活動報告

【PIECES活動報告会レポート】子どもが子どもでいられる社会のつくり方

 2022年7月22日にPIECESの活動説明会を開催しました。スピーカーはPIECES理事の斎が行いました。
子どもを取り巻く「孤立」の現状やPIECESが考える「市民性」など、活動説明会の内容をご紹介します。

斎とPIECES  

 児童養護施設にて施設で生活する子どもたちの息苦しさに直面したときたとき、子どもたちのケアと同時に、地域に信頼できる大人を増やすことが必要ではないかと考えました。そのようなことを考えていた時期に、現PIECES代表である児童精神科医の小澤いぶきと出会ったことがPIECESを始めるきっかけとなりました。

 最前線で子どもと関わっていた二人が、「子どもたちが安心できる社会をつくる」という大きな目的を持っていたことがPIECESの始まりです。私自身も子どもと関わる現場で働く中で、地域の大人の力が必要であると感じる場面がいくつもありました。そのような経験を通して私自身も、子どもと大人が優しい関係性を持つ重要性に共感しています。

  

子どもを取り巻く「孤立」の現状

 ユニセフの調査によると、日本では29.8%、10人に約3人の子どもが孤独を感じています。この数字はOECD諸国で最も高く、我が国において子どもの「孤立」は大変懸念すべき問題です。そもそも子どもの孤立とは具体的にどのような状態なのでしょうか。PIECESは、困ったことやしんどいことがあったときに、頼ったり助けてもらえる環境が子どもの周りにないことを、子どもの孤立と考えています。適切なケアを受けられなかった子どもは、人への信頼感がなくなる・自分を大切にできなくなるなどの悪循環に陥ってしまい、心の孤立が深まってしまいます。そして人に頼ることができずに、苦しみを自分一人で抱え込んでしまいます。

PIECESの取り組み

 PIECESは、自分を大事にしながら相手を尊重する「優しい”間”」を大事にしています。専門職でなくても「子どものために何かしたい人」が多くいること、そして彼らが悩みながらも子どもの心に寄り添いながら自分自身と対話することで、PIECESにて優しい間が生まれました。親でも先生でもない「市民」による関わり、そして各々の「市民性」を醸成することが、自分を大切にし相手を尊重できる優しい間を増やすとともに、少しづつ社会を良くするパワーに変わっていくと考えます。

 私も苦しい時に気兼ねなく相談できる人がいたおかげで、安心できるとともに前向きな気持ちになった経験があります。そして、相談できるという安心感は、子どもたちにとっても同じものであると思いました。私も地域に生きる市民として、優しい間作りに参加していきたいと思っています。

市民性を醸成するプログラム「Citizenship for Children」

  PIECESでは、子どもに何かできることをしたいと考えている人、地域・社会との関わりを探している人に向けたプログラム「Citizenship for Children」(以下「CforC」)を提供しています。CforCは、子どもの心に寄り添うだけでなく、自分たちの心地よい関わりを探求し、自分にできるアクションを考えることを経て、市民性の醸成を達成することを目指しています。言い換えれば自分も社会もwell-beingになるためのプログラムです。

 CforCでは、専門家の講座で知識を得る、仲間と思考を深める、そしてアイデアを形にするなど多様な学びのプロセスを体験する中で、自分にできることを探求していきます。子どもとのかかわりには正解がないからこそ、様々な人の声に耳を傾けながら、学び続け、問い続けることが重要であると考えます。また修了生は各地で独自のプロジェクトに取り組むことで、地域での暮らしを豊かにし、子どもたちと共に優しい間を作り上げています。

 CforC参加者の中には、同じ志をもった仲間と出会えたことで自分にも子どものために何かできると思えるようになったという声がありました。優しい間から生まれる市民性は、子どもの孤立を防ぐだけでなく、大人にとっても人との繋がりを感じることができる機会となるのではないでしょうか。

 そして参加者は累計で166名、2021年は64名と過去最大規模となりました。
これからはCforCのノウハウを広げていくことで、市民性の醸成をさらに進めていき、全国各地に子どもが孤立しにくいコミュニティが生まれるように働きかけていきます。

PIECESの組織について

 PIECESへの関わり方はCforCだけではありません。運営活動にコミットしていただいている方や寄付という形で応援していただいている方、多様な関わりがこの団体を支えています。

 またPIECESでは以下の4つのことを大切にしています。

①自己と他者を尊重するコミュニケーションを心がける
②多様な価値観に耳を傾ける
③心から動く
④ひらかれたweのマインドを持つ

私たち自身が日々価値観をアップデートしていき、自分たちの市民性を育んでいく。そうして作られる優しい間を社会に還元していくことを目指す団体です。

最後に

ここ数年の社会情勢の変化で、私がなんとなく思っていた当たり前は、当たり前じゃないのかもしれないと思うようになりました。「子どもはどう考えているのか」「自分には何ができるのか」たくさん考えて問い続けながらPIECESの活動に参加しています。
こんな時だからこそ、色々な背景を持つ人々と触れ合い、多様な価値観に目を向けることが、子どもたちのためにも、社会のためにも、そして自分のためにも必要なのではないかと思っています。

最後となりますが、活動説明会に参加していただいた方々、誠にありがとうございました。

執筆:広報ファンドレイジング インターン 大久保勇吾

【PIECES ROOMレポート】小澤いぶきが今聞きたい、あの人の市民性 | VOL.2 犬山紙子さん

PIECESを応援してくださっている各界の著名な皆さまと一緒にライブ配信を行う「PIECES ROOM - 小澤いぶきが今聞きたい、あの人の市民性 -」の第2回を開催しました。

PIECES ROOMは、市民性の意味や、市民性の先にある優しい間が広がる世界について、PIECES代表の小澤いぶきとゲストの方が語り合う配信です。

第2回ではゲストに、イラストエッセイストの犬山紙子さんをお迎えしました。

子育て真っ最中という共通点から、実際のエピソードやそこで感じたことを中心に対談が進みました。こちらのレポートでは、配信の内容を簡単に紹介します。

専門家でない大人にもできることがあるはず

 コメンテーターとしてもご活躍されている犬山さんは、児童虐待の解決に取り組む「こどものいのちはこどものもの」としても活動をされています。日々子どものニュースに触れる中で、選挙権を持っているのは大人、子どもの意見や気持ちを汲み取ることも大人が積極的に取り組んでいく必要があるのではと感じられたそうです。「子どもに向けて、専門家でない大人にもできることがあるはず」「橋渡し、手を繋ぐ存在になっていきたい」とお話くださいました。

子どもたちから学ぶ市民性

小澤からの「市民性を感じた瞬間はあるか」という問いに対し、お子さんが1歳のとき、電車の中でぐずり始めた際に、小学生の男の子があやしてくれたエピソードをお話くださいました。お子さんだけでなく、犬山さんご夫婦もその小学生の行動に嬉しさを感じたとお話くださいました。小澤は、子どもたちといるとハッとする気づきがある。子どもたちの率直さが、人と境界線なく関わることを可能にしていると言及しました。

「わたしはここに居ていいんだ」という感覚

 市民性を発揮するには頑張る必要がある、と感じられる方もいらっしゃっるかもしれません。でも小さなことでも相手に安心感を与えることができると小澤は考えています。産後、犬山さんはあるお仕事の現場にて、子育て経験のあるスタッフの方が仕事をしやすい環境を整えてくれたエピソードをお話くださいました。「この気遣いが、『子育て中でも、わたしはここに居ていいんだ』という気持ちに繋がった。自分自身が救われた。」とお話くださいました。小澤は、「わたしはここに居ていいんだ」という感覚を連鎖・手渡しされる環境が生まれることへの願いを重ねました。

市民性の循環

続けて犬山さんから、小さなお節介を行っていくことが大事だと感じているとお話がありました。「子育てを経験することで、子育てに対する解像度が上がり、子どもに対する”市民性”が変わってくるのかもしれない。しかし、体験したくとも体験できないこともあるということを踏まえると、「考える教育」が必要だと感じている。そして、これは子育てだけではなく、マイノリティな分野に対しても当てはまる」とお話くださいました。また大人が姿勢を見せていくことも大切だとおっしゃていました。

犬山さんからのメッセージ

「センセーショナルなニュースを見た際に、怒りの感情が湧くことは起きてもいいこと。その上で、一度立ち止まり、予防するために自分なりにできることを考えることも大切なのではないか」とメッセージをくださいました。

リアルな子育てエピソードと共に、市民性について改めて考えることができた時間になったのではないでしょうか。「私はここに居ていいんだ」という感覚は、誰かの小さな気遣いから生まれていくものです。受けた気遣いが、次に誰かへの気遣いに繋がっていく、連鎖していく、その先に優しい未来が待っています。日々の生活において、自分を大切にしながらも、周りに対しての気遣いを持ち続けていきたいと改めて思えた時間でした。

PIECES ROOMの配信はアーカイブとして残っています。配信に興味を持ってくださった方はぜひ見てみてください。また、PIECES ROOMは様々なゲストをお迎えして、定期的に配信予定です。ぜひ今後もチェックしてもらえると嬉しいです。

最後になりますが、ゲストの犬山さん、配信を見てくださった皆さん、本当にありがとうございました。

執筆:広報ファンドレイズ インターン 挽地真央


6周年募金キャンペーン終了のご報告

2022年6月1日から7月31日までの1ヶ間で実施した、6周年募金キャンペーンが終了しました。

目標であった150万円を超える1,806,250円ものご寄付をいただくことができました。ご寄付やシェアといったさまざまな形で応援いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

185名もの方々が寄付という形で、PIECESと共に「子どもが孤立しない社会」を目指した活動を、そして優しい間を広げてくださることを大変心強く思っております。

みなさまからのご寄付は、様々な背景によって子どもたちが社会的に孤立することを防ぐ活動や、PIECESが行っている市民性醸成プログラムの運営などに、大切に活用させていただきます。
いただいたご寄付や想いが、私たちの活動を通して子どもたちに届いていくように、これからも活動に取り組んでまいります。

子どもの暮らす世界に生きている私たちは、子どもの暮らしに、子どもの今に、子どもの未来に影響しています。私たちが子どもと共にあるとはどういうことなのか、子どもも自分も大切にされるとはどういうことか、これからも皆さんと共に問い続けたいと思います。

皆さまからいただいた温かいメッセージ

ご寄付と共に、たくさんの応援メッセージをいただきました。その一部をご紹介させていただきます。

2022年6月にPIECESは6周年を迎えました。これまでも、そして今もこれからも、PIECESは市民の皆さまと共に歩みを進めていきたいと思っております。
いつも私たちの活動を共に耕してくださる皆さまに、改めて感謝申し上げます。

7年目を迎えたPIECESもどうぞよろしくお願いいたします。

2022年8月3日

認定NPO法人PIECES スタッフ一同

【PIECES ROOMレポート】小澤いぶきが今聞きたい、あの人の市民性 | VOL.1 鬼丸昌也さん

PIECESを応援してくださっている各界の著名な皆さまと一緒にライブ配信を行う「PIECES ROOM - 小澤いぶきが今聞きたい、あの人の市民性 -」が初回を迎えました!

