【コラム】夏休み明け、子どもたちの「こころの声」に耳を傾ける

夏休みなどの長い休みが終わるとき、新学期にワクワクしたり、ちょっぴり憂鬱な気持ちになったり、嫌だな、行きたくないなと感じたり、普段生活している場所以外の選択があることにほっとしたり、さまざまな気持ちが出てくるかもしれません。

そういった気持ちをもつことは特別なことではなく、どんな気持ちも子どもたちの大切な気持ちであることに変わりはありません。
そんな中、しんどい、憂鬱だよ、休みたい、という気持ちを、周囲に安全に話せる環境が少ないと感じている子どもたちもいるかもしれません。

どんな気持ちか言葉にしづらいとき、子どもたちはからだやこころの変化をサインで教えてくれることがあります。それはもしかしたら、その子が安全ではないことの大切なサインかもしれません。サインが現れることはとても自然なことであり、子どもたちがもつ力でもあります。

自身の状態を教えてくれる大切なサインを私たち大人は大切に受け止め、子どもが1人だけで頑張る以外の選択肢とつながる道を、子どもの声を聴きながら子どもの周りにつくっていく必要があります。

からだやこころのサインとは?

【からだのサイン】

・ごはんを食べたくない
・頭がいたい
・お腹がいたい
・いつもより嫌な夢をみる 
・身体がちぢこまる
・息をすったりはいたりするのが早い
・身体に力が入らない など

【こころのサイン】

・外にでるのが不安になる
・なんだかイライラする
・自分が今どんな気持ちかわからなくなる
・だれかを頼る、相談することが難しくなる
・好きなことをやる気も起きない
・いつもよりだれかにあまえたくなる
・人のことがこわい
・自分のことを傷つけたくなる  など

※NPO法人ぷるすあるはとPIECESが協働で作成した『からだとこころのワークブック』から抜粋

子どもとのコミュニケーションで大切なこと

いつもと違うサインが出ているなと感じたときは、以下のことに気を付けて子どもたちとコミュニケーションを取ってみてください。

【言葉かけ】

・子どもの感情を否定せずに受け取る
子どもは言葉だけではなく、さまざまな形で自分の気持ちのサインを出しています。
さまざまな表現を丁寧に受け取り、子どもがどんな体験をしているのかを共有する安全な場をつくってみてください。

・子どものこころに声に耳を傾け、受け取る
自身の経験や判断、思い込みをちょっとだけ傍に置いて、子ども自身が何を感じ、どのような体験をしているか、声にしていない心の声に耳を傾けてください。
そして、教えてくれた体験や感情に対して、共有してくれた勇気への敬意を持ちながら、ジャッジすることなく「受け取ったこと」を肯定的に伝えてみてください。

・このような感情を抱くことは自然なことだよと伝える
子ども自身が「どうしていいか分からない」様子がある場合は、そのように感じることもとても自然なこと、そう感じることを共有してくれてありがとうということを伝えてください。
そして話したいタイミングで話して大丈夫だということ、一緒に考える方法もあるということ、私も一緒に考えたいと思っていることを共有してみてください。

・選択肢の情報を共有する
「私以外にも、こんな人に聞いてみたり、こんな場所に行ってみる、こんな選択肢もあるみたいだよ」とうことを、押し付けるのではなく、子どもがどうしたいかを大切にする姿勢で共有するなど、選択肢の情報共有もとても大切なことの一つです。

また、今が安全でないと感じたり、もし死にたい気持ちが強い、自分を傷つけることがやめられない場合は、子ども自身に安全について丁寧に共有し、まず安全を確保しましょう。

【行動】

・習慣を大切にする
毎日行っている習慣や日課を大切にしてみてください。規則正しい生活(いつもと同じ時間に寝る、ご飯を食べるなど)は安心感に繋がることがあります。

・やっていること、できていることに目を向ける
歯を磨いた、ご飯を食べた、好きなことをした、漫画を読んだ、疲れたから横になった、深呼吸したなど、私たちは負荷がかかっている時でもたくさんのことをしています。
そういったできていることに目を向けて見てください。書き出したりリストにしてみることも方法の一つです。

・子どもの声を聴く環境をつくる
大人が伝えるだけではなく、何より子ども自身の考えや感じていることを聴くことを大切にしてください。
今日と明日で意見が変わるのも自然なことです。それを子どもと共有し、安全に声を出していいと思える環境をつくってみてください。
子どもにかかわることは、子どもの考えをまず聴き、話し合って一緒に決めるようにしましょう。

・「やりたい」を尊重する
子どもの「やりたい」という気持ちを尊重する時間を作ってみてください。

子どもの力を信じてかかわる

どんなに小さくても、子どもは尊厳ある一人の人間です。
大人がそうであるように、それぞれの考えや視点、感情をもっています。子どもたちの声に耳を傾け、尊重することから心地よいコミュニケーションが始まります。
また、人の心は揺れて変化します。今日と明日で違うことを伝えてくれることも大切に受け取りましょう。

一人の権利主体であり、尊厳ある「人」として子どもと関わることで、関わる大人自身の中に葛藤が生まれることもあるかもしれません。自身の葛藤も大切にしながら、関わる大人もまた、自分が一人の人として大切にされたり、ケアされる時間をつくってください。

執筆:小澤いぶき


2022年の小中高校生の自殺者数が514人と、統計がある1980年以降で最多となったことが厚生労働省より発表されています。

厚生労働省(警察庁「自殺統計」より厚労省自殺対策推進室作成)

厚生労働省(警察庁「自殺統計」より厚労省自殺対策推進室作成)

特に、夏休みなど長期の休み明けは、子どもたちがさまざまな感情を抱き、不安定になりやすい時期です。
18歳以下の子どもの自殺は長期休業明けに増える傾向があるとして、文部科学省や厚生労働省は注意を呼びかけています。

子どもたちの安全な環境と選択をつくるのは社会の責任でもあります。
子どもたちは私たちのすぐ隣で暮らしており、私たちの振る舞いや関わりは、子どもたちの暮らしに影響を与えているからこそ、子どもを尊厳ある一人の人としてみつめ、子どもの「こころの声」に耳を傾け、子どもと共にある社会と日常を育んでいくくことが大切です。

子供のSOSの相談窓口(文部科学省)
こどもの相談窓口
子どものこころのケアに役立つ資料(兵庫こころのケアセンターより)

【イベントレポート】7周年Thanks Partyを開催しました!

PIECESは2023年6月22日に7周年を迎えました。
7周年を記念して、2023年7月7日(金)、田町にあるSHIBAURA HOUSEにて、「PIECES7周年Thanks Party」を開催しました。

今回は、PIECESの活動をともに育んでくださっているPIECESメイト(継続寄付者)のみなさまを中心に、さまざまな形でPIECESに関わってくださる方々と語り合う交流会形式でのイベントを企画しました。

当日はPIECESメイトやそのご友人、CforC修了生やこれまでに関わりのあった企業・団体のみなさまなど約60名の方が会場に集まり、和やかで温かな時間をともに過ごすことができました。
なんと一番遠くから参加された方は広島!関東のみならず、関西方面などからもご参加いただき、そのお気持ちにスタッフ一同とても励まされました。

パーティーではケータリングチーム「perch」さんのステキなお食事とともに、参加者同士が4,5名ずつ交流をする交流会企画や関わってくださっているみなさんの声も聴きながら、PIECESの最近の活動をご紹介する時間なども設けさせていただきました。

交流企画では、参加者同士の意外なつながりを発見したり、お互いに興味のある分野について語ったり、これからやってみたいことにワクワクしたり…どのグループもとても盛り上がっていました。

「ピース」や「7」をあしらったお料理で、会場がとても華やかになりました。

平日の夜でしたが、60名を超える多様な方々が集まってくださいました。

参加者のみなさま一人ひとりの、PIECESとともに優しい間を育んでいきたいという気持ちが会場内に溢れ、とてもエネルギッシュな空間となりました。
改めて、みなさまのお気持ち一つひとつが力となり、PIECESという団体ができていることを感じています。

参加者の声

  • 色々な人に配慮されながら相手を思いやる優しい空間の中で、様々な方とお会いしお話することができてとても嬉しく、楽しい時間となりました。私も少しずつコミットできたら良いなと思っております!素敵なイベントをご準備くださりありがとうございました。

  • お話ししてくださった方々から優しい間を感じられて幸せでした。

  • PIECES活動ダイジェストでは、この1年間でもどんどん新しいことにチャレンジ、発展していっているPIECESを感じられたし、PIECESの温かさとワクワクを感じられる時間でした!

パーティーでは参加者の写真を撮って、集めていくフォトブースをつくりました!

みなさんの力が少しずつ集まることで、大きな市民性の力に変わっていく
という意味を込めて…

ご参加いただいたみなさま、そして今回は参加できなくともお気持ちを寄せてくださったみなさま、本当にありがとうございました!そして今回の企画を一緒に作ってくださったまきばメンバーにも心から感謝しています!

これまでも、そして今も、これからも、PIECESはたくさんの方々とともに歩みを進めていきたいと思っております。8年目もどうぞよろしくお願いいたします。

執筆:矢部杏奈


PIECESでは一緒に活動を耕してくださるPIECESメイト(継続寄付者)を募集しています。

寄付者限定オンラインスペース「Piece for Peace」にもご参加いただけます!みなさまのご参加をお待ちしております。

イベントレポート|子連れ100人ヒロバ

2023年6月1日~4日に渋谷で開催された「子連れ100人ヒロバ」にて、子どもの権利に触れるプログラムを実施しました。ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました!

子どもの権利シールを集めよう

大人と子どもがたのしく「子どもの権利」を知るためのプログラム「子どもの権利シールを集めよう!」を実施しました。

子どもの権利ってなんだろう。
一人の人間として大切にされるってどういうことだろう。
自分たちにはどんな権利があるんだろう。

シールを集めながら、大人と子どもがともに権利を知り、学び、深めるきっかけとなっていたら嬉しいです。
当日は子どもの権利について書かれたポスターも展示し、子どもだけでなく、近辺で勤めるオフィスワーカーの方々も足を止めてみてくれました。

子どもの権利条約の中から、特に伝えたい10個の権利をポスターにしました。

子どもの権利が書かれたシールを集めて見せてくれました!

