活動報告

アニュアルレポート2020-2021ダイジェスト

PIECESの1年間の活動をご報告するアニュアルレポート2020-2021が完成しました!

PIECESの事業や関わる人の輪が大きく広がった1年の軌跡を、ぜひご覧いただけたらと思います。
pdfバージョンをダウンロードいただくことも可能です。(ダウンロードはこちら

  1. 代表ポエム:優しい間のある暮らし

  2. ISSUEとMISSION

  3. 活動① Citizenship for Children(市民性醸成プログラム)

  4. 活動② Reframe Lab(アートプロジェクト)

  5. 活動③ Cultivate Citizenship(広報啓発活動)

  6. PIECES5年の歩み

  7. PIECESからのお知らせ

  8. 活動計算書

  9. サポートいただいた企業

  10. 5周年お祝いメッセージ


1. 代表ポエム:優しい間のある暮らし

今すぐには見えないかもしれないけれど、一人ひとりの市民性野崎に誰かの暮らしがあるように、泉のように湧いた小さな豊かさの種が、芽吹いているかもしれません、

一人ひとりの手元にある温かい間が、紗あきの源になっていく、そんな「優しい間」のある暮らしを。

PIECES代表 小澤いぶき

2. ISSUEとMISSION

ISSUE

頼れない・頼る人がいないという「子どもの孤立」

  • どこにも相談できる人がいない・・・21.8% *1

  • どこにも助けてくれる人がいない・・・11.3% *1

  • どこにも居場所がない・・・5.4% *1

  • 支援期間を利用しようと思わない・・・69.7% *2

※1:内閣府「子供・若者白書」令和3年度
※2:内閣府「子供・若者の意識に関する調査」令和元年度

貧困や家族の病気、いじめなどでしんどいときや傷ついたときに、家庭・学校・地域などで誰にも頼れない、頼る人がいない「子どもの孤立」。
それにより、心の傷が悪化するまでケアされず、深刻な状態へとつながる子どもたちがいます。

MISSION

一人ひとりのマインドセットをアップデートし
社会のなかに市民性を醸成する

私たちの目指す未来は、子どもたちが孤立せず、優しいつながりが溢れる未来です。それは、小さな困りごとや、小さな心の傷が生まれた時に、身近な関係性の中でケアされ、お互いに癒しあっている世界です。

私たちPIECESは、Citizenship for Childrenなどの事業を通じて、一人ひとりのマインドセットをアップデートし、社会の中に子どもたちの困りごとや痛みを見過ごさない市民性が醸成されていくことに取り組んでいます。

専門家だけではなく、私たち一人ひとりが優しい間をつむぐ市民性を発揮していくことで、子どもの心の傷が身近な関係性の中でケアされ、子どもの孤立は解消されていくと考えているからです。

3.活動① Citizenship for Children(市民性醸成プログラム)

子どもが孤立しない地域をつくる市民性醸成プログラム
「Citizenship for Children」とは?

Citizenship for Children(以下CforC)は、子どもと自分にとってのより良いアクションやあり方を探究する「市民性」の醸成を目指す研修プログラムです。
子どもと自分と地域にとってのwell-beingを実現するために、仲間とともに心地よく迷いながら、自分なりの市民性を探究していきます。

2016年から実施しているCforCは、2019年度からは全国へ展開し、各地の協働団体と共に活動を広げています。

2020年度は3つのコースに計136名が参加しました。2021年度は「みつめるコース」「うけとるコース」「はたらきかけるコース」とコース名を刷新し、65mりが受講しています。

また、CforCのエッセンスを活用して団体向けの研修プログラムも実施しています。

4. 活動② Reframe Lab(アートプロジェクト)

一般社団法人Whole Universeとの共催のもと、2018年から活動を続けている「Reframe Lab」は、豊かな想像力を育む「あそび」や「まなび」を開発し、アート、教育、医療、福祉がつながるプラットフォームを構築していくプロジェクト。

今年度は「ミエナイモノと世界をあそぶ」をテーマに、絵本と映像を制作しました。

絵本はpdfにてダウンロードが可能です。(詳細はこちら
映像はYoutubeにてご覧いただけます。
お子さんと一緒に、みんなで、ぜひ楽しんでください。

5. 活動③ Cultivate Citizenship(広報啓発活動)

子どもを取り巻く社会をつくる一員である私たちが大切にしたい視点や、心のケア、子どもと関わる際に大事なことなどに関する情報を、PIECESでは啓発活動の一環として発信しています。

PIECESの発信するアウトプットに触れたあなたの手元から、優しい間が紡がれていくように。「耕す」という意味のCultivateを使い、PIECESの啓発・広報の取り組みを「Cultivate Citizenship」と名づけました。

①虐待防止月間

虐待を足元から予防するためにイベント・キャンペーン・記事で啓発。
記事はこちらから

②#問いを贈ろう

1日1つ贈られる問いを通じて、自分・社会・未来のwell-beingを考える1ヶ月。PIECESや著名人の皆様から様々な問いが贈られました。

全ての問いはこちらから

③HIPAHIPA

「優しい間」について考えるイベント、HIPAHIPA。CforC修了生の現場に実際に足を運んだり、話を聞いたりして、自分の関わりやまちの中のでき度とについて優しい間のメガネで見つめてみます。

6. PIECES5年の歩み

2021年6月22日に団体設立から5周年を迎えたPIECES。

5年間の歩みをダイジェストでまとめました。スタッフからの一言も必読です。

ただひたすらに大きなビジョンを掲げたPIECESは、今では約10名のスタッフに、20名のプロボノ・インターン、約450名の継続寄付者(PIECESメイト)、多くの方に関わっていただきながら育ってきました。

PIECESに関わり、共に未来を描いてくださった全ての皆様に、心から感謝申し上げます。

7. PIECESからのお知らせ

PIECESでは様々な形でご寄付を受け付けています。

【news】オンラインコミュニティPiece for Peace がスタート(詳細はこちら

企業・団体向けの講演や研修も受け付けています。

各種SNSでの発信もぜひご覧ください!

8. 活動計算書

9. サポートいただいた企業

法人や団体の皆様からご寄付や助成金をいただいたことで、CforCを全国に広げていくことができました。これからも、さまざまな形でパートナーシップを育んでいただける法人さまを募集しております。

来年度に向けて

CforCをより多くの人へ、子どもたちへ。

これまで、CforCには共感しているし学びたいがなかなか時間がないというかたや、タイミングが合わないという声もいただいてきました。そこで来年度は、CforCのエッセンスを、より手軽に感じていただけるよう、webサイトのリニューアルやプログラムに参加いただかなくても学ぶことができるコンテンツの制作などを行う予定です。

また、CforCのエッセンスを寄付者の皆さまにも共有していき、市民性の輪を広げていければと考えています。お楽しみに!

10. 5周年お祝いメッセージ

PIECESに関わる役員・スタッフ・まきば(プロボノ)メンバーから5周年に向けたメッセージを集めました。

たくさんの方に支えられ、共に歩みを進めてきた5年間。
本当にありがとうございます。そして、これからもどうぞよろしくお願いいたします!


 
 

アニュアルレポートは「継続寄付者のみなさま」と「1万円以上の単発寄付をくださったみなさま」へ紙媒体でお渡しをしております。ぜひ最新のアニュアルレポートをお手元でご覧いただけたら嬉しいです。

PIECESの活動はみなさまからの継続的なご寄付によって支えられています。来年度以降も活動を共に継続・発展させていく仲間になってくださいませんか?

 
 

Citizenship for Children 2021 が終了しました!

イラスト:Jessie(J.)

2021年7月から始まったCitizenship for Children 2021(CforC)ですが、PIECESメイトをはじめとするたくさんの方々に支えられ、無事終了することができました。

CforCは、子どもと自分と地域にとってのwell-beingを実現するために、仲間とともに心地よく迷いながら、自分なりの市民性を探求するプログラムです。今年度は新たな体制として、みつめる・うけとる・はたらきかけるという市民性発揮の3視点に沿ったコースで開催しました。

みつめるコース 参加者64名
7月から3ヶ月間実施したみつめるコース。『同じ志を持った仲間とともに、子どもに心で応えるためのまなざしを学ぶ』ということに重きを置き、自分自身や子どもの感情、地域や社会の出来事をありのままにみつめていくためのまなざしやマインドセットを探求し、子どもと自分、地域のwell-beingを実現するためのベースとなるエッセンスを、講座とゼミで学びました。

うけとるコース 参加者4名
みつめるコース修了後、『安心できる仲間と、発見したり葛藤したりしながら、私らしい「優しい間」を問い続ける』ことを学ぶ、うけとるコース。みつめるコースの内容に加え、リフレクションを通して、目の前の子どもの感情や願いに目を向けると同時に、自分自身の感情や願い、価値観にもじっくり向き合うプロセスを体験していきました。

はたらきかけるコース 参加者30名
みつめるコース修了後、『わたしたちのうけとった違和感や想いを、形にすることで優しい間のあふれる地域へ』と目指していく、はたらきかけるコース。みつめる・うけとるコースの内容に加え、実際に自分も子どもも生きる地域で自分らしいアクションをしていくために、まちの資源の活かし方やコミュニティづくりについて探求していきました。

CforCに関する記事はこちら

参加者の声

今年の参加者から以下のような声が届いています。

“beingを受け入れてくれる“雰囲気はCforCのゼミにもあるなと感じました。うまく話せなくてもいいし、きれいにまとめられなくてもいい。モヤモヤがあっても大丈夫。自分が感じたことをありのままに聴いてくれるクラスのメンバーに、初回ゼミとは思えないくらいの安心感を感じました。(20代・大学生)

ゼミの中で行われた自己覚知ワークでは、同じグループの方の考え方の背景や価値観が分かるのが楽しく、それを共有した後の空間は何だか安心できるなと感じました。私自身も、このワークを通して「自分から生きづらさを他人に伝えるのが難しい子どもたちに寄り添える人でありたい」という大事にしていた価値観を思い出し、言語化することができました。(20代・福祉職)

回を重ねるごとに心や体の感覚が自由になるのを感じました。今まで福祉職として「心を自由にしたら頭が働かなくなる。良い支援が出来なくなる」と、必要以上に自分を戒めてきたのかも知れません。(20代・福祉職)

活動の中で子どもから重大な悩みを打ち明けられたスタッフがいた時に、そのスタッフもどう回復していくのかということも考える機会になりました。(30代 / 地域活動・任意団体)

これまでは子どもの友達の親御さんたちやご近所さんなど接点はあるけど、そこまで関わってない人たちと、もっと仲良くなりたい、「もっと次に話せるようには...」と思っていました。今はあんまり考えすぎずに、親御さんたちや小学生にも話しかけるようになりました。(30代・会社員)

子どもたちへの声かけや同じ職場の大人たちの距離の取り方を、よく見るようになりました。これまでは「自分がどうするか」意識してきていましたが、CforCを受講して、人が言っていることの背景をこれまで以上に考えるようになりました。(30代・病院・学校・福祉施設スタッフ)

参加者の変化

市民性の発揮の仕方は人それぞれです。それでもプロジェクトを立ち上げたり、何か大きい活動をしなければいけないと感じ、「自分にできることは何もない」と思ってしまう人もいます。
CforCを通じて「自分にもこんなことができるかもしれない」「自分ができることをやっていこう」という人が増え、市民性発揮のグラデーションが生まれ始めています。

今年の参加者からは、今後こんなことをやってみたい!という声が上がっていきました。

  • 不登校やまちの人たちが集まれる居場所をこれからつくりたい

  • 普段関わっている子どもたちと社会との接点をつくっていきたい

  • ボランティア活動で出会う子どもたちだけでなく、まちの子どもたちにも関わろうと思う

  • 大きいことではなくとも、プロボノやまちで自分ができることをやっていきたい

現在CforC2021の報告書を作成しています。より詳しい報告を掲載予定ですので、楽しみにお待ちください!

東京ヒルズライオンズクラブの例会で小澤が登壇しました

2021年11月18日に開催された、ライオンズクラブ国際協会 330-A地区3リジョン3ゾーン 東京ヒルズライオンズクラブさまの例会にお招きいただき、代表の小澤が子どもたちの孤立の現状とPIECESの活動をお話しさせていただきました。

東京ヒルズライオンズクラブさまは、東北の震災支援を10年間続けてこられており、最近では麻布乳児院へのご寄付も行なってらっしゃいます。

子どもが子どもでいられる社会をともに紡いでいくきっかけとなればうれしいです。

お招きいただきありがとうございました。

「どこにも相談できない」ー子どもの孤立を考える #虐待防止月間

すぐ隣にあるかもしれない危機が、大きな綻びとなってからしか目に見えない。

すぐ近くで起きている子どもの危機が見えなかったり、家が安全でない子どもたちの居場所が日常になかったり、そんな子どもを取り巻く日常の問題が顕在化しています。

今月11月は、厚生労働省が定めた児童虐待予防の啓発を行う虐待防止月間です。

年々増加する虐待相談対応件数。死に⾄らしめるリスクのある⾝体的虐待とネグレクトを合わせるとそれらは年間約7万件発⽣し、 うち56件は実際に死に⾄っています。

子どもが危機に置かれた状態が見えづらくなる一方で、ここ数年、「子ども若者の孤立」に関する議論や、 「子どもの権利」に関する議論が日本でも少しずつ活発になってきています。

子ども庁の設置に向けた様々な議論がなされたり、子どものウェルビーイングや孤立などに関して、 世間の関心が高まってもいるといえるのではないでしょうか。

書き手:

小澤 いぶき

PIECES代表理事 / 児童精神科医 / 東京大学客員研究員

子どもの環境は複層的な要素で形成される

このような議論が活発になる前から、「子どもたち」は私たちのすぐ隣で暮らしており、私たちの関わりをはじめ様々なことが、子どもたちを取り巻く環境に影響を与えてきました。関心が向けられつつある子どもたちをめぐる環境は、⻑期にわたる複層的な要素が重なって形成されています。

では現在、子どもたちを取り巻く環境はどうなっているのでしょうか。子ども庁設置に向けての動きが活発化したり、政策が動き始めたりするなかで、あらためて子どもたちの環境を「自分ごと」として捉え直していく必要があると感じます。

私はこれまで、児童精神科医として勤務しながら、PIECESの代表をしながら、「子どもの生きる環境に、直接的であれ間接的であれ、誰もが関わっている」と感じてきました。

今回は、「子どものwell beingを取り巻く多層的な環境、つまり、政策や 環境問題、そして子どもたちに直接影響する環境」についてユニセフのレポートから考え、そうした環境を育むための、誰もが欠かせない一人であることを基にした共にできるアクションについて述べたいと思います。

「精神的幸福度」が低い日本の子どもたち

日本の子どもの「精神的幸福度」は、調査国38カ国のうちの37位である ――。

2020年にユニセフ(国連児童基金)が発表したレポートの結果を、なんとなく耳にされた方もいるかと思います。

2020年9月にユニセフ・イノチェンティ研究所が発表したレポートには、日本の子どもたちの「精神的幸福度」の低さが示されています。

このレポートにある「精神的幸福度」とは、「子どもの幸福度」の項目の一つで す。調査項目として、「生活満足度の高い子どもの割合」や「自殺率」が挙げられています。

幸福度については報告当時、ニュース などでも取り上げられて話題になりましたが、さらによくみていくと、子どもを取り巻く環境がとても複雑で複層的であることが、レポートから浮かび上がってきます。

UNICEF(2021)「イノチェンティ レポートカード 16 子どもたちに影響する世界 先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か」

