶ、そんな感覚が広がっていくことを目指していけるといいのかなと考えています。
さらには、できる限り多くの人たちがこの取組に関わっていく中で、関わった人のまなざしが変わっていく。そこから少しずつ、地域の、そして社会のまなざしが様々な背景を持つ妊婦や子どもたちにとって優しく温かなものになっていく。そんな未来のために、これからもピッコラーレの皆さんと手を携え、project HOMEを展開していければと願っています。

ということで、今回は、project HOMEの取組、そしてそれがPIECESの掲げる「市民性の醸成」となぜ、どのように重なるのかというお話をさせていただきました。
これを機に、若年妊婦を取り巻く状況や、project HOMEの取組について関心を持っていただけたら嬉しいです。そして、もし良ければ関心を行動に移す最初の一歩として、ピッコラーレの寄付サポーター(通称:ピコサポ)になって、活動を応援してもらえたらより一層嬉しいです!

▼ピッコラーレの寄付サポーターについて
https://picosapo.piccolare.org/

さいごに・・・

現在PIECESでは、「#問いを贈ろう」という啓発キャンペーンを実施しています。
2021年から始めたこの取組も、今年で3年目。今年は、8月15日~9月21日までの約6週間、全部で17の問いをSNS上でお贈りしています。

「問い」によって、自分のこと、周囲のこと、社会のことを立ち止まってみつめたり、想いを馳せたりする。そのひとときが豊かな明日や未来をつくっていくための力になるという想いで取り組んでいます。

PIECESがSNS上で発信する問いにお返事いただくのはもちろん、キャンペーン特設サイト上では著名人をはじめ、いろんな方の問いへのお返事を覗いてみることもできますので、それぞれに合った形でご参加いただけたらと思います。
また、9月の1週目と2週目の週末には、リアルな空間で問いに触れていただける展覧会を都内で開催します。お近くにお越しの際は、是非お立ち寄りくださいね。

▼#問いを贈ろう 展覧会 ”問いのほこら展”
https://toinohokora.peatix.com

それでは、今回はこのあたりで終わりにしたいと思います。
今年の残暑もなかなか厳しそうですので、どうか皆さんご自愛ください。
また31日にお会いしましょう!


事務局長からのお便りVol.8

 
 

こんにちは、PIECES理事/事務局長の斎です。

毎日本当に暑いですね…
個人的には冬よりも夏の方が好きなのですが、さすがに暑い。それでももうすぐ5歳になる長男はそんな事お構いなしに、週末のお出かけを楽しみにしており、この週末も屋外のプールへとしっかり連行されました。いつも通り、全く疲れの癒されない週明けです。笑

さて、「31日(サイの日)」にのみ更新するこの事務局長からのお便り。

気づけばちょうどこのお便りの発行から1年が経ちました。毎回読んでるよ、という声も時々頂くことができてありがたい限りです。

PIECESの事業のことや組織のことを、なるべくリアルに手触り感のある形でお伝えしたいと思って続けてきました。その使命が果たせているかは分かりませんが、これからもしばらくはこの頻度で続けていければと思います。


設立から7年を迎えて、今伝えたいこと

メイトの皆さんの支えもあり、PIECESは、2023年6月22日に7周年を迎えました。いつも本当に応援、ご協力ありがとうございます!

そんなメイトの皆さんへの感謝の気持ちを込めて、7月7日(金)夜にアニバーサリーイベントを都内で開催しました。当日は、東京・関東のみならず、新潟や愛知、広島などからの参加者も含めて、約60名の方にご参加いただくことができました。
会の様子は、PIECESのHPにも掲載しているので、よければご覧いただければと思います。ここでは会の最後に私からの挨拶でお伝えした内容を思い返しながら、少し補足を加えた形で、メイトの皆さんはじめ、これまでPIECESを支えてくださった皆さんへの感謝の想いを改めて言葉にしてみたいと思います。

NPO法人PIECESが誕生したのは2016年6月22日。

当時は、代表のいぶきさんをはじめ、私も含めて4人のメンバーが立ち上げに関わっていました。それぞれに豊かな願いや想いを持ったメンバーが偶然にも集まったのは奇跡のようなことですが、逆に言えばそれ以外はほとんど何もないところからのスタートでした。

登記していた住所は、いぶきさんの知人が有していたマンションの一室でしたし、当然人件費はゼロ。生活のためには別の仕事をメインにしなくてはいけない中での活動ということもあり、初年度の事業規模は80万円という状況でした。

今思えば、よくそんな状態でスタートしたなと何とも言えない気持ちになりますが、それぐらいの勢いとなんとかなるさ精神があったからこそ今があり、当時の自分たちには感謝しなきゃなとも思っています。

先にお伝えすると、今でも組織の運営は全然安泰ではないですし、事業の規模だってまだまだ小さなものです。3年後、5年後のことをゆっくりと見通すような余裕も正直なところほとんどありません。

ですが、当時はそもそも事業と呼べるものすらなかったですし、あったのは、4人のメンバーを除けば、何も言ってないのと同じレベルの果てしなく広いビジョンくらい。でっかいビジョンだけは掲げているけど、中身はなーんもない。そんな小さな小さなところからのスタートでした。

そんなPIECESが、今年設立から7周年を迎え、さらに認定NPOとして5年が経過し、初めて認定を更新するプロセスに差し掛かっています。
(ちなみに、認定NPOというのは、NPOの中でも一定の要件を満たしていると認められた団体のことをいい、全NPOのうちの約2%という限られた団体でもあります。)

その認定NPOとしての更新プロセスでは、過去5年度分のありとあらゆる情報に対してのチェックが入るのですが、その中に寄付者名簿の作成というものも含まれています。
寄付者名簿と言っても、単に名前だけを記載するのではなく、「だれが」「いつ」「どんな方法で」「いくらの」寄付をしたのかを1件1件明らかにし、リスト化していく必要があります。
1円単位ですべて照合していくのはなかなか骨の折れる作業ではあるのですが、毎年度分の名簿をそのように作成していきます。
今回、この寄付者名簿が、5年度分を合わせると、なんとA4用紙およそ500枚分にもなりました。かなりの量にはなるなと思っていたのですが、さすがに想像以上でした。

そして私には、その書類の束を最後に1枚1枚目を通して最終チェックをするという役目がありました。最初は単なるチェック作業のつもりで取り掛かったのですが、すぐにそうはいかなくなってしまいました。

というのも、目を通し始めると、NPOの設立直後の、まだ何もなかったあの頃から寄付を始めてくれた人の名前が出てきたり、何かのイベントでお会いして半ば無理やりにPIECESのパーティーに招待したのをきっかけに、それ以来いつもいつも応援の言葉を届けてくれる人の名前が出てきたり。名簿の年度が新しくなるにつれ、だんだんとスタッフの誰もお会いしたことのない名前が増えてきて、それでもそういった方が何年も寄付を続けてくれていたり。

そこに並んでいるのは数字と文字の羅列でしかないけれど、その人たちの存在が今のPIECESを形作ってきたことに想いを馳せたとき、大げさではなく心が震えるような感覚になり、とてもサクサクとは手を進めることができなくなってしまったのです。

確認作業そのものは当然大変なプロセスではあったのですが、最後のチェックを終えたとき、心から、心からの感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。


CforCのプログラムが今年も行えて、有給で働くスタッフがいて、これからの組織づくりについてみんなで夢を語って、そこにたくさんのプロボノやインターンのメンバーもいて・・・という、今の何気ないように思える日常があるのも、ここに至るまでにメイトの皆さんをはじめ、本当にたくさんの人たちの協力や応援、支えがあったからなんだと、いま心から感じています。

7周年のイベントの場に来てくださった皆さんには直接お伝えすることができましたが、お会いできなかった方々には、この場を借りて感謝の気持ちを伝えさせていただきます。本当に、本当にありがとうございます。

まだまだPIECESとして成し遂げてきたことは小さなことかもしれませんが、これからも皆さんと一緒に歩みを進めていければと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

ということで、今回はこのあたりで終わりにさせていただきます。それでは、また31日にお会いしましょう!