トークイベント「子どもと大人が共にある豊かな社会を作るには?」

株式会社spectrum※ 共同代表の岡田拓也さんと、PIECES代表小澤いぶきが「子どもと大人が共にある豊かな社会を作るには?」をテーマに対談を行いました。

「ギフト」という市民性

小澤:spectrumが運営する、子どもにぴったりのおもちゃと絵本を贈ることができる、子ども向けギフトのECサイト「soeru(ソエル)」の取り組みは、子育ての過程で「支援」ではなく、「ギフト」を媒体としているのが素敵だなと感じます。「ギフトを贈る」ということも市民性のひとつ。存在を肯定してくれるという意味ではウェルビーイングにもつながると思います。

岡田さん:自分に対して贈ってくれたんだという感覚ですよね。PIECESさんでは「市民性」をどのように捉えているのでしょうか。

小澤:国家に紐づくものではなく、一人の人として、社会に存在して、社会に影響を及ぼしている人なんだというまなざしをもって、社会に関わる。その営みをPIECESでは「市民性」といっています。


子どもの権利について考える

岡田さん:こども基本法の施行などで、今子どもの権利について話題になっていると思います。

小澤:子どもの権利条約は、1989年に国連で採択されました。日本でも1994年に批准されましたが、子どもの権利に関する国家レベルでの取り組みは進んでこなかったのではないかと思います。そんな中、2023年の4月にこども基本法が施行され、その中では子どもの権利条約の4原則(差別の禁止、子どもの最善の利益、生命、生存及び発達に対する権利、子どもの意見の尊重)について言及されています。

岡田さん:日本では「権利はある」ということを保障することと、「権利を守ろう」という制度設計があまりないように思います

小澤:権利という言葉自体をどう捉えているかが人によって様々だからというのもあるのかもしれません。権利は、それぞれの権利が大事にされている状態が共存するはずですが、誰かの権利を守ると自分の権利が侵害されてしまうという漠としたイメージを持つことがもしかしたらあるのかも知れません。

岡田さん:権利へのイメージが正しく認識されていないように思います。権利に大小があるようなイメージがありますよね。

小澤:権利と権力が混同されているのかもしれません。

岡田さん:国全体の権利や利益の方が個人より有利だという発想や、ある人の権利を重視すると、ある人の権利が蔑ろにされると思われてしまうことが多いのかもしれません。


子どもとの関わりについて

小澤:子どもと関わるとき、子どもの様々な表現を丁寧に受け取り、その言葉や行動の背景にも目を向けることが大事だと思っています。そしてそれと同時に、自分の言葉や行動にも、背景があることを発見していけるといいと思います。

岡田さん:「自分の中にどのような思いがあるのか」「どう言うバイアスがあるのか」というものは、見逃されがちですが重要ですよね。

私は、子どもと家族を当事者で閉じないことが大切だと思います。当事者だけだと、自分の受けてきた教育などの影響で、子どもが望まないものしかない環境になってしまうこともあります。さまざまなつながりがあれば、1人の子どもが肯定される機会も増えますよね。

小澤:バスの中でちょっと声をかけるとか微笑みを向けるとか、そういった行動も市民性ですよね。「そこにその人がいることが歓迎されている」「私はここにいて大丈夫感」ということにつながる大事な関わりです。

岡田さん:そういう存在はなんて名付けるんだろうと思った時に「共事者」という概念に出会いました。当事者こそがその問題を掲げていいというまなざしはあるけど、それだけではいつまでもメジャーな問題にならない。そういった時に、当事者ではない連帯の仕方を示す「共事者」と言うあり方がある。当事者ではなくても、立ち位置はたくさんあります。


こどもがこどもでいられる社会とは

岡田さん:誰でも、マジョリティ性とマイノリティ性を持っているんだと思います。そういった中で、だれかを制御するのではなく、マジョリティもマイノリティもあなたはあなたでいいんだよと言える社会が良いですよね。こどもがこどもでいられる社会は、誰もが自分らしくいられる社会なのだと思います。

小澤:子どもは声をたくさん発してくれています。でもそれが時に社会に届きづらい。そして、子どもは一歩間違えたら、大人が無自覚に制御してしまう可能性もある存在です。そういった勾配に対して自覚的になって、関わり方を捉え直す必要があると思っています。


ふたりからのメッセージ

岡田さん:子どもの存在を肯定することは、大人の存在も肯定することに繋がります。子どもが近くにいたら笑いかけてみるとか。それが共事者になる入口になると思っています。

小澤:自分のものさしや自分の時間で子どもをみつめるのではなく、子どものまなざしの先に何があるのかをみつめることを大切にしたいです。

トークイベントに参加して

今回は、NPOと企業、それぞれ違った立場子どもをみつめるお二人の対談でした。対談の中では、現代の子どものを取り巻く環境について、多くの問題点が浮かび上がってきましたが、その一つひとつに対して、広い視野から分析されているのが印象的でした。

「誰かの権利を保障することは、誰かの権利がなくなることではない」「当事者だけではなく、共事者という関わり方もある」「大人も子どもも自分らしくいることを肯定される社会」など、この対談の中で出てきたことが、もっと多くの人たちに認知され、理解され、そして実現に向けて一人一人が努力していけるような社会になることを願っています。

この記事を最後まで読んでくれた方も、少しずつ、子どもや社会全体のことを考えて行動してもらえたら嬉しいです。

株式会社spectrum
「みらいをまんなかに、いまをつくる」というミッションのもと、子どもたちが生きていくこれからの社会のあり方を構想し、社会課題に対して小さな変化を連続的に生み出します。


執筆:広報ファンドレイズ インターン 坂本朱弥音

「子どもの権利とウェルビーイング」に関する提言を行いました。

写真提供:Save the Children

2023年5月19日~21日で開催されたG7広島サミット(主要7カ国首脳会議)。PIECESはG7の公式エンゲージメント・グループである​​Civil7(C7)の運営を担うG7市民社会コアリション2023の幹事団体として活動しています。

5月21日(日)に、国内外のNGO・NPOが広島に集まり、G7首脳会合に向けて市民の声を届ける「NGOスペース」にて、PIECES代表理事の小澤いぶきが「子どもの権利とウェルビーイング」に関する提言を行いました。当日は、Save the Children Japanの西崎萌さん、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の渡邊淳司さんにもゲストとしてお越しいただきました。

提言の背景

近年、各国において「子どもの権利条約」を基盤として、子どもの最低限の生活の実現に留まらず、子ども個人の尊厳と人権を尊重したこどものウェルビーイングの実現が重要視されるようになりました。

複数の研究において、思春期以前のメンタルヘルスが、思春期以降のウェルビーイングや、心身の健康状態、大人になってからのその人の経済状況に影響を及ぼすことが示唆されています。また、子どもの権利とウェルビーイングの関係も複数の研究で示唆されています。

例えばOECD(経済協力開発機構)の調査では、子どものウェルビーイングには以下の要素が重要であると示唆されています。

  • 楽観性(sense of optimism)

  • 主体的に社会に参画・働きかけられているという感覚(sense of agency)

  • ここに居ていいのだという感覚(sense of belonging)

これらは子どもの権利に関わる問題でもあり、子どもの保健福祉医療教育を含むあらゆる分野が関わっています。しかし、日本においては、例えば以下のような実態があります。

  • 子どもの権利条約が認知されていない

  • 子どもの意見表明や参画の機会が限られている

  • 子どもの精神的幸福度が低く、自殺率が高い

  • 特定の環境や状況にある子どもや、難民の子どもが安全に暮らしたり、保護者とくらす、あるいは適切な養育環境での権利が侵害されている

また日本では、子どもの健康に関して身体的には比較的良好な状態であることが知られていますが、精神的な幸福度は低いこと(ユニセフの幸福度調査では精神的健康は38か国中37位)、10代の死因の1位が自殺であることなどが調査から分かっています。

2021年の国民生活基礎調査では、12~19歳の女性の40%、男性の31%が悩みやストレスを抱えていると答えており、2021年の全国調査では小中学生の約10%にうつ症状があり、10%以上の子どもは直近一週間に死にたい気持ちを感じたり実際に自分の身体を傷つけたと答えていることなどがわかってきています。

提言の内容

上記の現状を踏まえ、世界のさまざまな地域との協働のもと、日本においても子どもの権利の認知の拡大及び実質的保障を進めること、子どもの権利に基づくウェルビーイングの充足の実現に向けた取り組みが急務であると考え、以下の提言を行いました。

1.子どもの権利条約の周知と促進を、子どもと共にさまざまな地域や人との協働の元に行う。

ウェルビーイングは、学校のみならず、子どもが生活するあらゆる場面で実現されることが重要である。子どものウェルビーイングは、子どもの権利が土台となるため、子どもの権利が社会の文化となり浸透することが必要である。そのために、政府としても子どもの権利を保障し、普及啓発を推進することが求められる。

2.子ども若者の参画のもとで、子どものウェルビーイングについての検討、取り組み、可視化を行う。

子どものウェルビーイングに関する取り組みは、子ども同士や子どもと大人の対話、言語や文化の違いを超えたコミュニケーションを通して行われることが望ましい。そこで、子どものウェルビーイングにとって何が重要な要素であるかを、子ども自身が自ら体験し、考え、可視化・提言する機会をできるだけ多く、多様な人々と創ることが求められる。

当日の様子

西崎さんからは、Save the Children Japan で3000人の子どもたちの声をきいて行った調査の結果と、そこから見えてきた子どもの権利に関する現状や、子どもと大人の権利の尊重に対する認識の違い、子どもの声を共有いただきました。

渡邊さんからは、ウェルビーイングの要因が書かれた「わたしたちのウェルビーイングカード」を使い、中学校で行ったウェルビーイングを可視化し共有するワークを共有いただきました。大人からは出てこない発想がカードに反映されていく事例も教えていただきました。

小澤からは、これまでのPIECESで行ってきた子どもの権利を子どもや子どもに関わる大人が体験し対話する取り組みや、市民性を通した子どもや子どもに関わる私たちのウェルビーイングに関する取り組み、複数団体とともに行った国を超えて子どもたちが大切にしていることを聴き合い共有し合う企画、子どもの権利条約キャンペーンなどについての共有をしました。

参加者の声

写真提供:Save the Children

会見には子ども記者の方もいて「若者に対してのメッセージを伝えるとしたら何を伝えたいか」などの問いを投げかけてくれました。

また、他国の方からは「僕たちは、権利が当たり前ではない体験をしたから、市民社会がそれを当たり前にしていくためにさまざまな形で協働し、取り組んできたけれど日本はまだまだだとも感じる」といった意見や「今日話されたことを初めて知った。自分たちの企業でもぜひ話して欲しい。何ができるかを考えたい」といった提案などの声もいただきました。