レポートから見える子どもの幸福度の実相

レポートでは「子どもの幸福度は、子ども自身の行動や人間関係、保護者のネットワークや資源、そして公共政策や国の状況から影響を受けることを示す、多層的なアプローチをとっている」とされています。つまり、子どもの幸福度には、 子ども自身だけでなく、子どもの周りの友人・知人、家族、政府、地域社会が影響しているということです。

またレポートには、子どもの権利条約の観点から、子どもたちの意見表明の機会及び意思決定への参加の重要性が、幸福度にも成⻑にも不可欠であることが記されています。

子どもの幸福度に影響を与えるより広い範囲の因子について、

  • オーストラリアでは若者の59%が、気候変動を自分たちの安全にとっての脅威であると考えており、4人に3人が政府による環境への対策を求めている

  • 子どもたちが将来についてどう考えるかは、現在の幸福度にも影響を及ぼす

などの記述もあり、例えば、環境問題を懸念している子どもは生活満足度が低い傾向にある、 といった詳細な記載もなされています。

このほか、社会的状況に関する「困った時に頼れる人がいるかどうか」という項目において、「日本は約20人に1人の大人が困った時に頼れる人がいないと感じており、38カ国中32番目であった」一方、殺人による死者は少ないのも特徴だと指摘しています。

ちなみに、内閣府が発表した 「子供・若者の意識」(出典:内閣府「子供・ 若者の意識に関する調査」) では、「どこにも相談できる人がいない」と答えた子ども・若者は21.6%にのぼっています。全て子ども・若者の現状の反映ではないかもしれませんが、子ども ・ 若者 の5人に1人が相談できる人がいないと感じていることがわかります。調査対象などが違うのでユニセフの調査と単純に比較はできませんが、子ども・若者の現状の一端を表している結果ではないかと考えられます。

 
 

私たち一人一人、そして全てが関わる問題

こうした現状を見ていくと、子どもの幸福度には、環境や政策、地域社会におけるネットワークや資源のあり方、企業等における保護者の働き方など、様々な要素が関わっていることが分かります。逆に言えば、子どものことを全て家族の責任や枠組みだけで捉えるのではなく、社会に生きる私たちの一人一人、そして 全てが関わる問題としてとらえ、向き合っていく必要があるのです。

子どもの幸福度に自分たちも関わっている。そう考えたとき、私たちは何をすればいいのでしょうか。

子どものことを置き去りにしたり、誰かの痛みをそのままにしたりする上に成り立つ社会ではなく、この世界を共にしている様々な人やものが共に生きていくために。

いったい何ができるのでしょうか。

ユニセフのレポートに示されている子どものwellbeingに関与する要素は複層的です。

例えば、直接的に子どもの暮らしにアプローチする支援者などの存在はとても重要である一方で、少し先にある地域資源の醸成や、子どもが暮らす地域や社会における子どもや教育を取り巻く政策へのアプローチ、人権へのアプローチ、子どもたちの未来に大きな影響をお及ぼす環境問題へのアプローチなど、さまざまな関わりが子どもの今とこの先に影響を及ぼします。だからこそ、子どものwellbeingに無関係な人は居らず、一人一人が何らかの形で関わることで、その多岐にわたるレイヤーが充実していくとも考えられます。

例えば、

  • 選挙権を持っているとしたら、選挙で子どもの暮らす環境や「生きる、遊ぶ、学ぶ、参加する」といった子どもの権利を考えた政策、子どもの暮らす環境が人権規範に根ざしたものになるような政策、フェアな選択肢とそのアクセスの可能性を広げる政策を支持するということもできます。

  • 企業での産業活動の中でも、人権の問題や環境の問題に自分たちがどう関わっているのかに目を向け、体制やビジネスのあり方を再考していく、あるいはプロダクトを通したリソースの紹介などができるかもしれません。自らが人権を大切にする企業になることで子どもの権利の土壌をつくることができるはずです。

  • 政治家ならば、このマップを捉えた上での政策を思案できます。

  • 地域に暮らす一人の人として、例えば挨拶を交わす、乳幼児を連れた保護者の方や妊娠している方に席を譲ってみるといった行動も一つのできることかもしれません。

  • それらの行動を起こしている団体などに寄付を通して資源を豊かにするのも一つの方法です。

子どもの幸福に関わっている1人の人としてできることは、意外と多くあるのではないでしょうか。

誰かだけが頑張るのではなく......

COVID-19により、当たり前にあった地域の日常が当たり前ではなくなる中、 すぐ近くで起きている様々な危機に気づきにくくなったり、自分の体験している 世界以外の世界がまるでパラレルワールドのように縁遠くなったりしています。 それでも、地域に根ざして活動している団体や行政機関など様々な人や団体が、 子どもとともにある社会をつくろうと頑張っています。

ユニセフのレポートからも垣間見えるように、子どもの生きる環境は複雑で多層的な様々なことに影響されています。だからこそ、誰かだけが頑張るのではなく、組織を通して、政策を通して、あるいは一人の市⺠として、いま起きていることを見つめ、構造を問いながら、そこに関わり、働きかけをしていくことが大切なのだと思います。

WHOの定義する虐待の社会的要因として、以下のようなことが挙げられています。

・ジェンダーや社会的な不平等
・適切な住宅の欠如や、家族や組織を支えるサービスの欠如
・失業率や貧困の割合の高さ
・容易にアルコールや薬物の入手できること
・児童虐待、児童ポルノ、児童買春、児童労働を防止するための政策やプログラムの不備
・他人への暴力を助長したり称賛する、体罰を支持する、厳格な性役割を要求する、親子関係における子どもの地位を低下させたりするような社会的・文化的規範の存在
・劣悪な生活水準、社会経済的不平等や不安定さにつながる社会、経済、保健、教育政策

これらの中には、文化的社会的規範や政策など、直接子どもの貧困や虐待にアプローチするプレイヤーだけでなく、一人一人が関わって変わっていくものがあり、子どもや保護者を取り巻く環境の質的、量的な変化を支えるために間接的に変化を促せるものもあります。

​​自分自身が子どもの暮らしに存在する一人の人であり、すでに自分の存在は子どもの暮らしに影響しているからこそ、これらのリスク要因を生み出す側にも、予防する側にもなり得るのだと私自身も自分に対して感じています。

泉が小川に、やがて大河となり、社会が子どもにとっても豊かになるようなうねりになる。そうした社会の営みが、子どもたちに危機が起きる前に生まれるように、自身もPIECESを通して、市民性の醸成に取り組んでいきたいと考えていますし、ぜひ、さまざまな人や団体とともに、その営みを広げていきたいと考えています。

 

埼玉県吉川市主催 令和3年度第2回 子ども未来応援集会に事務局長の斎が登壇しました

令和3年10月14日開催された、埼玉県吉川市主催 令和3年度第2回 子ども未来応援集会に事務局長の斎が登壇しました。

子どもの貧困対策を視点に捉え、地域で育つ子どもの未来を考える「子ども未来応援集会」。
テーマは「地域の中で子どもの未来につながる一歩へーもう一度『子どもの孤立』を考えるー」

吉川市で活動されるさまざまな方にご参加いただきました。

お声がけいただきありがとうございました。

「助けて」の声、なぜ聞こえない? 虐待を生む社会構造を問う #虐待防止月間

児童虐待の報道が出るたびに、養育者や児童相談所に対する強い声が生まれることがあります。私はその度に、その声は「果たして何をうむのだろうか」と考えてしまいます。

書き手:小澤いぶき(PIECES代表 / 児童精神科医 / 東京大学客員研究員)


今月11月は厚生労働省が定めた児童虐待の防止・啓発を行う虐待防止月間です。

今回はこの「虐待防止」という観点から、「助けて」と声を出しづらい社会や、「助けて」の声が届きづらい社会を作ってしまっている理由を紐解いていきたいと思います。


予防がなされている地域の検証や、なぜ児童虐待が起こったかの丁寧な検証と、検証を元に仕組みとして何を改善すると良いかを検討することはとても大事で必要なことです。ですが、この再発予防に向けた仕組みの改善を目的とする検証は、例えば養育者ややどこかの機関に全ての責任があるかのように非難することとは全く異なります。

「母親は」「児童相談所は」といった大きな主語によって語られる物語は、時にその背景にある、働き方やジェンダーギャップなどの人権の問題や複雑な社会構造を見えなくさせていることがあります。それは子どもたちの権利の問題にも目を向けづらくする一因にもなりえます。


「助けて」を言いづらくさせてはいないか?
困難をさらに潜在化させる可能性はないか?


私たちはどのようにしたら、マルトリートメント(大人の子どもに対する不適切な養育や関わり)をうむ社会のシステムにアプローチできるのでしょうか。そして、子どもの権利と尊厳を尊重し合える社会につなげられるのでしょうか。

目次

  1. マルトリートメントとは何か

  2. マルトリートメントをどのように捉えるか

  3. 子育て困難が起こるまでにどんなプロセスがあるか

  4. マルトリートメントが起きるシステムにどうアプローチするか

  5. 最後に

マルトリートメントとは何か

マルトリートメントとは、虐待とほぼ同義で使われる言葉ですが、日本語では「大人の子どもに対する不適切な養育や関わり」と訳されます。友田先生の著書及びインタビュー記事には以下のように書かれています。

「子どものこころと身体の健全な成長・発達を阻む養育を全て含んだ呼称」であり、大人の側に花街の意図があるか否かにかかわらず、また、子どもに目立った傷や精神疾患が見られなくても、行為そのものが不適切であれば、それはマルトリートメントと言えます。
(「子どもの脳を傷つける親たち」(NHK出版参照)/「PHPのびのび子育て」11月号より)

また、WHO(世界保健機関)にも、マルトリートメントとはあらゆる種類の児童虐待及びネグレクトが含まれ、結果として、子どもの健康、生存、発達及び尊厳に実際的/潜在的な害がもたらされることとされています。

Child maltreatment is the abuse and neglect that occurs to children und
er 18 years of age.
It includes all types of physical and/or emotional ill-treatment,
sexual abuse, neglect, negligence and commercial or other exploitation,
which results in actual or potential harm to the child’s health, survival,
development or dignity in the context of a relationship of responsibility,
trust or power.
Exposure to intimate partner violence is also sometimes included
as a form of child maltreatment.
(WHO HPより
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/child-maltreatment)

つまり、マルトリートメントとは「児童虐待及びネグレクトを含む子どもの健やかな心身の発達及び尊厳を阻害するような養育及び関わり」と捉えられます。

マルトリートメントをどのように捉えるか

以前、新潟県新潟市で行われた第115回精神神経学会に参加した際に拝見した、福井大学子どもの心の発達研究センターの友田明美先生の発表を参考に考えていきます。(第115回精神神経学会「ACE(児童期逆境体験)に精神科臨床はどう向き合うか」, 福井大学子どもの心の発達研究センター 友田明美)

友田先生は、マルトリートメントが起こる社会の構造自体を変えていく必要があると話されていました。そのために、マルトリートメントを子育て困難のサインだと捉え、育児の孤立化を防ぐ「子育てを社会で支える」ための共同子育てを提案しています。

子育て困難が起こるまでにどんなプロセスがあるか

マルトリートメントを子育て困難のサインと捉えると、その困難はどのようなプロセスをたどって起こるのでしょうか。友田先生の学会で発表された以下の研究に、そのプロセスが示されています。

共同発表:子育て中の母親ら養育者の抑うつ気分を見える化して子育て困難の予防を図る~社会脳の活動を計測し養育ストレスが深刻化する前兆を早期発見する評価法の開発~共同発表:子育て中の母親ら養育者の抑うつ気分を見える化して子育て困難の予防を図る~社会脳の活動を計測し養育ストレスが深刻化www.jst.go.jp

子育て困難や子ども虐待は急に起こるのではなく、「養育準備」、「健全養育」、「養育困難」、「養育失調」という過程を経て進行していくものと捉え、深刻な事態を招かないために、段階に応じた予防的な養育者支援を提案することを目指している。

養育失調までの過程の詳細は以下のように定義されています。

養育準備:未養育者、これから養育を行う者、養育を行って間もない者を含む。
健全養育:養育リスク要因がほとんどなく適切な養育を行う者を含む。
養育困難:養育リスク要因が少なからずあり適切な養育を行うのが難しい者を含む。
養育失調:養育リスク要因が比較的多くあり不適切な病的養育を行う者を含む。

上記の過程は、心身の疲れが蓄積されると、どんなに子ども思いの養育者にも起こり得ると記されていおり、加えて現代の社会の状況は、構造的に養育者心の疲れがより生じやすいのだといいます。

たとえどんなに子ども思いの養育者であっても、体の疲れだけでなく、目に見えない心の疲れの蓄積から子育て困難(そして最悪な事態として子ども虐待)に陥ってしまうリスクの線上にいると考えている。

少子化や核家族化の進行、地域のつながりの希薄化など、社会環境が変化する中で、身近な地域に相談できる相手がいないなど、子育てが孤立化することにより、その負担や不安が増大している。
(※1※1 内閣府『平成25年版 子ども・若者白書』)
こうした子育ての環境の変化は、養育者のメンタルヘルスの問題が生じやすい要因にもなっていると考えられるが、近年は子育て困難そして最悪な事態として子ども虐待や妊産婦の自殺等の予防という観点からも、メンタルヘルスの重要性が指摘されている。(※2厚生労働省 雇用均等・児童家庭局
総務課『子ども虐待対応の手引き(平成25年8月改正版)』)
子どもへの身体的虐待、性的虐待、暴言による心理的虐待、ネグレクトなど、子ども虐待につながりうる子育て困難を防止するためにも養育者のメンタルヘルスへの対応が望まれる。

つまり、マルトリートメント、虐待は、私にもそしてこれを読んでくださっている方にも起こりうる可能性が十分にあるということなのです。

さらに、「養育困難」段階までの過程において起こる心の疲れの深刻化は、脳機能を変化させ、対人関係における様々な困難さ(対人関係や、家族内の関係の困難さ、援助希求の難しさなど)につながる可能性もあります。つまり、心の疲れが深刻化すると、人との関わりの中で生まれる「助けを求める」、「自分や子どものストレングス(強み)に目を向ける余白を持つ」、「必要な情報を得る」などが困難になる可能性があるのです。

養育者が子育てを頑張る過程のどこかで、頑張ろうとしても難しい状況が生まれています。

そしてその困難は、心の疲れへのケアや深刻化への予防環境が少ない社会のシステムの問題である、と私は考えています。


マルトリートメントが起きるシステムにどうアプローチするか

福井大学の研究チームでは、子育ての中で、子育ての負担や不安から、ほぼすべての養育者が感じる気分の落ち込みといった心の疲れを表す抑うつ気分の程度差に注目しています。

心の疲れが深刻化し、養育困難への過程に進む中で援助希求や対人交流が難しくなることは孤立化を深めていきます。そのような状態になる前から、小さな困りごとやを共有しケアしあえたり、自分では気づかないストレングス(強み)に目を向けられるような体制が必要であるのではないでしょうか。例えば親以外の周囲の大人たちとの子どもを育てる共同子育てが、子育ての孤立化を予防し、負担や不安を低減する可能性がある、と友田先生は述べています。


最後に

福井大学の研究チームの研究及び友田先生の発表を通して見えてくる以下の三点は、メンタルヘルスのように見えづらいことを自分たちのこととして捉え直し、お互いをケアしやすい社会の寛容さを生み出す鍵でもあると感じます。

・虐待につながる要因に誰もが感じ得る心の疲れ」という普遍的なものがあるということ
疲れの深刻化を個人の責任とせず、「社会のシステムの問題」と捉え直した上での新たなシステムの提案。
・特別な人が虐待をするわけではなく、心の疲れが深刻化する環境であれば私にも起きうる、という「誰かのことから私たちのことへ」の、社会の共通認識の変容プロセスの設計。


私たちは、虐待という問題をどのように捉え、向き合っていくことができるのでしょうか。

11月は虐待防止月間。ぜひ一緒に考えてみませんか。


【プログラム報告書】Citizenship for Children プログラム成果報告書2020 ダイジェスト

CforC報告書-13.png

PIECESの主事業、子どもが孤立しない地域をつくる「Citizenship for Children(CforC)プログラム」の成果報告書が完成しました!