事務局長からのお便りVol.7

 
 

こんにちは、PIECES理事/事務局長の斎です。
突然ですが、皆さんは最近何か心動かされる出来事はありましたか?

先日、4歳の息子と近所を散歩していた時のこと。ふと道ばたに咲く花に目が留まりました。おそらくこれまでにも何度も目にしたことのある花だったのですが、何故かその時は足を止めてしばらく見入ってしまいました。花の名前に疎いので、写真を撮って帰宅後に妻に聞いたところ、どうやらマーガレットのようでした。
マーガレットがどんな花かを知らなかった自分には驚きを禁じ得ませんが、何か自分にとって特別な存在になった気がしています。
ちなみに、マーガレットの花言葉は「誠実」「信頼」「秘めたる愛」。残りの人生はマーガレットのように生きていこうと思います。

さて、「31日(サイの日)」にのみ更新するこの事務局長からのお便り。
PIECESは4月から新年度がスタートしたこともあり、今日は過去から未来へと見渡した時に、この1年がPIECESにとってどんな意味を持つのか、事業活動や組織運営上の主なトピックとしてはどんなことがあるのか、などについてお伝えしたいと思います。

2023年度の展望

2023年度、PIECES全体として共通するテーマは「チャレンジ」です。月並みな表現ですし、チャレンジのない年はないのですが、それでもなお様々な巡り合わせの中で、事業面・組織面どちらにおいても新たなチャレンジが重なる1年として位置付けることができます。

事業面では、これまで開発を重ねてきたCitizenship for Children(CforC)について、2方向のチャレンジがスタート、あるいは本格化していきます。

まずは、あえて言うなら縦方向での取組。これは言い換えると、既存のプログラムの深化を意味します。
これまでCforCでは、子どもの周りに信頼できる他者が増えていくことを目指して、「市民性」をテーマに子どもと関わる上でのあり方を探求するプログラムを実施してきました。いくつかのコースはありますが、いずれも3か月や6か月といった期間の中で参加を重ねる「学習(研修)プログラム」といえるものです。
このアプローチ自体は、毎年の効果検証を重ねる中で有意に学習による変化・変容がもたらされるようになってきたことからも、一定の手応えを感じています。

一方で、「市民性」を発揮できるようになるプロセスというのは、ある望ましい状態に向けて、効率的に何かを習得したり積み上げていくようなことではありません。
子どもや他者との関わりには二度と同じ場面はありませんし、もちろん関わる相手も一人ひとり異なります。そうなると本来必要となるのは「何をするか(Doing)」を学ぶというよりは、「いかにするか/どうあるか(Being)」を探求することといえます。

現状のプログラムでももちろんその点は意識しているつもりではあるのですが、期間の制約や「学習プログラム」という形式が無意識にもたらす影響によって、本来大切にしたいこととの間にギャップが生まれているようにも感じています。

そのような問題意識もあり、CforCはこれから2年間かけて大きくモデルチェンジさせていく予定です。具体的なことはこれからですが、たとえば健康的な生活を送りたい人がヨガやピラティスに通って健康を維持し続けていくように、地域の中で子どもや他者との関わりを大切にしたい人が、日常的に自分のあり方や態度を見つめ直せるような取組へと深化させていく。
そして、そこでは運営者・参加者といった垣根も極力なくして、同じ願いを持った「市民による市民のための実践共同体」へと変容させていければいいなと考えています。

そして、もう一つは水平方向での取組。CforCの実践から生まれてきたエッセンスを、地域を越えて他団体や他機関と協力し合いながら拡げていく「CforCコンソーシアム」と呼ぶプロジェクトです。
このお便りを通じてこれまでにも何度かお伝えしてきているので詳細には触れませんが、プログラムの深化と併せて、普及・発展に向けた試行錯誤にも本格的に取り組んでいくことになります。

また、これまで年間通して十分なリソースを割いてこれなかった啓発活動「Cultivate Citizenship」についても、CforCと並ぶ事業の二本柱として据えていくことになっています。
CforCの取組だけでは、どうしても広く市民性の醸成に寄与することが難しいこともあり、「子どもの権利」や「人の持つ想像力」などを入口に、WEBでのキャンペーンやイベントなどを通じて「市民性」を身近に感じ、考えられる機会を作っていきたいと考えています。

実はこの啓発活動は、直近数年間の苦しみの産物として育ってきた取組ともいえます。というのも、2021年以降「PIECESらしいファンドレイズとはどうあればいいのか?」を模索してきた経緯があります。
その中で、問いを贈ろうキャンペーンをはじめとしたいくつかの新しいチャレンジを重ねてきました。なかなかファンドレイズの施策としては結果が出ずに、メンバーの中には悔しさや苦しさもあったように思います。しかし、積み重ねてきたことを振り返る中で、ファンドレイズとは切り離したときに、取組そのものがPIECESの掲げるミッションを体現するものであるという気づきがもたらされました。

既に今月も単発でのイベントを実施したり、他団体とコラボレーションする形で大きな企画が生まれるなど、これまでの試行錯誤が今新しい形で動き始めています。
まだこの先どんなふうに発展していくのか、どんな影響が生まれていくのかは未知数ですが、これからの展開を見守っていただくとともに、たくさんの関わりしろがある取組ばかりですので、一緒にその輪に加わっていただけたら嬉しいです。

その他にも、事業面だけでなく組織面でも、いくつかのチャレンジが控えています。特に、5年に1度の、そしてPIECESとしては初めての認定NPO法人格の更新という、事務局にとっては一大イベントも控えています。

スタッフの数に対して、取り組むチャレンジの量が若干見合っていないような、やることが多すぎるような気がしなくもないですが、今年もまきばメンバー(プロボノ・インターン)やメイト(継続寄付者)の皆さんなどの協力もいただきながら、たくさんのチャレンジに励んでいきたいと思います。
今年も皆さんと対話を重ねながら、ともにPIECESの活動を発展させていければと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