PIECES ROOMは、市民性の意味や、市民性の先にある優しい間が広がる世界について、PIECES代表の小澤いぶきとゲストの方が語り合う配信です。

初回のゲストには認定NPO法人テラ・ルネッサンスの創設者である鬼丸昌也さんをお迎えしました。配信の内容を簡単にご紹介します。


自分たちの行動で社会を変えられる 

テラ・ルネッサンスは「すべての生命が安心して生活できる社会(世界平和)の実現」を目指して、活動されています。海外の『地雷』『小型武器』『子ども兵』の課題に対する現地での直接的な支援活動に加え、国内では『平和教育』を中心とした啓発活動に取り組まれています。
鬼丸さんから「海外でおきていることが自分たちも関わっていることを知ると心が痛むかもしれない。でも逆から捉えれば、自分たちの行動で社会を変えていけるということだ。」というお話がありました。「自分たちにも責任があるということは行動次第では希望があるとも言える」、「微力ではあるけれど、無力ではない」と伝えてくださいました。


市民性の獲得は旅である 

小澤からは市民性を広げようとしているものの、自分自身も不完全であるという話がありました。鬼丸さんは市民性は旅であると言えるのではないかと指摘してくださいました。そして「PIECESの市民性は優しい。優しさはおとなしいとは違い、躍動的だということ」と表現してくれました。PIECESはメイトをはじめ、関わっている皆さんが仲間であり、その輪が市民性を体現していると共鳴しました。


相互尊重・相互学習・相互支援

市民性を支援者・被支援者として関わることではなく、1人の人として関わることであると考えています。テラ・ルネッサンスで大切にしている「相互尊重・相互学習・相互支援」という価値観の紹介があり、活動の中、日常の中で体験した相互での関わり・学び合いについていくつか言及していただきました。
私たちの尊厳は「目に見えないインフラ(優しさや関心、信じてもらうことなど)」に支えられていることを改めて実感しました。


寄付の意味 

鬼丸さんはPIECESのメイトとしても関わってくださっています。そんな鬼丸さんにとって寄付とは「社会への投資でもある。ただもう1つ大事な意味として、自らを見つめ、自らを変える手がかりになることがある」、「寄付をすることによって私と社会の関係に気づくことができ、自分の中に社会性が生まれ、それは自尊心につながる」とお話しくださいました。また、PIECESのメイトでいてくださる理由としては、PIECESが面白そうだからということ、PIECESがやっていることはわかりにくいからこそ支えるべきだと思っていることを挙げてくださいました。


鬼丸さんからのメッセージ 

「思いがけないことがおきても、絶望があふれた社会に絶望する必要はない。自分の内側の希望にフォーカスすることや、自分ができたこと・やろうとしていることにフォーカスすることが大切である。」と温かいメッセージをくれました。



初回のPIECES ROOM、市民性に向き合うとても素敵な時間になりました。様々な出来事やニュースに出会うと、自分の無力さについ絶望してしまうことも多いと思います。ですが、私たちは相互に関わり合う存在です。自分次第で社会を少し変えることができる、それは希望があると言えることに気づいた時間でした。絶望した自分の気持ちを抱きしめながらも、そこには希望があるかもしれないという視点を持ち続けようと思えました。
PIECES ROOMの配信はアーカイブとして残っています。配信に興味を持ってくださった方はぜひ見てみてください。

また、PIECES ROOMは様々なゲストをお迎えして、定期的に配信予定です。ぜひ今後もチェックしてもらえると嬉しいです。
最後になりますが、ゲストの鬼丸さん、配信を見てくださった皆さん、本当にありがとうございました。

執筆:広報ファンドレイズ インターン 小森 佳歩


次回開催決定!

イラストエッセイストの犬山紙子さんをゲストに「子育てを通して感じていること」「子どもの権利」などについてお話します。ラジオ感覚で、お気軽にご視聴ください!

【ライブ配信概要】

日時:7月27日(水) 21:30-
場所:Facebook / YouTube / Twitter 同時ライブ配信
申し込み:不要
※各SNSからご自由にご視聴いただけます。

※YouTubeリンク:https://youtu.be/IG6AEMzRasA

【イベントレポート】「ひとりひとりの手元から未来をつくるー市民として生きるって、どういうこと?」を開催しました。

PIECESは今年6月に設立から6周年を迎えました。PIECES設立6周年を記念して、6月25日(土)に特別トークセッションを開催しました。
モデレーターに評論家・ラジオパーソナリティの荻上チキさん、スピーカーに一般社団法人 NO YOUTH NO JAPAN代表理事・ハフポスト日本版U30社外編集委員の能條桃子さんをお招きしました。

モデレーター:荻上チキさん
評論家・ラジオパーソナリティ

メディア論を中心に、政治経済、社会問題、文化現象まで幅広く論じる。NPO法人「ストップいじめ!ナビ」代表、「社会調査支援機構チキラボ」所長。出演「TBSラジオ・荻上チキsession」、著書『ウェブ炎上』『いじめを生む教室』『みらいめがね』など

スピーカー:能條桃子さん
一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN代表理事・ハフポスト日本版U30社外編集委員

1998年生まれ。若者の投票率が高いデンマーク留学をきっかけに、2019年7月政治や社会の情報を伝えるInstagramメディアNO YOUTH NO JAPANを立ち上げ、団体創設。「参加型デモクラシー」ある社会をつくっていくために活動を展開。団体近著に『YOUTHQUAKE~U30世代がつくる政治と社会の教科書~』ジェンダー、気候変動に関心

PIECESは設立当初から「こどもがこどもでいられる社会」を目指して、活動を行ってきました。こどもがこどもでいられる社会は、わたしたち大人が自分として生きていける社会から生まれるものかもしれません。

当日は小澤いぶきからPIECESの活動紹介、能條さんからNO YOUTH NO JAPANの活動紹介の後、荻上さんをを含めた3名で、”私たちが生きやすい社会とはなにか”について、市民性(シティズンシップ)をキーワードにセッションを行いました。このレポートでは、セッションの要点をご紹介します。


市民性を考える

最初に荻上さんから”市民性”というキーワードを歴史の経緯から整理していただき、まずはそれぞれが考える市民性について考えを深めました。

能條さんからデンマークへの留学経験から、日本と海外の市民性の違いについて「デンマークでは小さなコミュニティの延長に大きなコミュニティがあるという意識がある。小さなコミュニティを変える経験を持っているからこそ、大きなコミュニティも変えられるという考えを持っている人が多い。」という話がありました。
小澤からは「日本でも何かしたいと思っている人は多いけれど、それをやってみるハードルが高くなっている。エンパワーメントする環境が必要ではないか。」という話がありました。

社会を変えられるという意識を持つ

社会を変えることはできないという考えを変えるためには「知識」と「統制感覚」が必要であると荻上さんがお話しくださいました。「知識」とは社会との関わり方を知っていることだけでなく、それを手段として実行できる環境があることも必要です。そして「統制感覚」とは社会をコントロールできる、という感覚のことです。ここでは統制感覚を持つためには何が必要か話しました。

能條さんからは、自身は統制感覚を持つことが出来る経験や仲間を得ることができたから、今活動できているという話がありました。身近に統制感覚を持つための種となる経験が大切になってくると荻上さんに付け加えていただきました。

また小澤からは、自分の人生は自分でつくっていけると知る経験には格差があるのではないかという話があり、自分で選択をしていけると気づくことが、最終的には社会を変えることができると思える市民性につながっていくということが話されました。

社会に対して関わろうとする

荻上さんから子どもに対して将来の夢を聞くことについての言及がありました。”将来の夢”は就きたい職業のことを指す場合が多いです。そうではなくて、「自分が将来どうなりたいか」と「どういう社会をつくりたいか」の2つを一緒に考えるべきではないかとお話がありました。ここでは、どうすれば社会と関わろうという考えに至るのか話されました。

能條さんはNO YOUTH NO JAPANの活動を始める経緯について、特にデンマークへの留学経験をもとにお話しくださいました。「デンマークに惹かれたのは、誰か優秀なリーダーがいることではなく、民主主義が実現されていること、対話が実現されていることだった。対話があることで自分が無視されないという経験ができる」と指摘されました。また、荻上さんの話を踏まえて、能條さんからは社会に対して何をしたいかという問いをされることの大切さを気づきとしてあげられました。小澤からはその問いを考えることが共有感覚を育むことにもつながるというお話がありました。

質疑応答

ご参加いただいた方からは様々な視点からご質問をいただきました。
「若者の政治参加を考える上で、新しい政治モデルとして何か考えられることはないか」「子ども自身が自分の声に気づくためにはどうするべきか」といった質問がありました。

子どもや若者の声を聞く政治モデルについての話、子どもをジャッジしないことの大切さなど、話をさらに深めていただきました。

参加者の声

以下、ご参加いただいた方からの感想を一部ご紹介します。

・とても優しく子どもがほっとする活動をされていると感じました。子どもは宝と私は思います。未来の大人をみんなでしっかり支えて、過ごしやすい社会になればと思いました。

・能條さんの、自分の力で何かを(校則など)を変えられる経験を学校で積む、と言うお話しが印象的でした。わたしが子どもの頃は、何かおかしいなと思ったら自分の状態を変えるだけで、外に対しては全く意識が向きませんでした。外を変えてみる発想にすらならなかったと記憶しています。今はどうかな、と自分を見つめるきっかけになりました。

「政治体制ではなく、在り方としてのデモクラシー」が印象的でした。個人が尊重される環境に身を置くからこそ、自分も他者も価値ある存在だと実感できるからこそ、失敗はあれど学習性無力感に陥ること無く現状を変えようと行動できる。このように自分や他者に未来があると想像できること、その未来に希望を持ち行動できること、それはとても幸せなことだと私は思います

・今回お話しくださった皆様の姿勢から、ありたい社会を実現させたいと願う自分自身を肯定したり応援したりすること、そしてそれを実現させる為の知識とセンスオブコントロールの必要性を感じました。まずはそこからなのだろうと思います。この度はこのような場を開催くださりありがとうございました。

市民性を醸成するとはどういうことか、何が必要なのかを改めて深く考える時間になりました。
異なる分野で活躍されている3名だからこそ、色んな視点から市民性について考えることができ、わたしたちが社会と関わり続けるためには、関わろうと思えるための種を得られる環境が必要であると感じました。

このイベントに参加すること、市民性について考える時間を持つこと、それ自体が市民性を醸成すること、社会と関わることになったと思います。ぜひこれからもみなさんと市民性について考え、対話する時間を持っていきたいと思います。

最後に話題になりましたが、登壇してくださった荻上さん、能條さん、そして参加してくださった皆さま、本当にありがとうございました。

執筆:広報ファンドレイズ インターン 小森 佳歩

ショックな事件に対して、私たちの心を守るためにできること

事件や事故の情報に触れることは、心身に大きな負荷を与えます。
子どもたちはもちろん、大人である私たちが心を守り、知らないうちに心を傷つけないためにできることをまとめました。

報道されたことに対してショックなどを受けたり心を痛めたり過覚醒になっている場合の対応

・情報から離れる

・深呼吸をするなどのリラクゼーション

・日常のやることを行う

・誰かに相談する

このような報道で、ショックを受けたり何か過去のことを思い出して動悸がしたりつらくなったり、社会が安全でなく感じることがある。これはとても自然なことです。

起こったことが気になるのもとても自然ですし、いろんな感情がわいてくるのも自然なことです。

こころがざわざわする、落ち着かない、前の嫌なことを思い出す、イライラする、何かに手がつかない、身体が緊張している、呼吸がはやい、動悸がする、やる気が出ない

などいつもとちょっと違ってしんどいなというときは、ニュースから離れましょう。

誰かと話す、深呼吸をする、ゆっくりお風呂に入るといった、ケアをしながら普段の日常を取り戻しましょう。

自分は大丈夫と思っていても、情報に触れ続けずに、情報から定期的に離れる時間をつくってください。

衝撃的な映像や、誤情報、特定の属性への非難等の拡散を深呼吸して保留するのも、自分や周りを守ることにつながるかもしれません。


参考となる記事やツールを掲載します。ご活用ください。

●事故や災害が起きたときのケアについて 〜 子ども「心」のケアの視点から 〜

https://note.com/ibukiozawa/n/n8a7351179ee4

●大規模災害、事故などの直後に提供できる、心理的支援のマニュアル

「サイコロジカル・ファーストエイド 実施の手引き 第2版」

https://www.j-hits.org/document/pfa_spr/page1.html

●子どものこころのケアに役立つ資料(兵庫こころのケアセンターより)

https://j-hits.org/document/child/

こども家庭庁準備室のアドバイザーに就任しました。

PIECES代表の小澤いぶきが、こども家庭庁設立準備室のアドバイザーに就任しました。

子どもたちを取り巻く環境には、保護者や保育者・教育者だけでなく、誰もが関わっています。
児童精神科医である小澤の専門性に加えて、NPOの取り組みやさまざまな地域、国への関わりを通して出会ってきた大切な知恵とつながりを生かしていきたいと思っています。

子どもが尊厳を持つ一人の人として、その権利を私たち、そして子どもたち自身も学び、体験する子どもの参画プロセスを通して、権利が大切にされる仕組みと文化醸成へ貢献していきます。

また、トラウマインフォームドケア・レスポンシブケア・スペシフィックケアへの取り組み、年代別のメンタルヘルスへの取り組み、wellbeingの視点からの環境づくりを関わっていきたいと思っています。

※こども家庭庁に関する情報はこちらからご覧いただけます。


2022年6月に6周年を迎えたPIECES。
これからも「市民」の可能性を信じ、子どもたちの周りに信頼できる市民を増やしていきたい。

この夏、150万円の寄付を集めています。

皆さまのご寄付が地域で子どもに関わる市民の学びを広げ、子どもたちの力になります。
ぜひ寄付で活動を応援してください。

子どもアドボケイト養成講座の講師およびアドバイザーを務めています。

「一般社団法人子どもの声からはじめよう」が中心となり、2020年より始まった「子どもアドボケイト養成講座」。
子どもアドボケイトは、子どもの声に耳を傾け、その声を必要な大人に伝えることができるようにサポートする人です。子どもアドボカシーの理念や、アドボケイトに求められる知識やスキルを学ぶ講座に、PIECES代表理事の小澤いぶきが講師およびアドバイザーとして関わっています。