昨年2020年、たくさんの応援のおかげで飛躍的に成長したCforCの取り組みを余すことなくお伝えします!
pdfバージョンをダウンロードいただくことも可能です。(ダウンロードはこちら

  1. 代表挨拶:夢でもなく、もしもでもなく

  2. PIECES理事対談「ときに葛藤を味わいながら仲間と『市民性』の醸成に取り組む」

  3. 子どもが孤立しない地域をつくる市民性醸成プログラムCitizenship for Childrenとは?

  4. ① 基礎知識コース The BASIC Course

  5. ② 探求コース The INQUIRY Course

  6. ③ プロジェクトコース The PROJECT Course

  7. 探求コース修了生インタビュー

  8. みんなの声を集めました「CforCに参加してみてどうでしたか?」

  9. アンケート調査からみえる参加者の学び

  10. 協働パートナー団体 特別コラボ鼎談「地域で優しい”間”をはぐくみ続けるために」

  11. CforCに今期助成いただいた企業・財団 / 個人寄付者の皆さま


  1. 代表挨拶:夢でもなく、もしもでもなく

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わたしが星の毛布に包まれて眠りにつくとき
あなたは陽の光の囁きにのびをする

わたしがひんやりと水をすった大地に立ち
あなたに続く空に手を伸ばすとき

あなたは深く深く水に潜り
わたしとつながる海と一体となる

わたしの涙が大河に流れこむとき
あなたの笑い声が宇宙に溶ける

違う世界に生きる
わたしとあなたは
ときに痛み
ときに癒え
ときに闇の中で自分を守り
ときに光を求めてお互いを照らす

遠くて近いわたしとあなたの間に
地球の音色がひびく

近くて遠いわたしとあなたの間に
春の芽吹きが踊り出す

地球のひびきに鼓動を重ね
芽吹きのダンスに身を委ね

違う世界のわたしとあなたは
無数のリズムに溶け合いながら
一つになる

無数の世界の物語は
ときを越えて
空を越えて
旅をする

無数の世界の物語の芽が
ときを越えて森となる

ときを越えて
空を越えて
あなたとわたしの間に
新たな物語がうまれる

今日もまだ見ぬあなたをおもい
あなたへと続く空を見上げる

ibuki 小澤いぶき
認定NPO法人PIECES 代表理事


児童精神科医、東京大学医学系研究科 客員研究。精神科医を経て、児童精神科医として複数の病院で勤務。 トラウマ臨床、虐待臨床、発達障害臨床を専門として臨床に携わり、多数の自治体のアドバイザーを務める。さいた ま市の子育てインクルーシブモデル立ち上げ・プログラム 開発に参画。 2016年、ボストンのFish Family Foundationのプログラムの4名に推薦されリー ダーシップ研修を受講。2017年3月、世界各国のリーダーが集まるザルツブルグカンファレンスに招待、子ども のウェルビーイング達成に向けたザルツブルグステイトメント作成に参画。


2. PIECES理事対談「ときに葛藤を味わいながら仲間と『市民性』の醸成に取り組む」

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2021年6月に5周年を迎えるPIECES。そんなPIECESを立ち上げから支え、プログラムの中核を担ってきた理事の斎と青木による対談。CforCが生まれた背景や2020年度のチャレンジ、プログラムのキーとなる「葛藤」について。

3. 子どもが孤立しない地域をつくる市民性醸成プログラムCitizenship for Childrenとは?

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Citizenship for Children(CforC)は子どもと自分にとってのよりよいアクションやあり方を探求する「市民性」の醸成を 目指すプログラムです。コース全体の流れと、各コースの特徴をご紹介。

Point

  • 「講座」「ゼミ」「リフレクション」「プロジェクト」の4つの柱

  • 2020年度初めてコースを増設(①③を増設)
    ①基礎知識コース
    ②探求コース
    ③プロジェクトコース

  • 探求コースは「一般(全国)」「水戸」「奈良」の3クラスで実施

4. ① 基礎知識コース The BASIC Course

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2020年度開設の子どもと関わる基礎を学ぶ「基礎知識コース」。2020年、eラーニングで何度でも受講が可能になりました。

児童精神科医やソーシャルワーカー、 まちづくりのプロなど、実践家や専門家による全 6 回の講座をオンデマンド形式で配信。基礎知識コースの受講者は一定期間内ならいつでも、好きな場所で学ぶことができるようになりました。

また、「コース参加者と学び合いたい」という声に応える ために月 1 回、他の参加者と同じタイミングで視聴する時間を設けました。動画を視聴した後には、Zoom上で少人数のグループに分かれて感想や疑問を共有し合い、学びを深めることができる「 感想共有会 」を実施。 オンライン上で講師とやりとりができる質問タイムも設けました。動画を視るだけでは消化できなかったことを解消する機会をつくることで、参加者からは「個人的に感じた疑問をぶつけることができて、とても勉強になった」などの感想が寄せられました。

5. ② 探求コース The INQUIRY Course

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基礎知識コースの内容に加え、月1回のゼミとリフレクションを通じて子どもたちとの関わり方をより深めていく「探求コース」

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年度はZoomやGoogle Classroomなどを駆使し、離れた場所にいても仲間と学び合える環境を整えました。

さらに、今期は水戸クラス、奈良クラス、地域横断型の一般クラスという3 つのクラスを設け、CforCの全国展開に向けた動きを加速させました。

ゼミでは「自身の価値観を深ぼる」「地域の社会資源と市民性」など、各回のテーマに沿って少人数のクラスで グループワークを実施。リフレクションでは、事前に参加者に書いてもらった「プロセスレコード」(実際にあった、自分と子どもたちなどとの関わりを客観的に振り返るためのワークシート)を使いながら、対話を通じて自分と相手にとってよりよい関わりかたを見つめるセッションを行います。

6. ③ プロジェクトコース The PROJECT Course

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「子どもの孤立」の問題を解決するときに大切なのは、信頼できる他者の存在です。それは家族や支援者との関 係といった固定的なものではなく、子どもの周りに優しい 「間」=信頼できる関係を届けることが子どもの孤立を防ぐとPIECESは考えています。そして、子どもたちの周りに優しい「間」があふれる地域をつくるには、私たち一人ひとりが優しい「間」をつくる主体になることが大切だと感じています。

そこで今期は探求コースの修了生を対象に、新たなプロジェクトを立ち上げ、自分なりのアクションを探求する「プロジェクトコース」を新設しました。このコースを通じて、水戸クラスから4つ、奈良クラスから2つ、一般クラスから3つ、計9つのプロジェクトが誕生。必要な知識や考え方を学ぶ月1回の「研修」と、対話を通じて内省と探求を深める「間の発酵所」を通じて、それぞれの地域で優しい「間」をつくろうと取り組んでいます。

7. 探求コース修了生インタビュー

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CforC受講生には様々なバックグラウンドを持ったメンバーがいます。
ここでは今期探求コースを修了したお二人にインタビューを行いました。

CforCに参加したいと思ったきっかけや、自分自身の変化得られたもの立ち上げたプロジェクトなどについてお聞きしました。

8. みんなの声を集めました「CforCに参加してみてどうでしたか?」

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CforC修了後に実施したアンケートから「参加してみてどうだったか」生の声を集めました。

①公開講座について

・「子ども」を共通項にいろんな属性の人の話を聞けたのが面白く、子どもを多角的に捉える材料になった(大学生・18-24歳)
・オンラインで自由な時間に見ることができるので参加しやすかった。講座の流れが、次第に実践に向かうように作り込まれており、具体性が高まっていく感じがよかった(経営者・25-34歳)

②ゼミについて

・初回のゼミの導入で、みんながあれほどすぐに自己開示を始められたのは魔法を見るようだった。あれがあったこらこそ、全体の深い学びにつながったという気がしています。来年も再来年も、あの魔法の時間が生まれてほしい。(会社員55-64歳)
効果的なメゾットを使って、体験しながら理解できるように工夫がされていました。自分のような未経験者でも楽しく参加でき、たくさんの気づきが得られてよかったです。(自営業・65歳以上)

③リフレクションについて

優しくみんなが受け止めてくれる空間だからこそできることだと感じます。いろんな問いを投げかけてくださることで、すごい気づきがあるのでよかったです。(大学生18-24歳)
・質問して気づくこと、質問されて気づくころ。一つの場面をいろんな方向から見ることで、子どもに対する見方が変わったように感じるのは、リフレクションのおかげだと思っています。(自営業・35-44歳)

④プログラム全体について

自分史上、最高の学びでした。出会うべくして出会った。自分の回り道はここに来るためだったのか、と思えるぐらい。このプログラムをよくしていくために。今後も引き続き関わっていくことが私の希望ですし、感謝の証しだと思っています。(会社員・55-64歳)
・スタッフの方々がとても丁寧な関わりをしてくださるなと感じました。人を大切に、優しい「間」が生まれるような関わりをしてくださっているんだなと感じる6ヶ月でした。(大学生・18-24歳)

9. アンケート調査からみえる参加者の学び

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実際にCforC のプログラムを受ける前と受けたあとで、参加者にどのような変化があったのかを確かめるためにアンケート調査を実施。ここでは、その分析結果をご紹介しています。

Point

子どもへの関わり方自分の生き方に変化が生まれている
「知識」「関わり方」「自己理解」「マインドセット」全てのカテゴリで有意差。質も向上している
自分自身の行動の変容関わる子どもの変化が実感されている

10. 協働パートナー団体 特別コラボ鼎談「地域で優しい”間”をはぐくみ続けるために」

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CforC2020「探求コース」の水戸クラスと奈良クラスは、地域で取り組みを続けるNPOとともに展開しました。ここでは2020年12月に行っ たFacebookライブ鼎談の内容を基に、各団体の活動内容やPIECESとの協業に込めた想いなどをお伝え。

NPO法人セカンドリーグ茨城 理事長 横須賀聡子さん 、認定NPO法人Living in Peace 理事 伊勢巧馬さん 、PIECES事務局長 斎 典道 の鼎談です。

11. CforCに今期助成いただいた企業・財団 / 個人寄付者の皆さま

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CforCは本当に多くの企業・財団・個人支援者の方々に支えられ、実施することができています。

改めてご支援を本当にありがとうございます。

2020年、事業規模は前年比約3倍に。全国展開へ大きく飛躍した1年間を支えてくださり、本当にありがとうございました!

Special Thanks

株式会社大和証券グループ本社 様
公益財団法人パブリックリソース財団 様
Water Dragon Foundation 様
継続寄付339名のみなさま
単発寄付317名のみなさま

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制作協力

ディレクション:瀬戸久美子
デザイン:長谷川真澄
写真:吉澤健太、古立康三
イラスト:細野由季恵


CforC実施報告会を開催!

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CforC報告会では、こちらの報告書の内容に加え、生の声やプログラムの雰囲気がわかる時間にします。CforCプログラムが目指していることと昨年までの成果をお伝えし、プログラムを受講された方だけでなく、関心を寄せてくださるお一人お一人と子どもの周りに優しい「間」があふれる地域を共に育んでいくための一歩を見つけられたらと思います。

◆当日のコンテンツ(予定)

  • PIECESとCitizenship for Childrenの歩み

  • Citizenship for Children2020(水戸・奈良・全国横断)の活動報告

  • 市民として、PIECESメイト(寄付者)として共にできること

当日はCforC運営メンバーはもちろん、修了生も参加し、実際受講してみての感想や得た学び、変化したことなどありのままの言葉でお伝えします。

いつもPIECESを応援してくださっている方も、初めてPIECESを知る方も、CforCに興味がある方も、ぜひご参加いただけたら嬉しいです。スタッフ一同、皆様のご参加を心よりお待ちしております!

日 時:2021年4月24日(土)14:00-15:30
(アフタートーク 15:30-16:00を予定しています)
参加費:無料 / 寄付付きチケット(3,000円、5,000円、10,000円)
開 催:オンライン(zoom)
主 催:認定NPO法人PIECES
問い合わせ:event@pieces.tokyo
申し込み:https://cforc0424.peatix.com/

 
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アニュアルレポート2019-2020ダイジェスト

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アニュアルレポート2019-2020が完成しました!

PIECESの事業や関わる人の輪が大きく広がった1年の軌跡を、ぜひご覧いただけたらと思います。
pdfバージョンをダウンロードいただくことも可能です。(ダウンロードはこちら

  1. 代表挨拶:ことばに「優しい間」を宿す

  2. 新型コロナウイルス流行を受けての発信と取り組み

  3. 2020年役員体制を刷新

  4. 活動① Citizenship for Children 2019水戸

  5. 活動② Citizenship for Children 2020

  6. 活動③ 若年妊婦のための居場所project HOME

  7. 活動④ Reframe Lab

  8. 活動⑤ 広報ファンドレイズ

  9. PIECESメイトの輪

  10. 応援メッセージ #ひろがれPIECES

  11. メンバー紹介・採用情報

  12. 活動計算書


1. 代表挨拶:ことばに「優しい間」を宿す

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わたしが行動を起こす時、その背景にはどんな感情があって、どんな経験が影響しているのでしょうか。わたしが生きてきた社会の規範がどう影響しているのでしょうか。

そう問うことは、難しく、終わりはないけれど、今までかけてきたメガネをかけたくなった感情や、経験に気づき、そっと自分に問うてみる。そのメガネを外したら目の前のことはどんな風に自分に映るのか。

そんな営みを繰り返しながら紡ぐ言葉と、その言葉を受け取る人との間には優しい間が宿るのではないでしょうか。

PIECES代表 小澤いぶき

2. 新型コロナウイルス流行を受けての発信と取り組み

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2020年、新型コロナウイルスが猛威を振るい、子どもたちにも大きな影響がありました。
PIECESでは、子どもたちやその周りにいる大人たち、困りごとを抱えた人たちに広く届くよう、様々な発信を行いました。

新型コロナウイルスに関してのこころとからだのケア 〜過程や子どもの居場所などでできるケア〜

新型コロナウイルス「からだとこころのワークブック」

とどけるプロジェクト
新型コロナウイルス感染症に関する情報を、様々な不安や困りごとのある方、情報が届きづらい方にとどけるために立ち上げたプロジェクト

3. 2020年役員体制を刷新

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時代を超えて、子どもを取り巻く環境に働きかけ、市民性を発揮し続けて行くためには、グローバルな視点や歴史的な視点を踏まえた上で、現在起きている現象を見渡していく広い視野が必要であると私たちは考えています。局所的な判断に捉われるのではなく、今見えていない誰かへの想像力を養う必要があるからです。

PIECESの行う市民性醸成の活動は、短期的にわかりやすい成果が出るわけではなく、継続的に行っていくことが重要です。そこで、そのような視点を補い共に歩みを進めてくださる新たな理事・監事の4名をお迎えし、新たな役員体制へと体制を変更いたしました。これまで設立から役員を務めてきてくださった7名の役員のみなさまへ心からの感謝をすると共に、新生PIECESとしての歩みを進めていきたいと思います。