【新メンバーのご紹介】

さいごに、大切なご案内です。前回(Vol.6)のお便りでもお知らせしていましたが、新年度から新たに4名の方がPIECESのスタッフとして入職しています(お1人は6月から)。いずれも主にCforCの担当なのですが、実は、今期の採用活動を始める前は、多くても2名か3名の枠で予定していました。
ですが、選考プロセスを経る中で4名の方々の人柄などに魅せられ、最後は思い切っての決断となりました。

(余談ですが、一般的には組織での役割や業務が先にあって、その下に人がいると考える方が多いかもしれません。PIECESでももちろんその要素がないわけではありませんが、「この人と一緒に何かを成し遂げたい」という想いで人が先にあって、その先に仕事や役割が生まれる要素も大事にできればと考えています。)

そんな素敵な新スタッフのことを皆さんにもご紹介できればと思い、4名には「わたしとPIECES」というテーマで、PIECESに加わった経緯や、PIECESとの接点などをリレーエッセイの形で綴ってもらうことになりました。

先日、1人目の配信がされたので、この場でも共有させていただきます。
人柄の伝わる素敵な内容になっているので、是非ご覧いただけたら嬉しいです。今後も2週間に1回の頻度で4名のリレーが続いていきますので、楽しみにお待ちください。

https://note.com/pieces_magazine/n/n4a486a94cd10

それでは、また次の31日にお会いしましょう!


事務局長からのお便りVol.6

 
 

明日から新年度、週明けからは新生活という方もいらっしゃるかと思いますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
私は、なかなか空欄が埋まらないままタブが開かれっぱなしになっている2023年度の事業計画資料を横目に(PIECESも4月から新年度です)、もはや焦りすら通り越したことで、穏やかな気持ちでこのお便りと向き合っているところです。笑

さて、「31日(サイの日)」にのみ更新するこの事務局長からのお便り。これまで、PIECESの事業活動の様子やその時々の運営上の課題について、私なりの視点でお伝えしてきました。6回目となる今回は少し趣を変えて、PIECESという組織そのものの立ち位置について、NPOの本来的な役割に触れながら書いてみたいと思います。PIECESが「分かりにくい」と言われる所以を「分かりやすく」書けるかどうかが、今回のミッションです。

良ければ、最後までお読みいただき、皆さんの感想や考えもお聞かせていただけたら嬉しいです。最初に言っておきますが、今回も長いです。笑

ご報告

今日の本題に入る前に、1つだけご報告です。前回(Vol.5)のお便りで、採用活動にまつわる苦悩をお伝えしていましたが、その後の選考プロセスを経て、無事新たに4名の方の入職が決定しました!まずは、昨年末からの採用活動を、SNSでシェアいただいたり、説明会に足を運んでいただいたりと、様々な形で応援・協力いただいたことに、この場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございます。

また、おかげさまで今回本当にたくさんの方から応募をいただきました。応募書類や面談を通じて、PIECESへの深い共感や温かい想いを届けていただき、中には20枚超(!)の自作の紹介スライドまで用意してくださる方などもいました。が、その想いのすべてに応えられないことがまた苦しくもあり、悔しくもあり、一連のプロセスを終えた今、「もっといろんな人が関われる組織に育てたい!」という気持ちとエネルギーが沸き立っています。

今回ご縁をいただけなかった皆さんには本当に申し訳ない気持ちでいっぱいなのですが、また何らかの形でご一緒できる機会をいただければと切に願っています。

新年度から新たに加わる4名のメンバーについては、またPIECESのHPやメルマガ等で随時ご紹介できればと思いますので、是非楽しみにしていてください!

NPOの果たす役割、そしてPIECESの立ち位置

先日、PIECESで長くプロボノとして関わるMさんが、ミーティングのチェックインでこんな話をしてくれました。

Mさんがいつものように混みあった通勤電車に乗っていたときのこと。その日は少し離れたところに白杖を持った人が1人乗っていました。ある駅でその方が降車のためにホームに降り立とうとした瞬間、同じように降りようとした人の群れが、その方を押しのけながら進んだことでホーム上で転倒してしまうということがあったそうです。幸いスッと立ち上がったせいもあってか、周囲にいた人も特に気にするようなそぶりもなく通り過ぎっていくのですが、当のその方は点字ブロックを見失っている様子でした。思わずMさんが駆け寄って誘導したことで事なきを得たようですが、Mさんはその光景にショックを受けたと話してくれました。

人によっては、些細なことのように感じるかもしれませんが、その話を聞いたときに私もMさんと同様に心が痛む思いがしました。同時に、ここ最近を振り返っただけでも、自分自身の身の周りで似たような場面に出くわしたことは一度や二度だけではありません。

身近なところで生活する人同士ですら、互いに関心をもって支え合うこと、助け合うことが難しくなっている状況が、皆さんの周りにもあるのではないでしょうか。
そして、このことを私自身の活動フィールドに引き寄せて考えたときに、ある種の危機感を抱いています。それは、NPOなどの民間非営利セクターによる取組が、そのような状況に拍車をかけてすらいる側面があるのではないかということです。
言い換えると、子ども・若者を取り巻く生態系を俯瞰したときに、特にNPOなどの非営利セクターが社会課題解決組織に寄りすぎてしまっていることの弊害として、それらの状況を生み出してしまっているかもしれないということです。

当然のことながら、様々な生きづらさを抱えた人たちの困りごとを解消したり、傷や痛みを癒したりすること、それ自体が尊い活動であることは疑いようもありません。

そのような社会的なサービスを提供することで課題解決に取り組む組織が成長する過程では(もちろんすべてがそうではありませんが)、そのフィールドにおける専門性が向上し、自治体からの委託を受けたり、ヒト・モノ・カネが集まっていきます。結果として、その団体の支援する力がさらに高まり、より多くの対象者に支援サービスを届けられるようになっていきます。その部分をみれば、個別の課題解決は着々と進んでいるともいうことができます。

その一方で、NPOに限らず、行政機関であれ、専門機関であれ、当然のことながら人々の暮らしや困りごとすべてをカバーできるかと言ったら、それは不可能です。どこかでは、地域社会に生きる人々(市民)が、相互の関わり合いの中で連帯しながら、助け合っていく必要があります。

しかし、NPOなどが支援する力を高め、支援のスペシャリストとなっていくことで、市民目線で見ると、「人助けはNPOがやってくれる」「隣人の困りごとも誰かがなんとかしてくれる」というマインドセットを作ってしまっている感覚を抱いてしまいます。これは、まちの困りごとを「行政なんだから何とかしろ」と行政へのクレームとして寄せられる構造とも似ています。結果として、冒頭に示したような光景が、まちの中に生まれてしまうということです。

このような危惧は、実は少なくとも2000年代後半にはなされているのですが、その頃から本質的には変化していないでしょうし、あるいはSDGsの広がりなどとともに、拍車がかかっているようにすら感じています。

かのピーター・ドラッカーは、非営利組織の役割のコアには「市民性の創造」があると主張してます。まさに一人ひとりの市民が自分と他者とを尊重しながら、自分の意思で、他者や社会に関わっていくこと。これは本来誰もがもっているものだと思うのですが、その市民性が発揮されにくい状態を作ってしまっているともいうことができます。