「自分の見ていないことを見ようとしないと、誰かのことをまるでいないかのように扱ってしまうかもしれない。だから見えていないことがあることに気づいていくことが大事だ」という大切な視点も共有いただきました。


子どものウェルビーイングを考えるプロセスに子ども自身が関わり、子ども自身の声が大切にされることの重要さ、子どもの権利の周知と、権利の尊重を進めていくことの重要さをさまざまな観点から共有する時間となりました。

PIECESでは今後も、市民性を通して、一人の人として、自分の心を大切にしながら、子ども、そして地域、社会に関わる営みを育んでいきます

執筆:小澤いぶき

CforC2022・アクションサポートコースが終了しました。

毎月開催していた「間の発酵所」の様子

2022年度は「みつめるコース」、「うけとるコース」、「はたらきかけるコース」と3つのコースをオンライン開催したCforCプログラム。
はたらきかけるコース修了生の中から希望者を募り、最後のプログラムとなる「アクションサポートコース※」を2023年2月~5月に開催しました。

自分が暮らす地域で、自分なりにアクションし、優しい間が生まれていく

アクションサポートコースでは、実践者1名ごとに伴走者がつき、以下のような形で一人ひとりのオリジナルな実践をサポートしていきます。伴走者とミーティングを重ね、まずは2023年5月5日に自分なりのアクションの第一歩を踏み出すことを目指しました。

1.研修(毎月1回)
ジャーニーマップ作成、セーフガーディング研修 など

2.間の発酵所(毎月1回)
アクションの進捗会議、対話 など

3.伴走(随時)
大切にしたいことの問いかけ、スモールステップの洗い出し など

伴走者からの問いかけ

  • あなたが優しい間を一番届けたい人はどんな人ですか。

  • その人に届けたい優しい間はどんなものですか。

  • あなたが思い描く場ができたとして、あなたはそこにどんな風に居たいでしょうか。

伴走ミーティングでは、伴走者からの問いかけにより、いつもとは少し違った角度で自分をみつめ、言語化していきます。そんな営みを繰り返していくうちに、「自分の中でアクション実践イメージが明確になっていった」「自分で自分に問いかける思考回路になってきた」といった声が実践者から聞こえてきました。

初めて自分で場を開くことへの不安、周りの人と意見がすれ違った時の葛藤、告知が思ったようにできない焦り。初めてのアクションの準備中は、しんどさを伴う場面もありました。
時に伴走者にしんどさを吐露しながらも、自分で乗り越えて小さな「出来た」を積み重ねていった実践者の皆さん。
そして5月5日のアクションを終えて振り返ってみると、「やってみればいっか、とか、とりあえず行ってみようって思えるようになった」と話してくださるようになりました。

実践者が思う「優しい間」

  • 分からないのが当たり前、分からないからいい、という雰囲気があると、私にとって心地いい。

  • 『ない』ではなく『ある』の方から見てくれること。例えば、『不安があるんだね』っていうまなざしも寄り添ってくれている感覚がする。

  • 今回アクションした中で優しい間を感じた場面を思い返すと、『一緒にいる』ということが大きなキーワード。

アクションサポートコース全体振り返りでは、実践者の皆さんが今思う「優しい間」について問いかけました。
みつめるコースやはたらきかけるコースで感じていたことまで遡りながら、同期にとっての「優しい間」の語りを聞きながら、自分の感覚を言語化していく時間。
CforCプログラムを受講して11か月目となる実践者の皆さんから、その人自身の言葉で語られる「優しい間」は、この文章を書いている私自身としてもとても興味深いものでした。


実践者の想い

  • 肩書を外して、自分自身として地域に出たい。

  • 色々な背景を持った人同士がフラットにいられる場をつくりたい。

  • 日常で変なヒト、コトに出会うきっかけをデザインしたい。

実践者が5/5に開催したイベントの様子。当日のテーマ:子どもへの気持ちを綴ってみよう

2023年5月5日、十人十色の想いとともに、それぞれの手元から、アクションがスタートしていきました。
それはきっと実践者自身が、子どもにとっての「ちょっと困ったときに顔が浮かぶような、信頼できる他者」となっていく営みへとつながっていくのだと思います。
自分も、子どもも、地域も。「わたしたち」がwell-beingであれる優しい間が、これからもじんわりあたたかく広がっていきますように。

※2023年5月5日に実践者が行ったアクションについてはこちらの記事をご覧ください。

アクションサポートコースの終了を以って、CforC2022の全てのプログラムが終了しました。
アクションサポートコースまで受講した皆さんは、2022年7月~2023年5月の11か月間という長丁場での参加でした。お疲れさまでした!
まだ芽が出たばかりの皆さんの優しい間が、ゆっくりゆっくり育っていきますように。

執筆:鈴木唯加


CforCプログラムは2023年も開催する予定で、現在準備を進めています。「CforC2023」の募集要項がオープンとなりましたら、ご案内をお送りいたしますので、プログラムご参加の方または関心のある方はプレエントリーにご登録ください。

イベントレポート|PIECES公開セミナー「子どものこころの声を聴く」を開催しました!

子どもと関わるとき、私たちは自分の中にある当たり前や思い込み、先入観を通して関わっていることがあります。

たとえば「困ったことをしている」と周りが判断したその行動は、子どもにとっては対処だったり、大切な願いの表現かもしれません。

思い込みや先入観に気づいて、子どもを見つめるとはどういうことか。児童精神科医として10年以上に渡って、子どもたちの声に耳を傾けてきたPIECES代表理事の小澤いぶきとともに、事例を交えながら参加者のみなさんと深めました。

チェックイン

まずはチェックインから。今回は心理学の授業などでも使われるある外科医のエピソード(ドクター・スミス問題)を基に、自分たちの中にある「思い込み」や「価値観」に気が付く体験をしました。

物事をみつめるときに浮かぶ「かもしれない」は、自分の持つ価値観や経験、知識に依存します。目に見える行動・言動の意味付けを捉え直すためにも、まずは自分が持っている価値観や信念などに自覚的であることの大切さが伝えられました。


ストレングスの視点から子どもをみつめる

ストレングスとは、その人の限界や過去の失敗を指摘するのではなく、ポジティブな資質と未開発の潜在能力を探すことに焦点を置く概念です。
今回は学校に行かないでゲームを続ける子どもの事例を基に、以下のポイントに沿って、ストレングスの視点で捉え直すワークを参加者と共に行いました。

子どもの行為や内側から探る <4つの視点>
① 本人の行動への注目(何かへの対処)
② 一見(大人から見ると)困った言動の背景への注目
③ 興味関心への注目
④ 普段やっていることへの注目

一見大人から見ると困った行為の背景には、その子の願いがあるかもしれないという視点を持つこと、子どもの願いを一緒に見つけることの大切さについて話がありました。また、願いを一緒に見つけるためのポイントや子どもへの声掛けのヒントなどについてもレクチャーがありました。

子どもに関わる自分の願いをみつめる

後半では、先ほどと同じ事例を「自分の願いや価値観」からみつめました。
子どもの行為に対して、自分はどんな言動をしているか、どんな思考や感情を抱き、その背景にはどんな価値観や願いがあるか。
自分の願いに気づくことは、相手も自分とは別の願いを持つ人だと気づくことに繋がります。時に自分の願いを相手に押し付けてしまうこともあるかもしれず、それは誰にでも起こりうることであるということが伝えられた上で、子どもの願いに気づくためには、まずは自分の願いに気づき、受け止めることの大切さを深めました。


参加者の感想

・こどもたちからの学びを大切に、こどもたちとともに成長していける人で社会でありたいと改めて思いました。

・子どもの支援者になりたいと思う大人は、自分自身の思い込みを常に問い直していくことを忘れてはならないと思いました。

・子どもの声を聴く、ということは、その子と日々を過ごしている親の声を聴くことから始まるのかなと思いました。ストレングスを意識して、保護者さんの声に耳を傾けていきたいです。

・こどもに関わるお仕事ではないですが、逆に大人だから、家族だから、友人だから、わかるだろうという気持ちで認識がずれていることってあると思うので更に視点を広く持ちたいと思います !

・育児をしていてイライラしてしまうのは、結局子供ではなく自分にその理由があるなと感じるようになりました。自分の中にこうあって欲しいというエゴを発見する貴重な体験だったりもしました。そんな自分も責めずヨシヨシしながら笑、リラックスして受け止められるよう心がけたいと思います。

PIECESでは今後も、「価値観のメガネを外す」をキーワードに、様々なテーマでセミナーを開催します。
次回は「子どもの権利」をテーマに、8月に開催予定!

イベントレポート|CforC2022アクションサポートコース・フィードバック会を開催しました

4月15日(土)、CforC2022アクションサポートコースのフィードバック会を開催しました。

みつめる・うけとる・はたらきかけるの3つのコースで開講したCforC2022。はたらきかけるコースでは、実際に自分も子どもも生きる地域で自分らしいアクションをしていくために、まちの資源の活かし方やコミュニティづくりについて探求しました。
そして「優しい間」が生まれるために、自分なりの市民性が発揮されるアクションやプロジェクトを企画・実施していきます。

今回のフィードバック会では、はたらきかけるコースからアクションサポートコースに進んだ実践者5名が、それぞれのアクションプランを発表し、ゲストや参加者の方々からコメントをいただきました。

5月5日にアクションをするにあたって感じている課題について、ゲストのフィードバックを直接受け取った実践者の皆さん。聴講していたCforC修了生やまきば(プロボノ)メンバーからも、応援コメントや情報提供コメントが多く寄せられ、あたたかく背中を押してくれるような場となりました。

5月5日は全国さまざまな場所で実践者のみなさんのアクションが行われます!お近くの方はぜひご参加ください。

Hana-Co
日時:2023年5月5日(金)10時~13時頃
場所:神奈川県横浜市青葉区
内容:“愛着が愛着を生む優しい世界”を生み出していく3rd Place。初回の5/5は子どもへの気持ちを綴ってみよう
イベント詳細:https://www.instagram.com/p/CrcNlmMSRIq/?utm_source=ig_web_copy_link

インプロタイム チルタイム
日時:2023年5月5日(金)14時~20時
場所:東京都豊島区
内容:15歳くらいから20歳くらいの君たちへ、シアターゲームやってみない?
イベント詳細:https://www.instagram.com/p/CrK3CK9yclT/?utm_source=ig_web_copy_link