子どもとともに優しい間を紡ぐ社会は、子どもも私たちも、一人一人が尊厳ある一人の人として権利を尊重しあえる社会でもあります。
尊厳ある一人の人として、子どもの権利が尊重される社会の実現に向けて始まったこの講座に、そして子どもアドボケイトが文化となる土壌に、今後も貢献していきたいと考えています。

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一般社団法人子どもの声からはじめよう
子どもの権利を尊重する社会の実現に向けて社会的養護経験者の教員、児相職員、会社員、大学生のメンバー中心に2018年に勉強会、政策提言のプロジェクトとして発足。
勉強会、政策提言ワークショップ、子どもアドボケイト養成講座を開催、2021年6月からは児童相談所での訪問アドボカシーの実践をしています。

PIECESメイト限定オンラインスペースPiece for Peace 【5月の活動ダイジェスト】

寄付者限定のオンラインスペースPforPの5月の様子をお知らせします。
※PforPは、メイトの皆様が寄付をしながら、社会も自分もwell-beingになることを目指して、イベント参加、交流ができるオンラインコミュニティです(詳細はこちら)。

日常を豊かにし、市民性を醸成するオンラインスペースPforP5月のダイジェスト

Citizenship lab ~メイトアクション探求編~

5月は、メイトアクション実践編ということで、これまでゲストの皆さんのお話から得た気づきなども生かしながら、実際にメイトの皆さんで取り組んでいけそうな市民性を広げていくアクションを考えていこうという企画を行いました。

皆さんそれぞれの視点から様々なアイデアが出てきましたが、もっと深く知りたいと関心が集まったのは、”マイクロ書店”と呼ばれる取り組みでした。”マイクロ書店”は、近年様々なコミュニティースペースの中に設けられることが増えてきている、小さな本屋さんを営むような取り組みです。

このような”マイクロ書店”をメイトの皆さんで運営して、その収益の一部をPIECESへの寄付につなげたり、その書店の中でPIECESの活動紹介をしたりという取り組みができるかもしれない!という話になりました。まずはその取り組みを実際に見に行きたいということで、次回は実際にマイクロ書店を個人で運営しているメンバーのスペースを覗きにいくことに。そこから具体的にこれから何かできるかを考えていこうという話になりました。

▶開催概要

5月20日(金) 21:00-22:00

▶「Citizenship Lab」とは

”市民性に触れ、市民性を探求する”をテーマに、社会にもっと市民性が広がっていくことを目指し、ゲストの方をお呼びしてそれぞれの分野での市民性について学んだり、メンバー間対話よりこれからのアクションについて考えたりするイベントです。


HIPAHIPA! まどラジオ〜HIPAHIPAweek編〜 運営の裏側

今回のHIPAHIPAまどラジオは、年に2回のリアル×オンラインのお祭り「HIPAHIPA week」の1コンテンツとして行いました。今回は4名のゲストをお迎えし、それぞれの実践と運営しているからこその悩みを対話しました。

今回のハイライト

・協力者の巻き込み方とモヤモヤ

・活動を評価してくれた人からの「こうしたら?」という期待にどう応える? ・「続けないんですか?」という言葉の嬉しさとモヤモヤ

・発起人がいないプロジェクトは、「らしさ」を保てるのか

▶開催概要

5/5(木)Facebookライブ+対話回参加者4名

▶HIPAHIPAとは
子どもたちとの関わり方や市民性についてみなさんと考える対話イベントです。地域で活動している仲間の話を聞いて共に考えるゲスト回、こんなときどうする?ということを共にテーマから考える対話回があります。


ふとんで#まどラジオ【vol.07 “PIECESに共感するわたしたち”に開いたとびら】

▶今回対話するメイトは?

彩さん:

医療系のライター・編集者としてお仕事をする中で、小澤と出会い、PIECESを知ったという彩さん。

今回は、彩さんが運営しているヘルスケアコミュニティ・SHIPとPforPとを比較しながら、改めてPforPというオンラインスペースがどんな場所なのか紐解いていきました。

▶ハイライトpick up!

  • 子どもの孤立は専門分野ではないからこそ、PIECESに少額でも継続寄付し応援し続けているという彩さん。PIECESに託したい思いや今後やってほしいことを語っていただきました。

  • PforPができたことで、PIECESとメイトとの距離感が大きく変化しました。一方向から双方向のコミュニケーションへ、またPIECESとメイト間だけでなくメイト同士でのつながりへ。シナジーが生まれやすくなったPforPという土壌に今後の期待を膨らませつつ、対話を深めていきました。

▶開催概要

・5/20(金)@YouTube

・話し手:彩・なつこ・ゆいつん

▶ふとんで#まどラジオとは?

PIECESメイト同士が、自分の暮らしのサイズ感で市民性について対話するラジオです。

毎月第3金曜夜に20分程度配信します。週末の夜、ゆるゆると聞いてみてください◎

(毎回違うメイトが対話をします。対話したい方、大募集!)


Slackでの話題 pick up!「子どもに寄り添う人のための休憩所」がスタート

PIECESメイトで、Citizenship for Children2021修了生のゆきえさんが「子どもに寄り添う人のための休憩所」をオンラインでスタートしました。

きっかけは、ゆきえさんが中学校の相談員をされていて、教師でも専門職でもない立場での活動は孤独を感じたこと。「誰かに聴いてもらいたい。共感してもらったり、アドバイスをもらったりすることができたら、心強いな。そんな場所がほしいな。」と思った経験から悩みを打ち明けあったり、一緒にもやもやしたり、共感し合ったりできる場をオンラインで始めました。

◎こんな方に来て頂きたいです!(参加者募集中!)

・子ども食堂、無料塾、支援施設、遊び場などさまざまな子どもが関わる場所で活動している方

・これから子どもの居場所に関わりたいと思っている方も大歓迎!

さまざまな子どもの居場所で活動している方の話を聞くことで、これからの自分の活動場所を見つけるヒントにもなるかもしれません。

開催日:月1回(日曜午前中を予定)

PforPに参加している方だけではなく、Citizenship for Children修了生も参加しています。 子どもの居場所作りに関わっている方、これからなにかしてみたいなという方、ぜひオンラインで語りませんか。


Piece for Peaceへのご参加をお待ちしております。

PIECES メイトのみなさんと、市民性醸成の道を一緒に歩んでいけること、楽しみにしています。


<PforP6月の予定>

【6/14 (火)21-22時@zoom】小澤いぶきイラク近況報告会 〜Citizenship Lab特別編〜

今回は、Citizenship Lab特別編として、代表の小澤による近況報告会を開催します。例えば、小澤が関わるプロジェクトでは、クルド、シリア、イラクの難民の子どもたちが化学兵器の影響で小児がんになっている状況を受けて、子どもたちのニーズや願いを聞き、子どもの周りの保護者・保護者を取り巻く大人たちが子どもとの関わりを実践するための、トラウマインフォームドケアのWS(3日間)及び、保護者の方々がお互いにこどもへの関わりや心のケアを学び合い、エンパワメントし合うピアグループ立ち上げを現在計画しています。このように、これまでやってきたことや現地での声などを共有する時間にしたいと考えています。

【6/17(金)22:00〜ふとんで#まどラジオ_vol.08】 情報があふれる今を生きるわたしたちと子どもたちの話

今回対話するメイトは、3歳の息子さんと日々暮らしているあらぽんさん。インターネットでの検索や動画サイトでのレコメンドによって、興味をどんどん深められる今を生きる「わたしたち」。 一方で、自分の関心外の情報に偶然触れることがいつの間にか少なくなってきているように感じます。 自分ではたどり着かなかった情報や人に出会える場所として、PforPの価値を再発見していきました。

【6/18(土)10:30-11:30@zoom】HIPAHIPA! まどラジオ〜対話編〜「まちで出会ったホッとするエピソード」

今回のテーマは「まちで出会ったホッとするエピソード」を中心に、以下のようなことをざっくばらんに話してみたいと思います。

・すんでいるまちや思い出の場所で出会った話
・近所の人に声をかけられて嬉しかった、救われた話
・私の中でホッとできる場所、安心する場所
PIECESがよく使う「優しい間」ってなに?と思っている方、みなさんで優しい時間を共有しませんか?

世界で戦争や紛争が起きている時、子どもとの関わりで知っておいてほしいこと

ウクライナ・ロシア情勢が刻々と変化する中で、子どもたちもニュースでそのことを目にする機会や、大人が話すことを耳にする機会が増えているかもしれません。

私たちが自分なりに社会で起きていることを受け取っているように、子どももその子なりに起こっていることを受け取っています。受け取ったことをどのように認識するか、どのように対処するかは年齢や発達、そして一人一人違います。
いつもと違う状況やニュースなどで知ったことに関しての疑問や不安を、「大人に何度も聞く」といった形で表現する子もいれば、遊びで表現する子やもいます。大人から見ると「困ったなあ」と感じる行動や、「赤ちゃん返り」しているように見えるような、いつもと違う様子に見える状態が、その子なりのサインである場合もあります。

大きな危機が起きた時、私たちの心身はその危機に対応しようとします。そのサインとして、さまざまなサインがみられます。それはとても自然なことで、私たちの力でもあります。

このような時に子どもに起こること、そのことに対して子どもと共にできることを共有します。

書き手:

小澤 いぶき

PIECES代表理事 / 児童精神科医 / 東京大学客員研究員


1.子どもは、どんな時に社会の危機を受け取るの?

・自分の生活がいつもと変わる

・戦争のニュースで生々しい映像、強く印象に残るいつもと違うニュースが流れる。そのことに対して大人の様子もいつもと違う

・過去に怖かったことを思い出すようなニュースや話題が身近で話される、流れている

・見通しがつかない

・ルーティンでやっていたことが変わる

・突然イベントがなくなる

・いつも行っていた場所に行けなくなる

・周りの雰囲気がいつもと違う

今回はウクライナ・ロシアの影響を念頭に記載していますが、一般的に不安を感じる時は、ここに書いているものだけではありません。

今回のような状況で、お子さんが「何かいつもと違うことが起きている」と感じるのはとても自然なことです。

2.危機を知ったり、体験した時は子どもにどんな変化があるの?

子どもたちは、言葉で伝えてくれる以外に、行動や身体、心を通して様々な形でサインを出してくれることがあります。これらはその子なりに、今起こっていることに対処しようとしているその子の力でもあります。

・いつもできていたことをやらなくなる

・ぼーっとする

・おねしょが増える、頻尿になる

・ご飯の量が減る

・寝つきが悪い、途中で目が覚める

・腹痛などの身体の症状

・いつもより甘える、一人でいるのを怖がる

・会話が減った、なにか言いかけてやめる

・いつもよりこだわりが強くなる、なんども同じことを聞く、やる

・いつもより落ち着きがなくなる、そわそわする、イライラしやすい

・兄弟などとの揉め事や喧嘩が増えた、何かや誰かに当たる

・勉強に集中できない

ここに書かれているものだけではなく、様々な形でサインを出しています。ぜひ子どもの様子がいつもと比べてどうかを丁寧にみてみてください

危機に対応するために過覚醒になることもあります。低年齢であればあるほど、言葉以外で表現する頻度が多いかもしれません。

周りの状況を繊細に見て、自分の不安や悲しさ、恐怖、疑問などを表に出せず我慢しているお子さんもいます。一見何もないように見えるからといって、何も感じていないというわけではないこともあります。
また、子どもは遊びの中で様々なことを表現します。見たニュースを「爆弾ごっこ」「ミサイルごっこ」のようにあそびで再現することもあります。

保護者も戦争のニュースを気にしながらも、新型コロナウイルスに関する対応、新年度への準備など、日々さまざまなことに対応しており、お子さんに気を配るのは物理的にハードルがあるかもしれません。
保護者だけが頑張るのではなく、複数の大人の目でお子さんに関心を向けていける環境を周囲が一緒につくっていくことも大事なことの一つです。

3.子どもにどんな風に関わったらいいの?