社会的なサービスの提供と市民性の創造は同時並行で行っていく必要がありますが、どうしても後者が置き去りになってしまいがちです。当然どちらの方が大事ということではなく、どちらも大事ではあるのですが、頭で考えやすく、ストーリーとしても分かりやすいがために前者に人の意識が集まっていってしまうのかもしれません。後者で求められるのは個の価値観やマインドセットの変容という分かりにくいものであり、たとえ必要性を感じていても、エネルギーが集まりにくいのだと思います。

PIECESが「市民性の醸成」を掲げて、子どもの周りに生きる人たちの価値観やマインドセットといった「あり方(Being)」にアプローチすることにこだわっているのはそれが所以です。(ちなみに、PIECESでは市民性の「創造」ではなく「醸成」と言っています。創造はどちらかというと、ないものを新たに作り出すというニュアンス。それに対して「醸成」は、既に一人ひとりがもっているものを少しずつ醸し顕在化させていくニュアンスと捉えています)

市民一人ひとりが自分自身の「あり方」を問い直していくこと。PIECESに今できることは子ども・若者の周りにいる人たちに、そのためのフィールドやコミュニティを用意していくことです。それによってそこに参加した人、触れた人の他者への関わり方や自分への接し方が変化していけば嬉しいですが、それはもはやコントロールすることはできません。

時間がかかることであり、どこかで潮目が変わるのを待ち続けるような境地でいることには葛藤や不安があるのも正直なところです。
それでも、そのスピードが少しでも速められるように、様々なステークホルダーと手を携えながら、これからも「少しずつ、みんなで」活動を続けていきたいと思います。


事務局長からのお便りVol.5

こんにちは、PIECES理事/事務局長の斎です。
各地で寒波の影響が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

私は、先週1週間が、2023年の第一四半期でおそらく最も忙しい1週間だったのですが、それをなんとか乗り越え少しホッとしているところです。(がしかし、その代償として持病の腰痛を再発させてしまったので、2月前半は心身のリカバリーに充てたいと思います。。)

さて、「31日(サイの日)」にのみ更新するこのお便りも、今回で5回目となりました。最近ある社外の方とお会いした際に、「斎さんのアレ、読んでますよ」と不意を突かれてドキッとさせられることがありました。
意外な方だったので、今もその面影がチラついているのですが、あまり読み手の顔を想像しすぎても何も書けなくなってしまうので、今年もその時々のトピックについて、私の主観や心の声も交えながら、あるがままに綴っていこうと思います。

「CforCコンソーシアム」のキックオフイベントを終えて

度々このお便りでも触れてきましたが、PIECESがコア事業として行う「Citizenship for Children(CforC)」が次なるステージへ向かうための新たな取組「CforCコンソーシアム」というプロジェクトのキックオフイベントを、1月26日に開催しました。

開催してみてまず率直に驚いたのは、参加申し込みの人数です。まだまだ認知が広がる前の段階なので、告知を始めた当初は20~30名くらいでこじんまりと開催かなと想定していました。が、いい意味でその予想は裏切られ、最終的には100名近い方から申込を頂き、たくさんの方に関心を寄せていただく機会となりました。

当日は、プロジェクトの構想内容や実施背景を私からお伝えするとともに、プロジェクトへの資金提供者である「公益財団法人トヨタ財団」でプログラムオフィサーを務める武藤良太さんにお越しいただき、なぜいまこのプロジェクトが社会にとって必要で、どんな期待をもって採択したのか等々についてもお話しいただきました。

さらに、実際にCforCの取組を自地域に取り入れることを検討中の中間支援機関の方にも急遽登壇いただき、その動機や期待についてお聞きすることができました。

お二人にはとても素敵な話をしてもらった一方で、私自身は、いろいろと伝えたい想いが強すぎたあまり、話がついつい冗長になり、終了予定時間をだいぶオーバー。それでも最後までたくさんの方が残ってくださり、温かい時間を過ごすことができました。

参加後のアンケートでは、ありがたいことに6割くらいの方から、「自身の関わる団体・機関等として、コンソーシアムへの参加やCforCプログラムの協働・連携について積極的に検討したい」、あるいは「個人としてCforCやコンソーシアム運営に参加・協力したい」といった声を頂くことができました。

その他にも、

・PIECESの今後目指していく世界観がわかった。
・コンソーシアム構想の意図・内容やトヨタ財団の目指しているところがよくわかった。
・「課題解決」以前に、「課題を生まない」地域や社会を市民が主体となってつくる、というトヨタ財団さんの考え方は、PIECESの価値観ととてもマッチしていて心強かったです。
・自団体でもエッセンスを取り入れたり、協力・共創していきたいと感じる内容でした。高島社協の方のお話も印象的で学びになりました。

といった嬉しい言葉もたくさんありました。

一方で、「理念には共感したけど、話の内容が難しかった」「ハードルが高いと感じた」という声もあったように、まだまだ広く協力を呼び掛けていく上では、課題も山積みです。
一朝一夕には変化は難しいですが、地に足つけて多くの方々とじっくり対話しながらコンソーシアム化を進め、市民性の醸成、そしてその先にある子どもの孤立を防ぐコミュニティづくりに寄与していきたいと考えています。

今回申込はしたものの、当日参加できなかった方も多数いらっしゃるので、また本プロジェクトの経過については、時々報告会などを開催していけたらと思います。
今後もできる限りプロセスをオープンにしながら進めていく予定ですので、是非参加できる形で協力・共創の輪に加わっていただけたら嬉しいです。

一年のうちで、もっとも頭を悩ます仕事の話

今回はもう一つ、今まさに現在進行形で進んでいる、一年のうちで最も頭を悩ませ、心を消耗する仕事の話について綴ってみたいと思います。

小さな組織の運営・経営に携わる方には共感していただけるのではないかと思いますが、ズバリ「採用」の仕事です。

大事なのはわかるけど「もっとも」ってことはないんじゃない…と思われるかもしれませんが、これがこれが本当に命を削って取り組んでいると言っても過言ではありません。
というのも、PIECESのように正職員が10人にも満たない組織では、当然一人が組織に与える影響が大きくなるため、そのプロセスは慎重にならざるを得ません。
また、組織のフェーズが少しずつ変化する中で、今この組織にどんなコンピテンシーやスキルを持った人が必要なのか、あるいはどんなカルチャーをもたらしてくれる人が必要なのかを定義すること自体がとてつもなく難しいという側面もあります。

さらに、これは私自身のソーシャルワーカーとしてのアイデンティティがもたらす職業病のようなものかもしれませんが、どうしても人を評価・判断することへの抵抗感が染みついているらしく、気を抜くと面談の場がどうしても共感的になってしまうのです。
そのため「選考モード」のスイッチをオンにし続けることに多大なエネルギーを要してしまうという話もあります(そこは単なる力量不足でしかないのですが。。目の前の人を全人的な存在として尊重するところから始まるソーシャルワーカーが、採用をうまく進めるための心得をご存知の方がいたら是非教えてください笑)。