はらのまちぱれっと
日時:2023年5月5日(金)日中~夕方
場所:宮城県仙台市宮城野区 清水沼公園
内容:アートや遊びを自分なりの表現でその場にいる人たちと楽しめる場所です。絵の具遊びなど、屋外でのびのび過ごそう。
※こちらのイベント情報は学生団体ariのInstagramをご確認ください。

◆まなびsotto
日時:2023年5月5日(金)日中~夕方
場所:都内
内容:多様な大人からの手紙に返事を書こう
※場所は現在調整中です。詳細が知りたい方は、こちらからご連絡ください

この他、沖縄でも一般社団法人みんなの家の職員でCforC2022修了生が、誰でも自由にくつろげるコミュニティスペースを計画中です。


【トークセッション】
アクションプランの発表の後は、ゲスト3名でトークセッションを行い、市民性や優しい間について深めました。
ゲスト:
西川正氏  NPO法人ハンズオン埼玉
守本陽一氏 一般社団法人ケアと暮らし編集社代表理事/医師
小澤いぶき 認定NPO法人PIECES代表理事/児童精神科医/精神科専門医

市民活動や社会教育の場って増えているけれど、それらが社会包摂的な(ひらかれた)場に変わっていくことってあるんでしょうか。」そんな守本さんの問いかけからトークセッションがスタートしていきました。

西川さん:一番立場が弱い人に合わせて場をつくるという意志があるかどうか、がほぼ全てで。

小澤:いかに立場が違う人の目線が混ざりあえる余白があるか。意図的に違うviewで場を作っていく。

守本さん:だいかい文庫※でお店番をするときのルールのひとつが【いちばん遠くにいる人に気を配ってね】ということ。そのマインドがあると、お店番をしている皆さん自身がケア的に変わっていく、気づいていく姿がある。西川さんのお話とも近いな、大事なことだなと思いました。

続いて、子どもの当事者参画に関する話題へ。

小澤:「子どもたちの声から始まることに委ねるとき」と「大人の声から始まって、結果子どもたちと遊びが生まれていくとき」。これって似ているようで実は起点が違うんですよね。

西川さん:どちらにせよ無くてはならないのが、ああでもない、こうでもない、という【応答関係】と、【その場にいる人々自身の工夫や苦労が含まれていること】。

守本さん:運営者が楽しんでいるからこそ、周りの人も参画して、一緒に楽しんでいけるというのは本当にあるなと思っていて。

小澤:その風景を一緒に楽しもう、一緒に作っていこう、という人が増えるのって、巻き込んでやろうというよりは、所有を手放すような感覚なんだろうな。

西川さん:小学生が小さい子の面倒を見るのとか一緒に遊ぶのとか、大人にはできないですからね。そういう場面がたくさん生まれるのが包摂的な社会なんじゃないかなと思いますね。


※だいかい文庫とは…兵庫県豊岡市にある、本と暮らしのあるところ だいかい文庫。みんなで作る私設図書館/本屋です。お店番は、だいかい文庫のスタッフであったり、お医者さんであったり、アート関係者だったり、新聞記者だったり、学校の先生だったり、学生だったりします。

【参加者の声】

皆さんの人を想う真摯な気持ちが伝わって来ました。
日々、実現に向けての準備に割かれる時間の捻出やモチベーションの維持は容易なことではないと拝察し、プレゼンを聞きながら敬意を感じざるを得ませんでした。

同時に、場を開き継続していく難しさも感じましたが、やはり、先ずはやってみることが一番だなとも感じます。CforCのようにみんなで応援できるシステムは、場を開く大人にとって心強く、子どもにも安心で安全な空間を拡げられるのではないかと思いました。
他には、守本さんの『同感はしんどくなる、共感は相手の立場に立つ』というお言葉が、とても印象的でした。

また、講師陣から『子どもから始まる、没頭しているときがその人らしい、変わってほしいと思わない、視点の推移』など、心に留まるたくさんの言葉を聴くことができ、とても充実した時間でした。

参加させていただき感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

実践者一人ひとりの手元から優しい間が生み出されていくプロセスに立ち会う、豊かであたたかな会をともにつくることができました。ともにつくってくださった26名の皆さん、ありがとうございました。

この記事を最後までご覧くださった皆さんも、ありがとうございます。今後ともCforC 修了生のアクションを応援していただけたら嬉しいです。

執筆:鈴木唯加

2023年4月にこども基本法が施行されます|PIECESの政策提言に関する活動報告

PIECESでは2019年より、子どもや若者の孤立に関する政策提言を行っています。
2022年度は代表理事小澤いぶきがこども家庭庁準備室のアドバイザーに就任し、子どもが尊厳を持つ一人の人として、その権利が大切にされる仕組みと文化醸成へ貢献してきました。

こども家庭庁設立準備室・こども基本法公布について

日本は「子どもの権利条約」に批准していますが、これまで子どもの権利を保障する総合的な国内法の整備は行われていませんでした。「子どもの権利条約」とは、「差別の禁止」「生命、生存及び発達に対する権利」「児童の意見の尊重」「児童の最善の利益」の4原則をもとに、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」といった子どもの権利を保障しています。

2022年6月15日に、子どもが一人の権利主体として守られる「こども基本法」が公布されました。こども基本法の公布に向けて、PIECESは市民社会組織の一つとして、当事者と共に提言を進めてきました。

こども基本法には、子どもの権利条約の4原則が明記されており、この基本理念を基に、少子化対策、子ども・若者育成支援、子どもの貧困対策などさまざまな施策が進められていきます。

すべての子どもを対象にし、子どもの権利条約にのっとった法律ができたことは、子どもの尊厳が大切にされる社会に向けた大きな一歩です。

成育基本法について

子どもの心の孤立に関わってきた団体として、児童期の心を支える社会環境や、心が怪我した時にケアが十分になされる資源の必要性を伝えてきました。

さまざまな専門家からの提言も合間って、2022年に成育基本法※の改定がなされ、こどもの心の健康(メンタルヘルス)の観点が掲載されるといった動きがありました。

※正式名称「成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律


誰もがその尊厳を自然と大切にしあえるようなしなやかな土壌は、一人ひとりの市民性により耕されています。
市民性が誰の中にもある泉から湧き出る水のようなものだとしたら、時に制度や仕組み、既存の枠組みがその市民性の泉を枯れさせてしまうこともあります。
例えば、自分の声が誰にも届かなかったり、暮らしを支える制度の決定や活用に参加する権利がなかったりする状態がそれに当たります。
一方で市民性をエンパワーメントする工夫や仕組みも同時につくられてきました。その一つが今回のこども基本法の公布です。これらの政策は、子どもとともに地域を育んできたさまざまな人たちの声が集まって生まれたものです。

2023年4月、こども家庭庁が開設し、こども基本法が施行、秋にはこども大綱ができます。
子どもの声を聴くことが自治体で義務化され、子どもの権利を周知することの必要性も明言されています。
生活の中での実践に向けて、子どもも一人の権利主体として共に社会を育む環境を、これまで以上に前に進めていきたいと思っています。

代表理事 小澤いぶき

Citizenship for Children 2022が終了しました|CforCレポート

2022年7月から始まったCitizenship for Children(CforC)2022ですが、PIECESメイトをはじめとするたくさんの方々に支えられ、無事終了することができました。

CforCは、子どもと自分と地域にとってのwell-beingを実現するために、仲間とともに心地よく迷いながら、自分なりの市民性を探求するプログラムです。
今年は30名がみつめるコースを受講し、そのうち23名がうけとるコース、はたらきかけるコースに進みました。今回は今年のCforCプログラムで起きていたことを紹介します。

参加者に起きていた学び

CforCのコアと言っても過言ではない「リフレクション」では、実際に自分が子どもと関わった経験について、具体的なやりとりから子どもや自分の願い/価値観について深めていきます。

タダで買えるお菓子ない?という子ども 〜頭ごなしに反応されたら開示できない〜

ある参加者のAさんは関わっている駄菓子屋にやってきた子どもBちゃんとのやりとりを取り上げました。
Bちゃんはお金を持ってきておらず「タダで買えるお菓子ない?」と聞いてきたそうです。Aさんはタダで買えるお菓子はないことを伝えながら「ちなみに何が欲しい?」とも聞いてみました。
いくつかやりとりをした後、「じゃあ100円あったら買いたいものかごに入れてくれる?Bちゃんおすすめセット作って売ってみようよ!」とAさんは言いました。Bちゃんは楽しそうにおすすめセットを作ったそうです。

大人として社会のルールを伝えることと寄り添うことの葛藤

このリフレクションでは、参加者のCさんが同じグループに参加していました。CさんはAさんの話を聞きながら、こんな気づきを教えてくれました。

  • 私がこんな場面に出くわしたら(大人として子どもに社会のルールを教えなければという気持ちが先に来てしまい)、「子どもの心に寄り添う」を見失ってしまうかもという不安な気持ちが最初に湧いてきた

  • 万引き=悪いこと=悪いことをする子=要注意人物、というラベルをその子に貼りそうになっていたことにも気付かされた

  • 「お金持って来てね〜」と言い、「万引きお断り」みたいは張り紙をしたら その子は駄菓子屋から、子どもにとってワクワクする社会から「排除」してしまうことになる

ある場面を切り取っても、その場面の見方や子どもへの接し方は人それぞれです。
だからこそ、CforCで他者と共に学ぶことで、他者の眼差しの背景と自らの眼差しに気づき、見立ての幅を広げていく。それが私たちの住むまちに優しい間が広まっていくことになっていくと思っています。

CforC2022の詳しい報告は、PIECESの年次報告書で改めてお伝えします。2023年6月頃の発行になりますので、お楽しみに!

報告:CforC担当 くり

【イベントレポート】PIECES活動説明会~読み終えた本が想いをつなぐー古本チャリティのお話ーを開催しました!

2022年12月10日にPIECES活動説明会を開催しました。今回はゲストスピーカーとして株式会社ブキ代表取締役の菅原大司さんにお越し頂き、「読み終えた本が想いをつなぐー古本チャリティのお話ー」をメインにお話を伺いました。

■ゲストスピーカー:菅原大司(すがわらだいじ)さん

株式会社ブギ 代表取締役

東京都文京区でネット古本店「本棚お助け隊」と中古絵本店「OSAGARI絵本」を運営しています。
会社名の「ブギ」は、「ギブ(与える)」をさかさまにした言葉です。「与える」ことは、実は自分たちが「与えられている」んだという思いをいつも忘れないようにという、企業精神からきているそうです。


古本チャリティ募金をはじめたきっかけ

創業当初(18年前)から本棚お助け隊を始めました。本の買い取りをしていると宣伝していたなか、あるときお客さんから「査定額は、どこか頑張っている団体に寄付してください」と言われました。最初は日本赤十字社に寄付しました。古本チャリティは一人のお客様の声から始まり、形を変化させながら今では30団体が寄付先として登録されています。


寄付先団体はどんな団体が参加していますか?