新理事
・小野田峻 氏
小野田高砂法律事務所 / 弁護士
・荻原国啓 氏
ゼロトゥワン株式会社 代表取締役社長 / ソーシャルアントレプレナーズアソシエーション(SEA)代表理事 / ピースマインド共同創業者

新監事
・佐藤暁子 氏
ことのは総合法律事務所 / 弁護士
・長田和弘 氏
長田和弘税理士事務所

4. Citizenship for Children 2019水戸

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近年、子どもの貧困や虐待、いじめなどの問題が顕在化する中で、子どもや家族の「心の孤立」をいかに防ぐかが、重要な課題となっています。ここでいう「心の孤立」とは、生きづらさや困難を抱えていても、大人や社会に助けを求めることができない、頼れない状態のことです。子どもの育ちにとって大切な、信頼できる他者の存在。

たとえ心に小さなケガをしたとしても、その傷口が広がる前に癒しあえる仲間の存在。そんな存在が地域や社会の中に生まれ続けていくための仕組みや文化を築いていくことが必要ではないか。そんな課題意識を受けてPIECESは2016年から市民性醸成のプログラムを実施してきました。約3年間4期にわたり、東京都内でプログラムを実施したのち、2019年より「Citizenship for Children(CforC)」と名称を変更し、茨城県水戸地域でのプログラムを皮切りに全国展開が始まりました。

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プログラムは、①専門知識を学ぶ座学講座、②子どもと関わる現場実践、③リフレクションとコミュニケーションを扱うゼミ、という3つの取り組みから構成されています。この3つのプロセスを通じて、約6ヶ月間、12名程度のチームで対話と内省を繰り返しながら「自分だからこそできるアクション」を問うていき、プログラム修了後の主体的な社会への参画を促していきます。

5. Citizenship for Children 2020

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2020年度のCforCは従来のプログラムを「探求コース」と位置付けた上で、「基礎知識コース」や「プロジェクトコース」を新設し、「孤立した子どもたち」と優しい関係性を紡ぐことのできる大人を増やすための活動を一気に加速させました。

昨年に引き続き、水戸ではNPO法人セカンドリーグ茨城さんと協働。また、今年新設した奈良のコースではLiving in Peaceさんとの協働がスタートしました。CforCでは今後も、各地のパートナーと連携しながら優しい間を紡ぐ市民を増やす活動を丁寧に手がけていきます。

6. 若年妊婦のための居場所project HOME

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NPO法人ピッコラーレさんと協働で、東京都豊島区にある一軒家で最初の「HOME」が始まりました。

ネットカフェなどの不安定な居場所を転々としている孤立した妊婦さんたちが「いつでもおいで」と受け入れられる、いつでも立ち寄って相談できる。そんな安心で安全な「HOME」をつくるプロジェクトです。

HOMEを開始するにあたって実施したクラウドファンディングでは640名の方から7,750,000円のご支援をいただきました!本当にありがとうございました。

ピッコラーレさんと共に、活動を通して温かいまなざしを持った地域をつくっていきます。

7. Reframe Lab

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時間や空間を超えて、この世界にいるさまざまな存在・生命と共に在ることへの想像力を広げていくプロジェクト「Reframe Lab」。こども研究員と共に体験型で進めていくアートプログラムで、あらゆる存在への想像力を拡張させ、問いを広げ、未来のかけらを見つめていきます。

2020年のテーマは「ミエナイモノとあそぶ Immersive Experience」。「目に映るもの」だけで考えるのではなく、かつて存在していた生命や非生命、そして人の痛みや優しさといった”ミエナイモノ”への想像力を育むプログラムを実施しました。

8. 広報ファンドレイズ

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PIECESが大切にしている「情報発信ポリシー」を公開しました。広報ファンドレイズとグラフィックデザインに関して、私たちが何かをアウトプットする際に大切にしていることを言葉にした発信ポリシー。日々の発信から「優しい間」を紡いでいけるよう大切にしている価値観です。

イベントは1年の間に主催、共催、登壇、ライブ配信などを含め計46回実施しました。(2019年11月~2020年10月)多くの方にPIECESを知ってもらうことのできた1年でした。
ご参加くださったみなさま、ありがとうございました!

9. PIECESメイトの輪

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継続寄付者は1年間で約3倍の339名となり、単発でのご寄付も300名以上の方から頂戴しました。企業や団体様からの寄付・助成も前年度を超えるものとなり、温かなサポートに支えられ活動を発展させることのできた1年間でした。PIECESを寄付で支えてくださる寄付者「PIECESメイト」のみなさんとこれからも共に歩んでいきたいと思っています。

2018年のプログラム修了生・PIECESメイト(継続寄付者)である江澤萌さんにお話を伺ったインタビューもぜひご覧ください。

私たちは、寄付者の皆さんと「寄付するー寄付される」という関係を越えて、共にありたいと願っています。これからも「優しい間」を共にひろげる仲間として、どうぞよろしくお願いいたします。温かなご寄付を本当にありがとうございます!

10. 応援メッセージ #ひろがれPIECES

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PIECESをさまざまな形で応援してくださっているみなさんから応援メッセージをいただきました。

いただいた応援メッセージはnoteに掲載しています。(note「PIECES magazine」はこちら

アニュアルレポートで紹介しきれなかった温かく優しいメッセージを、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。

また、SNSを通じて #ひろがれPIECES でシェアいただいたたくさんのメッセージもとても心強いものでした。ありがとうございました!

11. メンバー紹介・採用情報

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2020年、PIECESは4名の新たなスタッフを迎えました。CforCの各クラスを担当する運営スタッフと、経理などのバックオフィス業務を担当するスタッフを迎え体制を強化し、活動を展開することができました。

採用情報

プログラム拡大の基盤をつくるファンドレイズ担当スタッフを募集しています!

企業や団体など法人向けにPIECESの活動を広く広めていただきながらファンドレイジング活動をになっていただける方を募集します。

詳細についてはこちらにお問い合わせくださいstaff@pieces.tokyo

12. 活動計算書

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アニュアルレポートは「継続寄付者のみなさま」と「1万円以上の単発寄付をくださったみなさま」へ紙媒体でお渡しをしております。ぜひ最新のアニュアルレポートをお手元でご覧いただけたら嬉しいです。

PIECESの活動はみなさまからの継続的なご寄付によって支えられています。来年度以降も活動を共に継続・発展させていく仲間になってくださいませんか?

 

Special Thanks

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言葉にできない、子どもたちの「しんどさ」に目を向ける #虐待防止月間

環境が大きく変化する現代、今も続くコロナ禍においては、時として身体やこころの調子が変化することがあります。(変化しないこともあります。人それぞれです)例えば、ニュースなどで発信される、さまざまな情報を受け止め、環境の変化に対応するご自身や子どもたちが、ちょっとしんどいなと感じることもあるのかもしれません。

時として大人自身も自分で気づきづらい、からだやこころの変化。子どもたちの変化にどうやって気づいていくとよいのでしょうか。

今月11月は、厚生労働省が定めた児童虐待予防の啓発を行う虐待防止月間です。

認定NPO法人PIECESではこの虐待防止月間に関連して、様々な情報を更新していきます。


第二回目の記事となる今回は、子どもの状態に目を向けるをテーマに「子どもたちのサイン」と「気付いた時にできること」をお伝えします。


からだやこころのサインとは?

子どもたちに限らず大人も、たくさんの情報があって、いろんなことが変化するとき、からだやこころがいろんなサインを教えてくれることがあります。これは自然なことで、とても

大切なサインです。からだやこころのサインとはどんなものでしょう?
NPO法人ぷるすあると認定NPO法人PIECESが協働で作成した、『からだとこころのワークブック』からご紹介します。

からだとこころのワークブック -アルハから大切なあなたへ-

【からだのサイン】

こころが疲れたとき、自分では気がついていなくてもからだのサインがあらわれることがあります。

  • ごはんを食べたくない 

  • 頭がいたい 

  • おなかがいたい

  • いつもよりイヤな夢をみる など

また、ほんの少しの変化かもしれませんが、いつもと違う変化がサインとなることもあります。

  • からだがちぢこまる

  • 息をすったりはいたりするのが早い

  • からだにちからが入らない など

『からだとこころのワークブック』より

『からだとこころのワークブック』より

【こころのサイン】

日常のちょっとしたことに対する気持ちや行動に、こころのサインがあらわれることがあります。

  • 外にでるのが不安になる

  • なんだかイライラする

  • 自分が今どんな気持ちか わからなくなる

  • だれかをたよる、相談する ことがむずかしくなる

  • スキなことを やる気も起きない

  • いつもよりだれかにあまえたくなる

  • 人のことがこわい … など

『からだとこころのワークブック』より

『からだとこころのワークブック』より

ご自身やお子さんにいつもと違う、ちょっとした変化のサインはあるか、丁寧に見てみてください。


不安になった時は子どもにどんな変化があるの?

特に、子どもたちは、、言葉で伝えてくれる以外に、様々な形でサインを出してくれていることがあります。まわりの大人が、「困ったな」と感じている時、子ども自身、何かも、例えば何かに困っているなど、いつもとは違うことが起こっているのかもしれません。そしてそのサインを教えてくれているかもしれません。

以下は子どもの年齢によりますが、時として見られるサインです。

・おねしょが増える、頻尿になるなど
・ご飯の量が減る/寝つきが悪い、途中で目が覚めるなど
・いつもより甘える、一人でいるのを怖がる
・会話が減った、なにか言いかけてやめるなど
・いつもよりこだわりが強くなる、なんども同じことを聞く、やる
・いつもより落ち着きがなくなる、そわそわする、イライラしやすい
・兄弟などとの揉め事や喧嘩が増えた
・勉強に集中できない など

子どもたちの「いつもと違う何か」のサインを知っていることで、起きていることだけ目を向けず、その背景にある「困りごと」や「環境の変化」に目を向けることができるかもしれません。

参考)

① 新型コロナウイルスに関してのこころとからだのケアvol1~家庭や子どもの居場所などでできるケア~|Ibuki Ozawa|note

② 名もなき痛みが教えてくれたこと〜見えないことへの想像力〜|Ibuki Ozawa|note



子どもや保護者からの「助けて」のサインの見つけ方

たとえば以下のような普段と違う様子が見られた場合は、その子どもや保護者が、困りごとやしんどさを抱えている可能性があります。

(1)子ども

  • 普段は見られない不自然な傷やアザなどの身体的な変化がある

  • 普段より活気がない、ぼーっとしている、おびえた様子であるなど、表情や様子の変化がある

(2)保護者

  • ひどく疲れている、精神的に不安定な様子である

  • 子どもに対する関わり方が普段より厳しくなっていたり、イライラした様子である

子どもや保護者の様子を見ていて、「大丈夫かな」「心配だな」と感じたときは、以下の章を参考に、直接・間接のコミュニケーションやサポートを試みましょう。

サインに気づいたあと、サポートするためにできること

子どもたちが安全に過ごすために周囲の大人たちができるサポート方法をご紹介しているので、ぜひご覧ください。

① 子どもたちのサインに気づき、サポートするためにできること — とどけるプロジェクト 

② 新型コロナウイルスに関してのこころとからだのケアvol1~家庭や子どもの居場所などでできるケア~|Ibuki Ozawa|note


厚生労働省では毎年11月を「児童虐待防止推進月間」と定め、家庭や学校、地域等の社会全般にわたり、児童虐待問題に対する深い関心と理解を得ることができるよう、期間中に児童虐待防止のための広報・啓発活動など種々な取組を集中的に実施しています。1ヶ月の間に様々な啓発活動が行われ、さまざまなニュースに触れると、いつもよりも周りの変化に気づきやすくなっているかもしれません。もしも、虐待の可能性や危険を感じた場合は、ひとりで抱え込まず、児童相談所に連絡してください。

虐待の可能性や危険を感じた場合

児童相談所は決して懲罰的な機関ではなく、子育て全般の相談ができる場所です。心配な様子の家庭が児童相談所とつながることで、必要なサポートにつながったり、困りごとが解消されたりする可能性があります。

●まずは「189」に電話相談●

「189」に電話をかけると24時間365日無料で、最寄りの児童相談所につながります。相談者の氏名や相談内容に関する秘密に関しては口外されないよう定められているため、相談者にとって安心して相談しやすい環境が整えられています。もし児童相談所の担当者に対して氏名を明かしたくない場合は、匿名での相談も可能です。

この他にも、「子どもの人権110番」では、電話相談に加えてメール相談も受け付けていますので、ご都合に応じてご利用ください。

児童相談所虐待対応ダイヤル
・電話:189 (無料)

子どもの人権110番
・電話:0120-007-110 (無料)(受付時間 平日午前8時30分~午後5時15分)
・メール相談:https://www.jinken.go.jp/

***

悲しい事件を目にすると、誰かのせいにしたり、正しさをかざしたくなります。
でも、それは、私たちの日常と地続きで起きていて、決して他人事ではありません。
地続きである、その背景を想像してみることができると思います。

気がかりをそのままにしないで、何かできるアクションを考えてみませんか。
子どもたちが安心して過ごせる未来は、私たちひとりひとりがつくっていけると信じています。

文:藤田奈津子


PIECESでは虐待防止月間の11月、児童虐待防止のために大切な情報をシェアしていきます。これから記事やイベントなどで皆さんと共に考えていく時間をつくっていきますので、ぜひシェアなどしていただけると嬉しいです。

また、今後の情報はLINE・TwitterFacebookInstagramをフォローしてぜひ受け取ってください。
PIECESのWEBサイト最下部からメールマガジンもご購読いただけます。情報を丁寧にお送りしていきますので、よろしければぜひご登録ください!

想像力や優しさを広げるために。私たちが心がけたい、虐待のニュースの受け止めかた #虐待防止月間

小さな命が奪われた事件を耳にすると、やるせなさや憤りを感じたり、ぎゅっと胸が苦しくなって、その悲惨な現実から目を背けたくなってしまうことがあります。

ニュースを目にすると、私たちには児童虐待に関するセンセーショナルな事件が舞い込んできます。そんな時、社会では事前に防ぐことのできなかった虐待を、その保護者や、児童保護に関わる機関の失敗だと批判する声が聞かれますが、非難をするだけでは子どもたちを守ることには繋がりません。

では、どうしたら子どもたちは安心できる環境で子どもらしく生きられるのでしょうか。


今月11月は、厚生労働省が定めた児童虐待予防の啓発を行う虐待防止月間です。
認定NPO法人PIECESではこの虐待防止月間に関連して、様々な情報を更新していきます。

第一回目の記事となる今回は、世の中に溢れる情報をシェアする前に、あなたに知っておいてほしい大切なことをお伝えします。PIECES代表理事 児童精神科医の小澤いぶきが紡ぐ、「虐待を予防するために知っておいてほしい、センセーショナルなニュースの受け止めかた」とは。

  1.  知っておきたいニュースの受け止め方とあなたにできること

  2. 【付録】日本における児童虐待の現状

今この瞬間にも、安全な頼り先がない中で一人で頑張って生きている子どもたちがいるということ。その子たちが置かれている環境やそれが起こった背景を知るために私たちに必要なまなざしとは何か、一緒に考えていきましょう。


知っておきたいニュースの受け止め方とあなたにできること

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小澤 いぶき Ibuki Ozawa

PIECES 代表理事 / Founder
東京大学医学系研究科 客員研究員 / 児童精神科医

11月は虐待防止月間です。1ヶ月の間に様々な啓発活動が行われると思いますが、今回はそもそも私たちが虐待のニュースを知った時にできること、そのニュースの受け止め方についてお伝えできたらと思います。

例えばアメリカには、メディアが家庭内における暴力を報道するにあたってこんなガイドラインがあります。


― Often, news coverage about child abuse and neglect focuses on the shocking and brutal results of individual cases of abuse—a perspective that can reinforce misperceptions that “bad parenting” or a failure of child protective services is the main cause of child maltreatment. 