①心と身体の変化に目を向ける
・いつもと違う状態や行動に気を配る

・子ども自身、自分でもどうして良いかわからないと感じていることもあります。いつもよりできないことが増えたように見えても、急かさず、子どもが何に困っているのか丁寧に観察する

・子どもなりに対応していること、やっていること(子どものレジリエンス)にも目を向ける

②子どもに対する声がけ
・子どもの感情を言葉にして受け止めてみる
例:「悲しかったんだね」「嫌だったね」「嬉しかったね」「楽しかったね」など

・自分の感情に自分で気づくことが難しいこともあります。子どもの身体の状態を手がかりに、気持ちを探ってみるのも一つの方法です
例:「顔があついね」「いつもよりドキドキしてるんだね」「いつもより身体がかたくなってるかな」など。「怖かったね。心配になったね」など感情を共有する。

・できるだけ肯定的な言葉がけを心がける。大人からみたら当たり前だと思うことでも、子どもにとってはとても頑張ってやっていることも。
例:「歯を磨いたんだね」「着替えたんだね」と当たり前に目を向けて言葉にして伝える。

③生活の工夫
・可能な範囲で子ども自身が選択できる余地を作り、選択をまずは受け止める。もしその選択が叶わない場合は、違う方法を提案したり一緒に考えたりする。
※子どもにとって自分の意思ではどうにもならないことが続く時は、子どもが小さくても自身で決められることをつくってみるのも大切なことの一つです。

・日々の中に、小さな楽しみやほっとできる時間をつくってみる

・身体をケアし、リラックスする時間をつくる
例:深呼吸をする、手をぎゅっと握って開く、触られるのが嫌でなければ背中をマッサージするなど

・大人と一緒に情報から離れて、違うことをする時間をつくる。好きなことを大事にする。

・普段と変わらずにできることは、無理がない範囲で続ける
※規則正しい生活(いつもと同じ時間に寝る、ご飯を食べるなど)は安心感につながります。

・遊ぶことや身体を動かすことはとても大切なので、可能な範囲で取り入れる

④遊びに対して
・まずは無理に止めずに見守りましょう。苦しそうに同じ遊びを何度も何度も繰り返す場合、遊びが何度も悲しい結果に帰結する場合、良い形で遊びを終えられるように一サポートしてみてください。

いつもより保護者に「見て見て」と共有することが多かったりするかもしれません。体験を共有し、感情を受け止めてもらえることは、子どもが危機を乗り越える上でとても大事な体験です。

ただ、「見て見て」に対して、その体験や感情を受け止め共有することがすぐに叶わないこともあります。そんな時は「見せてくれて嬉しいな。ありがとう。〇〇時になったら見るね。」と声をかけて、一緒に体験や感情を共有し受け止める時間をつくったり、子どもと一緒に「見て欲しいもの」を置いておく宝箱や、秘密の場所などを考えて、その箱を開ける時間を決める、なども一つの方法です。

4.起こっていることについて子どもに伝える時

大人にとっても予測が難しいことも多いかと思いますが、今起こっている事実を子どもの年齢に合わせた言葉で丁寧に伝えてみてください。

わからないことがあった場合もごまかしたり、嘘をついたりせずに「自分もわからないこと」を伝え、「わかったら伝えること」を丁寧に伝えてください。見通しがつかないと、何度も同じことを聞いてくるかもしれません。そんな時は、できる限りで同じことを繰り返し丁寧に、穏やかに伝えてください。

繰り返し聞かれることに対応する時間や気持ちの余裕がないことがあるのも自然なことです。そんな時は「聞いてくれてありがとう。」と伝えた上で、気になることを聞く時間を決めるといいかもしれません。
文字が書けるお子さんであれば、「気になることノート」や、「気になることボックス」を作って、気になることを書いた紙を入れるなどして、書いたものに答える時間や書いたものに言葉で返信するなどをしてみてください。

子どもへの対応や関わり、話の伝え方については、セーブザチルドレンが出されている「専門家がすすめる、子どもと戦争について話すときの5つのポイント」も参考にしてみてください。

5.最後に

子どもに関わる大人自身も、気づかないうちに疲れていることが少なくありません。

過去の体験をニュースの映像で思い出し、苦しくなったり涙が出たり、呼吸が浅くなることもあるかもしれません。それもとても自然なことです。ぜひ情報から離れて、深呼吸したりストレッチをしたりとリラックスする時間をつくってみてください(できる範囲で、無理をせず)。

また、子どもも子どもに関わる大人も、このような状況でもできていることがたくさんあります。当たり前にやっていることやできていることに目を向けてください。そして、自分の中にある感情を大切に受け取ってください。

こどもがこどもでいられる社会を|寄付キャンペーン2021終了のご報告

2021年12月12日から2022年1月31日までの約1ヶ月半で150名のPIECESメイト(毎月の継続寄付者)を募る寄付キャンペーンが終了しました。

「こどもがこどもでいられる社会を」をテーマに実施してきた寄付キャンペーンでは

  • 新たに126名のPIECESメイト

  • 79名の方から571,170円の単発のご寄付

を頂戴しました。キャンペーン中にご寄付くださった皆さま、応援してくださった皆さまへ改めて感謝申し上げます。

目標としていた150名にはあと少し及ぼなかったものの、改めてPIECESを応援くださる方がたくさんいらっしゃることを実感することができ、PIECESメンバー一同感謝の思いで一杯です。
今回の寄付キャンペーンを経て、455名の方に現在PIECESメイトとして歩みを共にしていただいています。
5周年を迎えた今年度、これほど多くの方にPIECESを応援していただけていることに改めて感謝いたします。

a piece for peace

おひとりお一人の願い、託してくださる想いが本当に嬉しく、共に同じ未来を願って歩んでいけることを心強く思います。

キャンペーン期間中にはたくさんのシェア・コメントでの応援もありがとうございました!

今回のキャンペーンは、PIECESをカタチづくる多くの方々と共に進めることができました。

連載してきた #note は15本!#わたしがPIECESを好きなわけ のタイトルで、それぞれの目線から言葉を紡いでくださいました。(note企画はプロボノの中原さん、高島さんがマネジメントしてくれました!)

PIECESを、PIECESという生態系を愛する言葉でいっぱいになりました。ぜひ、ご覧いただき、この生態系の仲間になっていただけると嬉しいです。


子どもが子どもでいられるとは、子ども「らしく」いられることとは異なります。
「子どもらしさ」では、大人から向けられる物差しや
子どもらしくない子どもといった排除を生む可能性もあるからです。
子どもが子どもでいられるというのは、その子がその子としていられること。
私が私でいられる、あなたがあなたでいられることと繋がっています。

こどもがこどもでいられる社会をあなたの手元から、共に紡いでいけたら嬉しいです。

PIECESメイトのみなさまからのご寄付は、様々な背景によって子どもたちが社会的に孤立することを防ぐ活動や、PIECESが行っている市民性醸成プログラムにかかる費用に活用させていただきます。いただいたご寄付とお気持ちが、私たちの活動を通して、子どもたちにきちんと届いていくように努めてまいります。

#ひろがれPIECES

子ども若者の孤独・孤立を予防するために。|PIECESの政策提言に関する活動について

PIECESでは2019年より、子どもや若者の孤立に関する政策提言を行っています。

2021年度は孤独・孤立対策、子どものwellbeingに関する政策提言及び、子ども庁(現子ども家庭庁)設置に向け、子どもの心のケア(トラウマインフォームドケア)、そして子どもの権利を保障する政策の必要性について、代表の小澤いぶきが提案し、ヒアリングを受けてきました。今回はそういった政策提言に関する活動について、ご報告します。

①孤独・孤立対策について

2021年5月、孤独・孤立対策に関する連絡調整会議に向けて、孤独・孤立の定義に関する提案、考え、実態調査の必要性とその際の重要な観点についてヒアリングを受け、提案を行いました。

資料(有識者、NPO法人等のヒアリングにおける主な意見等)

②子ども庁(現子ども家庭庁)について

2021年11月、子ども庁(現子ども家庭庁)設置に向けてヒアリングを受けました。見落とされがちな「子どもの心」のケアや心の傷の予防・ケアのできる地域のエコシステム構築の必要性について提案しました。これは虐待予防等、子どもたちの心に影響することの予防やケアを行う体制を整えることにもつながります。

また、「子どもの権利」を保障するための「子ども基本法」の必要性についても、提案・要望を行ったほか、新公益連盟を通して、「子ども基本法の策定」「孤独・孤立対策」において、まだ対策に入っていない外国人や性的マイノリティ等の包摂に関する明記について、与党の予算・税制改正に関するNPO/NGOへのヒアリングについても要望しました。


誰もがその存在を尊重され、安全に生きていくことが当たり前になるプロセスの中で、制度によってその権利が保証されているかどうかということが、一つ大事な道のりとなることがあります。制度で自分の安全が保障されていないことが、その人の尊厳に関わっていることがあります。

まだ自分たちが出会っていない、さまざまな環境にいる方々も同じ地域で生きていること、この時代を共にしていること、その全ての人にとっての政策があるわけではないことを忘れずに、その方々の願いと私たちの市民性に根ざしたwellbeingという願いの重なりが、この先にバトンとして渡っていくような「市民性に根ざした政策」をこれからも考え、問い直し、提案していきたいと考えています。

制度をつくっていくのも、活用していくのも私たち市民一人一人です。一人一人の眼差しや関わりで、日常にその人が存在して大丈夫だと感じられるかどうかの文化は私たちが醸成しています。
市民性に根ざした制度を考えながら、市民性に根ざした日常を、これからも共に作っていきます。 

認定NPO法人PIECES 小澤いぶき

アニュアルレポート2020-2021ダイジェスト

PIECESの1年間の活動をご報告するアニュアルレポート2020-2021が完成しました!

PIECESの事業や関わる人の輪が大きく広がった1年の軌跡を、ぜひご覧いただけたらと思います。
pdfバージョンをダウンロードいただくことも可能です。(ダウンロードはこちら

  1. 代表ポエム:優しい間のある暮らし

  2. ISSUEとMISSION

  3. 活動① Citizenship for Children(市民性醸成プログラム)

  4. 活動② Reframe Lab(アートプロジェクト)

  5. 活動③ Cultivate Citizenship(広報啓発活動)

  6. PIECES5年の歩み

  7. PIECESからのお知らせ

  8. 活動計算書

  9. サポートいただいた企業

  10. 5周年お祝いメッセージ


1. 代表ポエム:優しい間のある暮らし

今すぐには見えないかもしれないけれど、一人ひとりの市民性野崎に誰かの暮らしがあるように、泉のように湧いた小さな豊かさの種が、芽吹いているかもしれません、

一人ひとりの手元にある温かい間が、紗あきの源になっていく、そんな「優しい間」のある暮らしを。

PIECES代表 小澤いぶき

2. ISSUEとMISSION

ISSUE

頼れない・頼る人がいないという「子どもの孤立」

  • どこにも相談できる人がいない・・・21.8% *1

  • どこにも助けてくれる人がいない・・・11.3% *1

  • どこにも居場所がない・・・5.4% *1

  • 支援期間を利用しようと思わない・・・69.7% *2

※1:内閣府「子供・若者白書」令和3年度
※2:内閣府「子供・若者の意識に関する調査」令和元年度

貧困や家族の病気、いじめなどでしんどいときや傷ついたときに、家庭・学校・地域などで誰にも頼れない、頼る人がいない「子どもの孤立」。
それにより、心の傷が悪化するまでケアされず、深刻な状態へとつながる子どもたちがいます。

MISSION

一人ひとりのマインドセットをアップデートし
社会のなかに市民性を醸成する

私たちの目指す未来は、子どもたちが孤立せず、優しいつながりが溢れる未来です。それは、小さな困りごとや、小さな心の傷が生まれた時に、身近な関係性の中でケアされ、お互いに癒しあっている世界です。

私たちPIECESは、Citizenship for Childrenなどの事業を通じて、一人ひとりのマインドセットをアップデートし、社会の中に子どもたちの困りごとや痛みを見過ごさない市民性が醸成されていくことに取り組んでいます。

専門家だけではなく、私たち一人ひとりが優しい間をつむぐ市民性を発揮していくことで、子どもの心の傷が身近な関係性の中でケアされ、子どもの孤立は解消されていくと考えているからです。

3.活動① Citizenship for Children(市民性醸成プログラム)

子どもが孤立しない地域をつくる市民性醸成プログラム
「Citizenship for Children」とは?