地域や規模は特に関係ありません。国際協力、子ども、環境、医療、女性・LGBT支援などをしている団体と繋がっています。<本棚お助け隊の古本チャリティ募金団体一覧はこちら>https://hondana.biz/charity/

例えば、東京都文京区で活動しているこども宅食では、お子さんのいるご家庭に食材を定期的に配布しています。ブギさんから「何かできることないですか?」とこども宅食に声かけをして、食材と一緒に絵本を子どもたちに届ける活動を始めたそうです。毎年クリスマスの時期に、食材と一緒にラッピングした絵本をご家庭に配布。子どもたちは10冊くらいの中から好きな絵本を選べるように工夫されているそうです。

また、年末年始のオフィス大掃除シーズンに合わせて、株式会社サイバーエージェントが各社に古本回収BOXを設置。集まった古本をブギさんに寄付してくださり、その古本買取額を公益社団法人アニマル・ドネーションを通じて11の動物保護団体に寄付された事例も紹介してくださいました。

古本チャリティの取り組みを通してどんな変化がありましたか

古本の買い取りに関心がなかった方でも、古本がチャリティになるのであればと送っていただく方もいらっしゃるそうです。送料無料で古本を送れると選別せずに何でも送る方が多いようですが、「誰かのためになる」と思えば、キレイな良い本(査定額が高くなりやすい本)を選んで送ろうかなと意識されるのかもしれません。


OSAGARI絵本の取り組みについて

古本の買い取りだけでなく、絵本のリサイクル「OSAGARI絵本」の取り組みを行っています。菅原さんのお子さんのための絵本を探していたことがきっかけで、菅原さんの奥さまがOSAGARI絵本を始めました。店舗では絵本を購入できるだけでなく、店頭で好きな本が読めるように椅子が置かれています。

埼玉県新座市の小学校や神奈川県相模原市の子どもクラブなど、今まで繋がりのあるところに絵本の寄付をしたこともあります。近所の方は「OSAGARI絵本」を知っていて、小さなお子さんとお母さんが絵本を読みに来たり、近所の子どもたちが学校の帰り道に声をかけてきてくれることもあるそうです。

菅原さんからメッセージ

古本チャリティやOSAGARI絵本をやっているのは、「情けは人のためならず」ではないけれど、我々が喜びたいがためにやっている感覚が強い。こども宅食さんとクリスマスの時期に食材と一緒に絵本を配布したご家庭にアンケートを取るのですが、喜びの言葉をもらい「毎年やってよかったな」と自分たちが嬉しくなる。みなさんのためになるのであればそんな良い仕事はないなと思い、仕事しています。

宅配便に入るサイズのものは何でも受け付けています。本だけでなく様々なものを受け付けているので、「これはどうかな」と思ったらまずは入れてください。絵本だけでなく、ビジネス書、参考書などもお待ちしております!


今回、菅原さんから直接お話を伺い、「古本チャリティ」という仕組みをより多くの方に知ってもらいたいと改めて感じました。活動説明会にご参加頂いたみなさま、ありがとうございました。

PIECESでは、株式会社ブギさんご協力のもと、チャリティ募金を随時受け付けております!読み終えた本などを集めておりますので、ぜひご協力ください。

PIECES寄付者限定オンラインスペースPiece for Peace~2022年10月-12月のダイジェスト~

PIECES寄付者限定のオンラインスペースPforPの様子をお知らせします。
※PforPは、PIECESにご寄付頂いているみなさまが、社会も自分もwell-beingになることを目指して、イベントの参加や寄付者同士で交流できるオンラインコミュニティです(詳細はこちら)。

日常を豊かにし、市民性を醸成するオンラインスペースPforPのダイジェスト

Citizenship lab~小澤いぶきイラク活動報告会~を開催しました

認定NPO法人PIECESは、特定非営利活動法人 JIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)のイラクでの事業に、トラウマインフォームドケアや、子どもや子どもに関わる人たちの持つレジリエンスをエンパワメントするという観点から関わっています。

2022年10月にPIECES代表理事の小澤がイラクに赴き、JIM-NETのこれまでの知恵や経験、専門性にPIECESの知恵と専門性を重ね合わせて、小児がんの子どもに関わる大人たちが自分たちをエンパワメントし、子どもへの健やかな関わりにつなげていくピアグループのサポート、そして子どもや自分たちのケアの実践に向けたワークショップと研修を開催しました。活動報告会ではイラクで実施したこと(トラウマインフォームドケア・子どもへの関わり、子どもに関わる大人自身のセルフケア、難民キャンプ・学校や家庭訪問の実施)を紹介し、小澤自身が感じた想いなどを共有しました。

▶開催概要 10月21日(金) 21:30-22:30

▶「Citizenship Lab」とは

”市民性に触れ、市民性を探求する”をテーマに、社会にもっと市民性が広がっていくことを目指し、ゲストの方をお呼びしてそれぞれの分野での市民性について学んだり、メンバー間対話よりこれからのアクションについて考えたりするイベントです。


【vol.12 もし僕がダメになったら、助けてほしい。】

▶今回対話するメイトは?

Hikariさん:
東京都から継続寄付で参加しています。瞑想と運動で日々心を鍛えています。

▶開催概要

・10/28(金)@YouTube

・話し手:Hikariさん・まいまい・ゆいつん

▶ハイライトpick up!

  • PIECESの発信にも度々登場する、「まわりに助けを求めるハードル」。Hikariさんご自身が周りを頼るのがニガテだと思うからこそアクションした、自分のための小さな一歩と、周囲への温かな願いとは。

  • 続いてのテーマは「無条件のやさしさ」。3人で対話を重ねるうちに辿り着いたのは、日常的すぎて見逃しているわたしたちの市民性でした。

【vol.13 雑談という処方箋】

▶今回対話するメイトは?

たーやさん:
普段は病院で事務をし、地域活動として「暮らしの保健室」にスタッフとして参加しています。
以前は青年海外協力隊としてバングラデシュなどにも行っていました。
世代に関わらず「孤立」によって起こる困りごとにどう関わればいいのか悶々としていたじきがあり、そろそろ行動に移したいという思いもあってPIECESへの寄付をはじめました。

▶開催概要

・11/25(金)@YouTube

・話し手:たーやさん・まいまい・ゆいつん

▶ハイライトpick up!

  • 「病院だけでは治せない病気があると思う。」病院勤務と地域活動をしながらたーやさんが感じていることとは?

  • 医師、栄養士、社会福祉士といった専門職の方々も多い環境にいらっしゃるたーやさん。そんな中で、たーやさんだからこそ築けている地域での関係性について伺っていきました。

▶ふとんで#まどラジオとは?

PIECESメイト同士が、自分の暮らしのサイズ感で市民性について対話するラジオです。
毎月第4金曜夜に20分程度配信しています。(2022年12月からお休みし、過去のアーカイブを配信しています)


PforPコミュニティづくりを検討するため、個別ヒアリングを実施しています!

Piece for Peace(PforP)がスタートして1年が経ちました。現在、約140名の方にPforPにご参加頂いています。毎月イベント等を開催していましたが、一旦PforPにご参加頂いている方の声を聞き、改めてイベント企画やコミュニティ運営を検討することになりました。2022年12月までに20名の方にヒアリングにご協力頂いております。今後も引き続きヒアリングを実施しながら、みなさんが参加したくなるイベントやコミュニティ運営をしていきたいと考えています。


Piece for Peaceへのご参加をお待ちしております。

PIECESメイトのみなさんと、市民性醸成の道を一緒に歩んでいけること、楽しみにしています(単発寄付者の方も、期間限定でPforPに参加いただけます)。

子どもの権利月間終了のご報告

改めて、子どもの権利条約を広く普及したい

すべての子どもは生まれながらにして「子どもの権利」を持っています。
しかし貧困や虐待などを背景に、子どもたちの尊厳がないがしろにされている出来事が多々起こっています。虐待相談対応件数は年々増加し、命が奪われる事例も後を絶ちません。

今、改めて子どもの権利の重要性をとらえなおし、より広く発信していく必要性があるという想いから、子どもの権利月間キャンペーンを実施しました。

特設サイトでは、子どもの権利条約の4つの原則、4つの権利の紹介のほか、専門家へのインタビューや私たちの暮らしと子どもの権利を紐解く事例紹介も掲載しました。

この期間、SNSを中心に子どもの権利に関する情報発信を強化し、延べ18万人の方に届けることができました。期間中、情報を受け取ったり拡散してくださった方、イベントに参加してくださった方など、本当にありがとうございました。

すべての子どもたちが持つ「権利」が守られ、こどもがこどもでいられる社会をつくるためには、子どもに関わるすべての人が、子どもたちに起きている現状について知り、関心を寄せ、権利が実現されるように行動することが大切です。 
私たちPIECESは、今後もより多くの人が情報に触れることを目指して、広報・啓発の活動に力を入れていきます。

代表理事 小澤いぶきからのお礼

12月15日までのPIECESの子どもの権利月間・寄付キャンペーンが終了しました。
キャンペーンを一緒に広めてくださったり、メイトになってくださったり、寄付は難しいけれど応援しているよとメッセージをくださったり、一人一人の大切な思いを共有してくださり、本当にありがとうございました。
この期間で10名の方に新しくPIECESメイトになっていただきました。 また、来年度の活動の支えとなる33件のご寄付もいただき、ともに活動を広げてくださる仲間が増えて大変嬉しく思います。

誰もの権利と尊厳が大切にされる社会。それは、設立当初からの変わらぬ思いです。
子どもの頃から誰もが一人の人として大切にされる。
一人の権利主体として尊厳を尊重される。 私たちの市民性が社会に満ちた時にその社会が生まれているのだと信じて、これからもこれを読んでくださっているみなさまと一緒に、手元から社会を共に育み、市民性を醸成していきます。
「こどもがこどもでいられる社会」は、 「私が私でいられる社会」でもあり、これを読んでくださっているみなさまが大切にされる社会でもあります。