Journalists can help audiences understand that child abuse and neglect is not simply the result of individual failures or family dynamics, but a public health issue that affects communities and society in significant ways. 

By working with prevention researchers, practitioners, and other experts, journalists can craft news stories about child maltreatment that convey not only the problem but also possible solutions. ―

ーー虐待やネグレクトに関するニュースの多くは、個々の虐待のケースがもたらす衝撃的で残忍な結果に焦点を当てています。そういった視点は、単に個人の“悪い子育て”や、児童保護に携わる機関の失敗が、子どもへのマルトリートメント(不適切な養育)の主な原因であるという誤解を強めてしまいます。

そこで、ジャーナリストができることは、児童虐待やネグレクトが、単に個人の失敗や、家族の関係・動態によるものではなく、コミュニティや社会に重大な影響を及ぼす公衆衛生の課題だと、受け手に理解を促す報道をすることです。

ジャーナリストは、予防に携わる研究者や専門家とともに取り組み、子どものマルトリートメントに関して、問題だけではなく、可能な解決策を伝えることができます。

アメリカ・疾病対策予防センター「児童虐待・ネグレクトに関する報道での推奨例」より一部抜粋

私は、ここでいうジャーナリストを単にマスメディアのことだけだとは考えていません。簡単に誰もが世界に向けて発信することができるようになった今、一人一人が情報を媒介しうること、それによる影響があることを知っておくことが重要なのではないかと考えています。

センセーショナルなニュースは目に止まりやすく、拡散力があります。そのときに知っておいてほしいことは、私たち一人一人のシェアしたその情報が、虐待が起こる社会の綻びを大きくしてしまっていないかということです。

例えば、

・ニーズに合わせた情報や困りごとの解決・虐待の予防につながる情報をシェアする

「この地域にはこんな遊び場があるよ」

「私も困ったときにここに相談しました」

「**の地域にはこんな団体があって、こんなことをしているようです」

・今できることやグッドプラクティスを紹介する

「子育て世代を応援する取り組みが今始まっているみたい。 #** で投稿しているみたいだよ」

「以前こんな風に解決したこともあるみたいです」

・虐待が公衆衛生の問題だということを伝える

「この問題をつくりだしている社会の構造は何だろう?」

「すでにあるグッドプラクティスや、資源を伝えることが必要だね」


といったように、不安や悲しみ煽るのではなく、心を落ち着かせて今ある良い選択肢を提示するという方法もあります。このように伝えれば、情報を受け取った人が過度に不安を高めるのではなく、安心して誰かに頼ったり、相談したりしやすくなるかもしれません。


そして同時に、虐待のニュースを見たときの自分自身の感情も大切にしてみてください。怒りや悲しみ、無力感、自分が責められているように感じる。そんな様々な感情は、自分自身のことを知り、虐待を予防する大切な感情です。

もし少し余白があれば、こうした感情が起こった背景にご自身のどんな願いや経験が影響しているのか、社会に起こってきたことがどう影響しているのか、そっと見つめてみてください。

「私はなぜ、悲しいと感じたのだろう」

「憤りを感じたのには、こうあるべきという私の理想があったのかも」

「悲しさの感情のわけは、自分の過去の経験が思い起こされたからかもしれない」

そんな風に自分に起こった感情の背景を想像してみると、時にその感情の背景には自分自身の願いや価値観、経験してきたことが存在する場合があります。

しかし決して自分の感情を否定的に捉える必要はありません。起こったどの感情も大切な感情で、それを感じられるのは自分の力でもあります。だから、その感情をゆっくり丁寧に受け止めてみてください。

また、その感情を感じることで自分が疲れるという時には、感情を喚起するニュースから離れてみてください。

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自分の感情をそっと丁寧に受け止めたあとに余裕があれば、ニュースが伝えていない複雑な背景を調べ、想像してみていただけたらと思います。

「虐待ってそもそも家族だけの問題なの?」

「育児環境の困難さや、困窮した状況はどんな社会の構造から生み出されているのだろう?」

「私はそこにどんな風に関わっているのだろう?」

「誰かに相談することができなかったのは、親の責任?」

「他の地域ではどんな取り組みがあるのだろう?」

ひとつ一つの疑問を考えて、「こんな社会だったら予防ができたかもしれない」と想像してみてください。安心して相談できる環境が近くにあったら、こんな制度があったら、こんな文化が醸成されていたら。どんな社会だったらその子も保護者も安全で、予防がなされていたのでしょうか。

そして改めて考えてみてください。ニュースを見たあとに、親や保護に関わる機関を非難することはかえって、子どもたちの周りにいる人たちが誰かに頼ることを躊躇わせたり、児童保護の機関で働く人たちを疲弊させたりしてしまわないでしょうか。

残念ながら、日本にはまだ冒頭で示したアメリカのような報道ガイドラインがありません。そんな中、私たちにできることの一つは出来事の一部を切り取り、センセーショナルに伝えたり、誰かやどこかの機関をスケープゴートにするような発信ではなく、子どもの生きる環境の安全を育み虐待が生まれにくくする社会をつくるために言葉を紡ぎ直して発信をすることなのではないかと思います。

また、繰り返しになりますが、報道により自分の状態がいつもと違うなと感じる時、報道から離れ、自分が少しだけケアされる時間を作ることもとても大切なことです。

一人の子どもが虐待を受けることは、その家庭だけでなく社会の問題です。子どもに起きていることが社会を映す鏡だとしたら、その出来事は遠くの誰かのことではなく、私たち自身のことでもあります。

裏を返せば、それは私たち一人ひとりが、より良い社会に向けてできることがあるということです。だからこそ、虐待というテーマの中で、不安や怒りを煽るような情報ではなく、想像力や優しさを広げていくような、一人ひとりの行動を促すような発信が広がっていったらと思います。


【付録】日本における児童虐待の現状

正しく情報を理解するためには、児童虐待の現状を知っておくことも必要です。
「児童虐待は毎年増えている」「虐待問題は世代間で連鎖する」など、巷でよく耳にすることは果たして本当なのでしょうか。

死に⾄らしめるリスクのある⾝体的虐待とネグレクトは年間約7万件発⽣し、 うち52件は実際に死に⾄っている。

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児童虐待には身体的虐待、ネグレクト(育児放棄)、性的虐待、そして心理的虐待の4種類があります。その中でも年々増加傾向にあるのは心理的虐待です。


虐待相談対応件数は年々増加し、平成30年度は約16万件までのぼっています。この中には「子どもに手を上げてしまった」「子どもを激しく叱ってしまった」といった親自身からの相談も含まれており、数が増えたことを単に問題が増えたからだと受け止めるのは誤解を生む可能性があります。また、2020年の新型コロナウイルス禍において虐待相談対応件数が増加したと言われていますが、COVID-19との関連は今のところ不明のままです。

児童相談所に寄せられた相談のうち、身体的虐待とネグレクトを合わせると約7万件。児童養護施設に一時保護される子どもの数は年間約2万件、社会的養護の環境に置かれた子どもは年間約4500件です。

心中を除く虐待死は平成29年で49件、平成30年は52件。その件数は、この数年間横ばいで推移しています。

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虐待の発生要因を探ってみると、様々な社会の綻びが見えてきます。

ひとり親家庭や貧困などの家庭環境的要因、親自身の鬱傾向など精神的健康が保たれていないなどの養育者の要因。家庭が地域で孤立をしていたり、職場からの理解が得られず育児に過度なストレスがある環境も虐待が起きる一つの要因となります。

こうしてみてみると、親や保護に関わる機関を非難することは問題を解決しうるのか、という問いへの答えは自明のことと思います。

そもそも虐待などの危機の手前には、何かしらの社会の綻びがあるはずです。その社会の綻びを編み直すことで、子どもの周りの不条理や危機が起きづらい社会にしていくことを考える必要があるのではないでしょうか。

文・写真:若林碧子


PIECESでは虐待防止月間の11月、児童虐待防止のために大切な情報をシェアしていきます。これから記事やイベントなどで皆さんと共に考えていく時間をつくっていきますので、ぜひシェアなどしていただけると嬉しいです。

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第1回目のリフレクションを開催! 対話で見えた「子どもと自分の願い」とは…?

PIECESが運営している「Citizenship for Children2020」探究コースの特徴の一つが、「講座」「ゼミ」そして「リフレクション」がセットになっていること。9月10日(木)、ついに第1回目の「リフレクション」が開催されました。今回の目的は、リフレクションの大切さを知ると同時に、リフレクションとは何かを体感すること。オンラインで、24名の方々にご参加いただきました。

リフレクション1

◆当日の流れ

簡単な自己紹介を行ったのち、「知る」「体験」「共有」の3つのセクションに分けてリフレクションを進めました。

・セクション1 リフレクションについて知る

ある子どもの例を参考に、目に見える言動の背景にある子どもの願いや価値観はもちろん、自分自身の要求や願いを理解しようとし続けることの大切さを共有しました。そのうえで、PIECESがリフレクションにどのような目的を置いているのかをお伝えし、具体的な方法や注意点をシェアしました。


・セクション2 ペアになってリフレクションを体験

参加者同士、2人組のペアになってリフレクションを体験してもらいました。「個人ワーク」の宿題を基に、最近あった子どもとの出来事のなかで心に残っている場面について「相手は何を考えていたのでしょうか?」「あなたはどんな感覚・気持ちでしたか?」など11の問いを投げかけ、子どもと自分の願いに気づくための振り返りを行いました。


・セクション3 みんなで感想を共有

リフレクションを通じて感じたこと、気づいたことなどを全員で簡単に共有しました。

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◆リフレクション中の様子など

リフレクションを行うのは初めてという方が大半でしたが、参加者からは「リフレクションの意味や価値がわかった」というコメントが複数寄せられました。また、ペアになって問いかけ合うことで新たな発見や気づきがあったという声も目立ち、終了後もオンライン上で参加者同士が活発に感想共有をする様子が見られました。日直をお願いした参加者の方からは、「対話によってステップバイステップで、着目観点をずらしながら振り返る手法によって、深い気づきに到達できたり自分の思考パターンに気付いたメンバーが多かったようです」とのコメントが寄せられました。

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◆感想
以下、参加者からの感想です。

・ペアワークをした人とともに、もっともっと素の、裸の自分でいなくちゃ、というベクトルが一致したのが面白かった。少し時間が経ってジワジワ上がってきたのが、自分の中では価値が低いと思っていた活動が、実はひとりの子どもにとっては大切な機会になったかもしれない、という気づきでした。場の空気、考え、フレームがどうだろうと、そこに来る子どもがいる以上、貴重な場になりうること。そこに与えうる自分のbeingに自信を持て、という言葉が降ってきました。また、もっと子どもと共にいる場での自分の一挙手一投足を観察しなければ、と思いました。感情の現れを、体感する。しかも不安定さをちゃんとキャッチする。言語化されない揺らぎを感じ、あるがままに抱きしめる。楽しみます!

・初めてのリフレクションでしたが、とても新鮮な体験でした。反省会はよくあったのですが、それとは全く違っていて興味深かったです。感情や願いについてまで想像することが、相手を思いやることにつながるのでしょう。自分のことについても、話をすることで「そうか、自分はこういうことを感じて、願っていたのだ」と気づいたのはとても新鮮な感覚でした。最後の質問の「もう一度同じ場面に遭遇したらあなたはどうしたいですか?」で自分のしたいことが発見できたので、同じような機会に会えるのが楽しみです。

CforC第2回ゼミレポート|市民性、アセスメントについて理解を深める

Citizenship for Children2020探求コースでは、「講座」「ゼミ」「リフレクション」と授業が分かれています。今回は「ゼミ」2回目を開催しました。市民性とアセスメントについて理解することを目標に、講義やワークを通して考えていきました。

初回のゼミから約1ヵ月経ちました。「講座」「リフレクション」に参加し、コミュニケーションツールSlackを使用してそれぞれのクラスごとに交流をしていたのもあり、和やかな雰囲気で始まりました。

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当日は以下のような流れで進められました。

・チェックイン
3,4人のグループに分かれて、最近のハイライト、課題となっていた講座の動画の答えを共有し、和やかな雰囲気でスタートしました。

・市民性とは
市民性と「間」について理解を深めるために、自分と子どもの両方にとって良い「間」を探求することをこの探求コースでは目指していきます。自分自身と、子どもの両者の願いが成立した自分なりの「関わり方」を見つけていきます。

・子どもの理解を深めるためのアセスメント
アセスメントとは、子どもや家庭への関わるうえでの根拠となる「〜かもしれない(仮説)」を考えることです。「〜かもしれない(仮説)」が数多く思い浮かぶことは、子どもの行動の背景理解につながります。行動の背景を深く探るには、本人や環境に目を向けてみることに加え、ストレングス視点を持つことが大切です。目に見える行動・言動の意味付けを捉え直してみることが重要で、そのためにも自分が持っている価値観や信念などに自覚的であることが大切だと伝えました。

・対話のセッション
市民としての関わりについての新しい意味や未来を探っていくため、ワールドカフェという手法を使いました。個々の価値観の違いを尊重しながら、意見を述べ合うことを重視し、その違いはみんなの気付きになっていきました。

動画や講義の感想をシェアしたり、動画に出てきたプレーパークに子どもたちはどんなコミュニケーションがあるから来ているのかを考えたり、そのコミュニケーション(心地よい関わり)を体験したことがあるかを考え、深めていきました。




<各クラスの感想>

◆一般クラス

9月13日(日)、オンラインで15名が参加しました。

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第1回目からは少し日が経っていましたが、直前の10日に開催されたリフレクションに多くのメンバーが参加していたこともあり、当初から穏やかな雰囲気の中で活発なコミュニケーションが繰り広げられていました。


今回は運営の方々もチャレンジだという、オンラインでのワールドカフェ。

オフラインでのワールドカフェ同様に、対話を通してそれぞれが気づきや学びを得ていく事が出来た様に感じます。ただ、オンラインでは参加者同士が対面しているため、何となく「喋らなきゃ」という焦りが生じてしまう印象も受けました。むしろ少し斜めにカメラをセットする方が良いのかもしれません。さて、まだまだ始まったばかり・出会ったばかりのメンバーですが、少しずつ心理的安全性が担保された会になってきており、深い内容の話も出始めています。オンラインでのコミュニケーションが当たり前になってきている世の中ですが、オフラインで出会えたら、もっと仲間意識が生まれ、心地よくも熱いコミュニケーションが行えるはず。そんな日を心待ちにしつつ、オンラインだからこそ出会えた仲間との時間を楽しみたいと思います。



第二回のゼミでしたが、それまでのSlackのやりとりや、リフレクションなどの他の顔合わせで、かなり開始から、顔なじみと言う感じで安心してできたように思います。

今回のCforCのプロジェクト名でもありキーポイントでもあろう「市民」についてのインプット。専門家ではなく「市民」という立場だからこそできるそのことの関わりストレングスの扱い方を学ぶことができました。その後の受講者同士での意見交換=ワールドカフェでは、様々な方の意見聞けるなか、「『市民性』と『専門性』こんなに単純明快に区切れるわけではなく融合しているのではないか」と言う意見を聞け、さらに受講者同士での深い学びができたように感じます。早くも次回が待ち遠しいです…!