今回は採用説明会への参加者が80名、書類応募者が29名と、いずれも過去最も多くの反響がありました。たくさんの応募があるというのはこの上なく嬉しいことではあるのですが、応募枠が少ない分、お断りしなければいけない方の人数も多くなります。
皆さんそれぞれに尊いミッションを持っていたり、PIECESへの深い愛を感じたり、そのスキルなんとかPIECESで活かせないかと思わずにはいられなかったり、、それでもどうしたって一緒に働きたいと思った人全員にオファーを出すことはできず、泣く泣くごめんなさいの連絡を入れることになります。それが本当になんとも言えないツライ時間で、ごめんなさいの連絡に対して頂く返信メールとかまぁとてもすぐには開けません。。

採用活動を通じて、どんな人との出会いがあるのか、どんな人とご一緒できるかを想像したり考えたりすることの楽しさも当然ある一方で、この心のすり減り具合はなかなか慣れるものでもなく、早く終わってほしいというのが正直な願いです。笑

そんなわけで、私だけでなく採用に関わる他のスタッフも皆、連日うんうん唸りながらも頑張っていますので、このプロセスの先に無事に新しいメンバーの入職が決まった暁には、温かく歓迎してもらえると嬉しいです!

ということで、今回も相変わらずの駄文長文ですが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
また31日にお会いしましょう。


事務局長からのお便りVol.4

こんにちは、PIECES理事/事務局長の斎です。2022年の大晦日、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
「31日(サイの日)」にのみ更新する事務局長からのお便り。
大晦日にまでお届けするような代物か?という大いなる疑問はありますが、31日にお届けすることにおいてのみなんとか存在意義を保てているので、今回もよければお付き合いくださいませ。

さて、12月は寄付月間ということで、今回はNPOの資金調達に関わる違和感についてのお話です。今日書く内容は、先日個人のSNSでアップした内容をベースにしています。反響が比較的大きかったので、こちらでも皆さんと共有させてください。
今月も長文になりそうですが、年末年始がお休みの方は、お昼寝前の睡眠導入のお供にでも眺めていただけたら嬉しいです。

資金調達の営みについてのモヤモヤ

1か月ほど前のことですが、とてもありがたいことに、PIECESの活動に大口の寄付をいただけるという機会がありました。寄付者の方の希望もあり詳細は伏せますが、とても想いのある方からの温かさを感じる寄付でした。

この寄付についてはプロセスに特徴があり、自分たちで頑張ったというより、間をつないでくれた人に話が来て、間をつないでくれた人がPIECESのことを紹介してくれ、間をつないでくれた人が提案をまとめてクロージングしてくれた、という案件でした。つまり、その間私たち団体サイドの実働は最低限のもので、ありがたいことに間をつないでくれた人たちのネットワークと尽力によって開拓された寄付と言えます。

関係者の方々にはただただ心からの感謝と頑張るぞという気持ちで溢れているのですが、同時にもう一つ湧いてきてしまったのは、「いやそもそも、(世の中が)普段NPOの側に資金調達頑張らせすぎじゃない?」という気持ちです。

いや、何を生ぬるいこと言ってんだって感じもするし、そこ頑張るのが仕事でしょって話かもしれませんし、NPOにお金バラまけと言いたいわけでもない。

ですが、本当に社会をより良いものにしていくのであれば、NPONGOなどがもっと事業活動に専念できる仕組みになっていってもよくない?という少年のような気持ちもあるわけです。PIECESでいえば、まだまだ安定財源が十分確立しているわけではないので、時期やタイミングによっては、運営メンバーの2~3割のエネルギーが、ファンドレイズに関連するところに向けられていることもあります。

平時においても、ファンドレイズチーム中心に全身で(頭も心も足も使うので)汗かきながら頑張っていますが、正直なところ頑張れば資金が集まるというものでもありません(冒頭の寄付の話も、ありがたい話ではありますが、再現性は決して高くないのです)。

私たちが取り組む領域では、本質的なことをやろうとすればするほど、取組は一見すると分かりにくく、分かりにくいものに通常資金は集まりません。なのであの手この手を試行錯誤するわけですが、基本的には事業活動に本来充てたいはずのリソースがそれにより地味に延々と奪われていってしまいます。

いろんな寄付関係のサービスやプラットフォームなども出てきていて、お世話になっているものもたくさんあります。ですが多くの場合、結局のところは団体サイドのコミットなしでは継続的な打ち手とはなりえません。また、サービスに寄付や寄付者が集まってきたとしても、そこにコミットができる一部の団体や知名度の高い大きな団体に、どうしても寄付者は流れていってしまいます。

実力不足と言われてしまえばそれまでですが、そもそも社会の全体最適を考えれば、収益を上げることに関心もなければ、事業発展と収益性が連動しない領域で活動していて、それでも社会や人々にポジティブな変容をもたらす活動というものは相当数あるはずです。であれば、それを活かそうとするエネルギーや仕組みがもっとあっても良いのではないか…というところに思い至ってしまうわけです。

ちなみに、資金調達の外注化に向かいたいという話かといえば、そうではありません。うまく外注も使っていくことはあるかもしれませんが、資金調達の営み自体は手放さずに一定内製しておくことが大事だと思ってます。寄付者の顔や想いが見えにくくなったりすることの弊害はもちろん、資金提供者との適切な緊張関係を持っておくことは組織の基盤強化につながるとも思っているからです。ただ、今のままだと、あまりにも負担が大きすぎる。さらには、お金を作りやすい、あるいはお金が流れやすいイシューや取り組みだけが生き残っていくことへの危機感もあり、社会全体としてもっとバランスをとる作用が働いてほしいなと思っているところです。

具体案も何もなく、だからなんだと思われてしまう話かもしれませんが、よければ皆さんのお考えや感想の声、場合によっては叱咤激励の声などもいただけたら幸いです。


さいごに、大事なお知らせを2つ・・・

1)スタッフの採用がスタートしました!

PIECESで久しぶりのスタッフ募集(正社員/業務委託)が始まりました!
https://www.pieces.tokyo/recruitment2023

今回は、メイン事業とバックオフィスそれぞれで募集しているポジションがあるだけでなく、働き方も週2~3日での兼業や、週4~5日でのコミットも可能なので、間口広めでいろんな方にチャンスがあります!

正直、2,3年前は、組織のカオスぶりにスタッフ募集のアナウンスするにも後ろめたさがありましたが(今もないわけではありませんが笑)、今はある程度胸を張って募集できるくらいにはなってます。
そんなPIECESを一緒に作ってきてくれた素敵なメンバーたちが待ってますので、是非ご応募お待ちしてます。

ちょっとでも気になる、という方は下記日程でオンライン説明会も開催するのでぜひお越しください!説明会参加にあたって応募意志は全く問わないので、是非気軽に覗きに来てもらえると嬉しいです。

▼説明会の日程

2023年1月7日(土)10:30-12:00
2023年1月12日(金)20:00-21:30

▼説明会の申込はこちらから
https://peatix.com/event/3442043

シェアも歓迎ですので、周りにご興味ありそうな方がいたら是非お知らせください。SNSでのシェアも大歓迎です!

2)「CforCのコンソーシアム化」を語るキックオフイベントを開催します!