Citizenship for Children(以下CforC)は、子どもと自分にとってのより良いアクションやあり方を探究する「市民性」の醸成を目指す研修プログラムです。
子どもと自分と地域にとってのwell-beingを実現するために、仲間とともに心地よく迷いながら、自分なりの市民性を探究していきます。

2016年から実施しているCforCは、2019年度からは全国へ展開し、各地の協働団体と共に活動を広げています。

2020年度は3つのコースに計136名が参加しました。2021年度は「みつめるコース」「うけとるコース」「はたらきかけるコース」とコース名を刷新し、65mりが受講しています。

また、CforCのエッセンスを活用して団体向けの研修プログラムも実施しています。

4. 活動② Reframe Lab(アートプロジェクト)

一般社団法人Whole Universeとの共催のもと、2018年から活動を続けている「Reframe Lab」は、豊かな想像力を育む「あそび」や「まなび」を開発し、アート、教育、医療、福祉がつながるプラットフォームを構築していくプロジェクト。

今年度は「ミエナイモノと世界をあそぶ」をテーマに、絵本と映像を制作しました。

絵本はpdfにてダウンロードが可能です。(詳細はこちら
映像はYoutubeにてご覧いただけます。
お子さんと一緒に、みんなで、ぜひ楽しんでください。

5. 活動③ Cultivate Citizenship(広報啓発活動)

子どもを取り巻く社会をつくる一員である私たちが大切にしたい視点や、心のケア、子どもと関わる際に大事なことなどに関する情報を、PIECESでは啓発活動の一環として発信しています。

PIECESの発信するアウトプットに触れたあなたの手元から、優しい間が紡がれていくように。「耕す」という意味のCultivateを使い、PIECESの啓発・広報の取り組みを「Cultivate Citizenship」と名づけました。

①虐待防止月間

虐待を足元から予防するためにイベント・キャンペーン・記事で啓発。
記事はこちらから

②#問いを贈ろう

1日1つ贈られる問いを通じて、自分・社会・未来のwell-beingを考える1ヶ月。PIECESや著名人の皆様から様々な問いが贈られました。

全ての問いはこちらから

③HIPAHIPA

「優しい間」について考えるイベント、HIPAHIPA。CforC修了生の現場に実際に足を運んだり、話を聞いたりして、自分の関わりやまちの中のでき度とについて優しい間のメガネで見つめてみます。

6. PIECES5年の歩み

2021年6月22日に団体設立から5周年を迎えたPIECES。

5年間の歩みをダイジェストでまとめました。スタッフからの一言も必読です。

ただひたすらに大きなビジョンを掲げたPIECESは、今では約10名のスタッフに、20名のプロボノ・インターン、約450名の継続寄付者(PIECESメイト)、多くの方に関わっていただきながら育ってきました。

PIECESに関わり、共に未来を描いてくださった全ての皆様に、心から感謝申し上げます。

7. PIECESからのお知らせ

PIECESでは様々な形でご寄付を受け付けています。

【news】オンラインコミュニティPiece for Peace がスタート(詳細はこちら

企業・団体向けの講演や研修も受け付けています。

各種SNSでの発信もぜひご覧ください!

8. 活動計算書

9. サポートいただいた企業

法人や団体の皆様からご寄付や助成金をいただいたことで、CforCを全国に広げていくことができました。これからも、さまざまな形でパートナーシップを育んでいただける法人さまを募集しております。

来年度に向けて

CforCをより多くの人へ、子どもたちへ。

これまで、CforCには共感しているし学びたいがなかなか時間がないというかたや、タイミングが合わないという声もいただいてきました。そこで来年度は、CforCのエッセンスを、より手軽に感じていただけるよう、webサイトのリニューアルやプログラムに参加いただかなくても学ぶことができるコンテンツの制作などを行う予定です。

また、CforCのエッセンスを寄付者の皆さまにも共有していき、市民性の輪を広げていければと考えています。お楽しみに!

10. 5周年お祝いメッセージ

PIECESに関わる役員・スタッフ・まきば(プロボノ)メンバーから5周年に向けたメッセージを集めました。

たくさんの方に支えられ、共に歩みを進めてきた5年間。
本当にありがとうございます。そして、これからもどうぞよろしくお願いいたします!


 
 

アニュアルレポートは「継続寄付者のみなさま」と「1万円以上の単発寄付をくださったみなさま」へ紙媒体でお渡しをしております。ぜひ最新のアニュアルレポートをお手元でご覧いただけたら嬉しいです。

PIECESの活動はみなさまからの継続的なご寄付によって支えられています。来年度以降も活動を共に継続・発展させていく仲間になってくださいませんか?

 
 

Citizenship for Children 2021 が終了しました!

イラスト:Jessie(J.)

2021年7月から始まったCitizenship for Children 2021(CforC)ですが、PIECESメイトをはじめとするたくさんの方々に支えられ、無事終了することができました。

CforCは、子どもと自分と地域にとってのwell-beingを実現するために、仲間とともに心地よく迷いながら、自分なりの市民性を探求するプログラムです。今年度は新たな体制として、みつめる・うけとる・はたらきかけるという市民性発揮の3視点に沿ったコースで開催しました。

みつめるコース 参加者64名
7月から3ヶ月間実施したみつめるコース。『同じ志を持った仲間とともに、子どもに心で応えるためのまなざしを学ぶ』ということに重きを置き、自分自身や子どもの感情、地域や社会の出来事をありのままにみつめていくためのまなざしやマインドセットを探求し、子どもと自分、地域のwell-beingを実現するためのベースとなるエッセンスを、講座とゼミで学びました。

うけとるコース 参加者4名
みつめるコース修了後、『安心できる仲間と、発見したり葛藤したりしながら、私らしい「優しい間」を問い続ける』ことを学ぶ、うけとるコース。みつめるコースの内容に加え、リフレクションを通して、目の前の子どもの感情や願いに目を向けると同時に、自分自身の感情や願い、価値観にもじっくり向き合うプロセスを体験していきました。

はたらきかけるコース 参加者30名
みつめるコース修了後、『わたしたちのうけとった違和感や想いを、形にすることで優しい間のあふれる地域へ』と目指していく、はたらきかけるコース。みつめる・うけとるコースの内容に加え、実際に自分も子どもも生きる地域で自分らしいアクションをしていくために、まちの資源の活かし方やコミュニティづくりについて探求していきました。

CforCに関する記事はこちら

参加者の声

今年の参加者から以下のような声が届いています。

“beingを受け入れてくれる“雰囲気はCforCのゼミにもあるなと感じました。うまく話せなくてもいいし、きれいにまとめられなくてもいい。モヤモヤがあっても大丈夫。自分が感じたことをありのままに聴いてくれるクラスのメンバーに、初回ゼミとは思えないくらいの安心感を感じました。(20代・大学生)

ゼミの中で行われた自己覚知ワークでは、同じグループの方の考え方の背景や価値観が分かるのが楽しく、それを共有した後の空間は何だか安心できるなと感じました。私自身も、このワークを通して「自分から生きづらさを他人に伝えるのが難しい子どもたちに寄り添える人でありたい」という大事にしていた価値観を思い出し、言語化することができました。(20代・福祉職)

回を重ねるごとに心や体の感覚が自由になるのを感じました。今まで福祉職として「心を自由にしたら頭が働かなくなる。良い支援が出来なくなる」と、必要以上に自分を戒めてきたのかも知れません。(20代・福祉職)

活動の中で子どもから重大な悩みを打ち明けられたスタッフがいた時に、そのスタッフもどう回復していくのかということも考える機会になりました。(30代 / 地域活動・任意団体)

これまでは子どもの友達の親御さんたちやご近所さんなど接点はあるけど、そこまで関わってない人たちと、もっと仲良くなりたい、「もっと次に話せるようには...」と思っていました。今はあんまり考えすぎずに、親御さんたちや小学生にも話しかけるようになりました。(30代・会社員)

子どもたちへの声かけや同じ職場の大人たちの距離の取り方を、よく見るようになりました。これまでは「自分がどうするか」意識してきていましたが、CforCを受講して、人が言っていることの背景をこれまで以上に考えるようになりました。(30代・病院・学校・福祉施設スタッフ)

参加者の変化

市民性の発揮の仕方は人それぞれです。それでもプロジェクトを立ち上げたり、何か大きい活動をしなければいけないと感じ、「自分にできることは何もない」と思ってしまう人もいます。
CforCを通じて「自分にもこんなことができるかもしれない」「自分ができることをやっていこう」という人が増え、市民性発揮のグラデーションが生まれ始めています。

今年の参加者からは、今後こんなことをやってみたい!という声が上がっていきました。

  • 不登校やまちの人たちが集まれる居場所をこれからつくりたい

  • 普段関わっている子どもたちと社会との接点をつくっていきたい

  • ボランティア活動で出会う子どもたちだけでなく、まちの子どもたちにも関わろうと思う

  • 大きいことではなくとも、プロボノやまちで自分ができることをやっていきたい

現在CforC2021の報告書を作成しています。より詳しい報告を掲載予定ですので、楽しみにお待ちください!

東京ヒルズライオンズクラブの例会で小澤が登壇しました

2021年11月18日に開催された、ライオンズクラブ国際協会 330-A地区3リジョン3ゾーン 東京ヒルズライオンズクラブさまの例会にお招きいただき、代表の小澤が子どもたちの孤立の現状とPIECESの活動をお話しさせていただきました。

東京ヒルズライオンズクラブさまは、東北の震災支援を10年間続けてこられており、最近では麻布乳児院へのご寄付も行なってらっしゃいます。

子どもが子どもでいられる社会をともに紡いでいくきっかけとなればうれしいです。

お招きいただきありがとうございました。

「どこにも相談できない」ー子どもの孤立を考える #虐待防止月間

すぐ隣にあるかもしれない危機が、大きな綻びとなってからしか目に見えない。

すぐ近くで起きている子どもの危機が見えなかったり、家が安全でない子どもたちの居場所が日常になかったり、そんな子どもを取り巻く日常の問題が顕在化しています。

今月11月は、厚生労働省が定めた児童虐待予防の啓発を行う虐待防止月間です。

年々増加する虐待相談対応件数。死に⾄らしめるリスクのある⾝体的虐待とネグレクトを合わせるとそれらは年間約7万件発⽣し、 うち56件は実際に死に⾄っています。

子どもが危機に置かれた状態が見えづらくなる一方で、ここ数年、「子ども若者の孤立」に関する議論や、 「子どもの権利」に関する議論が日本でも少しずつ活発になってきています。

子ども庁の設置に向けた様々な議論がなされたり、子どものウェルビーイングや孤立などに関して、 世間の関心が高まってもいるといえるのではないでしょうか。

書き手:

小澤 いぶき

PIECES代表理事 / 児童精神科医 / 東京大学客員研究員

子どもの環境は複層的な要素で形成される

このような議論が活発になる前から、「子どもたち」は私たちのすぐ隣で暮らしており、私たちの関わりをはじめ様々なことが、子どもたちを取り巻く環境に影響を与えてきました。関心が向けられつつある子どもたちをめぐる環境は、⻑期にわたる複層的な要素が重なって形成されています。

では現在、子どもたちを取り巻く環境はどうなっているのでしょうか。子ども庁設置に向けての動きが活発化したり、政策が動き始めたりするなかで、あらためて子どもたちの環境を「自分ごと」として捉え直していく必要があると感じます。

私はこれまで、児童精神科医として勤務しながら、PIECESの代表をしながら、「子どもの生きる環境に、直接的であれ間接的であれ、誰もが関わっている」と感じてきました。

今回は、「子どものwell beingを取り巻く多層的な環境、つまり、政策や 環境問題、そして子どもたちに直接影響する環境」についてユニセフのレポートから考え、そうした環境を育むための、誰もが欠かせない一人であることを基にした共にできるアクションについて述べたいと思います。

「精神的幸福度」が低い日本の子どもたち

日本の子どもの「精神的幸福度」は、調査国38カ国のうちの37位である ――。

2020年にユニセフ(国連児童基金)が発表したレポートの結果を、なんとなく耳にされた方もいるかと思います。

2020年9月にユニセフ・イノチェンティ研究所が発表したレポートには、日本の子どもたちの「精神的幸福度」の低さが示されています。

このレポートにある「精神的幸福度」とは、「子どもの幸福度」の項目の一つで す。調査項目として、「生活満足度の高い子どもの割合」や「自殺率」が挙げられています。

幸福度については報告当時、ニュース などでも取り上げられて話題になりましたが、さらによくみていくと、子どもを取り巻く環境がとても複雑で複層的であることが、レポートから浮かび上がってきます。

UNICEF(2021)「イノチェンティ レポートカード 16 子どもたちに影響する世界 先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か」