◆奈良クラス 

9月20日(日)の午後、オンラインで9名が参加しました。受講者同士が対話する「ワールドカフェ」では、約1時間でたくさんの人たちと話をすることで、チームごとにさまざまな気づきが生まれました。

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以下は参加者の感想です。

・今回、自分の課題として残ったことは「程よい距離」について。今までの講義などでもこのワードは何度も出てきて、そのたびに自分の中で「程よい距離」は何かと考えてきましたが、今回は具体的により深くまで考えることができました。と同時に、謎も深まりました。みなさんのお話を聞きながら考えが膨らみ、自分の中で整理しているんだろうなと、今までにない感覚で面白くも感じました。

「市民性とは?」というところでは、自分が正しいと思っていることが相手にとって必ずしもそうではなく、ひとりひとりの目線をもって考えていくことの大切さを改めて考えました。そのためにも、まずは自分を知ること、客観的にみてみることに目を向け、その上で自分の強みを生かした関係性を見つけていきたいです。

ゼミでは、時間内に答えを見つけるのではなく、生まれた疑問を次の課題にし、それをみんなで探り続けていくことができます。ひとりではできないからこそ考え続けられる、このプログラムを通して今までの自分との変化を実感しながら、頼もしい仲間と一緒に引き続き学んでいきたいです。

・ワールドカフェの中では、互いの考える市民性や良い関係性について思いを述べあったけれど、「相手の話を受け止めなければ!」というプレッシャーも、「相手に私を受け入れてもらわなければ!」という妙な緊張感もない。「伝え合う」ことはあっても、押し付けあったり決めつけたりすることはなく、互いの話に大きくうなずき、共感を表情で示し、「なるほど~」「そうだよね~」という言葉で相槌を打っている。「そうか、私の言葉届いているんだ」「今一緒に考えているんだ」という実感が、この温かい空気感を生んでいるのだなと気がついた。

ゼミ中の講義にあった「他者やその背景への想像力を持ち、”~かもしれない”をたくさん考えられるようになることが大切」という学びも含め、「多くの可能性を念頭におきながらもまっさらな気持ちで向き合っていく」という姿勢が市民性の一つのポイントなのかなと感じた。正解の枠組みを自分の中に作ってしまうのではなく、「あなたの気持ち、伝わっているよ」と示しながら、子どもの目線から見えるものを一緒に受け取っていく。そして新しく見えた何かをもとに、一緒にリフレーミングしていく。

そんな風に関わっていけたら優しい間は生まれてくるのかなと考えつつ、引き続きこの温かい空間の中で、皆さんと考えや思いをほわほわ膨らませていけたらと感じている。

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◆水戸クラス

9月20日(日)、オンラインで5名が参加しました。水戸クラスのメンバーは初回のゼミ後、子どもの居場所づくりをしているメンバーのところへクラスのメンバーが見学行くなど、オフラインの交流も始まっています。

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以下、参加者の感想です。

ゼミではメンバー間で感想を共有することで、違った視点での気づきもいただきながら内容を振り返り学びとして厚みが増したと感じました。オンラインでのワールドカフェというのも初めての体験で新鮮でした。

子どもたちの「居場所・拠り所」をつくるために必要な視点、そこでの他者への関わり方について改めて考える機会となりました。また、対話を通じて自分の経験や強みを確認し、それを生かしていくことにも目を向けられたのも良かったです。

動画や講義の感想で、茶髪金髪の子たちは、おちゃっこババたちに邪険にされても、あそびーばーに来るのはなぜだろうという問いがありました。もしかしたら、関心を向けてくれるから、という理由があるからかもしれないという話があり、また、家にいずらいから来てる子もいるのかも、とも思いました。

待つという姿勢でいることの大事さはわかるが、待つ姿勢でいても向こうから来ることができないような子にはどうしたらいいか(置き去りにしちゃうのではないか?)との問いが出たのも、心に残りました。

屋根から飛び降りる子たちを見ていて、自分が子どもの頃はこういう危ないこともやってたけれど、自分の子には危険だからと止めてしまっているという感想を話しました。危険をおかす権利を取り上げてしまっているのではないか。

ブランコや滑り台などの遊び方が決まっているものより、土管とか砂場とかのが楽しかった、自分たちで創造していく楽しみが遊びなのでは、との私の感想には共感が集まりました。

大人はお茶っこでいいとの部分にも、「ただ お茶飲んでたら、周りから何やってるんだ、あいつらサボってるんじゃないか、みたいに言われてしまうかも」という意見もあり、そういうこともあるかもなぁとも思いました。そこは、丁寧に「こういうやり方を敢えてしてるんですよ」と話していったらいいのでは、でもなかなか難しい、などのお話がでました。

ワールドカフェスタイルのゼミ、とても面白かったです。時間が足りないと思うくらい、話が多岐にわたり、とても勉強になりました。

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セミナーレポート|子どもへの“支援”を問い直す ~プレーパークでの実践に学ぶ「子どもとともにいる」関わり~

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9月6日(日)、「子どもへの“支援”を問い直す ~プレーパークでの実践に学ぶ「子どもとともにいる」関わり~」というテーマで一般社団法人プレーワーカーズ理事の神林俊一さんをお招きして公開講座を行いました。

残暑が残る蒸し暑い日でしたが、オンラインで、26名の方々に参加いただきました。
※本講座は、今期の「Citizenship for Children」(CforC)第2回目の講座です。2021年1月にかけて全6回の講座を実施します。今後の講座について、ご興味のある方は以下Peatixページのフォローをお願いします。


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◆講師プロフィール

神林俊一(一般社団法人プレーワーカーズ理事/一般社団法人TOKYOPLAY/そとあそびプロジェクト・せたがや/フリースペースつなぎ理事/NPO法人日本冒険遊び場づくり協会宮城地域運営委員)

いじめ・不登校の最中、プレーパークに出会う。2010年、東京都次世代育成支援行動計画にて、チャイルドファシリテーターとして子ども300人大人100人 をヒアリング、心の貧困を抱える多くの子ども達と出会う。2011年4月、東日本大震災直後に子どもの心のケアを旗印に、住民協働による遊び場「あそびーばー」を立ち上げ、その後2年間常駐し、住民による運営体制を確立。NPO法人日本冒険遊び場づくり協会宮城県北部長として日本ユニセフ協会との協働し東北各県の仮設住宅、復興公営住宅付近にて遊び場を開催しつつ、住民主体の遊び場づくり支援を行う。2015年、子どもが関わる全ての場所へプレイワーク(子どもの遊びに関わる専門職)の視点を伝えていくために一般社団法人プレーワーカーズを設立。(一般社団法人プレイワーカーズHPより)http://playworkers.org/member/


◆講座内容

講座は4つのセクションに分けて進められていきました。

①講師紹介/子どもたちにとっての遊び

最初のパートでまず話していただいたのは、プレーパーク・冒険遊び場の事例や現在の子どもたちの状況について。遊び場を子どもたち自身が手を加えていく様子や実際の映像で子どもたちの様子をみたうえで、少子化や子どもたちにとっての遊びがどのように変化しているのかを、「遊びのさんま」「子どもたちの遊びは創造から消費へ」といった言葉をもとにお話しいただきました。

②遊びと居場所~あそびーばーでの実践~

東日本大震災から、気仙沼で子どもたちの遊び場がどのように作られたか、その状況について話されました。実際に子どもたちと一緒に作ることで、子どもたちから「自分たちが作った」という発言や「子どもたちにノコギリを使うという体験をさせたことがなかった」という地域の方の発言があったそうです。また、あそびーばーを運営している地元の方たちにも触れ、大人にとっての居場所にもなることの重要性や、無理のない関わり方について実際のエピソードも交えて紹介いただきました。

③対談①~子どもへのまなざし~

講師の神林さん、NPO法人セカンドリーグ 茨城理事長の横須賀さん、そしてPIECESの斎の三人で、気仙沼で神林さんが出会った子どもたちについて対談しました。それまでなかなか出会うことのなかったヤンチャな子どもたちとあそびーばーを通して繋がったこと、その子たちが地元のおじいちゃんおばあちゃんとはじめは衝突しながらも、少しずつ関わり方に変化が生じていったこと、その時双方に対してどんな関わりを行っていたのかなどについてお話しをいただきました。

④対談②~支援のカタチ~

前のセクションに続き、三人で神林さんが出会ったある女の子の話から、「待つ」ということについて対談しました。半径数mのところで話をしたそうにしている子に対して、あえてこちらから声をかけずに待ってみた時にどんなことが起きたのかというエピソードをもとに、「待つことを仕掛ける」という奥深い子どもへの関わり方について紹介いただきました。


◆当日の質疑応答の様子

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当日は講義動画をそれぞれで見た後に、数人ごとで感想共有を行い、全体で質疑応答を行いました。質疑応答では、「あそびーばーは自由な世界だと思うのですが、学校は自由ではない。子ども達はその世界になじめない場合、その世界からエスケープした方が良いと思いますか?」、「あそび場運営している中で、あれは失敗だったなという経験、そこからどうカバーしていったかなど、あれば教えてほしい」、「活動を通じて、大人側・多数派の人達の変容はあったか」、「怪我や安全性はどうなのかという批判や意見への対応はどうしているのか。また、かんぺーさん自身が危険だと思うことにはどう対応しているか」といった多くの質問が参加者から寄せられました。


◆参加者のみなさんからの感想

・子どもを信じること、待つことの大切さ。子どもが自分で遊びや人と関わる方法、危険を感じとれるということを信じて、待つことで応援できる人になりたいなと思いました。

・力を持っている子ども達(大人もだが)のモチベーションを下げ、支援慣れするようなサポートは本来の目的ではない、と改めて思った。子ども達が自発的に考えられるよう、サポートしていける立場になるために、現場での実践が大変重要だと思う。学ぶべきものは現場。失敗を恐れずチャレンジしていきたいです。

・少子化はすなわち大人の多大化でもある、というお話が非常に印象的だった。確かに子どもの遊びを「危ない、見守らなくちゃ」という視点で見ていることが多く、でも自分の子ども時代を振り返ると、大人の目の届かないような場所でも自由に飛んだり跳ねたりして過ごしていた。それが当たり前だったし、ケガも含めて私を大きく育ててくれたと思う。そのあとでも「支援慣れ」という言葉が出てきたが、何かをしてあげなくちゃいけない、というスタンスを取りすぎているなと思った。


◆次回公開講座のご案内

第3回目は、10月4日(日)10時~12時半で開催します。

講師に、NPO法人ビーンズふくしまの山下仁子さんをお招きし、「子どもたちの“生きづらさ”に心を寄せる ~孤立する子どもたちが本当に求めているものとは?~」というテーマで行います。単発でのご参加も受付ていますので、ご関心のある方は是非イベントページをご覧ください。

CforC探求コーススタート!子どもが孤立しない地域をつくる仲間があつまり、3クラスでキックオフを開催

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Citizenship for Children2020(以下、CforC)が8月からスタートしました!今年は探求コースが3つあり、昨年に引き続き水戸クラス、そして新たに今年から一般(全国)クラス、奈良クラスがスタートしました。水戸クラスはNPO法人セカンドリーグ茨城、奈良クラスは認定NPO法人Living in Peaceに協働パートナーとして一緒にプログラムをサポートして頂いています。

探求コース参加者は、社会福祉士や養護教諭、教員を目指す学生、地域おこし協力隊、子どもとの関わりを持っているけど、さらに一歩何かしたい方、既に子どもの居場所などのプロジェクトを始めている方など、年齢層もバックグラウンドも幅広く、様々な地域から参加してくださっています!

今回探求コースでは、「キックオフゼミ」として第1回ゼミを一般(全国)クラス、奈良クラス、水戸クラスに分かれて、オンラインで行いました。

ゼミに参加するメンバーの顔合わせは今日が初めて。これから6ヵ月間一緒に過ごすメンバーを互いに知ること、優しい間について深める「手がかり」を知る時間として自己紹介やCforCの目的の共有、ペアワークなどを行いました。

ゼミでは主に4つのワークを行いました。

①チェックインの時間

グループに分かれて、①名前(よばれたい名前)、②参加している場所、③今の体調/感じていること、④動画の感想、⑤今日の意気込みを一言ずつ共有しました。最初は緊張した面持ちでスタートしましたが、少しずつ話すことに慣れていきました。


②CforCの目的を共有

CforC探求コースで学んでいく内容を説明しました。CforC探求コースでは、PIECESで伝えている、優しい間を生むための市民性を醸成するために6か月通して学んでいきます。子どもの願いだを考えるだけでなく、参加するメンバー一人ひとりの願いも大切に両者の願いが成立した自分なりの関わり方を見つけていきます。

③自己紹介の時間

これからこのクラスが活動の基盤になっていきます。まずは活動するわたしたちが安心して信頼できる関係性を築いていくため、初めて会うメンバー同士、自己紹介を行いました。自己紹介では、これまで取り組んできたこと、そして、これから一緒に学び合うメンバーだからこそ話しておきたい今考えていることや感じていること、今後の目標などを各々が話しました。

④ペアセッション(対話)
これからの活動をどうしていきたいか、6か月の目標を考えるきっかけとなるペアセッションを行いました。ペアに分かれて、交互に問いを聞き、答えていきます。じっくり考えるのではなく、話しながら考えていきます。問われてみて、話しながら出てくる自分の声を聞きながら手がかりを見つけていきました。

<各クラスの感想>

◆一般クラス

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8月9日(日)関東近郊から九州に在住する12名が参加しました。一般クラスは、参加者の他に昨年度参加者もチューターとして参加しています。

最初は全員初めましてということで、硬い雰囲気がありましたが、自己紹介やペアワークを通して、繋がりたいという雰囲気に変わっていきました。休憩時間も誰かがヨガを始めるとみんなで同じ動きをしてみたり、ゼミ後もFacebookでつながったり、その日あったことなどが雑談用のslackチャンネルで飛び交うようになりました。初回ゼミを通して、オンラインではあったものの、一つのコミュニティとしてのまとまりが出てきたように思います。

◆奈良クラス

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8月16日(日)、奈良県近郊に在住する12名が参加しました。奈良クラスは、協働パートナーのLiving of Peaceも一緒に参加してくださっています。

初対面の方ばかりで初めは緊張した雰囲気もありましたが、自己紹介タイムで皆さんが積極的に思いを言葉にしてくれたことで、クラス全体の距離感が一気に縮まった感じがしました。ペアワークでは学生さんと社会人経験豊富な方など、普段なかなか関わることがない人たちと対話をする機会を通じて「視野が広がった」「自分自身に対する気づきにもつながった」といった声が挙がりました。ゼミ終了後には、「いつかクラスメイトと一緒に、子どもに関わるプロジェクトをしてみたい!」との声も。コミュニティとしての、これからの広がりがますます楽しみです。

◆水戸クラス

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8月23日(日)、茨城県内に在住する8名が参加しました。水戸クラスは協働パートナーのセカンドリーグ茨城、昨年度参加者にも参加していただいています。

最初は皆さん緊張していましたが、チェックイン、自己紹介と一人ひとりのお話をじっくり聞くにつれてメンバーの想いも開示され、とても素敵な時間になりました。お昼休憩後にヨガインストラクターの参加者から簡単なヨガ講座があり、とてもリラックスした気持ちになったこともプラスになりました。最後の感想共有では、「ゼミのメンバーが連携してなにかムーブメントになればいいな」「色んな方の話を聞いてヒントやアイデア、アドバイスをもらえた」「このプログラムが持っている可能性を今日実感することが出来た」など、このコースに参加できて嬉しいと言った声をもらいました。

セミナーレポート|子どものこころの発達への理解を深める 〜児童精神科医の視点からみえる、子どもたちの今〜

8月9日(日)、「子どものこころの発達への理解を深める 〜児童精神科医の視点からみえる、子どもたちの今〜」というテーマで公開講座を行いました。

目もくらむような日差しがある日でしたが、オンラインで、61名の方々に参加いただきました。

※本講座は、今期の「Citizenship for Children」(CforC)第1回目の講座です。2021年1月にかけて全6回の講座を実施します。全6回がセットになった「基礎知識コース」の受講はこちらで申込受付中。申込期限は8/31まで。第1回目の動画も8月末まで視聴可能!