前回のブログ(Vol.3)で、Citizenship for Children 事業が次なるステージへ向かうための新たな取組についてお話をさせていただきました。「CforCのコンソーシアム化」と呼んでいるプロジェクトです。

このプロジェクトのキックオフイベントを1月に開催することになりましたので、ご興味ある方は是非除きに来てもらえたらなと思っています。

少し補足すると、このイベントは、子どもの孤立を防ぐためにこれまでPIECESとして取り組んできた「Citizenship for Children(CforC)」というプログラムを、各地の団体や機関、自治体等との協力・共創によるコレクティブ・インパクトモデルとしてプロジェクト化する構想を、初めてお伝えする機会です。

また、このプロジェクトに3年間の助成という形でコミットくださるトヨタ財団のプログラムオフィサーさんに来ていただき、助成金の出し手と受け手が1つのプロジェクトを真ん中に置いてクロストークするという、わりと珍しい?機会でもあります。

トヨタ財団さんの助成プログラム自体がとてもユニークで、その話だけでも面白いかと思うのですが、助成プログラムが掲げる「新たな自治」や「By all」といったコンセプトを補助線にしながら、CforCコンソーシアム化の意義や可能性についてお話しできればと思っています。

・市区町村、あるいは都道府県単位で子ども支援の中間支援に携わる方(NPO、社協、自治体など)
・地域住民を巻き込みながら、自団体の運営を発展させていこうと考えている方(子ども食堂や学習支援、居場所事業など)
・子どもの支援や環境づくりに取り組む非営利団体を助成する、財団や企業の方
・トヨタ財団の国内助成プログラムに関心のある方
・PIECESの最新の取り組みを詳しく知りたい方

などなど、ご関心のある方はどなたでもご参加いただけますので、是非お気軽にお申し込みくださいませ!

▼イベント詳細・申込はこちらから
https://peatix.com/event/3452108

それでは皆さん、良い年をお迎えくださいませ!
今年も一年間、本当にありがとうございました。2023年もどうぞよろしくお願いいたします。


事務局長からのお便りVol.3

こんにちは、PIECES理事/事務局長の斎です。

各地で紅葉が見頃の季節になってきましたね。と同時に、個人的には12月のカレンダーがちらついてきたことへの焦りのようなものも感じ始めている今日この頃です。皆さんは、いかがお過ごしでしょうか。

さて、「31日(サイの日)」にのみ更新する事務局長からのお便り。

今回は、直近2か月を振り返って、皆さんにお伝えしたい2つのトピックについてご紹介します。今月も長文になる気しかしないですが、日常のちょっとした隙間ででも眺めていただけたら嬉しいです。

1)Citizenship for Children 事業が次なるステージへ・・・

2016年の法人設立以降、約6年に渡って開発を進めてきた「Citizenship for Children プログラム(CforC)」。これまで、どのような原理で一人ひとりの変容や市民性が醸成がもたらせるかに関する試行錯誤を進めてきましたが、必要な要素の洗い出しとそのためのプログラムデザインが昨年までの取組によって、おおよそ完了することができました。

同時に、NPO法人セカンドリーグ茨城さんとの水戸地域での協働、認定NPO法人Living in Peaceさんとの奈良地域での協働なども経て、協働モデルでのプログラムについても実証を進めることができました。

それらの状況を踏まえ、今年度以降は、これまでの開発フェーズから普及・発展フェーズへと移行を進め、CforCを「PIECESによる取組」から「各地の団体や機関、自治体等との協力・共創による取組」へと変容させることで、持続可能かつ効果的な取組に進化(深化)させていこうという構想を持っていました(団体内部では、「CforCコンソーシアム化」と呼んでいます)。

そして先日、このCforCコンソーシアム化の取り組みに対してトヨタ財団さんの「2022年度国内助成プログラム」において助成を頂けることが正式に決定しました!

これにより、3年間で約1,800万円の資金助成を得られることが決まったため、まずはこの資金を活用して、普及・発展に向けた第一歩を踏み出していきたいと思います。

ちなみに、ここからは余談ですが、今年は「新常態における新たな着想に基づく自治型社会の推進」が助成プログラムのテーマでした。一見難しそうなテーマですが、募集要項や説明資料を熟読し、説明会で詳しく話を聞く中で、これは完全に我々の今後の構想ために作られたプログラムなのではないかという想いが募っていきました(そんなわけ100%ないのですが)。

そんな経緯もあり、普段も助成申請書を書くときには(ちょっと気持ち悪いですが)ラブレターを書くつもりで書いているのですが、今回は両想いかもしれない相手への本気のラブレターだと思い込んで企画書を書き進めたところ、その想いが届いたのか総応募137件の中から選んでいただくことができました。

助成金贈呈式の後の懇親会の場で担当の方にこそっと聞いたところ、審査委員会でも満場一致で選ばれたということを教えてもらい、今まで多くの助成金をいただいた中でも格別の嬉しさを味わうことができました。

 3年間に渡って助成を頂けるということで、地に足つけて多くの方々とじっくり対話しながらCforCのコンソーシアム化を進め、市民性の醸成、そしてその先にある子どもの孤立を防ぐコミュニティづくりに寄与していきたいと考えています。

10月20日に開かれた助成金贈呈式にて

2)まきば合宿を初開催!

去る10月15日-16日に、PIECESとしては初となる全社での合宿を開催しました。これまで開催されなかった理由は不明なのですが、有給スタッフに加えて、プロボノやインターンメンバーを交えての泊りがけの合宿は今回が初めての機会となりました(決して仲が悪いとかではないんです…ずっとやりたいって声はあったけど、シンプルにお互いに「誰か企画してくれないかな」のお見合いが続いていたんです…きっと笑)。

今回の合宿のテーマは「PIECESと共に歩む、過去-現在-未来への旅」
企画はPIECESらしく、全スタッフ参加型で、「過去」「現在」「未来」の3チームに分かれて、それぞれアイデアを出し合いながらコンテンツづくりを進めていきました。

当日の会場は、心地よい自然の風に包まれた熱海の温泉旅館「芳泉閣」(このロケーションが本当に最高だったので、社内合宿とかご検討の方は是非!)。

当日の様子については、ハイライトが多すぎて語り切れないので、2日間を終えての感想を一言だけ残しておくと、きっと豊かな時間になるだろうなとは思っていたけど、その予想よりもはるかに豊かで楽しい時間を過ごすことができたなという感じです。


今回の合宿では、あえてPIECESの今後のビジョンを話し合ったり、現状の課題について検討するようなことは一切盛り込みませんでした。ここに集っているメンバー一人ひとりに改めて光を当てて、それぞれのこれまでの経験や、「今、ここ」に持っている気持ち、未来への願いといったものをじっくりと共有するような時間を真ん中に置きました。

そうしたことで、長い人で7年近く一緒にやっているメンバー同士でも初めて味わう気づきがあり、日頃は一緒に活動していないメンバー同士が深いところでつながり合う、そんな時間になっていたように思います。