レポートから見える子どもの幸福度の実相

レポートでは「子どもの幸福度は、子ども自身の行動や人間関係、保護者のネットワークや資源、そして公共政策や国の状況から影響を受けることを示す、多層的なアプローチをとっている」とされています。つまり、子どもの幸福度には、 子ども自身だけでなく、子どもの周りの友人・知人、家族、政府、地域社会が影響しているということです。

またレポートには、子どもの権利条約の観点から、子どもたちの意見表明の機会及び意思決定への参加の重要性が、幸福度にも成⻑にも不可欠であることが記されています。

子どもの幸福度に影響を与えるより広い範囲の因子について、

  • オーストラリアでは若者の59%が、気候変動を自分たちの安全にとっての脅威であると考えており、4人に3人が政府による環境への対策を求めている

  • 子どもたちが将来についてどう考えるかは、現在の幸福度にも影響を及ぼす

などの記述もあり、例えば、環境問題を懸念している子どもは生活満足度が低い傾向にある、 といった詳細な記載もなされています。

このほか、社会的状況に関する「困った時に頼れる人がいるかどうか」という項目において、「日本は約20人に1人の大人が困った時に頼れる人がいないと感じており、38カ国中32番目であった」一方、殺人による死者は少ないのも特徴だと指摘しています。

ちなみに、内閣府が発表した 「子供・若者の意識」(出典:内閣府「子供・ 若者の意識に関する調査」) では、「どこにも相談できる人がいない」と答えた子ども・若者は21.6%にのぼっています。全て子ども・若者の現状の反映ではないかもしれませんが、子ども ・ 若者 の5人に1人が相談できる人がいないと感じていることがわかります。調査対象などが違うのでユニセフの調査と単純に比較はできませんが、子ども・若者の現状の一端を表している結果ではないかと考えられます。

 
 

私たち一人一人、そして全てが関わる問題

こうした現状を見ていくと、子どもの幸福度には、環境や政策、地域社会におけるネットワークや資源のあり方、企業等における保護者の働き方など、様々な要素が関わっていることが分かります。逆に言えば、子どものことを全て家族の責任や枠組みだけで捉えるのではなく、社会に生きる私たちの一人一人、そして 全てが関わる問題としてとらえ、向き合っていく必要があるのです。

子どもの幸福度に自分たちも関わっている。そう考えたとき、私たちは何をすればいいのでしょうか。

子どものことを置き去りにしたり、誰かの痛みをそのままにしたりする上に成り立つ社会ではなく、この世界を共にしている様々な人やものが共に生きていくために。

いったい何ができるのでしょうか。

ユニセフのレポートに示されている子どものwellbeingに関与する要素は複層的です。

例えば、直接的に子どもの暮らしにアプローチする支援者などの存在はとても重要である一方で、少し先にある地域資源の醸成や、子どもが暮らす地域や社会における子どもや教育を取り巻く政策へのアプローチ、人権へのアプローチ、子どもたちの未来に大きな影響をお及ぼす環境問題へのアプローチなど、さまざまな関わりが子どもの今とこの先に影響を及ぼします。だからこそ、子どものwellbeingに無関係な人は居らず、一人一人が何らかの形で関わることで、その多岐にわたるレイヤーが充実していくとも考えられます。

例えば、

  • 選挙権を持っているとしたら、選挙で子どもの暮らす環境や「生きる、遊ぶ、学ぶ、参加する」といった子どもの権利を考えた政策、子どもの暮らす環境が人権規範に根ざしたものになるような政策、フェアな選択肢とそのアクセスの可能性を広げる政策を支持するということもできます。

  • 企業での産業活動の中でも、人権の問題や環境の問題に自分たちがどう関わっているのかに目を向け、体制やビジネスのあり方を再考していく、あるいはプロダクトを通したリソースの紹介などができるかもしれません。自らが人権を大切にする企業になることで子どもの権利の土壌をつくることができるはずです。

  • 政治家ならば、このマップを捉えた上での政策を思案できます。

  • 地域に暮らす一人の人として、例えば挨拶を交わす、乳幼児を連れた保護者の方や妊娠している方に席を譲ってみるといった行動も一つのできることかもしれません。

  • それらの行動を起こしている団体などに寄付を通して資源を豊かにするのも一つの方法です。

子どもの幸福に関わっている1人の人としてできることは、意外と多くあるのではないでしょうか。

誰かだけが頑張るのではなく......

COVID-19により、当たり前にあった地域の日常が当たり前ではなくなる中、 すぐ近くで起きている様々な危機に気づきにくくなったり、自分の体験している 世界以外の世界がまるでパラレルワールドのように縁遠くなったりしています。 それでも、地域に根ざして活動している団体や行政機関など様々な人や団体が、 子どもとともにある社会をつくろうと頑張っています。

ユニセフのレポートからも垣間見えるように、子どもの生きる環境は複雑で多層的な様々なことに影響されています。だからこそ、誰かだけが頑張るのではなく、組織を通して、政策を通して、あるいは一人の市⺠として、いま起きていることを見つめ、構造を問いながら、そこに関わり、働きかけをしていくことが大切なのだと思います。

WHOの定義する虐待の社会的要因として、以下のようなことが挙げられています。

・ジェンダーや社会的な不平等
・適切な住宅の欠如や、家族や組織を支えるサービスの欠如
・失業率や貧困の割合の高さ
・容易にアルコールや薬物の入手できること
・児童虐待、児童ポルノ、児童買春、児童労働を防止するための政策やプログラムの不備
・他人への暴力を助長したり称賛する、体罰を支持する、厳格な性役割を要求する、親子関係における子どもの地位を低下させたりするような社会的・文化的規範の存在
・劣悪な生活水準、社会経済的不平等や不安定さにつながる社会、経済、保健、教育政策

これらの中には、文化的社会的規範や政策など、直接子どもの貧困や虐待にアプローチするプレイヤーだけでなく、一人一人が関わって変わっていくものがあり、子どもや保護者を取り巻く環境の質的、量的な変化を支えるために間接的に変化を促せるものもあります。

​​自分自身が子どもの暮らしに存在する一人の人であり、すでに自分の存在は子どもの暮らしに影響しているからこそ、これらのリスク要因を生み出す側にも、予防する側にもなり得るのだと私自身も自分に対して感じています。

泉が小川に、やがて大河となり、社会が子どもにとっても豊かになるようなうねりになる。そうした社会の営みが、子どもたちに危機が起きる前に生まれるように、自身もPIECESを通して、市民性の醸成に取り組んでいきたいと考えていますし、ぜひ、さまざまな人や団体とともに、その営みを広げていきたいと考えています。

 

埼玉県吉川市主催 令和3年度第2回 子ども未来応援集会に事務局長の斎が登壇しました

令和3年10月14日開催された、埼玉県吉川市主催 令和3年度第2回 子ども未来応援集会に事務局長の斎が登壇しました。

子どもの貧困対策を視点に捉え、地域で育つ子どもの未来を考える「子ども未来応援集会」。
テーマは「地域の中で子どもの未来につながる一歩へーもう一度『子どもの孤立』を考えるー」

吉川市で活動されるさまざまな方にご参加いただきました。

お声がけいただきありがとうございました。

「助けて」の声、なぜ聞こえない? 虐待を生む社会構造を問う #虐待防止月間

児童虐待の報道が出るたびに、養育者や児童相談所に対する強い声が生まれることがあります。私はその度に、その声は「果たして何をうむのだろうか」と考えてしまいます。

書き手:小澤いぶき(PIECES代表 / 児童精神科医 / 東京大学客員研究員)


今月11月は厚生労働省が定めた児童虐待の防止・啓発を行う虐待防止月間です。

今回はこの「虐待防止」という観点から、「助けて」と声を出しづらい社会や、「助けて」の声が届きづらい社会を作ってしまっている理由を紐解いていきたいと思います。


予防がなされている地域の検証や、なぜ児童虐待が起こったかの丁寧な検証と、検証を元に仕組みとして何を改善すると良いかを検討することはとても大事で必要なことです。ですが、この再発予防に向けた仕組みの改善を目的とする検証は、例えば養育者ややどこかの機関に全ての責任があるかのように非難することとは全く異なります。

「母親は」「児童相談所は」といった大きな主語によって語られる物語は、時にその背景にある、働き方やジェンダーギャップなどの人権の問題や複雑な社会構造を見えなくさせていることがあります。それは子どもたちの権利の問題にも目を向けづらくする一因にもなりえます。


「助けて」を言いづらくさせてはいないか?
困難をさらに潜在化させる可能性はないか?


私たちはどのようにしたら、マルトリートメント(大人の子どもに対する不適切な養育や関わり)をうむ社会のシステムにアプローチできるのでしょうか。そして、子どもの権利と尊厳を尊重し合える社会につなげられるのでしょうか。

目次

  1. マルトリートメントとは何か

  2. マルトリートメントをどのように捉えるか

  3. 子育て困難が起こるまでにどんなプロセスがあるか

  4. マルトリートメントが起きるシステムにどうアプローチするか

  5. 最後に

マルトリートメントとは何か

マルトリートメントとは、虐待とほぼ同義で使われる言葉ですが、日本語では「大人の子どもに対する不適切な養育や関わり」と訳されます。友田先生の著書及びインタビュー記事には以下のように書かれています。

「子どものこころと身体の健全な成長・発達を阻む養育を全て含んだ呼称」であり、大人の側に花街の意図があるか否かにかかわらず、また、子どもに目立った傷や精神疾患が見られなくても、行為そのものが不適切であれば、それはマルトリートメントと言えます。
(「子どもの脳を傷つける親たち」(NHK出版参照)/「PHPのびのび子育て」11月号より)

また、WHO(世界保健機関)にも、マルトリートメントとはあらゆる種類の児童虐待及びネグレクトが含まれ、結果として、子どもの健康、生存、発達及び尊厳に実際的/潜在的な害がもたらされることとされています。

Child maltreatment is the abuse and neglect that occurs to children und
er 18 years of age.
It includes all types of physical and/or emotional ill-treatment,
sexual abuse, neglect, negligence and commercial or other exploitation,
which results in actual or potential harm to the child’s health, survival,
development or dignity in the context of a relationship of responsibility,
trust or power.
Exposure to intimate partner violence is also sometimes included
as a form of child maltreatment.
(WHO HPより
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/child-maltreatment)

つまり、マルトリートメントとは「児童虐待及びネグレクトを含む子どもの健やかな心身の発達及び尊厳を阻害するような養育及び関わり」と捉えられます。

マルトリートメントをどのように捉えるか

以前、新潟県新潟市で行われた第115回精神神経学会に参加した際に拝見した、福井大学子どもの心の発達研究センターの友田明美先生の発表を参考に考えていきます。(第115回精神神経学会「ACE(児童期逆境体験)に精神科臨床はどう向き合うか」, 福井大学子どもの心の発達研究センター 友田明美)

友田先生は、マルトリートメントが起こる社会の構造自体を変えていく必要があると話されていました。そのために、マルトリートメントを子育て困難のサインだと捉え、育児の孤立化を防ぐ「子育てを社会で支える」ための共同子育てを提案しています。

子育て困難が起こるまでにどんなプロセスがあるか

マルトリートメントを子育て困難のサインと捉えると、その困難はどのようなプロセスをたどって起こるのでしょうか。友田先生の学会で発表された以下の研究に、そのプロセスが示されています。

共同発表:子育て中の母親ら養育者の抑うつ気分を見える化して子育て困難の予防を図る~社会脳の活動を計測し養育ストレスが深刻化する前兆を早期発見する評価法の開発~共同発表:子育て中の母親ら養育者の抑うつ気分を見える化して子育て困難の予防を図る~社会脳の活動を計測し養育ストレスが深刻化www.jst.go.jp

子育て困難や子ども虐待は急に起こるのではなく、「養育準備」、「健全養育」、「養育困難」、「養育失調」という過程を経て進行していくものと捉え、深刻な事態を招かないために、段階に応じた予防的な養育者支援を提案することを目指している。

養育失調までの過程の詳細は以下のように定義されています。

養育準備:未養育者、これから養育を行う者、養育を行って間もない者を含む。
健全養育:養育リスク要因がほとんどなく適切な養育を行う者を含む。
養育困難:養育リスク要因が少なからずあり適切な養育を行うのが難しい者を含む。
養育失調:養育リスク要因が比較的多くあり不適切な病的養育を行う者を含む。

上記の過程は、心身の疲れが蓄積されると、どんなに子ども思いの養育者にも起こり得ると記されていおり、加えて現代の社会の状況は、構造的に養育者心の疲れがより生じやすいのだといいます。