◆講師プロフィール

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小澤いぶき(認定NPO法人PIECES代表理事/児童精神科医/東京大学医学系研究科客員研究員)

新潟大学医学部医学科卒業後、精神科医を経て、児童精神科医として複数の病院で勤務。トラウマ臨床、虐待臨床、発達障害臨床を専門として臨床に従事し、さいたま市の「子育てインクルーシブモデル」立ち上げにも携わる。

医療職として従事する傍ら、2013年頃から地域活動を始め、2016年6月にNPO法人PIECESを設立。現在も代表理事を務める。2017年には、世界各国のリーダーが集まるザルツブルグカンファレンスに招待を受け、子どものウェルビーイング達成に向けたザルツブルグステイトメント作成に参画。Japan women 's leadership initiative 10期フェロー。


◆講座内容

講座は4つのセクションに分けて進められていきました。

①子どもの認知
子どもの心や認知は、どのように発達するのかについて話されました。例えば、子どもは、言葉で表現することが難しいこと、自分と世界の出来事との切り分けが難しいことなどが挙げられていました。

②子どもの情緒・自尊感情
精神の発達について、主に情緒発達の基盤や愛着、自尊感情を中心に話されました。子どもたちがどのような段階を踏んで情緒を育むのか、また、愛着形成のためにどんな環境・関わりが必要かについて話がありました。自尊感情については、「そこにいることへの評価(being)」と「能力としての評価(doing)」の二つについてを中心に、自尊感情を育むための関わり方について具体例が挙げられていました。

③逆境体験による影響
逆境体験による影響について、機能不全家庭に育つ子ども・若者の特徴や思春期に起こりやすいトキシック・ストレスについて話されました。具体例としては、貧困や虐待といった機能不全家庭では、「ヒーロー」や「スケープゴート」といった役割が挙げられていました。また、それらの逆境体験は、PTSDという心への影響や脳への影響があることについてもお話されていました。

④心の孤立のメカニズム
子どもたちが実際に語った言葉を入り口に、心の孤立が深刻な問題になるまでのフェーズや具体的状況について話されました。具体例としては、「あなたがすべて」「あなたがいなきゃだめ」などとコントロールされる、保護者を過度に不安がっている、自分が保護者を支えないとと思う、などが挙げられました。そのうえで、「人に頼る」ことはとても主体的な行為であるということが話されました。

◆当日の質疑応答の様子

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当日は講義動画をそれぞれで見た後に、数人ごとで感想共有を行い、全体で質疑応答を行いました。質疑応答では、「子どもは感じたものを言語化するのが未発達ということがあったが、それは大人になるにつれ誰もが自然にできるようになるのか」、「逆境環境の話が公衆衛生上の問題として捉えられてきているとは、具体的にどういうことか」といった質問など多くの疑問・質問が参加者から寄せられました。


◆参加者の感想

・日ごろこうした分野の専門家の知見に触れることがないので、すべてが勉強になりました。目指すのは実際の活動ですが、その点でも、大いに示唆を受けました。ありがとうございました。

・子どもをみつめるベースになるような知識に触れることができた。

・子どもの言動には実は様々な背景があることや、こんな時はこういう対応をしてみましょうなど、これまでの自身の反省もしつつ学びがとても多かったです。

・もしかしたら自分の発言や態度が子どもを傷つけたこともあるかもしれない、と感じました。またあの時のあの子の発言には、何か背景があったのかも…と思い出す事があり、これまでの経験と照らし合わせながら受講していました。あの時に本当はどんな対応ができればよかったのか、これから学んでいきたいです。

・短い時間ではあったが、他のコースの方々と意見交流ができたことが楽しかった。また、以前からもやもやしていた疑問を回答してもらえてすっきりしたとともに、もっと学んでいきたいという意欲が湧いた。


次回公開講座のご案内

第2回目は、9月6日(日)10時~12時半で開催します。講師に、一般社団法人プレーワーカーズの神林俊一さんをお招きし、「子どもへの“支援”を問い直す~プレーパークでの実践に学ぶ「子どもとともにいる」関わり~」というテーマで行います。

基礎知識コースのお申し込みはもちろん、単発でのご参加も受付を開始していますので、ご関心のある方は是非イベントページをご覧ください。

イベントレポート|8/9開催 未来をつくるPIECESメイト★Welcome Party!メイトと語る #わたしとPIECES

\未来をつくる PIECESメイト/

7月に実施した寄付キャンペーンでご登録いただいた方々に「ようこそ、PIECESへ」。そして以前からPIECESを応援してくださっているPIECESメイトの方々に「いつもありがとう」の気持ちを込めて、オンラインでWelcome & Thanks Party!を開催しました。

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今回のキャンペーン期間中に、新たにPIECESメイト(継続寄付)にご登録いただいた方は128名、単発の寄付の方が73名となり、改めてPIECESを応援くださる方がたくさんいらっしゃることを実感することができました。

a piece for peace

おひとりお一人の願い、託してくださる想いが本当に嬉しく、共に同じ未来を願って歩んでいけること本当に心強く思います。


会の後半では、それぞれの #わたしとPIECES をことばにしていただくワークを実施。
お一人お一人から聞かせてもらった想いには、本当に温かく、優しく、強いものがありました。
 
生活の中で、過去の経験の中で、想いを馳せるようにPIECESに願いを託し、共に歩むことを決めてくださった皆さんに改めて感謝の思いでいっぱいです。
 
直接お会いすることは叶いませんでしたが、皆さんと共にこれから歩んでいけること本当に心強く思います
 
「またね」「これからよろしくお願いします」で終われるイベント。これからともに未来をつくるPIECESメイトのみなさんとの一歩に感謝とわくわくの気持ちが溢れました。
 
ご参加頂いた皆様、ありがとうございました!

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PIECESメイトのみなさまからのご寄付は、様々な背景によって子どもたちが社会的に孤立することを防ぐ活動や、PIECESが行っている市民性醸成プログラムにかかる費用に活用させていただきます。いただいたご寄付とお気持ちが、私たちの活動を通して、子どもたちにきちんと届いていくように努めてまいります。

#ひろがれPIECES

セミナーレポート「子どものあそびや行動から紐解く、こころのケア ~傷や痛みが深まる前に、わたしたちにできること~」

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去る6月7日、公開セミナー「子どものあそびや行動から紐解く、こころのケア~痛みや傷が深まる前に、わたしたちにできること~」がオンライン開催され、代表の小澤いぶきが講師を務めました。

今年に入って初めての開催となった本セミナーは、「日常のさまざまな場面で子どもたちが発するサイン」を入り口として、子どもたちが不安定な環境の中でこころの傷や痛みを深めてしまう前に、私たち大人ができることについて考えることを目的として行われました。

-公開講座中のスクリーンショット-

-公開講座中のスクリーンショット-

本セミナーは「子どもが孤立する社会的背景」、「子どもが発するサインを紐解く」(ストレス下における「遊び」)、「子どもたちと関わるうえで大切にしたいこと」の3つのパートから構成されています。オンラインでの開催ということもあり、それぞれのパートが終了後、スケッチノートを用いて内容の振り返りを行いながら進行していきました。(スケッチノートは記事の最後に掲載しています、ぜひご覧ください!)

簡単ではありますが、本セミナーの内容を紹介していきたいと思います。

子どもが孤立する社会的背景

日本の子どもを取り巻く環境について、約7人に1人が相対的貧困、虐待相談対応件数は約16万件にのぼるといった報告がなされています(※1)。米国疾病予防センターとカリフォルニア州の民間健康組合の共同研究(ACEs Study: 子ども期の逆境的体験についての研究)によると、こうした子ども期の逆境体験は、身近な人達によってケアされるか否かによって成人後の状態に変化が現れるといいます(※2)。

逆境体験のひとつである虐待。その発生リスクとなり得る要因としては、子どもの人数や発達特性、養育者自身の精神的健康状態や年齢、家庭環境、地域での孤立や職場からのサポートのなさといった家庭の周囲環境、社会環境などが挙げられています(※3)。

現在日本で行われている虐待の防止支援策には、予防段階・早期発見段階共に構造的な課題が見られるといいます。具体的には、”自ら援助を求めに行く”ことのハードルの高さ、情報へのアクセシビリティ、行政や専門機関の逼迫によるきめ細やかな対応の難しさなどがあります。

子どもが発するサインを紐解く

まず、逆境体験の中で育つ子どもについての例として、DVや親同士の喧嘩が絶えない環境、保護者による干渉が過度に強い環境、貧困やネグレクトの環境といった特徴ごとに説明がありました。

そのような環境の下で「自分は意味のない存在だ」 「気持ちを伝えたところで誰も助けてくれない」といったような、自己否定や自分の感情や欲求に気づけない、人に頼れない状態が生じてしまうといいます。

逆境体験を通してこころがケガをすると、子どもは自分を守るために身体や行動、こころのサインを発することがあります。具体的には、不眠、身体のどこかに痛みを感じる、なぜだかわからないけれどいらいらする、そわそわしてじっとしていられない、などです。

また、逆境体験の中で育つ子どもがその中で生き抜いていくために担っている特徴的な役割についても子どもの発するサインのひとつとして併せて紹介されました。

・ヒーロー:いい子でいよう、と頑張る
・スケープゴート:自らがトラブルを起こすことによって、問題から目をそらしてもらおうとする
・ピエロ:わざとおどけて場を和ませようとする
・お世話役:家の中の問題をなんとかしようとして、調整役を担う
・人形:周りの人の思うとおりにしなければいけない、と思う

困難な状況の中で懸命に頑張っていても、周りの目がなくケアがされないと「頑張ったところで意味がない、どうせこれからもこの状態が続いていくんだ」と思うようになる学習性無力感という状態についても解説がありました。一見やる気がないように見える子どもの中には、この学習性無力感を持っている場合があるといいます。

〜ストレス下における「遊び」〜

子どもの発するサインに関連して、負荷がかかった時に見られる子どもの遊びについても触れられました。

遊びは子どもの表現方法のひとつであり、危機を乗り越えていくための対処法でもあります。周りにいる大人は、遊びを通して子どもが表現していることをしっかり受け止めることが大切であるといいます。

遊びの結末があまりにも破壊的・悲劇的であったり、子どもが遊びながら険しい表情をしている場合は、その遊びに関わりつつ違う結末を一緒に考えていくなどの対処について紹介がありました。


子どもたちと関わるうえで大切にしたいこと

子どもたちと関わるにあたり持っておくべき3つの視点についての説明がありました。

<ストレス・コーピング>
子どもの気になる行動はなんらかのストレスに対する本人なりの対処法であるという視点を持つ。そこに価値判断を入れないように心がける。

<トラウマインフォームドケア>
子どもの言動や行動の背景に、こころのケガの影響や、こころのケガを受けた時の恐怖・不安があるかもしれないという前提をもって接する。

  1. 不器用な対処―言動や行動の背景を考える

  2. 困った行動や言動の捉え直し

  3. 子どもの持つ興味関心を次の一手につなげる

<ストレングス>
その子どもが自分なりに担ってきた役割に対して敬意を持ちながら、その子が安全に生きられるようにサポートしていく。

参加者の方々の感想

  • 子どもの(一見)好ましくない行動に対して頭ごなしに怒らず立ち止まって考えることができそう。

  • 学術的なエビデンスのあるお話で概要を話してくださり、ご経験に基づく具体例も教えていただけて、理解が深まった。

  • こどものケアに関することの全体感を知ることができた。さらに興味が湧いて、もっと深く知りたくなった。

内容盛りだくさんの90分間でしたが、本セミナーで扱った内容をより深く、より詳しく学びたいと思われた方は、今期の市民性醸成プログラム “Citizenship for Children” の募集告知が6月16日からスタートしましたので、是非こちらをご覧になってみてください。 

※1:相対的貧困については、厚生労働省「平成28年度 国民生活基礎調査」、虐待相談対応件数については、厚生労働省「平成30年度 児童相談所での児童虐待対応件数等(速報値)」より
※2:Felitti, Anda, Nordenberg, Williamson, Spitz, Edwards, Koss & Marks, 1998
※3:福丸由佳(2012)「家庭におけるハイリスクの親への支援」日本発達心理学会(シリーズ編)武藤隆・長崎勤(編)『発達科学ハンドブック第6巻 発達と支援』新曜社


スケッチノート by 坂本紫織 (PIECESプロボノメンバー)

スケッチノート by 坂本紫織 (PIECESプロボノメンバー)

Citizenship for Children プログラム 水戸地域での成果報告書が完成しました!

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Citizenship for Childrenプログラムの初の地方展開が無事終了し、水戸地域での成果報告書が完成しましたので、ぜひご一読いただけましたら嬉しいです。

報告書ではCforCプログラムの評価、参加者に与えた影響をアンケートとインタビュー調査を通して考察しています。プログラム評価においては、多様性とそこから生まれる対話の中に新たな気づきが溢れていたこと、またその対話の基礎となる関係を構築することができた点にプログラムを評価する声が集まりました。改善点としてはその関係構築をより深く、早い段階で行うことに更なる改善が見込めることが示唆され、これは今後の課題といえます。

そうした学びを通じて、自己意識や市民性の獲得、及びそこから生まれたプロジェクトが具体的な成果として短期的にも見え始めた。専門的な知見がないから関わらない、といった態度ではなく、自身と他者の価値観を丁寧に理解し、様々な人と協力しながら自分なりのやり方で「優しい間」を紡いでいこうとする姿勢がこのプログラムを通じて確かに、小さいながらも生み出されたと言えます。

今年2020年には、さらに複数の地域でのプログラム実施も予定しています。現在オンラインでの開催を想定し、準備を進めているところです。
みなさまからいただいたあたたかいご支援・応援によって実現した育成プログラムの他地域展開。一つ一つの取組を大切にしながら、これからもたくさんの「優しい間」を広げていきたいと思っています。

この、水戸でのプログラムは、2019年4月・5月に実施したA-portでのクラウドファンディングのご支援を元に実施することができました。

この場を借りて再度、ご支援いただいたみなさま、本当にありがとうございました。
これからもPIECES、そしてCitizenship for Childrenの全国展開に向けて共に歩みを進めていけたら嬉しいです。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

● Special Thanks ●

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報告書の作成を担当した、PIECESプロボノの大野友です。

CforCプログラムを企画運営した人、参加した人、支えた人それぞれの声が集まり、2019年度プログラムの報告書が完成しました。プログラムの目的、実施内容、参加者の変化と周囲への影響を分析した成果報告がまとめられています。CforCプログラムを通じて、各地に優しい間を届ける種がまかれた様子、またその種から芽が出始めている様子をぜひご覧頂けたらと思います。

最後になりますが、この報告書の作成にご協力いただいた各関係者の皆様に、深く御礼を申しあげます。ありがとうございました。

大野友
慶應義塾大学大学院
システムデザイン・マネジメント研究科博士課程1年

子ども支援の原点を問い直す  ~子どもの声を大切にする実践とは?~ 「Citizenship for Children in 水戸」第6回公開講座 & CforCゼミレポート