寒い日が続きますので、どうか年末も心身を大切にお過ごしください。

PIECES代表理事 小澤いぶき

専門家インタビュー

子どもの権利と私たちのくらしを紐解く

小澤いぶきによる解説などの詳細はこちらからご覧いただけます。

【イベントレポート】子どもと一緒に考えるワークショップ「子どものけんり」ってなあに?を開催しました

11月27日、PIECESの本郷オフィスにて『子どもと一緒に考える「こどものけんり」ってなあに?」イベントを開催しました。4歳から中学生まで10名の子どもたちと保護者の方6名が参加してくださいました。

はじめに、今日この場で大切にしたいこととして「思ったこと、感じたことは自由に表現すること、思ったことは否定せずに受け止めること」などを伝えました。子どもの権利条約にある4つの原則のうちの「子どもにとって最も良いこと」、「意見を表明し、参加できること」にも当てはまります。イベントを通じて少しずつ参加者の緊張感もほぐれていったように感じました。

子どもたちには会場の中を歩いて、子どもの権利条約が書かれたシールを集めてもらい、ワークシートに貼ってもらいました。子どもの権利条約は54条ありますが、その中で特に子どもたちに伝えたい10個を厳選しました。イラストレーターのひらのりょうさんのイラストを使用させていただき、シールを作成し、「イラストが可愛い!」と子どもたちから好評でした。

シールを集めた後、 シールにどんなことが書かれているのだろう?と見返してもらい、代表理事の小澤いぶきから子どもたちへいくつか問いを投げかけました。「学校のルールってどうやって決まっているのだろう?」「どんなときに自分の気持ちを伝えている?」など普段生活しているなかでどう過ごしているのか、振り返って考えてもらいました。生活しているなかで子どもの権利があるということに気付いてもらう時間となりました。

参加者の声

子どもたちからの声

・シール集めが楽しかった。

・色々なことを伝えることができてまあまあ楽しかった。

・「戦争(せんそう」から守る」権利があったけど、日本は戦争をしないのになぜこの権利があるんだろうって思った。

保護者からの声

・子どもがリラックスしていました。

・子どもの発言を聞けるのが楽しかった。子どもにもわかりやすく伝えて頂けて嬉しかった。

・子どもがどんな権利に興味を持つのか意外な面も見れたりして面白かった。

・子どもの権利についてのスタンプラリー(シール集め)の時に様々な権利を学ぶことができて良かった。

・子どもたちが自分や周りの人たちを大切に感じられる機会になるPIECESさんならではのワークショップにまたぜひ参加したいです。

今回のイベントを機に「子どもの権利というものがあるんだ」と知り、それはどんな権利があるんだろう?と気にかける最初の一歩になったら嬉しいです。ご参加くださったみなさま、ありがとうございました。

最後に、今回のイベントではPIECESメイト(月額寄付者)の方にもご協力いただきました。会場案内、子どもたちの見守りや写真撮影等のイベント運営にご協力頂きまして本当にありがとうございました。

PIECESでは、「こどもがこどもでいられる社会を」目指して活動しています。「子どもの権利月間」として12月15日までキャンペーンを開催中です。子どもの権利条約について知るコンテンツをご紹介しています。

【イベントレポート】国境なき子どもたち(KnK)さんとの共催イベントを開催しました。

11月20日は世界子どもの日。子どもたちの人権を守るための「子どもの権利条約」が国連で採択された日です。

PIECESでは世界子どもの日に、国境なきこどもたち(以下KnK)さんと一緒にトークイベント「子どもの権利を大切にするために、私たちにできること~国を越えて共に学ぶ~」を開催しました。

KnKさんがフィリピン、そしてヨルダンで実施している教育分野での活動とPIECESが日本国内で行う市民性を醸成する活動を「子どもの権利」という視点で見つめました。

活動地域や分野は違いますが、お互いの活動での学びや課題を共有し、子どもの権利が大切にされるためには何が必要かを参加者の皆さまと共に深めました。

日本での子どもの権利を保障する取り組み

小澤からは日本での子どもの権利を保障する取り組みについても言及がありました。2022年6月に「こども基本法」が成立し、2023年4月から施行されます。すべての子どもが個人として尊重されるという基本的人権が主な内容です。

日本では子どもの権利条約の批准から28年が経ちますが、条約の認知は広がらず、それに基づく実践も子どもの現場でなかなか普及していません。しかしここ数年で体罰禁止や子どもの意見表明に関して、制度化を求める動きが生まれ、こども基本法に向けての社会的な動きになってきました。4月に施行されるこども基本法には、子どもの権利条約の4原則が明記されるなど、少しずつ子どもの権利を保障する取り組みが動き始めています。

PIECESでは今後も、一人の人である子どもの尊厳が大切にされる取り組みを続けていきます。

参加者の声

先ずは自分が子どもの権利についてもっと知識を得て、自分の子どもや周りと話をしてみたいと思います。

一番印象に残っているのは、ヨルダンとフィリピンでは教育の中に子どもの権利に関する授業が組み込まれている点。日本にいると日本は先進していると思い込んでしまうが、意外とそうでもないということも多いと気付かされた。

みなさんの活動に大変興味を持ちました。またこどもたちの権利や現状について理解が深まったと同時に私にも何か出来ることはないかと強く感じました。

子どもが子どもの権利について理解することも大切だが社会として認識していくことの重要性に関しては、意識していなかった部分であり、はっと気付かされたような気持ちになりました。また、啓蒙活動の重要性必要性も感じ、これまであまり関心のなかった広報職への魅力も感じました。

今回は3名での登壇でした(一番右がPIECES代表小澤いぶき)。

今回はハイブリットでの開催となりました。会場まで足を運んでくださった皆さま、オンラインでご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

「支える、関わる、ともにいる」とは?~待つことから生まれる市民性~|CforCレポート

自分なりの「市民性」を探求していく

私たちPIECESが行うCitizenship for children(略してCforC)は、「自分にできることで子どもや地域・社会に関わりたい」という想いを持った、専門職でも支援者でもない、一般市民向けに行っているプログラムです。

CforCでは、誰かのことを気にかけたり、想像したり、自分にできることを考えたり、まなざしを向けてみたり…そんな私たちの心の中にある「心の灯火」のことを「市民性」と呼んでいます。

いわゆる専門職や支援職を育成するプログラムではないからこそ、1人の人であり市民である自分を客観視すること。答えを求めるのではなく、学び続け、問い続ける姿勢を持つこと。

そういった「市民性」を仲間と学びあうことで探求していきます。



答えのない問いに向き合う

CforCみつめるコースは全3回の開催で、各回とも講座とゼミのセットで進んでいきます。

第3回目のゼミでは、「自分らしい市民性を探る」をテーマに、「子ども視点から子どもへの関わりを考える」、「自分らしい関わりを探る」というワークを行いました。

大人が子どもに教えるというスタンスではなく、「子どもたちから学ぶ」や「専門性と市民性」というキーワードも参加者の皆さんにとって、ゼミのテーマを考える大切なポイントになっていました。

ゼミの最初には、今回の講師であるプレーワーカーの神林俊一さんの動画の内容に関してグループで対話を行い、神林さんの関わりにはどんなまなざしがあるのか?、「支える、関わる、ともにいる」とはどういうことか? について考えました。

このワークでは、参加者同士で安心安全な場をつくりだし、結論や正解を求めずに、「子どもとの関わり」について考えを深めることができたようです。

最後に「みつめるコース」全体を振り返る時間が設けられ、その結果を参加者の間で共有してゼミを終了しました。みなさんからは CforC の安心できる場が新鮮だったという声や、これまで囚われていたことに気付いたという声も聞かれ、これから取り組んでみたいことについても、さまざまな希望やアイデアが出てきました。

実際の参加者からの感想を共有します。

参加者からの感想

カオスな空間を、流れのままに全員の「居場所」として機能させることの難しさを日々痛感しています。そういう意味で神林さんのお話はとても貴重なものでした。
特に参考になったのは子どもとの「距離感」。どこまで待つのか、いつ話しかけるのか。神林さんの絶妙な距離のとり方はこれからの活動に取り入れていきたいです。

子どもにとっての遊びとは社会とつながること。自分の生きている存在価値。遊びのなかの関わりは目的や終着点を必要としない。共感や願いがあればよい。
これまでの私は、無意識に子どもの支援に何らかの結論や広義的な正解のようなものを導きだそうとしていた。だが、もっと自然でよい、ひとりの人間として子どもたちと共にいるだけでよいのだ、と思えるようになった。気負いがなくなり、普通に子どもたちと居るだけで心があたたかく感じられるようになった。


正解のない問いを考え続けていくこと

参加者から共有された声を聞くと多くの学びや気付きがあったと感じていただいたようです。一方で、子どもとの関わりに正解はないということも受け止め、そのうえで「一人ひとりの子どもの力や願い」を信じて向き合い、そして「待つこと」が大切だというかんぺーさんのメッセージが心に響いた人が多かったようです。

そして、ゼミを通して大切なキーワードとなっていたのはやはり「市民性」という言葉でした。

「待つこと」とは何か、「市民性」とは何か、という問いに正解はないのかも知れませんが、そのことを考え続けていくことが、子どもたちにとっても大人にとっても優しい社会を創ることに繋がるのではないでしょうか。

参加者のみなさんがその意味を探す旅を続けていくきっかけになった一日になったように思います。

執筆:シゲさん
編集:ゆか

【イベントレポート】#問いを贈ろう展覧会を開催しました

8月中旬から10月1日まで開催しました#問いを贈ろうキャンペーンの一環として、9月23日(金・祝)に上池袋にあるくすのき荘にて、#問いを贈ろう展覧会を開催しました。1日限りのイベントではありましたが、約40名の方にご来場いただき、20個の問いへのお返事を考えたり、自分をみつめるワークショップに参加したり、平和の象徴であるハトを一人ひとりが吊していただき、会場を一緒に作って頂きました。足を運んでくださったみなさま、本当にありがとうございました。

来場された方みなさまに平和の象徴であるハトを吊してもらいました。壁には20個の問いとメッセージを展示し、それぞれのお返事を書いてくださいました。

くすのき荘2階ラウンジをメイン会場とし、ハトの展示を行いました。来場者のみなさまにお好きな色のハトを選んで頂き、好きな場所に吊してもらいました。参加してくださる方が増えれば増えるほど、ハトも増えていきます。この場にいるハトは一羽だと小さく見えるかもしれませんが、何羽も集まることで、空間が変わっていくことをみなさまと一緒に体感しました。

一人ひとりの市民性は小さくて意味がないように感じるかもしれません。けれど、一人ひとりの市民性が集まっていくことで、社会が、世界が変わっていくと私たちは信じています。そんな願いを込めて展示しました。

自分をみつめるワークショップ。自分の心と身体に向き合う時間となりました。

当日、「自分」をみつめるワークショップを3回開催しました。このワークショップでは、日頃みなさんが持っている肩書きを一旦置いて、「自分」を見つめることを目的に、自分の心と身体に向き合うことを体感しました。その後、参加者同士で言葉を使わずに自己紹介するワークを行い、みなさん試行錯誤しながら身体を使って「自分」を表現しました。

ワークショップ開催後、自然と車座になり、来場者のみなさんでお話しする時間もありました。

来場いただいたみなさまからの声

・ワークショップが思っていた質問に答えるかたちでなく、身体を使ってのワークで見えない誰かとも繋がっている感覚を体現する事が出来ました。

・温かい空間でした!問いの答えがその場で見られるのも楽しかったです!