この合宿をしたからといって、何かがすぐに大きく変わるということはないのですが、これからも一人ひとりがPIECESの一部であるという感覚を共有できたことで、「少しずつ、みんなで」力を合わせて前に進んでいけるような気がしています。

老若?男女の総勢20名が集まりました

ということで、今回は直近2か月を振り返っての2つの出来事についてお話をさせていただきました。
前回に続き、非常に長くなりましたが、最後まで読んでいただいた方がいらしたらとても嬉しいです。

それでは、朝晩かなり冷えるようになってきましたので、くれぐれもご自愛くださいね。また年末にお会いしましょう。

事務局長からのお便り ~オンボーディングの話~

こんにちは、PIECES理事/事務局長の斎です。

先月、法人設立6周年のタイミングで、「6周年に寄せて~事務局長からPIECESに関わる皆様へ~」というメッセージをお届けしました。

するとありがたいことに、個別のメッセージやSNSで感想をいただくことができました(感想を寄せてくださった皆さんありがとうございます!どう届いていたかドキドキだったので、反応を頂けてとても嬉しかったです)。

その中で、「組織のことについて率直に伝えてくれたのが良かった」というご意見があり、今までいかにキレイな部分だけ発信してきたかという反省とともに、これからは少しずつでも手触り感のある発信をしていければと思うに至りました。

そこで、広報チームに協力をお願いして、今月から定期的に事務局長である斎からのお便りというカタチで、PIECESの事業のことや組織のことを、なるべくリアルにお伝えしていきたいと思います。

ただ、定期的と言っても、無理せず続けていきたいので、よほどのことがなければ「31日(サイの日)」にのみ更新します。31日がない月はお休みです(3月1日はどうしよう…考えておきます笑)。

この発信がPIECESにとってプラスになるかは一旦脇に置き、率直さを大切に続けていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします(とはいえ、私のことは嫌いになっても、PIECESのことは嫌いにならないでください…)。

組織の成長とカルチャー・価値観の伝播

 今月7月から、PIECESには新たに有給スタッフ1名、学生インターン2名が仲間として加わりました。これで現状では、8名の有給スタッフ、15名のプロボノ・インターン、4名の外部役員が日々の運営に参画していることになります。加えて、メイン事業のCforCでは、昨年度までにプログラムを修了した15名の修了生が今期は運営側として参画しており、そこまで含めるとスタッフの数も40名を超すまでに至っています。

 設立当時は5名に満たないメンバーだったことを考えれば、これだけ多くの仲間とともに活動ができていることには感慨深いものがあります。先日も、今期のCforCに関わる運営スタッフのキックオフミーティングで、20名近いメンバーが画面越しに集まっていた景色を見て、ぐっとくるものがありました。

その一方で、メンバーの増加を諸手を挙げて喜んでればいいかというと、そんなことはありません。特に、PIECESのように、活動の先に明確な課題解決や分かりやすい旗を立てていない組織にとっては、PIECESとして大切にするカルチャーや価値観を、新しく加わったメンバーに同じように大切にしてもらえるかが、組織づくりにとっては重要な要素となります。

 

現在PIECESでは、4つのコアバリューを掲げています。

①自己と他者を尊重するコミュニケーションを心掛ける
②多様な価値観に耳を傾ける
③こころから動く
④ひらかれたweのマインドを持つ

 (詳細はこちらからご覧いただけます)

 

一人ひとりの個性や異なる価値観を尊重しつつも、PIECES人としての共通するカルチャーや価値観をいかに伝播していくか。軸をぶらさず活動を継続する上では、重要な課題だと考えています。

露呈してきた組織の課題

 では、これまでそのための取り組みはうまくいってきたのか、という話になりますが、ご想像通り必ずしもうまく進めて来れたわけではありません。というより、正直なところ、1年くらい前まではほぼ何もできていませんでした。

先ほど「特に、PIECESのように・・・」とあたかもやってて当たり前のように書きましたが、当初から頭ではそう思いつつ、なかなか施策レベルにまでは落として来れませんでした。

 それでもある程度PIECESに加わった時点で、深いレベルでカルチャーや価値観を共有できていたメンバーが多かったこともあり、さほど大きなハレーションが起きるには至りませんでした(その意味では、2020年以前に加わり、ほぼ何のサポートもないままに今もなお継続くださっている皆さんにはホントに感謝の気持ちしかありません…)。

 ですが、徐々に関わるメンバーが増える中で、採用後ほどなくして、カルチャーが合わないことがきっかけで辞めてしまう方、なんとなくフェードアウト気味になってしまう方も出てくるようになりました。

特に非営利組織での経験がない方とのコミュニケーションでは、それぞれの当たり前が当たり前でない感覚、こちらの伝えたいことがうまく伝えられないことで生じる認識のズレなどから、組織に対する不安や不満を募らせてしまったように思います。

 

新たに始めたオンボーディングの取組

 そのようなことを経験する中で、いよいよこのままではいかん、ということでスタッフのオンボーディングに着手するようになったのが、およそ1年前です。

 (念のため、「オン・ボーディング」とは、新たに組織に加わったメンバーがスムーズに組織の一員になるために行う一連の施策のことです。「船や飛行機に乗っている」という意味の「on-board」からきているようです)

 PIECESの場合、圧倒的に「Doing(何をするか)」よりも「Being(どうあるか)」が大事と考え、試行錯誤をしながら現状では後者を軸とした下記のようなステップを踏むようにしています。

 

<Step1>レディネスづくり、認識の枠組みを揃える(加入後1週目)

  • 時代変化と世界に対する認識

  • PIECESの歴史

  • PIECESのスタンス・大事にしていること

  • 上記を踏まえた対話セッション

 

<Step2>Doing(業務)の理解をする(加入後2週目以降)

  • 各事業の全体像と会議体

  • 役割と業務

  • 対話セッション

    • これまでのその人の仕事史や今後のキャリア

    • 得意なこと・苦手なこと(チームで働く上で共有しておきたいこと)

    • 新しく挑戦したいこと・変化したいこと・変わらないこと

 

<Step3>Beingをお互いに深め合う(加入後毎月1回×3か月)

  • 対話セッション

    • 今感じているギャップや違和感、FITしていること

    • 大切にしたいことを大切にできているか

    • 今後の業務の進め方や内容についてのすり合わせ

 

と、これだけ見てもあまりイメージは湧かないかもしれませんが、ざっくりこんな感じで進めています。これらの取組の成果が出るのか否かは、まだもう少し時間をかけて検証していけたらなと思っています。

 「いやいや、もっとこうした方がいいよ!」「へぇ~、意外とちゃんと考えてやってるんだね」などなど、皆さんからの忌憚のないご意見お待ちしております。

 

さて、今回は、事務局長である斎からのお便りを始めたよ、それからオンボーディングに取り組み始めているよ、というお話をさせていただきました。

前回に続き、非常に長くなりましたが、最後まで読んでいただいた方がいらしたらとても嬉しいです。 

それでは、まだまだ暑い日が続きそうですが、くれぐれもご自愛くださいね。

6周年に寄せて

6周年に寄せて~事務局長からPIECESに関わる皆様へ~

こんにちは、PIECES 理事/事務局長の斎です。

PIECESは6月22日に設立から6周年を迎えました。最初は数人の想いだけで始まったところから、そこに共感・協力する人が少しずつ集まり続けてくださったことで、今年もこの日を迎えられました。

プロボノ・インターン含め30名のメンバーと、450名のPIECESメイト、その他活動を応援・後押しくださっている方々の一つひとつのpieceが合わさって、今こうしてPIECESとして事業に取り組むことができていること。その何とも言えない感慨深さを今年も噛みしめているところです。本当に皆さんありがとうございます!