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PIECESが茨城県水戸市で行う、子どもと関わる市民育成プログラム「Citizenship for Children in 水戸」。

これまでPIECESは首都圏を中心に市民育成プログラム(旧名:コミュニティユースワーカー育成プログラム)を開催し、1〜4期で計約50名の子どもと関わる市民を育成してきました。

今回は全国展開に向けての第一歩目となる水戸市でのプログラムで、「セカンドリーグ茨城」さんとの協働で実施しています。

首都圏に限られていた活動範囲を全国に拡大し、各地にいるかもしれない「孤立した子どもたち」と優しい関係性を紡げる大人を増やしたい。

そんな想いから全国展開を目指し、まずは1拠点目、茨城県水戸市で12人、6ヶ月間の「Citizenship for Children プログラム(以下CforC)」を実施します。

これまでの5回では、子ども・若者の育ちの理解や困難を有する子どもたちへのまなざしなど、一市民として子どもに関わる上で土台となる価値観や知識について、延べ100名近い方々と一緒に学んできました。(第五回目のレポートはこちらから

今期の後半にあたる10月から12月にかけては、引き続きフィールドの異なる実務家・専門家の講師をお招きして、さらに一歩踏み込んで「市民性を大切にした子ども・若者支援」について考えていきたいと思います。


今期最後となる第6回目の公開講座では、NPO法人ビーンズふくしまの山下仁子さんを福島からお招きしました。子どもたちに関わっていく過程では、誰しも無意識に自分の願いを押し付けてしまったり、短期的な成長や変化を求めてしまったりすることがあるものです。何より、子どもたちとの関わり方には、明確なお作法や正解・不正解があるわけではありません。子どもと育む間は千差万別。日々の自分の実践や他者の経験を通じて学び、振り返り、更新して行くことが大切なのです。今回の講座では、今一度原点に返って「子どもの声を大切にする実践」について山下さんにお話いただきました。

貧困の中で生きる子供たち

2015年の厚生労働省の調査によると、日本の18歳未満の子どもの実に7人に1人が貧困状態の中にあるといいます。日本における貧困は「相対的貧困」という形で現れており、これは食事や住居など生活の基礎となる部分はある程度確保されているが、経済的など様々な要因により、教育・雇用・福祉に滞りが発生してしまっている状態のことだといいます。ただ相対的貧困がもたらす影響は物が買えない、と言った経済的なことだけではありません。例えば保護者がアルコール依存症で子どもに暴力を振るう、金銭管理ができずライフラインが停止されてしまうなど、様々な状況が挙げられます。このような過酷な家庭環境は、子どもたちの困りごとを認識する力や周りに助けを求める力、他者と交流をし学ぶ機会、自分の将来を自らの手で切り拓いて生きることなど、人が生きていく上で不可欠なものを奪ってしまっているのです。

ではどのようにすれば、子どもたちの自己肯定感を醸成できるのでしょうか。

アウトリーチ型支援(直接支援)

貧困の中で生きる子どもたちはその家族の多くは、現状に対する違和感を持つことが難しいため、支援が必要な状態であっても自ら支援を求めてくることはほとんどありません。生きる力が低下している子どもたちが「助けて!」と声をあげることは、ものすごくエネルギーが必要となります。このような実態は外側からは見えません。そのため、山下さんは支援を提供する側が出向いていくアウトリーチ型支援(訪問による直接支援)が有効と言います。

子どもと関わる中で山下さんが一番に大切にしていること。それは子どもの人権擁護、つまりエンパワメントです。エンパワメントとは、子どもの力が引き出せるような関わりをすること、つまり子どもたち自身で自分のことが決められるようになることだと話します。

直接支援の内容は以下の通りです。

  • 家庭背景・環境を考慮し、子ども本人と一緒に支援プログラムを計画立案する。

  • 子どもの変化も鑑みて、3ヶ月に1回はアセスメントを実施し、適切な関わりが行えているか評価する。

  • この段階では、時間をかけて子どもたちとの関係性を構築していく。(一緒に散歩をしたり、好きな漫画を読んだり等関わり方は様々)。子どもとの関係性が構築でき、子ども自身がどうしたいか確認できたら、間接支援(ソーシャルワーク)を開始する。

関係構築は家庭により様々。場合によっては家庭環境の整備にたどり着くまで3年かかると話します。山下さんのお話で最も印象的だったのが、「ケースが動いているように見えなくても、一緒の空間を共有する。子どもたちとの関係性を作っていく上でとても大事な時間」というお言葉です。子どもの声を大切にするということは、子どもが声を出すまでの時間を共有することなのだと学びました。

この後の質疑応答の時間では、山下さんがご自身の活動や市民の役目について更に詳しくお話してくださいました。

山下さんへのQ&A

Q: ご自身の自己肯定感はどう保っているのでしょうか?

「私は過去に医療現場など、人が命を落としていってしまう現場を数々と見てきました。その経験から「生きていればいい」と考えるようになりました。目的があるかどうかではなく、生きていれば良い、この考えに自分の自己肯定感はあるんだと思います。あともう一つ大事にしていることは「相手を嫌いにならない程度に関わる」ことです。全て自分でやろうとするのではなく。

子どもは本能のままに生きています。ある意味で子どもは大人よりも完成体なんじゃないかと思います。もっといろんな経験をして子どもの完成体に向き合いたいです。

Q: 山下さんのような活動を、自分が行えるか自信がありません...。

大切なのは時間と仲間を作っていくことです。あとは自分が必要だと思うことをやり続けること。これは一見簡単なことのようですが、実はとても難しいことです。自分自身、自分がやっていることが正しいか・間違っているかは分かりません。そもそも大人だけで考えていてもわからないことです。それは子どもたちにしかわからないので、悩んだら子どものところに行って話を聞くことが大事なんじゃないかと思います。自分は正しいことをやっているんだと、自信を持って言えるのは、子どもたちが教えてくれたからです。

Q: 子どもと保護者の意見をどうバランス良く聞いていますか?

子どもに聞いても、親が答える場合があります。親が自分の子どもを思う気持ちに間違いはない。例え攻撃的な言葉でも話をよく聞いていくと、意図が鮮明になっていきます。お母さんは本質的に子どもを愛しているのは間違いないので、それを聞き入れることは必要なんじゃないかと思います。

そして大事なことは待つことです。支援活動を行う中で、介入した方がいいのか、これは待った方がいいのか、スタッフと議論をします。例えば子どもに受験勉強をしてもらいたいと理由で、こちらで勝手に環境を整えようと片付けをしてしまうと、片付けの大変さやメンテナンスの大変さを実感しないままになってしまいます。大切なのは、時間をかけてでも家庭環境を整えることの重要性を本人が気付き、行えるようにすることです。なぜなら環境が整備されているところはちゃんと家庭の声を拾っているからです。そしていかに日常会話の中で、子どもたちの声を拾っていけるかということです。

Q: スタッフ間のコミュニケーションはどのように行っていますか?

スタッフの不安がどこなのか、しっかりと聞くようにしています。スタッフ面談も頻繁に行っています。やはり「待つ」ことも活動の大事な部分なので、待っていることはサボっていることでは無いこと、ケースが動かないのは当たり前だということを、常に毎日の振り返りの中で伝えています。

Q: 会議に子どもや親が参加することについて:子どもがしたいことと、周りのしたいことにギャップが生じたことはありますか?

子どもが出席したくなければそれで良いのです。ただ、会議のような意思決定の場に子どもを誘うことはエンパワメント、つまり自己肯定感を高めることにつながります。自己肯定感とはいかに自分の実情を受け止め自分のことを自分で決められるか、ということです。同じく、私たちもその場では、いかに内容が厳しいと思っても、ごまかさず、すべてを正直に伝えていくことを大事にしています。「子どもの声を尊重しよう」とよく言われますが、「尊重」とは具体的にどうすれば良いのでしょうか。私はちゃんと伝えて、ちゃんと支えることだと思います。時間はかかりますが、やるべきことだと信じています。

何より、子ども支援のことであれば、子どもに聞いた方が一番良いです。まずは聞くことが大事だと思います。そこに正解・不正解はありません。大切なのは、子どもが伝えてくれた言葉を頭で捉えるのではなく、気持ちで捉え、気持ちで動くことです。頭で考えて行動しようとすると、答えを探してしまいがちですが、気持ちで受け止めようとすると、自分の気持ちが動くからです。「その言葉にどんな気持ちを馳せているんだろう」「今なぜこのタイミングで言うのだろう」そう捉えることで、自然と自分の第一声が変わるし、それに伴う行動も変わってきます。放った言葉そのものより、そのタイミングで発した理由や真意が見えてくるようになります。気持ちで捉えられれば、それがたとえ正しい答えでなくても、優しい答えになるのではないかと思います。

Q: 市民に求めることはなんですか?

そのままでいて欲しいです。結局、子どもは日常で生活をしていきます。資格を持って子どもに対してこうしなきゃ、と言う人たちで溢れて欲しくないです。ただ元気で生きていてくださいと、普通にしてくださいと思っています。


初めての水戸での開催、2019年7月から始まった6ヶ月間のプログラム。ご参加いただいた皆さま、関心をお寄せいただいた皆さまありがとうございます。

九州大学集中講義「まちづくり実践論」レポート_19.12.26-28

2019.12.26~28日の3日間、九州大学教育学部で集中講義が行われ、代表の小澤いぶきが講師を務めました。「まちづくり実践論」という授業科目で、PIECESが進めてきた「孤立しやすい環境にいる子どもに新しい関係をつくる市民育成事業『Citizenship for Children 』(旧:コミュニティーユースワーカー)」を参考としながら、児童精神科の医療の現場から見えてきたこと、そして、世界の動きも踏まえて、九州、福岡という地域で私たち市民が、子どもたちの生きるまちに何ができるか?を考えるきっかけとして講義を展開していきました。講義は3日間とも公開講座でもあり九州大学の学生だけではなく、福岡県内の学生や社会人の方など様々な立場の方が参加されました。

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◆1日目

 1日目は、濃い3日間を過ごしていくために初めにチームビルディングを行いました。トランプを使用しグループを作り即興物語を作ったり、自己紹介シートを使って受講の目的等をグループで話したりを通して、緊張でいっぱいだった教室もあちこちで笑顔や笑い声が聞こえ和やかな雰囲気になっていきました。和やかな雰囲気になったところで講義を展開していき、「子どもを取り巻く現状と課題」では、小澤の医療現場での子どもとの経験を踏まえながら児童虐待の現状や子どもに及ぼす影響等、「子どもの発達の基礎」では、発達段階や愛着について講義を行いました。①言語化せずに相手に『嫌な気持ち』を伝える体験、②話しているのに全部無視される体験をペアになって実際に実践してもらい、言動の背景にどんな気持ちが潜んでいるのか、愛着を育むには何が大切なのかを考えました。

 講義を踏まえ、映画『少年と自転車』を見てもらい、児童養護施設に入所している主人公や纏わる人たちの言動の背景にはどういった気持ちがあったのかを4~5人のグループを作り考えていきワールドカフェ形式で共有していきました。次に、自分が子ども時代を振り返ってもらい、モヤモヤしたこと、こういうサポートが欲しかったなども共有していき、「30年後子どもも自分も幸せになる未来のまちとは?」を考えもらいました。地域視点では老若男女関係なくいろんな人が関われる場所が欲しい、学校教育視点ではフリースクールを多くの学校に設置したらいいのでは、などなど各グループ時間が足りないぐらい盛り上がっていました。

◆2日目

 2日目は、福岡で活動されているNPO法人まちづくりLABの代表永田充さんをゲストに呼んで、「訪問支援から見えてきた子どもの支援のあり方」をテーマに不登校・ひきこもりの現状や訪問支援について話をしていただきました。「“良い支援”をしようとすると見失うものがある」とフレーズから講義スタートし、序盤から考えさせられる内容です。なぜ訪問支援が必要なのか、支援をするうえ子どもだけはなく家族への支援の大切さなどをご自身の体験を踏まえて話していただきました。不登校になっている自分の身近な人への今までの対応はよかったのかを振り返ったり、今後、不登校の子たちと出会ったときにどう関わっていけばいいのか考えたりするきっかけになりました。

 2限目からは「社会的処方と市民性」「アセスメントとストレングス」「コミュニケーション」の3つをテーマに小澤が講義を展開していきました。子どもに限らず人は疲弊しきるとSOSを出せなくなり、孤立にもなっていく。疲弊や孤立やする前に、原因を取り除くコミュニティの存在が重要になるということで、社会的処方の存在の大切さ。そのためには、「市民性」の関わりも重要なり、市民性とは何か、人と人の「間」とは、何かを実践を踏まえ考えていきました。また、人は自分の価値観等で物事を判断しそうになりますが、判断する前に、子どもの言動にどう思いがあるのか「ああかな、こうかな」と仮説を立てていくことで、子ども理解にも繋がっていくなどを理解してきました。

◆3日目

 3日目は、福岡市こども総合相談センターの藤林武史さんをゲストに呼んで、「子どもと家庭を支えるコミュニティケア」をテーマに児童虐待の現状や福岡市での現状や取り組みなどについてお話をいただきました。法制度は整えられているがニーズに応えることができないサポート体制の現状など、ニュースでは知ることができないことに触れることができていました。児童虐待が起きたとき児童相談所は最後の砦。児童相談所だけが頑張るのではなく、地域コミュニティ、市区町村、里親など様々な立場が連携していくことで、虐待による死亡はゼロになっていく。福岡市のこどもの現状を知るだけでなく、まちづくりを考える上で必要なことを学ぶ機会になっていました。

 「福岡における課題に対しての社会的処方の可能性」では、受講者の方から自分の経験を話していただきました。『家を開放しておやつを提供している』『子ども会に行くことが楽しかったが、今は少子化で少なくなってきている』『子育てに手厚い様子はあっても情報が広まっていない』など福岡で暮らしているからこそ気づくこともあり、また、中心部を離れれば行政と家庭の間に入るNPOなどの団体がない現状などにも触れることができました。

 今までの講義内容を踏まえて、福岡における子どもたちが利用できる地域資源マップを「0~12歳」「13~18歳」「18歳以上」のグループに分かれて作成しました。受講者それぞれが発見した社会的資源を横軸『情緒的or機能的』縦軸『利用ハードルが低いor利用ハードルが高い』に沿って、マッピングしてもらいました。「○○がこの位置なら、○○はこっちじゃない」「○○も資源になるのかな」など各グループ盛り上がりながら作っていきました。また、想像力を発揮するための実践として「クリエイティブケースワークショップ」を行いました。取り扱う事例も受講者の方から気になる子どものケースを出してもらいました。情報がしっかりあるケースもあれば、情報がないに等しいケースもあり、限られた情報の中で、その子が持つストレングスや願いを探っていきました。そのあとは、その子の願いに沿う関わり方は何かを地域資源マップを参考にしつつ考えていきました。学生だからこその視点や福岡ならではの意見も出るなどして、自分たちが住んでいる福岡・九州で何ができるのか考えるきっかけにもなったと思います。

 3日間の講義を通して、「自分を振り返ることができた」「自分がしていることに自信が持て」「有意義な時間でした」など様々な感想を聞くことができました。

 今回の講義を踏まえて、受講者の方それぞれが地域で暮らしていく一人の市民として何ができるのかを考え、実践していかれることで、福岡がどう発展し盛り上がっていくのか楽しみです。