・とてもいい雰囲気のイベントだったと思います。場所も素敵なところでした。ワークショップも、想定していなかった内容でしたが、そのあとの車座トークも含めて学びの多いものでした。

日頃からPIECESをご支援くださっている寄付者のみなさま、遠方から来てくださった方、今回を機に初めてPIECESを知った方などお会いすることができました。改めてご来場頂きありがとうございました。

オンライン上でお会いしていても、直接お会いしてお話することは初めての方もいらっしゃり、貴重な機会となりました。

今後も感染状況を見つつ、みなさまと直接お会いできる機会を増やしていきたいと思います。

【イベントレポート】問いのじかん  VOL.3 今西洋介さん

PIECESがお届けした「問いを贈ろうキャンペーン」。

「問い」を通じて自分や他者、世界に想いを寄せる。その想像力の先に、誰もが大切にされる社会があると信じて、このキャンペーンを行いました。

代表の小澤いぶきが「問い」をゲストとともに深め、考えるオンラインイベント「問いのじかん」最終回は、新生児科医/小児科医の今西洋介さんをゲストにお迎えしました。

今西さんは、新生児科医として赤ちゃんの命に向き合いながら、子どもに関するニュースについて毎日SNSを通じて発信をしており、社会問題を考える小児科医として活躍されています。
今回の対談では、今西さんに答えていただいた「問い」の話や、専門医同士の異なる視野から社会問題についてお話しました。

こちらのレポートでは、配信の内容を簡単に紹介します。

今西さんに答えていただいた「問い」とお返事

問いの答えに込められた想い

今西さんはSNSで発信する際、医療と子どもの社会問題の結びつけて啓発しています。

児童虐待など子どもが関わる悲惨な事件などが起きたとき、その背景に目を向けて見ると、ほとんどの場合は個人の問題ではなく社会が生んだ悲劇であることが多いです。子どもを取り巻く現状は、家族だけではなく社会の仕組みに原因があるのではないかと話してくれました。個人を責めるのではなく、社会にも問題提起をする必要があると考えていると話してくれました。

また今西さんは「母性」ではなく「育児性」という言葉を用い、性別や血縁を問わず、社会全体で子育てをしていくことが重要だと考えているそうです。これまでの女性の家事に対する社会通念や男性の長時間労働など様々な問題が、結果として現在の育児の困難に繋がっていることを教えていただきました。

家族へ贈る言葉

「三姉妹の過ごす未来がこのままでよいのか」という疑問が、今西さんの活動の原動力となっているそうです。これからの未来を生きる子どもたちが、「女性らしく」ではなく「人間らしく」生きられる社会を目指しているとお話してくださいました。今西さんの活動が家族の未来にも繋がっていることが、「お父さん何とかするから、応援してほしい」という言葉となりました。

専門職と社会をつなぐミドルマン

専門家が持つ有益な情報を社会に届けるためには、難しい専門知識を簡単に伝えることができる人材(ミドルマン)が必要不可欠です。さらに専門家以外の人々が情報を広げていくことが、より良い社会に繋がると話してくれました。性別や人種、年齢に関係なく、知ろうとする事から始めることが重要です。専門職でなくても、社会の一員である私たちにできることを教えていただきました。

また物事を知ろうとする姿勢が優しさを生むこと、例えば発達障害について知ることが当事者への配慮に繋がることをお話していただきました。

物事を知ろうとする際に重要なこととしては、単一の情報源ではなく公的機関や専門職など様々な頼り先をつくり、どの情報が正確であるかを判断する能力が必要であると話されていました。

小児科医として伝えたいこと

小児性被害など子どもを取り巻く様々な問題について、世間の認識と実態が乖離していることが多いと感じているそうです。そのギャップを埋めるための情報発信や啓発が重要であると話されていました。

また新生児医療に携わるなかで、お子さんを亡くされた家族の方へのブリーフケアが足りていないこと、家族だけで抱え込まずに周りを頼ることが必要であるとご指摘されていました。
生と死はかけ離れたものではなく隣りあわせだということ、一日一日を大切に生きてほしいと話してくれました。


今西さんからのメッセージ

子育ては周りを頼ってよいこと、また頼られた側も家族や会社、地域の人に頼っていくこと、それが社会全体で子育てをするということです。

子どもがいるいないに関わらず、子どもたちに手を差し伸べていただけたらと思います。

今西さんの活動への思いから社会を知り、子どもたちに目を向けるきっかけになりました。また社会全体で子どもたちを守り育てるという、各々が「育児性」を持つような世界になってほしい、そのような世界の一員でありたいと強く思いました。

最後になりますが、ゲストの今西洋介さん、配信を見てくださった皆さん、本当にありがとうございました。

執筆:広報ファンドレイズ インターン 大久保

以下よりアーカイブをご覧いただけます。

PIECES寄付者限定オンラインスペースPiece for Peace 【9月の活動ダイジェスト】

寄付者限定のオンラインスペースPforPの9月の様子をお知らせします。
※PforPは、メイトの皆様が寄付をしながら、社会も自分もwell-beingになることを目指して、イベントの参加やメイト同士で交流できるオンラインコミュニティです(詳細はこちら)。

日常を豊かにし、市民性を醸成するオンラインスペースPforP9月のダイジェスト

ふとんで#まどラジオVol.11 【次の時代に生きる子どもたちに、残したい世界はどんな世界ですか】

▶今回対話するメイトは?

愛知在住のご夫婦、ゆうことすすむさん。娘さんが大学進学を機にお家を出たのをきっかけに、PforPに加入してくださいました。

「PforPは、正直遠い世界の話かと最初は思っていた」

そんなすすむさんがPforPに参加し、#まどラジオで対話してくださるまでの経緯とは?

▶ハイライトpick up!

  • 長年ピアノの先生をなさっているゆうこさん。3歳の生徒さんとの時間は「ドレミ」ごとに色分けし塗り絵も取り入れてみたり、思春期の生徒さんとの時間は人との比較よりも出来るようになったことに目を向ける声かけをしてみたり。試行錯誤の連続だけど、そんな日々が好き!と子どもたちとのエピソードを語ってくださいました。

  • まどラジオ公開日は、PIECESの「問いを贈ろうキャンペーン」真っ只中。「次の時代に生きる子どもたちに、残したい世界はどんな世界ですか」など、キャンペーンの問いかけを置いて、対話していきました。

▶開催概要

・9/23(金)@YouTube

・話し手:ゆうこさん・すすむさん・まい・ゆいつん

▶ふとんで#まどラジオとは

PIECESメイト同士が、自分の暮らしのサイズ感で市民性について対話するラジオです。

毎月第3金曜夜に20分程度配信します。週末の夜、ゆるゆると聞いてみてください◎


HIPAHIPAweek~大人のサードプレイスとまちづくりーまちで自分が好きな場所を再発見するーライブ配信しました!

毎月HIPAHIPA#まどラジオイベントを開催していますが、8月1日~9月18日までHIPAHIPAweek2022夏を開催しました。9月5日にオンライン企画として地域で子どもから大人まで立ち寄れる場やワークショップを開いているゲストを招き、「大人のサードプレイスとまちづくり」をテーマにライブ配信をしました。

グラレコをボランティアメンバーのはるかちゃんが描いてくれました!

ゲストが感じている好きな場所や苦手な場所(行きにくい場所)を聞きながら、「どんなまちであれば、大人と子どもが一緒に集えるのか」について語りました。‘子どもの居場所’は良く聞くけれど、’大人の居場所’はまちの中にないのでしょうか。大人も子どもも一緒に交じって過ごせる居心地の良い場所があればもっとまちは良くなる、わたしたちは目の前の相手に優しくなれるのではないかと感じています。

ゲストが住んでいるまちの良さ、居心地が良いと感じられる場所、一方で課題に感じていることなどを語っています。住んでいるまちへの愛を感じられる、1時間になっています。アーカイブを残していますので、よろしければご覧ください。
YouTubeリンクはこちら

<ゲストスピーカー>
影近卓大さん(かげさん)

訪問看護ステーションや重症児者のデイサービスを運営する合同会社ライフイズ ・一般社団法人Lifeis代表。
東京都多摩市にて2021年4月「+laugh(アンドラフ)」という障害の重い方や医療的ケアの必要な方など、いわゆる重症児者が通う事業所を開設。その事業所の一角をフリースペースとして開放したり、駄菓子屋を開いたりと多様な取り組みをされています。

増田真紀子さん(まきさん)
NPO法人ただいま代表理事。真宗大谷派正安寺坊守。
茨城県ひたちなか市にあるお寺の敷地を活かし、子どもの居場所運営支援事業「てらこや」、フリースクール「ふらっと」、地域食堂事業「ただいましょくどう」、フードパントリー事業「TeToTe」、子育て交流の場「ママカフェ」などを運営しています。

近藤ななえさん(ななさん)
「こぱん」代表。「こぱん」は東京都世田谷区で、子どもたちが安心して過ごせるように地域を見守りされています。また、見守りの目をふやすためにワークショップなども毎月開催しています。

HIPAHIPAweekとは

PIECESでは、子どもが孤立せず「こどもでいられる社会」を目指し活動しています。「こどもがこどもでいられる社会」になるには、大人が自分でいられ、共に生きている、さまざまな人たちへのまなざしのある社会から生まれるものだと考えています。そのためには子どもに関わる大人が増えていくことが重要ですが、普段の生活でまちや子どもとの接点がない人の方もいます。
今回のHIPAHIPAweekでは、まちにある様々な「大人がふらっと立ち寄れる」場所を東京、茨城、千葉、奈良、高知、福岡の12カ所を紹介しました。