たとえどんなに子ども思いの養育者であっても、体の疲れだけでなく、目に見えない心の疲れの蓄積から子育て困難(そして最悪な事態として子ども虐待)に陥ってしまうリスクの線上にいると考えている。

少子化や核家族化の進行、地域のつながりの希薄化など、社会環境が変化する中で、身近な地域に相談できる相手がいないなど、子育てが孤立化することにより、その負担や不安が増大している。
(※1※1 内閣府『平成25年版 子ども・若者白書』)
こうした子育ての環境の変化は、養育者のメンタルヘルスの問題が生じやすい要因にもなっていると考えられるが、近年は子育て困難そして最悪な事態として子ども虐待や妊産婦の自殺等の予防という観点からも、メンタルヘルスの重要性が指摘されている。(※2厚生労働省 雇用均等・児童家庭局
総務課『子ども虐待対応の手引き(平成25年8月改正版)』)
子どもへの身体的虐待、性的虐待、暴言による心理的虐待、ネグレクトなど、子ども虐待につながりうる子育て困難を防止するためにも養育者のメンタルヘルスへの対応が望まれる。

つまり、マルトリートメント、虐待は、私にもそしてこれを読んでくださっている方にも起こりうる可能性が十分にあるということなのです。

さらに、「養育困難」段階までの過程において起こる心の疲れの深刻化は、脳機能を変化させ、対人関係における様々な困難さ(対人関係や、家族内の関係の困難さ、援助希求の難しさなど)につながる可能性もあります。つまり、心の疲れが深刻化すると、人との関わりの中で生まれる「助けを求める」、「自分や子どものストレングス(強み)に目を向ける余白を持つ」、「必要な情報を得る」などが困難になる可能性があるのです。

養育者が子育てを頑張る過程のどこかで、頑張ろうとしても難しい状況が生まれています。

そしてその困難は、心の疲れへのケアや深刻化への予防環境が少ない社会のシステムの問題である、と私は考えています。


マルトリートメントが起きるシステムにどうアプローチするか

福井大学の研究チームでは、子育ての中で、子育ての負担や不安から、ほぼすべての養育者が感じる気分の落ち込みといった心の疲れを表す抑うつ気分の程度差に注目しています。

心の疲れが深刻化し、養育困難への過程に進む中で援助希求や対人交流が難しくなることは孤立化を深めていきます。そのような状態になる前から、小さな困りごとやを共有しケアしあえたり、自分では気づかないストレングス(強み)に目を向けられるような体制が必要であるのではないでしょうか。例えば親以外の周囲の大人たちとの子どもを育てる共同子育てが、子育ての孤立化を予防し、負担や不安を低減する可能性がある、と友田先生は述べています。


最後に

福井大学の研究チームの研究及び友田先生の発表を通して見えてくる以下の三点は、メンタルヘルスのように見えづらいことを自分たちのこととして捉え直し、お互いをケアしやすい社会の寛容さを生み出す鍵でもあると感じます。

・虐待につながる要因に誰もが感じ得る心の疲れ」という普遍的なものがあるということ
疲れの深刻化を個人の責任とせず、「社会のシステムの問題」と捉え直した上での新たなシステムの提案。
・特別な人が虐待をするわけではなく、心の疲れが深刻化する環境であれば私にも起きうる、という「誰かのことから私たちのことへ」の、社会の共通認識の変容プロセスの設計。


私たちは、虐待という問題をどのように捉え、向き合っていくことができるのでしょうか。

11月は虐待防止月間。ぜひ一緒に考えてみませんか。


【プログラム報告書】Citizenship for Children プログラム成果報告書2020 ダイジェスト

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PIECESの主事業、子どもが孤立しない地域をつくる「Citizenship for Children(CforC)プログラム」の成果報告書が完成しました!

昨年2020年、たくさんの応援のおかげで飛躍的に成長したCforCの取り組みを余すことなくお伝えします!
pdfバージョンをダウンロードいただくことも可能です。(ダウンロードはこちら

  1. 代表挨拶:夢でもなく、もしもでもなく

  2. PIECES理事対談「ときに葛藤を味わいながら仲間と『市民性』の醸成に取り組む」

  3. 子どもが孤立しない地域をつくる市民性醸成プログラムCitizenship for Childrenとは?

  4. ① 基礎知識コース The BASIC Course

  5. ② 探求コース The INQUIRY Course

  6. ③ プロジェクトコース The PROJECT Course

  7. 探求コース修了生インタビュー

  8. みんなの声を集めました「CforCに参加してみてどうでしたか?」

  9. アンケート調査からみえる参加者の学び

  10. 協働パートナー団体 特別コラボ鼎談「地域で優しい”間”をはぐくみ続けるために」

  11. CforCに今期助成いただいた企業・財団 / 個人寄付者の皆さま


  1. 代表挨拶:夢でもなく、もしもでもなく

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わたしが星の毛布に包まれて眠りにつくとき
あなたは陽の光の囁きにのびをする

わたしがひんやりと水をすった大地に立ち
あなたに続く空に手を伸ばすとき

あなたは深く深く水に潜り
わたしとつながる海と一体となる

わたしの涙が大河に流れこむとき
あなたの笑い声が宇宙に溶ける

違う世界に生きる
わたしとあなたは
ときに痛み
ときに癒え
ときに闇の中で自分を守り
ときに光を求めてお互いを照らす

遠くて近いわたしとあなたの間に
地球の音色がひびく

近くて遠いわたしとあなたの間に
春の芽吹きが踊り出す

地球のひびきに鼓動を重ね
芽吹きのダンスに身を委ね

違う世界のわたしとあなたは
無数のリズムに溶け合いながら
一つになる

無数の世界の物語は
ときを越えて
空を越えて
旅をする

無数の世界の物語の芽が
ときを越えて森となる

ときを越えて
空を越えて
あなたとわたしの間に
新たな物語がうまれる

今日もまだ見ぬあなたをおもい
あなたへと続く空を見上げる

ibuki 小澤いぶき
認定NPO法人PIECES 代表理事


児童精神科医、東京大学医学系研究科 客員研究。精神科医を経て、児童精神科医として複数の病院で勤務。 トラウマ臨床、虐待臨床、発達障害臨床を専門として臨床に携わり、多数の自治体のアドバイザーを務める。さいた ま市の子育てインクルーシブモデル立ち上げ・プログラム 開発に参画。 2016年、ボストンのFish Family Foundationのプログラムの4名に推薦されリー ダーシップ研修を受講。2017年3月、世界各国のリーダーが集まるザルツブルグカンファレンスに招待、子ども のウェルビーイング達成に向けたザルツブルグステイトメント作成に参画。


2. PIECES理事対談「ときに葛藤を味わいながら仲間と『市民性』の醸成に取り組む」

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2021年6月に5周年を迎えるPIECES。そんなPIECESを立ち上げから支え、プログラムの中核を担ってきた理事の斎と青木による対談。CforCが生まれた背景や2020年度のチャレンジ、プログラムのキーとなる「葛藤」について。

3. 子どもが孤立しない地域をつくる市民性醸成プログラムCitizenship for Childrenとは?

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Citizenship for Children(CforC)は子どもと自分にとってのよりよいアクションやあり方を探求する「市民性」の醸成を 目指すプログラムです。コース全体の流れと、各コースの特徴をご紹介。

Point

  • 「講座」「ゼミ」「リフレクション」「プロジェクト」の4つの柱

  • 2020年度初めてコースを増設(①③を増設)
    ①基礎知識コース
    ②探求コース
    ③プロジェクトコース

  • 探求コースは「一般(全国)」「水戸」「奈良」の3クラスで実施

4. ① 基礎知識コース The BASIC Course

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2020年度開設の子どもと関わる基礎を学ぶ「基礎知識コース」。2020年、eラーニングで何度でも受講が可能になりました。

児童精神科医やソーシャルワーカー、 まちづくりのプロなど、実践家や専門家による全 6 回の講座をオンデマンド形式で配信。基礎知識コースの受講者は一定期間内ならいつでも、好きな場所で学ぶことができるようになりました。

また、「コース参加者と学び合いたい」という声に応える ために月 1 回、他の参加者と同じタイミングで視聴する時間を設けました。動画を視聴した後には、Zoom上で少人数のグループに分かれて感想や疑問を共有し合い、学びを深めることができる「 感想共有会 」を実施。 オンライン上で講師とやりとりができる質問タイムも設けました。動画を視るだけでは消化できなかったことを解消する機会をつくることで、参加者からは「個人的に感じた疑問をぶつけることができて、とても勉強になった」などの感想が寄せられました。

5. ② 探求コース The INQUIRY Course

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基礎知識コースの内容に加え、月1回のゼミとリフレクションを通じて子どもたちとの関わり方をより深めていく「探求コース」

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年度はZoomやGoogle Classroomなどを駆使し、離れた場所にいても仲間と学び合える環境を整えました。

さらに、今期は水戸クラス、奈良クラス、地域横断型の一般クラスという3 つのクラスを設け、CforCの全国展開に向けた動きを加速させました。

ゼミでは「自身の価値観を深ぼる」「地域の社会資源と市民性」など、各回のテーマに沿って少人数のクラスで グループワークを実施。リフレクションでは、事前に参加者に書いてもらった「プロセスレコード」(実際にあった、自分と子どもたちなどとの関わりを客観的に振り返るためのワークシート)を使いながら、対話を通じて自分と相手にとってよりよい関わりかたを見つめるセッションを行います。

6. ③ プロジェクトコース The PROJECT Course

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「子どもの孤立」の問題を解決するときに大切なのは、信頼できる他者の存在です。それは家族や支援者との関 係といった固定的なものではなく、子どもの周りに優しい 「間」=信頼できる関係を届けることが子どもの孤立を防ぐとPIECESは考えています。そして、子どもたちの周りに優しい「間」があふれる地域をつくるには、私たち一人ひとりが優しい「間」をつくる主体になることが大切だと感じています。

そこで今期は探求コースの修了生を対象に、新たなプロジェクトを立ち上げ、自分なりのアクションを探求する「プロジェクトコース」を新設しました。このコースを通じて、水戸クラスから4つ、奈良クラスから2つ、一般クラスから3つ、計9つのプロジェクトが誕生。必要な知識や考え方を学ぶ月1回の「研修」と、対話を通じて内省と探求を深める「間の発酵所」を通じて、それぞれの地域で優しい「間」をつくろうと取り組んでいます。

7. 探求コース修了生インタビュー

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CforC受講生には様々なバックグラウンドを持ったメンバーがいます。
ここでは今期探求コースを修了したお二人にインタビューを行いました。

CforCに参加したいと思ったきっかけや、自分自身の変化得られたもの立ち上げたプロジェクトなどについてお聞きしました。

8. みんなの声を集めました「CforCに参加してみてどうでしたか?」

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CforC修了後に実施したアンケートから「参加してみてどうだったか」生の声を集めました。

①公開講座について

・「子ども」を共通項にいろんな属性の人の話を聞けたのが面白く、子どもを多角的に捉える材料になった(大学生・18-24歳)
・オンラインで自由な時間に見ることができるので参加しやすかった。講座の流れが、次第に実践に向かうように作り込まれており、具体性が高まっていく感じがよかった(経営者・25-34歳)

②ゼミについて

・初回のゼミの導入で、みんながあれほどすぐに自己開示を始められたのは魔法を見るようだった。あれがあったこらこそ、全体の深い学びにつながったという気がしています。来年も再来年も、あの魔法の時間が生まれてほしい。(会社員55-64歳)
効果的なメゾットを使って、体験しながら理解できるように工夫がされていました。自分のような未経験者でも楽しく参加でき、たくさんの気づきが得られてよかったです。(自営業・65歳以上)

③リフレクションについて

優しくみんなが受け止めてくれる空間だからこそできることだと感じます。いろんな問いを投げかけてくださることで、すごい気づきがあるのでよかったです。(大学生18-24歳)
・質問して気づくこと、質問されて気づくころ。一つの場面をいろんな方向から見ることで、子どもに対する見方が変わったように感じるのは、リフレクションのおかげだと思っています。(自営業・35-44歳)

④プログラム全体について

自分史上、最高の学びでした。出会うべくして出会った。自分の回り道はここに来るためだったのか、と思えるぐらい。このプログラムをよくしていくために。今後も引き続き関わっていくことが私の希望ですし、感謝の証しだと思っています。(会社員・55-64歳)
・スタッフの方々がとても丁寧な関わりをしてくださるなと感じました。人を大切に、優しい「間」が生まれるような関わりをしてくださっているんだなと感じる6ヶ月でした。(大学生・18-24歳)

9. アンケート調査からみえる参加者の学び

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実際にCforC のプログラムを受ける前と受けたあとで、参加者にどのような変化があったのかを確かめるためにアンケート調査を実施。ここでは、その分析結果をご紹介しています。

Point

子どもへの関わり方自分の生き方に変化が生まれている
「知識」「関わり方」「自己理解」「マインドセット」全てのカテゴリで有意差。質も向上している
自分自身の行動の変容関わる子どもの変化が実感されている

10. 協働パートナー団体 特別コラボ鼎談「地域で優しい”間”をはぐくみ続けるために」

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CforC2020「探求コース」の水戸クラスと奈良クラスは、地域で取り組みを続けるNPOとともに展開しました。ここでは2020年12月に行っ たFacebookライブ鼎談の内容を基に、各団体の活動内容やPIECESとの協業に込めた想いなどをお伝え。

NPO法人セカンドリーグ茨城 理事長 横須賀聡子さん 、認定NPO法人Living in Peace 理事 伊勢巧馬さん 、PIECES事務局長 斎 典道 の鼎談です。

11. CforCに今期助成いただいた企業・財団 / 個人寄付者の皆さま

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CforCは本当に多くの企業・財団・個人支援者の方々に支えられ、実施することができています。

改めてご支援を本当にありがとうございます。

2020年、事業規模は前年比約3倍に。全国展開へ大きく飛躍した1年間を支えてくださり、本当にありがとうございました!