事務局長とは名ばかりで、普段なかなか組織の様子などを皆さんにお伝えできていないので、この場を借りてこの1年のPIECESの様子や、今私たちが立ち向かっている課題、未来を見据えて今どんなこと考えているのかなどを、(私の心の声とともに)お伝えしたいと思います。

短くまとめようとすると大事なものがこぼれ落ちそうなので、冗長な文章になってしまうかもしれませんが、最後まで目を通してもらえると嬉しいです。

CforC事業は、新たなフェーズへ

2016年の設立以来、深刻化する子どもの孤立を防ぐために、地域・社会の市民性の醸成を目的として「Citizenship for Children(CforC)」プログラムに取り組んでいます。

2021年度は、より多くの人に参加していただけること、より参加者のニーズに沿った学びができることの2点を目的に、コースデザインを変更しました。これまで約半年かけて行っていたプログラムを、2ステップ3コース制にリデザインしたこともあり、参加者は前年比約2倍の64名となり、大幅な増加につながるといった成果につながりました。また、プロボノメンバーの活躍や、前年度までの修了生が運営に携わるなどの循環も生まれ始め、徐々に持続可能な運営体制も築きつつあります。(参加者の増加はもちろん嬉しいですが、この取組を同じように広げたいと思ってくれているプロボノメンバーの存在、そしてプログラムを終えたにも関わらず、手間のかかる運営に携わってくれる修了生の存在が本当に嬉しいし、間違いなくプログラムの質をぐんと上げてくれています…心から感謝)

このように、毎年プログラムの効果検証と改善を重ねてきたことで、質的にも参加者の変化・変容が促進されるようになり、また各地で市民性を発揮した様々なアクションや活動が子どもの周りに広がり始めています。

一方で、より多くの子どもの支え手を創出するためには、このプログラムを社会に開き、様々な活動主体とパートナーシップを築きながら普及・発展に取り組む必要があります。

そのため、今後は、プログラム運営におけるノウハウやナレッジの体系化や、協働パートナーを増やしながらコンソーシアム化を志向するなど、開発フェーズから普及・発展フェーズへと次なるステップにチャレンジしていきます。(とはいえ、フェーズが変わるということはそれだけ資金もこれまでとは異なる力量を持った人材も必要になるんです。そこが大変なんです。ということで現在 6周年の寄付キャンペーン を実施しているので、何卒ご協力のほどお願いします)

組織に生まれた変化

事業面だけでなく、組織面にも目を向けると、この1年でいくつかの変化があり、また乗り越えるべき課題も見つかってきました。

この1年であった変化の1つに、6年前の設立時のメンバーであり長年理事として運営のど真ん中に関わってきた青木さん(青木翔子)の退職があります。(「そんなこと?」と思われた方もいるかもしれませんが、PIECESのような規模の組織では、一人の存在が小さくない影響を与えているのです。。)

 

彼女の功績を上げたらキリがないのですが、CforCのプログラムデザインやファンドレイズの施策設計に至るまで、本当に幅広く活躍してくれていました。ちょっと雑なところはありましたが(笑)、そんな人柄も含めてメンバーからの信頼も厚かったので、退職を伝えたときにはショックを受けたり不安そうな表情を浮かべるメンバーも多くいました。

抜けた穴は埋まらない部分もあると思いますが、青木さんの次なる挑戦にエールを送りつつ、「なんか最近のPIECESビミョーだよね」などと言われないように、彼女から授かったものを大切にしながらメンバー皆で力合わせてこれからも事業活動に励んでいきたいと思います。

一方で、新たに加わったメンバーももちろんいて、PIECESに新たな風を吹き込んでくれています。2022年1月から広報ファンドレイズチームに加わったアンちゃん(矢部杏奈)は、ソーシャルセクターで長年活躍してきた知識や経験を生かして、PIECESのポテンシャルを探りながら、PIECESにとってふさわしい広報FRのあり方の構築に励んでいます。

その他にも、産育休から復帰するメンバーがいたりと、少しずつメンバーも増えてきています。これから皆さんと触れる接点も増えてくると思うので、是非新たなメンバーとも交流を深めてもらえると嬉しいです!

今、目の前にある課題

CforCは次なるフェーズに向かい、メンバーも少しずつ増えてきている現状ですが、CforCも広報ファンドレイズも採用も、より一層活動を推進する上で、目指す世界観を共有する新たな仲間を巻き込んでいくところに関して、一つ壁を乗り越えていく必要があると考えています。

具体的には、PIECESの真ん中にある「市民性」という、本質的に大事ではあるが、そのままでは捉えにくいものをどのように市民社会に染み渡らせていくか、訴求していくかという課題です。

たとえば、ファンドレイズにしても、その意義を訴求するプロセスでは、どうしても「シンプルであること」があらゆる局面で求められる傾向にあります。当然相手に伝わるように工夫する上で、分かりやすく伝えることは大事ですが、その一方で、課題の構造は当然複雑で、そこに対する打ち手も単純なものばかりではありません。

「それってでも親の問題だよね」、「医療とか学校が問題じゃないの」といった声が挙がりやすい中で、CforCのような、一見遠回りのような「分かりにくい」取り組みはどうしても距離を取られてしまう。

これまでは、既に同じような世界観を共有できていた人たちがCforCに参加したり、PIECESを応援してくださっていたケースが多い中で、共感と協力の輪を広げていくにはどうしたらいいか。是非これを読んでくださっている皆さんにも力を借りながら、乗り越えていければと思っています。

見据える未来

子どもの虐待や自殺、いじめなどが後を絶たない社会。起こしてはいけない戦争で、多くの人が命を奪われ、深い傷を負ってしまう世界。そのような状況を目の前にして、一個人としても、一組織としても、無力感を感じてしまうこともあります。

ですが、一市民のまなざしや行動によって、心に傷を抱えていた子どもが「自分はここに居てもいいんだ」と前を向いたり、「信じてくれる人がいるんだ」と力を取り戻したりする。そんな風景が広がる可能性を持った社会でもあると信じています。

子どもがウェルビーイングであれる社会の実現が、一朝一夕では難しいからこそ、市民性の醸成を起点に、「少しずつ、みんなで」「小さく、自分の手元から」できるアクションが生まれ続けるための土壌を地道に作っていきたいと考えています。

その地道な積み重ねの先で、もしかしたら潮目が変わる瞬間が訪れるかもしれない。その潮目が変わる瞬間を信じて待ち続けることには大きな葛藤や不安も伴いますが、だからこそ、一人でも多くの人とPIECESという営みをこれからも共にできたら嬉しいです。