紹介ページはこちら


Piece for Peaceへのご参加をお待ちしております。

PIECES メイトのみなさんと、市民性醸成の道を一緒に歩んでいけること、楽しみにしています(単発寄付者の方も、期間限定でPforPに参加いただけます)。


<PforPの今後の予定>

【10/21(金)21:30-22:30@オンライン】Citizenship lab~イラクの子どもたちに出会って~小澤いぶきイラク活動報告会~

10月にPIECES代表理事の小澤がイラクに赴き、特定非営利活動法人 JIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)のイラク事業の一環として、JIM-NETのこれまでの知恵や経験、専門性にPIECESの知恵と専門性を重ね合わせて、小児がんの子どもに関わる大人たちが自分たちをエンパワメントし、子どもへの健やかな関わりにつなげていくピアグループのサポート、そして子どもや自分たちのケアの実践に向けたワークショップと研修を実施しています。

”小澤いぶきの最近の活動の様子について本人から直接聞いてみたい”
”海外の子どもたちのエンパワメントのために、PIECESの取り組みがどのように生かされているのか詳しく聞いてみたい”
という方はぜひPeatixよりお申し込みください。

※今回は寄付者向けへの報告会となりますが、寄付付きチケットをご購入いただいた方にもご参加いただけます。

10/28(金) 22:00- ふとんで#まどラジオ@YouTube】もし僕がダメになったら、助けてほしい。

PIECESメイトでPforPメンバーのHikariさんをゲストにお話ししました。YouTubeにてPforPメンバーへ限定配信いたします。

【10/24(月) 20:00-21:00@オンライン】 Welcome会

「PforPってどんなことをしているんだろう?」
「どんな人が参加しているのか?」などPforPに入ったばかりの方、関心がある方向けに2か月に1度開催しています!PforPメンバーのみなさまのご参加も大歓迎です◎

【11/5(土)10:30-11:30@オンライン】チェックイン会

毎月第1土曜日の朝に、雑談兼チェックイン(今感じていることなどを話す)会を開催しています。メイト同士の交流にもなりますし、なかなか外で話せないけど話したいことを共有できる時間になりますので、みなさんのご参加をお待ちしております!

HIPAHIPAweek終了のご報告

まちと接点を持つためのイベント HIPAHIPAweek

8月から9月中旬までの1ヶ月半、HIPAHIPAweekを開催しました。 HIPAHIPAweekは、自分の住むまちと接点を持つためのイベントです。近所の人と出会ったり、困ったことがあったら相談できるような関係性を紡ぐといったことが生まれたらいいなと思い、スタートしました。

2021年から始まり、今回が4回目となる開催。私たち自身も手探りで始め、今回は「大人がふらっと立ち寄れる」ということをテーマに、様々なスポットを記事で紹介したり、ラジオ配信をしました。

HIPAHIPAweekスポット紹介はこちら(12箇所掲載しています)

まちの図書館「なにかし堂」と昭和レトロな商店街のあたたかな日常

福岡の住宅街でスイーツや雑貨を楽しみながら、まちの人と繋がる場所「tori」

地域住民との関係性を育む商店街と、地域の日常を醸すオープンな場「+laugh」

子どもの心の孤立に対して活動する団体がなぜ大人をターゲットにしたイベントを行ったのか

PIECESをすでに知っている方の中には、「なぜ子どもの社会課題に取り組むPIECESが、大人をターゲットにやっているのか?」と疑問を持つ方もいるかもしれません。「直接子どもをターゲットにしたイベントをやった方が良いのでは?」と。もちろん、それも大切だと思います。

その一方で、子どもたちにたくさんの多様な大人が関わっていくことを大切にしたいという想いがあります。 多様な大人が関わることで、子どもたちにとって様々な選択肢が生まれたり、自分について様々な表現をする可能性も出てくるかもしれないからです。

だからこそ、今回は大人をターゲットにしました。 これは私個人の願いになりますが、普段子どもに関する活動をしているわけではなくとも、たまたま近所の子どもと知り合い、なんとなく顔見知りになるということが起きたらいいなと願って。

私自身、たまに「子どもとどう接していいかわからない」と言われることもあります。子どもと普段関わっていないから正解がわからないと。 でも、それでもいいと私は思います。みんながみんな同じ関わりをしなくていい、むしろその方が良いと思っています。

いろんな意見を言う大人やいろんな関わり方をする大人から、子どもたちは自分で選び取っていきます。同じ大人ばかりでは、合わない子にとってはしんどいと思うので、その目の前の子を想って、多くの大人が子どもたちに出会ってくれることを願っています。

こちらはTwitterの投稿内容の転載となります。一部語尾など修正をしています。

執筆:PIECESスタッフ くりちゃん

#問いを贈ろう キャンペーンにご参加いただき、ありがとうございました。

8月15日からの7週間、PIECESから贈る20個の「問い」を通じて自分や他者、社会や世界に想いを寄せ、より良い社会を目指すきっかけをつくる #問いを贈ろうキャンペーン。期間中、多くの方にご参加いただき、本当にありがとうございました。

「問い」を通じて自分や他者、世界に想いを寄せる、その想像力の先に、誰もが大切にされる社会があると、私たちは信じています。
異なる私たち一人ひとりが大切にされている、そんな社会は誰かがつくる確固たる正解ではなく、ふと感じる違和感や、私たちが受け取る願いや問いから、始まっていく。そんな思いから、2021年からキャンペーンを開始し、今年は2回目の開催となりました。

「問い」に対するアクション(いいねやリツイート、リプライなど)の数で、自分や社会、世界に対する関心の広がりを測り、今年は昨年生まれた2,000件のアクションがさらに広がりました。

参加者の投稿

いいねやリツイートはもちろん、たくさんの方が問いに対するお返事を発信してくれました!
みなさんの多様なお返事から、たくさんの気づきや新たな視点を得ることができました。

参加者の声

・自分の内面や頭の中にあるものを探索する楽しさに気づきました。

・意識して深呼吸する時間になって、それが定期的に訪れるというのがありがたかった。

・問いの贈り物って改めて本当に素敵。 大切な人に贈りたい言葉は何かと問われるとまず、「私にとって大切な人はだれだろう」と考える。 自分の内側を冒険するための切符。まさにギフト。 素敵な問いの数々を、心からありがとう。

・日々いろんなことに追われていると、自分の感情を大切にできなかったり、向き合えなかったり、「問い」まで辿り着けないことが多々あります。 本キャンペーンで贈られてくる問いの数々は、立ち止まって考え、自分の心が何にどう反応し、何を感じるのかを味わう機会になりました。

・育休中で他者と話す機会が極端に減りました。赤ちゃんを寝かしつけた後に考える問いで、みなさんと一つのワークをしている喜びがありました。良い機会をありがとうございました。

・たった一言の問いかけと、そこから湧き上がる短くシンプルな自分だけの、"私"だけの答え。そこに今の自分が一番大事にしたいことが詰まっている。 私が私と向き合う時間をありがとうございました。そしてそんなたくさんの「私」に出会うことができ、心があたたかくなる時間をたくさんいただきました。

・素敵な瞬間をありがとうございました。新しい問いが流れてきた時は「今日は何かな?」とワクワクしながら参加しました。ネットの中に優しさが足りない時代なので…自分や他人へ思いを馳せるタイミングが増えていくといいですね。わたしも頑張ります。

・問いの根本を考えるようになりました。人はなぜ問いを持ち、問いに何を期待するのか。

・自分で自分にはなかなか問いかけられなかったりするので、よきせぬ問いから自分のことを見つめ直せました。

・問いは社会を繋ぐし、可能性を広げると改めて感じた。 Twitterとの連動でより強く上記の気づきを感じられて面白かった。

なぜ、PIECESが「問い」を贈るのか

「子どもの孤立」という問題に挑むPIECESが、なぜ「問い」を贈っているのか。
それは、子どもが孤立せず「こどもでいられる社会」とは、大人が自分でいられ、共に生きている、さまざまな人たちへのまなざしのある社会から生まれるものだと考えているからです。

「問い」を通じて想像すること。その想像力の先に、誰もが大切にされる社会があると私たちは信じています。 一見、結びつかないように見えるこの取り組みも、私たちの目指す社会をみなさんと一緒に広げていく営みだと思っています。

PIECESが贈った 20の「問い」

問いは、PIECESが全国で展開している市民性醸成プログラム「Citizenship for Children」で長年培ってきた問いかけのエッセンスを凝縮させたものです。#自分をみつめる #まわりをみつめる #世界をみつめる の3つのテーマに紐づいて問いを贈りました。すべての「問い」はキャンペーンサイトからご覧いただけます。

著名人からの「問い」のお返事

さまざまな分野で活躍する【18名】の方々から、問いのお返事をいただきました。みなさんのお返事はPIECES公式Instagramよりご覧いただけます。

オンラインイベント「問いのじかん」

代表の小澤いぶきが「問い」をゲストとともに深めました。たくさんの方にご視聴いただき、ありがとうございました。以下よりアーカイブをご覧いただけます。

#問いのじかん

ゲスト福田萌さん(タレント)

#問いのじかん「問いからみえる私と世界のこと」

ゲスト:佐藤慧さん(フォトジャーナリスト)

#問いのじかん「問いで深める生きるということ」

ゲスト:今西洋介さん(新生児科医)

 

誰もが尊厳ある一人の人として、大切にされるために


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私たちからの問いへお返事をくださったり、問いを誰かに共有してくださったり、たくさんの方々とこの1ヶ月半を共にすることができました。本当にありがとうございます。

「問い」を通じて立ち止まり、この世界を共にしている自分や他者、世界に想いを寄せることは、共に生きる人を優しく想像することでもあります。  

私たちの暮らしを見つめると、そこにはすでに多様な世界があります。
問いを通して、すでにある多様な世界に目を向け、その世界を感じ、受け取り、働きかけていくことの先に、誰もが大切にされる、子どもが子どもでいられる、自分が自分でいられる世界があると私たちは信じています。
だから、この取り組みを通して、願う社会を皆さんと一緒に広げる営みを続けていきたいと考えています。

問いを贈ろうキャンペーンは終わりますが、問いを贈り合い、応答しあう営みは、市民性の大事なエッセンスとして続いていきます。これからもぜひ、その広がりを一緒に育んでいただけたら嬉しいです。

ibuki_sign
代表理事 / Founder
東京大学医学系研究科 客員研究員/ 児童精神科医