Special Thanks

株式会社大和証券グループ本社 様
公益財団法人パブリックリソース財団 様
Water Dragon Foundation 様
継続寄付339名のみなさま
単発寄付317名のみなさま

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制作協力

ディレクション:瀬戸久美子
デザイン:長谷川真澄
写真:吉澤健太、古立康三
イラスト:細野由季恵


CforC実施報告会を開催!

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CforC報告会では、こちらの報告書の内容に加え、生の声やプログラムの雰囲気がわかる時間にします。CforCプログラムが目指していることと昨年までの成果をお伝えし、プログラムを受講された方だけでなく、関心を寄せてくださるお一人お一人と子どもの周りに優しい「間」があふれる地域を共に育んでいくための一歩を見つけられたらと思います。

◆当日のコンテンツ(予定)

  • PIECESとCitizenship for Childrenの歩み

  • Citizenship for Children2020(水戸・奈良・全国横断)の活動報告

  • 市民として、PIECESメイト(寄付者)として共にできること

当日はCforC運営メンバーはもちろん、修了生も参加し、実際受講してみての感想や得た学び、変化したことなどありのままの言葉でお伝えします。

いつもPIECESを応援してくださっている方も、初めてPIECESを知る方も、CforCに興味がある方も、ぜひご参加いただけたら嬉しいです。スタッフ一同、皆様のご参加を心よりお待ちしております!

日 時:2021年4月24日(土)14:00-15:30
(アフタートーク 15:30-16:00を予定しています)
参加費:無料 / 寄付付きチケット(3,000円、5,000円、10,000円)
開 催:オンライン(zoom)
主 催:認定NPO法人PIECES
問い合わせ:event@pieces.tokyo
申し込み:https://cforc0424.peatix.com/

 
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アニュアルレポート2019-2020ダイジェスト

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アニュアルレポート2019-2020が完成しました!

PIECESの事業や関わる人の輪が大きく広がった1年の軌跡を、ぜひご覧いただけたらと思います。
pdfバージョンをダウンロードいただくことも可能です。(ダウンロードはこちら

  1. 代表挨拶:ことばに「優しい間」を宿す

  2. 新型コロナウイルス流行を受けての発信と取り組み

  3. 2020年役員体制を刷新

  4. 活動① Citizenship for Children 2019水戸

  5. 活動② Citizenship for Children 2020

  6. 活動③ 若年妊婦のための居場所project HOME

  7. 活動④ Reframe Lab

  8. 活動⑤ 広報ファンドレイズ

  9. PIECESメイトの輪

  10. 応援メッセージ #ひろがれPIECES

  11. メンバー紹介・採用情報

  12. 活動計算書


1. 代表挨拶:ことばに「優しい間」を宿す

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わたしが行動を起こす時、その背景にはどんな感情があって、どんな経験が影響しているのでしょうか。わたしが生きてきた社会の規範がどう影響しているのでしょうか。

そう問うことは、難しく、終わりはないけれど、今までかけてきたメガネをかけたくなった感情や、経験に気づき、そっと自分に問うてみる。そのメガネを外したら目の前のことはどんな風に自分に映るのか。

そんな営みを繰り返しながら紡ぐ言葉と、その言葉を受け取る人との間には優しい間が宿るのではないでしょうか。

PIECES代表 小澤いぶき

2. 新型コロナウイルス流行を受けての発信と取り組み

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2020年、新型コロナウイルスが猛威を振るい、子どもたちにも大きな影響がありました。
PIECESでは、子どもたちやその周りにいる大人たち、困りごとを抱えた人たちに広く届くよう、様々な発信を行いました。

新型コロナウイルスに関してのこころとからだのケア 〜過程や子どもの居場所などでできるケア〜

新型コロナウイルス「からだとこころのワークブック」

とどけるプロジェクト
新型コロナウイルス感染症に関する情報を、様々な不安や困りごとのある方、情報が届きづらい方にとどけるために立ち上げたプロジェクト

3. 2020年役員体制を刷新

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時代を超えて、子どもを取り巻く環境に働きかけ、市民性を発揮し続けて行くためには、グローバルな視点や歴史的な視点を踏まえた上で、現在起きている現象を見渡していく広い視野が必要であると私たちは考えています。局所的な判断に捉われるのではなく、今見えていない誰かへの想像力を養う必要があるからです。

PIECESの行う市民性醸成の活動は、短期的にわかりやすい成果が出るわけではなく、継続的に行っていくことが重要です。そこで、そのような視点を補い共に歩みを進めてくださる新たな理事・監事の4名をお迎えし、新たな役員体制へと体制を変更いたしました。これまで設立から役員を務めてきてくださった7名の役員のみなさまへ心からの感謝をすると共に、新生PIECESとしての歩みを進めていきたいと思います。

新理事
・小野田峻 氏
小野田高砂法律事務所 / 弁護士
・荻原国啓 氏
ゼロトゥワン株式会社 代表取締役社長 / ソーシャルアントレプレナーズアソシエーション(SEA)代表理事 / ピースマインド共同創業者

新監事
・佐藤暁子 氏
ことのは総合法律事務所 / 弁護士
・長田和弘 氏
長田和弘税理士事務所

4. Citizenship for Children 2019水戸

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近年、子どもの貧困や虐待、いじめなどの問題が顕在化する中で、子どもや家族の「心の孤立」をいかに防ぐかが、重要な課題となっています。ここでいう「心の孤立」とは、生きづらさや困難を抱えていても、大人や社会に助けを求めることができない、頼れない状態のことです。子どもの育ちにとって大切な、信頼できる他者の存在。

たとえ心に小さなケガをしたとしても、その傷口が広がる前に癒しあえる仲間の存在。そんな存在が地域や社会の中に生まれ続けていくための仕組みや文化を築いていくことが必要ではないか。そんな課題意識を受けてPIECESは2016年から市民性醸成のプログラムを実施してきました。約3年間4期にわたり、東京都内でプログラムを実施したのち、2019年より「Citizenship for Children(CforC)」と名称を変更し、茨城県水戸地域でのプログラムを皮切りに全国展開が始まりました。

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プログラムは、①専門知識を学ぶ座学講座、②子どもと関わる現場実践、③リフレクションとコミュニケーションを扱うゼミ、という3つの取り組みから構成されています。この3つのプロセスを通じて、約6ヶ月間、12名程度のチームで対話と内省を繰り返しながら「自分だからこそできるアクション」を問うていき、プログラム修了後の主体的な社会への参画を促していきます。

5. Citizenship for Children 2020

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2020年度のCforCは従来のプログラムを「探求コース」と位置付けた上で、「基礎知識コース」や「プロジェクトコース」を新設し、「孤立した子どもたち」と優しい関係性を紡ぐことのできる大人を増やすための活動を一気に加速させました。

昨年に引き続き、水戸ではNPO法人セカンドリーグ茨城さんと協働。また、今年新設した奈良のコースではLiving in Peaceさんとの協働がスタートしました。CforCでは今後も、各地のパートナーと連携しながら優しい間を紡ぐ市民を増やす活動を丁寧に手がけていきます。

6. 若年妊婦のための居場所project HOME

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NPO法人ピッコラーレさんと協働で、東京都豊島区にある一軒家で最初の「HOME」が始まりました。

ネットカフェなどの不安定な居場所を転々としている孤立した妊婦さんたちが「いつでもおいで」と受け入れられる、いつでも立ち寄って相談できる。そんな安心で安全な「HOME」をつくるプロジェクトです。

HOMEを開始するにあたって実施したクラウドファンディングでは640名の方から7,750,000円のご支援をいただきました!本当にありがとうございました。

ピッコラーレさんと共に、活動を通して温かいまなざしを持った地域をつくっていきます。

7. Reframe Lab

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時間や空間を超えて、この世界にいるさまざまな存在・生命と共に在ることへの想像力を広げていくプロジェクト「Reframe Lab」。こども研究員と共に体験型で進めていくアートプログラムで、あらゆる存在への想像力を拡張させ、問いを広げ、未来のかけらを見つめていきます。

2020年のテーマは「ミエナイモノとあそぶ Immersive Experience」。「目に映るもの」だけで考えるのではなく、かつて存在していた生命や非生命、そして人の痛みや優しさといった”ミエナイモノ”への想像力を育むプログラムを実施しました。

8. 広報ファンドレイズ

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PIECESが大切にしている「情報発信ポリシー」を公開しました。広報ファンドレイズとグラフィックデザインに関して、私たちが何かをアウトプットする際に大切にしていることを言葉にした発信ポリシー。日々の発信から「優しい間」を紡いでいけるよう大切にしている価値観です。

イベントは1年の間に主催、共催、登壇、ライブ配信などを含め計46回実施しました。(2019年11月~2020年10月)多くの方にPIECESを知ってもらうことのできた1年でした。
ご参加くださったみなさま、ありがとうございました!

9. PIECESメイトの輪

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継続寄付者は1年間で約3倍の339名となり、単発でのご寄付も300名以上の方から頂戴しました。企業や団体様からの寄付・助成も前年度を超えるものとなり、温かなサポートに支えられ活動を発展させることのできた1年間でした。PIECESを寄付で支えてくださる寄付者「PIECESメイト」のみなさんとこれからも共に歩んでいきたいと思っています。

2018年のプログラム修了生・PIECESメイト(継続寄付者)である江澤萌さんにお話を伺ったインタビューもぜひご覧ください。

私たちは、寄付者の皆さんと「寄付するー寄付される」という関係を越えて、共にありたいと願っています。これからも「優しい間」を共にひろげる仲間として、どうぞよろしくお願いいたします。温かなご寄付を本当にありがとうございます!

10. 応援メッセージ #ひろがれPIECES

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PIECESをさまざまな形で応援してくださっているみなさんから応援メッセージをいただきました。

いただいた応援メッセージはnoteに掲載しています。(note「PIECES magazine」はこちら

アニュアルレポートで紹介しきれなかった温かく優しいメッセージを、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。

また、SNSを通じて #ひろがれPIECES でシェアいただいたたくさんのメッセージもとても心強いものでした。ありがとうございました!

11. メンバー紹介・採用情報

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2020年、PIECESは4名の新たなスタッフを迎えました。CforCの各クラスを担当する運営スタッフと、経理などのバックオフィス業務を担当するスタッフを迎え体制を強化し、活動を展開することができました。

採用情報

プログラム拡大の基盤をつくるファンドレイズ担当スタッフを募集しています!

企業や団体など法人向けにPIECESの活動を広く広めていただきながらファンドレイジング活動をになっていただける方を募集します。

詳細についてはこちらにお問い合わせくださいstaff@pieces.tokyo

12. 活動計算書

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アニュアルレポートは「継続寄付者のみなさま」と「1万円以上の単発寄付をくださったみなさま」へ紙媒体でお渡しをしております。ぜひ最新のアニュアルレポートをお手元でご覧いただけたら嬉しいです。

PIECESの活動はみなさまからの継続的なご寄付によって支えられています。来年度以降も活動を共に継続・発展させていく仲間になってくださいませんか?

 

Special Thanks

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